映画『ワイルド・アット・ハート』の概要:鬼才デヴィッド・リンチが、ワイルドなハートを持つ男女の熱すぎる愛のあり方を独特の感性で描く。『オズの魔法使い』が物語のモチーフとして使われており、悪い魔女や善き魔女まで登場する。ニコラス・ケイジとローラ・ダーンの破天荒な熱愛ぶりが、なぜかツボにハマる。
映画『ワイルド・アット・ハート』の作品情報
上映時間:124分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:デヴィッド・リンチ
キャスト:ニコラス・ケイジ、ローラ・ダーン、ウィレム・デフォー、イザベラ・ロッセリーニ etc
映画『ワイルド・アット・ハート』の登場人物(キャスト)
- セイラー(ニコラス・ケイジ)
- ワイルドなハートを持つ男。自由の象徴としてヘビ皮のジャケットを愛用している。人生を共にする女性には、敬愛するプレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」を歌うと決めている。両親を早くに亡くし、まともな躾を受けていないことがコンプレックス。
- ルーラ(ローラ・ダーン)
- セイラーの恋人。純粋な心を持つスレンダーな金髪美女で、セイラーのことを心から愛している。過干渉な母親にセイラーとの交際を反対され、愛を貫くために家出する。ある事件がきっかけで、悪い魔女の幻が見えるようになる。
- マリエッタ(ダイアン・ラッド)
- ルーラの母親。異常に支配欲が強い女性で、何でも自分の思い通りにならないと気が済まない。セイラーに娘を奪われることが我慢ならない。男グセも悪く、セイラーまで誘惑したことがある。
- マーセラス・サントス(J・E・フリーマン)
- マリエッタに惚れている殺し屋。以前、セイラーはサントスの運転手をしていたことがある。マリエッタの依頼で、部下にセイラー殺しを命じる。
- ジョニー(ハリー・ディーン・スタントン)
- マリエッタの恋人。有能な私立探偵だが、なぜかマリエッタにベタ惚れのため、彼女の言いなりになっている。いたってまともな人物。
- ボニー・ペルー(ウィレム・デフォー)
- サントスの部下の殺し屋。ビッグ・ツナという街で暮らしている。元海軍兵で、かなり危険な男。
映画『ワイルド・アット・ハート』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ワイルド・アット・ハート』のあらすじ【起】
ケープ・フィアーの劇場前で、セイラーは黒人男性に因縁をつけられ、ナイフを突きつけられる。男はマリエッタにセイラー殺しを依頼されていた。マリエッタは、セイラーの恋人のルーラの母親だった。セイラーは男をめちゃくちゃに痛めつけ、その場で撲殺してしまう。ルーラとマリエッタは、その一部始終を目撃していた。
セイラーは傷害致死の罪で刑務所に収監され、22ヶ月と18日の刑期を終えて出所する。セイラーは、すぐにルーラの自宅へ電話するが、マリエッタに電話を切られてしまう。マリエッタは、なぜかセイラーを憎んでおり、絶対に会わないよう娘に警告する。しかし、ルーラは母親に反抗して家出し、セイラーを迎えに行く。
セイラーは、ルーラが持ってきてくれたヘビ皮のジャケットを着て、ケープ・フィアーのホテルへ直行する。セイラーとルーラは、久しぶりに思う存分愛し合い、変わらぬ愛を確認する。
マリエッタは、恋人のジョニーに助けを求める。ジョニーは有能な私立探偵で、マリエッタに惚れ込んでいた。マリエッタは、「ルーラをあの人殺しと別れさせて」とジョニーに頼む。ジョニーは、セイラーの行為は正当防衛だと思っていたが、マリエッタは聞く耳を持たない。マリエッタは、もしジョニーが失敗したら、殺し屋のサントスにセイラー殺しを依頼するつもりにしていた。
事件のあった日、セイラーは劇場のトイレでマリエッタに言い寄られ、彼女を拒絶した。プライドを傷つけられたマリエッタは、セイラーがサントスの運転手だった過去に触れ、自分の娘とは絶対に付き合わせないと怒り出す。支配欲の強いマリエッタは、娘に異常な執着心を持っており、ルーラはその呪縛に苦しんでいた。両親を早くに亡くしたセイラーは、マリエッタとルーラの依存関係が全く理解できない。
その晩、セイラーとルーラはメタルバンドのライブで踊り狂う。途中でルーラに手を出そうとした男は、セイラーに痛めつけられる。セイラーは、その場でエルビス・プレスリーの甘いナンバーを歌い、ルーラをうっとりさせる。しかし、1番好きなラブソングの「ラブ・ミー・テンダー」だけは、生涯を共にする女性に捧げると決めており、まだルーラには歌ってくれなかった。
映画『ワイルド・アット・ハート』のあらすじ【承】
ルーラの父親は、セイラーと出会う1年前に死んだ。父親は、自ら灯油をかぶって火をつけ、焼身自殺を図ったらしい。ルーラは、火事になった自宅で女性の笑い声を耳にしてから、東の悪い魔女の幻覚に悩まされていた。
マリエッタがジョニーを仕掛けてくることはわかっていたので、セイラーの提案で、2人はカリフォルニアへ向かうことにする。ルーラは、もう自分にはセイラーしかいないと強く感じ、「私を見捨てないでね」と彼に懇願する。セイラーは、そんなルーラを優しく受け止める。
その頃、マリエッタはジョニーのことが信じきれず、彼に内緒でサントスを呼んでいた。マリエッタに惚れているサントスは、セイラーと一緒にジョニーも殺すつもりだった。マリエッタは、ジョニーは殺さないよう頼むが、結局はサントスに押し切られる。
サントスは、殺し屋の元締めに連絡して、セイラーとジョニー殺しを依頼する。元締めからの命令で、恐ろしい殺し屋たちが動き出す。
セイラーとルーラはニューオリンズに到着し、いつものように愛し合う。同じ頃、ジョニーもニューオリンズへ向かっていた。マリエッタは、サントスに「考え直して」と電話するが、サントスもまた、すでにニューオリンズに到着していた。
その晩、ルーラはベッドの中で、従兄弟のデルという男の話をする。デルはクリスマスが大好きな頭のおかしい男で、宇宙人が来るという強迫観念に怯えていた。母親は、それは妄想だという意味で、宇宙人はデル自身なのだと息子に話す。しかし、デルは自分の中に宇宙人がいると解釈し、自分の下着にゴキブリを入れるようになる。その後、デルは行方不明となり、未だに消息がわからない。
ジョニーが殺されるかもしれないという恐怖で、マリエッタはおかしくなっていた。家にいても落ち着かないので、マリエッタはニューオリンズへ向かうことにする。
翌日、マリエッタとジョニーは、ニューオリンズのレストランで食事をする。マリエッタは、サントスのことを言えないまま、ホテルの部屋まで送ってもらう。同じフロアの自分の部屋へ入ったジョニーは、待ち伏せしていた何者かに拉致される。
映画『ワイルド・アット・ハート』のあらすじ【転】
その頃、セイラーとルーラは、カリフォルニアを目指して夜の道路を走っていた。その車内で、セイラーは自分がルーラの父親を知っていたことを打ち明ける。サントスの運転手だったセイラーは、火事があった夜にサントスをルーラの自宅まで送っていた。しかし、家の中で何があったのかは知らない。その話にショックを受けたルーラは、ホウキにまたがって飛んでいる東の悪い魔女の幻を見る。
そのまま走り続けていた2人は、道路脇に横転した事故車両を見つける。周辺には、事故で死んだ人の死体が転がっていた。2人が呆然としていると、頭から血を流した女性がフラフラと歩いてくる。セイラーは病院に連れて行こうとするが、女性はひどく混乱しており、言うことを聞かない。そのまま女性は地面に倒れ、2人の目の前で死んでしまう。セイラーは、動揺しているルーラを抱きかかえ、事故現場を離れる。
拉致されたジョニーは、サントスの差し向けた殺し屋たちに、頭を撃ち抜かれて殺される。マリエッタはジョニーのことを諦め、サントスを頼ることにする。
カリフォルニアへは遠回りになるが、セイラーの希望で、2人はビッグ・ツナという街に寄る。セイラーは、ルーラをモーテルに残し、チカという女性に会いに行く。チカは、ジョニーを殺した女の娘で、サントスの部下だった。チカは、セイラーがルーラと付き合っていると知ると、「彼女のママとサントスがパパを殺した」と言って、不敵に笑う。セイラーは、自分を殺すためにサントスが動いているのではないかと思っていたが、チカは何も聞いていないと答える。
セイラーが戻ると、ルーラは部屋の床に嘔吐して、ベッドで横になっていた。その夜、ルーラは自分が妊娠していることを打ち明ける。セイラーは「問題ない」と言ってくれるが、ルーラは母親になる自信がなかった。
翌日、セイラーの留守中、ボビーという元海軍兵の男が、ルーラの部屋にトイレを借りに来る。ボビーは、怯えるルーラをからかい、部屋を出て行く。ルーラは恐怖と屈辱で号泣する。
ボビーはセイラーを飲みに誘い、銀行強盗の話を持ちかける。セイラーは断るが、ボビーはなぜかルーラが妊娠していることを知っており、金が必要だろうと食い下がってくる。セイラーは、ボビーがルーラの妊娠を知っていることに不信感を抱くが、大金が入るという魅力に勝てず、強盗の相棒になることを約束してしまう。
その夜、ルーラはセイラーとボビーがよからぬことを企んでいることに気づき、セイラーを止めようとする。しかし、セイラーは黙って寝てしまう。ルーラは、「ラブ・ミー・テンダーを私のために歌って欲しい」と言って泣き出す。
映画『ワイルド・アット・ハート』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌朝、セイラーが待ち合わせ場所に行くと、ボニーの車にチカが乗っていた。セイラーは話が違うと怒り出すが、チカは運転手だと言われ、仕方なく車に乗る。ボビーとチカは、サントスからセイラー殺しを依頼されており、事故に見せかけて、セイラーを殺すつもりだった。
その頃、ルーラはモーテルで泣いていた。ルーラは父親の友人に犯された過去があり、その時に中絶を経験していた。娘が犯されたことを知ったマリエッタは、その男に激怒する。その後、その男は崖から車が転落するという事故で死亡した。ルーラは、その事故にも父親の死にも母親が関わっているのではないかと薄々気づいていたが、それを認めるのが怖くて、現実から目を逸らしていた。
セイラーは、「誰も傷つけない」という約束で、ボビーと銀行強盗を行う。しかし、ボビーはいきなり従業員に発砲し、約束を破る。銀行の外では、チカが警察から職務質問を受けていた。店内から銃声が聞こえ、チカは車を急発進させて逃げる。警察は、外へ出てきたボビーを撃ち殺し、セイラーは逮捕される。
セイラーは、再び刑務所へ収監される。マリエッタとサントスによって家に連れ戻されたルーラは、「赤ちゃんを産むことにした」とセイラーに手紙を書く。
それから5年10ヶ月と21日後。セイラーが出所する日、ルーラは成長した息子を連れて、セイラーを迎えに行く。マリエッタは気が狂ったように大反対するが、ルーラは自分の意志を通し、母親の写真に水をぶっかける。
セイラーは、初めて目にする息子にお土産を渡し、ルーラが運転する車に乗る。しかし、ルーラは途中で車を停車させ、泣き出してしまう。セイラーは、自分のような人間に関わらない方が2人は幸せなのではないかと思っていた。それをルーラに話し、車を降りて歩き出す。ルーラは「セイラー戻ってきて」と泣き叫ぶが、セイラーは振り返らない。
道を歩いていたセイラーは、不良少年たちに取り囲まれ、ボコボコに殴られる。そのまま気を失ったセイラーは、善き魔女の幻を見て、「ルーラはあなたを愛している、ワイルドな心を持っているなら戦いなさい、愛に背いてはいけません」というお告げを聞く。セイラーはむっくり起き上がり、不良少年たちに「ありがとう」と礼を言って、ルーラの車を追いかける。
セイラーは、渋滞に巻き込まれて停車しているルーラの車を見つけ、彼女の元に走る。そして、ボンネットの上でルーラと抱き合い、「ラブ・ミー・テンダー」を熱唱する。ルーラは、セイラーの甘い歌声を聴きながら、幸せに酔いしれる。ルーラがセイラーの愛によって救われた時、悪い魔女(マリエッタ)は消滅していく。
映画『ワイルド・アット・ハート』の感想・評価・レビュー
タイトルの通りワイルドな二人と共に描かれる暴力と性が目覚ましくもあるが、よく見てみると最高の純愛であり、そのミスマッチに惹かれていくワイルドムービーであることに気づいた。
ニコラス・ケイジが放つクサイ台詞でさえも笑えるほどにクールである。「ラブ・ミー・テンダー」を遂に歌った瞬間は、ベタすぎる表現にニヤけたと同時に最高に興奮した。ウィレム・デフォーが演じる悪役も強烈な印象を残してくれた。(女性 20代)
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