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映画『ドリーム』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ドリーム』の概要:1960年代初頭、アメリカ初の有人宇宙飛行計画(マーキュリー計画)を陰で支えた3人の黒人女性の実話を基に製作された作品。人種差別問題にも言及しているが、差別に負けない黒人女性の強さと賢さが強調された演出になっており、作品に暗さはない。キャスト陣の演技も秀悦。

映画『ドリーム』の作品情報

ドリーム

製作年:2016年
上映時間:127分
ジャンル:ヒューマンドラマ、伝記
監督:セオドア・メルフィ
キャスト:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケヴィン・コスナー etc

映画『ドリーム』の登場人物(キャスト)

キャサリン・ゴーブル・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)
ウエストバージニア州出身の黒人女性。幼い頃から数学で天才的な才能を発揮し、ウエストバージニア大学の大学院を卒業後、NASAの計算係となる。黒人女性への偏見や差別に耐えながら、NASAのマーキュリー計画を陰で支える。死別した夫との間に3人の娘がいる。
ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)
キャサリンの同僚であり親友の黒人女性。非白人の計算係が集まる西グループで管理職の仕事をこなしているが、黒人のため管理職になれない。コンピューターが導入されたら計算係が不要になると見越し、独学でプログラミングを学ぶ。夫との間に2人の息子がいる。
メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)
キャサリンの同僚であり親友の黒人女性。航空技術者を目指す有能な女性で、資格取得に必要な学位を得るため、裁判所に請願書を提出して、白人専用の高校へ進学する許可をもらう。夫との間に一男一女がいる。
アル・ハリソン(ケヴィン・コスナー)
NASA宇宙特別研究本部の本部長。仕事に厳しく、部下から恐れられている。NASAの威信をかけたマーキュリー計画を成功させるためには、ただの秀才ではなく天才が必要だと考えている。本部の計算係にキャサリンを抜擢し、彼女の才能を認める。
ポール・スタッフォード(ジム・パーソンズ)
宇宙特別研究本部の主任。キャサリンの直属の上司となるが、黒人に偏見を持っており、なかなか彼女の実力を認めようとしない。
ヴィヴィアン・ミッチェル(キルスティン・ダンスト)
NASAで白人の計算係が集まる東グループの管理職の女性。黒人女性に差別意識はないと言っているが、内心では差別している。ドロシーたちの直属の上司でもある。
ジョン・グレン(グレン・パイエル)
元海兵隊員の宇宙飛行士。マーキュリー計画で宇宙船に乗るため、NASAで訓練を受ける。器の大きな人物で、黒人女性も差別せず、キャサリンの実力を評価する。アトラス号で宇宙へ飛び立つ。
ジム・ジョンソン(マハーシャラ・アリ)
キャサリンと再婚する黒人男性。軍人で不器用な性格だが、心から信頼できる人物。キャサリンの仕事を認め、彼女の母親や3人の娘のことも大切に考えている。

映画『ドリーム』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ドリーム』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ドリーム』のあらすじ【起】

1961年、バージニア州ハンプトン。黒人女性のキャサリン、ドロシー、メアリーの3人は、いつも一緒に勤務先のNASA(アメリカ航空宇宙局)へ通っている。3人は理数系の能力に長けており、特にキャサリンは6年生で高校へ飛び級するほどの天才だった。しかし、人種差別の激しかった当時のアメリカで、黒人女性がその能力を存分に発揮することは難しく、3人もNASAでは臨時の計算係という立場だった。

この頃、アメリカとソ連は競い合うように宇宙開発を進めており、相手よりも先に有人飛行が可能な宇宙船を作ろうと躍起になっていた。NASA宇宙特別研究本部(スペース・タスク・グループ)のハリソン本部長は、一刻も早く結果を出すよう政府にプレッシャーをかけられ、解析幾何学ができる有能な数学者が必要だと考える。近々、IBMの大型コンピューターが導入されることになっていたが、それを待っている余裕もないほど、ハリソン本部長は追いつめられていた。

キャサリンたち3人は、非白人計算係が集められた西グループで働いている。人種分離の考えにより、黒人はトイレや食堂も非白人用しか使用できない。西グループを統括しているドロシーは、管理職の仕事をこなしていたが、黒人グループには管理職を置かないという規定があるため、未だに臨時職員扱いだった。そんな中、航空技術者を目指してきたメアリーが技術部に配属され、解析幾何学ができるキャサリンも宇宙特別研究本部の計算係に抜擢される。危機感を抱いたドロシーは、上司のミッチェルに自分も管理職へ昇格させて欲しいと訴えるが、規定を理由に断られる。

技術部で働き始めたメアリーは、すぐにその能力を発揮し、上司から技術者養成プログラムの受講を勧められる。しかし、黒人女性が航空技術者になった前例はなく、そんなことは不可能だろうとメアリーは思っていた。

本部へ行ったキャサリンは、白人男性ばかりの職場で、肩身の狭い思いをする。ハリソン本部長は、キャサリンの能力にしか興味がなかったが、主任のスタッフォードは、明らかに彼女を差別していた。スタッフォードはキャサリンを信用せず、彼女が検算を命じられた書類まで黒く塗り潰す。さらに、東の棟には非白人用トイレがないため、キャサリンは800メートル先にある西の棟の非白人用トイレまで走り、用を足す必要があった。キャサリンとドロシーとメアリーは、3人で盛大に愚痴を言い合うことで、この環境に耐えていた。

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映画『ドリーム』のあらすじ【承】

キャサリンは早くに夫と死別し、女手ひとつで3人の娘を育てている。ドロシーとメアリーも既婚者で、それぞれ子供がいた。3人は家族ぐるみで仲が良く、休日を一緒に過ごすことも多い。ある日の休日、教会が主催する黒人の集まりに参加したキャサリンは、軍隊で中佐をしているジムという黒人男性と知り合う。メアリーとドロシーに促され、ジムと2人で話をしたキャサリンは、彼の「女にそんな仕事を」という発言に腹を立てる。黒人女性として初めて、ウエストバージニア大学の大学院を卒業したキャサリンには、数学に関しては誰にも負けないという自負があった。

宇宙船の開発と並行して、宇宙飛行士の訓練が始まることになり、候補生たちがNASAへやってくる。彼らを迎える式典で、キャサリンたちは他の職員から離れた場所にいるよう指示されていたが、元海兵隊のジョン・グレンは、黒人女性にもきちんと挨拶してくれる。

本部では、相変わらずキャサリンへの差別が続いており、彼女へ渡すデータは黒く塗り潰されていた。キャサリンは、光に透かして黒塗り部分の数字を読み取り、データの間違いを発見する。キャサリンの実力を認めたハリソン本部長は、今後はデータを消さずに彼女へ渡すよう、スタッフォードに命じておく。

ドロシーは、コンピューターの導入により、黒人女性の計算係がクビにされることを危惧していた。ドロシーは将来のことを考え、独学でコンピューターのプログラミングの勉強を始める。

技術者養成プログラムに申し込んだメアリーは、ミッチェルから参加資格に必要な学位を取得していないからダメだと断られる。しかし、その学位は、白人専用の高校でしか取得できないものだった。

1961年4月12日。ドロシーの息子の誕生日パーティで、ジムと再会したキャサリンは、先日のことを謝罪してもらう。ジムの誠実な人柄を知り、キャサリンも彼に好意を抱く。パーティの途中、ラジオの緊急放送で、ソ連のガガーリンが人類初の有人宇宙飛行に成功したというニュースが伝えられる。

映画『ドリーム』のあらすじ【転】

ハリソン本部長は、少しでも早くソ連に追いつくため、これからは残業続きの日々になることを部下に伝える。キャサリンも白人男性の中に混じり、激務をこなしていく。

大型コンピューターは導入されたが、NASAにはそれを使いこなせるプログラマーがおらず、コンピューターがうまく機能しない。そんな中、ドロシーは西グループの計算係全員にプログラミングを学ばせ、彼女たちの能力を認めてもらうチャンスを伺っていた。メアリーは、白人専用の高校へ通う許可をもらうため、州の裁判所に請願書を提出する。

キャサリンがしばしば席を立ち、しばらく帰ってこないことに気づいたハリソン本部長は、この忙しい時に何をしているのかと彼女を叱る。キャサリンは、非白人用のトイレが西の棟にしかないのだと打ち明け、これまで我慢してきた差別への怒りを爆発させる。何も知らなかったハリソン本部長は、自ら「非白人用トイレ」のプレートを破壊して、今後は好きなトイレを使うよう黒人職員全員に告げる。

1961年5月5日。元海軍兵のアラン・シェパードが、マーキュリー・レッドストーン3号でアメリカ初の有人宇宙飛行に成功する。わずか15分程度の弾道飛行ではあったが、NASA本部は喜びに包まれる。これに気を良くしたケネディ大統領は、「アメリカはこの10年で月とその先に行く」と演説し、NASAの存続を約束する。

人種差別撤廃運動が活発になる中、メアリーが白人専用の高校へ進学できるかどうかの審問会が開かれる。メアリーは、白人専用の高校で必要な学位を取得してNASAの航空技術者になりたいという自分の夢を語り、それを許可する前例を作って欲しいと州判事に直訴する。判事はメアリーの熱意を認め、夜間講座のみという条件で彼女の進学を許可する。

1961年7月21日。元空軍兵のガス・グリソムを乗せたマーキュリー・レッドストーン4号が、15分程度の弾道飛行に成功した後、計画通り大西洋に着水する。しかし、着水後にカプセルが故障し、海に沈んでしまう。脱出したグリソムを救助することはできたが、次にマーキュリー・アトラス6号で飛ぶ予定のグレンを無事に帰還させることができるのか、不安を残す結果となった。

打ち上げと着水計画に必要な計算を担当しているキャサリンは、NASAと国防総省の会議に自分も同席し、その場で最新データの計算をしたいとスタッフォードに申し出る。しかし、キャサリンに差別的なスタッフォードは、彼女の申し出を却下する。それでもキャサリンは諦めず、ハリソン本部長に直訴する。カプセルの重量も着水範囲も毎日のように変わるため、キャサリンが会議に同席しないことで、大きな無駄が生じていた。ハリソン本部長は彼女の言い分を認め、口を開かない約束で、会議への出席を許可する。

黒人女性が入ってきたことで会議室には微妙な空気が漂うが、キャサリンはその場で着水範囲を正確に計算し、一同を驚かせる。特にグレンは、彼女の天才的な計算能力を絶賛する。

映画『ドリーム』の結末・ラスト(ネタバレ)

ドロシーはプログラマーとして臨時で雇われることになり、IBMの部屋へ配属される。プログラミングにはもっと人手がいるという話を聞き、ドロシーは西の計算係を連れてくる。ドロシーに先見の明があったおかげで、西の計算係全員が職を失わずに済んだ

メアリーは白人専門の高校へ進学し、技術者として必要な学位の取得を目指す。白人教師や学生の偏見など、今のメアリーにとってはどうでもいいことだった。

ハリソン本部長は、アトラス号の逆噴射に関する計算には新しい数式が必要だと考えていたが、キャサリンは「オイラー法」という古い数式で、それが解けることを発見する。この発見により、アトラス号の発射・着水及び逆噴射分析はついに完了する。しかし、書類作成者の欄にキャサリンの名前はなかった。

ジムからプロポーズされたキャサリンは、彼と結婚することを決める。3人の娘とキャサリンの母親も、2人の結婚を祝福する。

そんなある日、キャサリンはハリソン本部長に呼ばれ、本部から西グループへ戻るよう言われる。IBMが順調に動き始めたので、人間の計算係が不要になったのだ。ハリソン本部長は自分の力不足を謝罪し、キャサリンに別の仕事を探すと約束する。キャサリンは婚約祝いに真珠のネックレスをもらい、黙って本部を去っていく。

1962年2月20日。初の衛星打ち上げから3年2ヶ月の時を経て、NASAのマーキュリー計画は集大成の日を迎える。グレンを乗せたアトラス号は、人類初の周回軌道飛行をすることになっており、アメリカ中がこのニュースに注目していた。

ところが、打ち上げ直前になって、IBMが計算した着水座標が昨日の数値と違っていることが発覚する。管制室のハリソン本部長は、正確な数値が確認できるまで待つよう、打ち上げ地のケープカナベラルへ連絡する。話を聞いたグレンは、キャサリンに検算してもらうよう提案し、ハリソン本部長もそれに同意する。

ハリソン本部長はすぐに部下を西グループの計算室へ走らせ、キャサリンに座標の計算を頼むよう指示を出す。連絡を受けたキャサリンは、すぐ計算に取り掛かる。アトラス号が飛べるかどうかは、彼女の計算にかかっていた。

計算を終えたキャサリンは、書類を持って管制室へ急ぐ。すでにグレンは搭乗準備に入っていた。計算の結果、打ち上げの決行が決まり、グレンはキャサリンに感謝の言葉を述べる。ハリソン本部長は、帰ろうとするキャサリンを引き止め、管制室に入れてくれる。キャサリンは、ハリソン本部長と共に、アトラス号の発射を見守る。

アトラス号は順調に周回軌道に乗り、管制室は安堵の空気に包まれる。計画では、これから10時間半かけて地球を7周することになっていた。ところが、2周目に入ったところで警告灯が点灯し、遮熱板が緩んで危険な状態になっていることがわかる。このまま大気圏に突入するのは危険だという意見も出るが、キャサリンは大丈夫だと判断する。ハリソン本部長は彼女の言葉を信じて、それを部下に伝える。管制室からの指示に従い、3周目を終えて大気圏に突入したグレンは、カプセルが火の玉のようになっているのを感じる。そのままグレンの応答が途絶え、管制室は緊張感に包まれる。しかし、しばらくしてグレンから応答があり、アトラス号は予定通りバハマに着水する。

ハリソン本部長に「我々は月に行けると思うか?」と聞かれたキャサリンは、笑顔で「もう行っています」と答える。その言葉通り、 NASAは1969年に人類初の月面着陸を成功させる。

その後、ドロシーは「NASA IBM計算室室長」に任命され、NASA初の黒人管理職となる。白人専用の高校で学位を取得したメアリーは、アメリカ初の黒人女性航空技術者となり、後進の育成にも力を注ぐ。そして、キャサリンは月面着陸やスペースシャトル計画にも参加し、NASAの宇宙開発に多大な貢献をする。NASAはキャサリンの功績を讚え、計算室に彼女の名前を冠している。

映画『ドリーム』の感想・評価・レビュー

ポジティブな映画である。特に女性は勇気を貰える作品になっていると思う。他の方も仰っているが、差別が根付いている中では、差別をしているという自覚のない人が多かったと思う。その状況を打破するために、声をあげたキャサリンの勇気は素晴らしく感動的である。日本でも未だ根強く残る諸々の差別を考えるきっかけにもなるような作品となっている。主演の3人はもちろん素晴らしいが、彼女らを支える男性陣も印象的であった。(男性 20代)


使用する設備が分かれているというのは聞いたことがあったけど、スカート丈が決まっているとか、経済的に有色人種には購入できないアクセサリーしか着けられない規則があるとか、部外者が見たら気づかないような小さな差別が多数存在していたことに驚愕した。
脈々と受け継がれてきた差別社会の中で、差別している事に自覚の無い人もいた。
こんな四面楚歌の状態で仕事を続け、成果を出したキャサリンの偉業は、もっと大々的に称えられてしかるべきだと思う。(女性 30代)


前向きな気持ちになれる、痛快サクセスストーリー。人種差別・女性差別がありながら、その状況に甘んじることなく、その環境で最大限自分のできることをし、実力で道を切り開いていく黒人女性3人の姿に胸が熱くなった。仕事だけでなく、家庭などプライベートも大切にしているところも素晴らしく、男女問わずオススメできるお仕事映画。

白人と有色人種の分離政策の内容、IBMがInternational Business Machinesの略だったこと、マーキュリー計画の裏にあったドラマ、前例がないことや昇格を求める際の交渉術など、雑学的な知識が増えた。軽快な音楽や、おしゃれな髪型や服装も注目ポイント。(女性 40代)


性差別、人種差別が酷かった時代にNASAのロケット打ち上げに貢献し、歴史に名を刻んだ3人の黒人女性の物語。差別からくる様々な困難に耐えながらも持ち前の実力を発揮していくが、そう簡単に差別はなくならない。耐えかねた主人公のキャサリンが胸の内を吐露する姿や、メアリーとドロシーが黒人女性では絶対に無理だと言われている仕事に対して果敢に挑んでいく姿にとても感銘を受けた。彼女たちに実力と努力を惜しまない姿勢があり、差別に左右されることなくその姿を認めてくれる上司がいたからこそ成り立った。一部ではあるが、周りの人達に懐の深さを感じた。特に、キャサリンの差別に対する胸の内を知った後の、上司ハリソンの行動はすごくかっこよかった。
また、最後のロケット打ち上げの瞬間は夢や希望、達成感、子供の頃に感じたようなドキドキ、色んな想いに満ちた光景であった。(女性 20代)

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