映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の概要:重度の薬物依存に陥り、ホームレスにまで落ちぶれていた路上ミュージシャンのジェームズは、ボブという1匹の猫と出会い、人生の転機を迎える。ジェームズ本人が書いたノンフィクション小説『ボブという名のストリート・キャット』を映画化した作品で、本物のボブが出演している。
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:ヒューマンドラマ、伝記
監督:ロジャー・スポティスウッド
キャスト:ルーク・トレッダウェイ、ルタ・ゲドミンタス、ジョアンヌ・フロガット、アンソニー・ヘッド etc
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の登場人物(キャスト)
- ジェームズ・ボーエン(ルーク・トレッダウェイ)
- ロンドンでホームレス生活をしていた路上ミュージシャン。幼い頃に両親が離婚し、孤独を癒すためにヘロインを常用するようになった薬物依存患者。そのため、家族からも見放されている。迷い猫のボブと出会ったことで、人生が一変していく。
- ベティ(ルタ・ゲドミンタス)
- ジェームズが入居した公団住宅の隣人。最愛の兄を薬物の過剰摂取で亡くしており、薬物を憎んでいる。獣医を目指していたため、動物のことに詳しく、ボブを飼い始めたジェームズの力になる。菜食主義者。
- ヴァル(ジョアンヌ・フロガット)
- ジェームズの更生プログラムを担当するソーシャルワーカー。ジェームズを更生させるため、親身になって彼を指導する。
- ジャック・ボーエン(アンソニー・ヘッド)
- ジェームズの父親。再婚相手に気を遣い、ジェームズのことを遠ざけている。再婚相手との間に2人の娘がいる。本当は息子のことを愛しているが、うまく表現できない。
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』のあらすじ【起】
ジェームズ・ボーエンは、ロンドンの路上で歌を歌いながら、ホームレス生活をしている。10代前半でヘロイン中毒者となったジェームズは、家族からも見放され、ホームレスにまで落ちぶれていた。現在はソーシャルワーカーのヴァルの更生プログラムに従い、代替薬のメタドンを服用しながら、ヘロインと手を切ろうとしている。しかし、意志の弱いジェームズは、なかなかヘロインを断ち切ることができなかった。
メタドン服用中にも関わらず、誘惑に負けてヘロインを吸ってしまったジェームズは、意識不明の状態で病院へ運ばれる。ヴァルはジェームズを厳しく叱責し、退院したら必ず面会に来るよう言っておく。ジェームズは肝炎まで発症しており、またヘロインを使ったら、命を落とす危険があった。
ヴァルはジェームズに何度も裏切られていたが、なぜか彼を見捨てることができず、彼の将来を本気で心配する。ジェームズを更生させるためには、静かに暮らせる家が必要だと考えたヴァルは、市の職員に頼み込んで、家賃のいらない公団住宅を貸してもらう。
「絶対に更生プログラムをさぼらない」という条件で、風呂付きの家を手に入れたジェームズは、久しぶりにゆっくりと湯船に浸かる。ところが、途中で不審な物音に気づく。物音を立てていたのは、窓から入り込んだ1匹の猫だった。ジェームズは安堵し、その猫にミルクをやる。猫はそのままジェームズの家に居座り、その夜は彼と一緒に眠る。
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』のあらすじ【承】
翌日から、ジェームズは猫の飼い主探しを始めるが、近所では見つからない。ジェームズは、とりあえず猫を外に放し、薬局でメタドンを服用してから、駅前で歌を歌う。しかし、駅員に注意されたため、その場を離れる。その時、ジェームズは父親のジャックを見かけ、声をかける。ジャックはジェームズの母親と離婚後、別の女性と再婚し、新しい家庭を持っていた。新しい妻がヘロイン中毒のジェームズを嫌っているので、ジャックも息子とは距離を置いている。ジャックはそのことに罪悪感を感じており、ジェームズに金を渡して、足早に去っていく。
ジェームズが帰宅すると、家の前にケガをしたあの猫が佇んでいた。隣人のベティという女性は、動物のことに詳しく、無料の動物福祉病院を紹介してくれる。ベティの発案で、猫の名前はボブに決定した。
動物病院は混んでおり、ジェームズは長時間待たされる。今日はヴァルとの面会日なので、ジェームズは焦っていた。しかし、ジェームズはヴァルとの約束より、ボブの治療を優先する。さらに、父親から貰ったお金で、有料の薬まで買ってやる。
帰宅後、ジェームズはボブに薬を飲ませようとするが、どうしてもうまくいかない。仕方がないのでベティを頼ると、彼女はすぐに薬を飲ませてくれる。その時、2人は少しだけ身の上話をする。ベティは、薬物依存者が大嫌いだと話していた。
ジェームズはヴァルのところへ行き、遅刻した理由を説明して謝罪する。ベティのことを聞いたヴァルは、新しい関係を作るのは早すぎるとアドバイスする。新しい人間関係ができて感情が揺れると、薬物に頼りたくなる危険性が高まるからだった。
ジェームズは、しばらく家でおとなしく過ごし、ボブのケガの回復を待つ。その後、ベティに付き添ってもらって、ボブの去勢手術を済ませる。ジェームズは、これからもボブを飼い続ける決心をしていた。ボブが来てくれたことで、ジェームズの孤独は癒され、精神状態も安定するようになっていた。
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』のあらすじ【転】
家賃は無料でも生活費は必要なので、ジェームズはボブを外に放し、歌を歌いに出かける。ジェームズは、路上で歌ってわずかなお金を稼いでいた。ところが、ボブは何度言い聞かせてもジェームズの後を追ってきて、バスにまで乗り込んでくる。これにはジェームズも観念し、ボブも一緒に連れていくことにする。
賑やかな街中に来たジェームズは、ボブを肩の上に乗せて歩き、周囲の注目を浴びる。歌を歌い始めてからも、ボブのおかげで多くの観客が集まり、稼ぎも増える。ジェームズが「お前のおかげだ」と言って手を差し出すと、ボブがハイタッチをしてくれる。ジェームズは幸せな気持ちで、ボブと一緒に帰途につく。そんなジェームズを、昔の仲間が尾行していた。
翌日、ジェームズはボブに犬用のハーネスを装着し、家を出る。すると、待ち伏せしていた仲間から声をかけられる。ジェームズは彼に、「必ず食べ物を買えよ」と忠告して金を渡し、何となく不安な気持ちで彼と別れる。
クリスマスが近づいた街中は、いつも以上に賑わっていて、ジェームズとボブの周囲には人垣ができる。猫好きの老婦人は、猫缶とボブ用のマフラーをプレゼントしてくれた。お金もたくさん稼ぐことができ、ジェームズの心は満たされる。その日は、ビーガンのベティが肉抜きの手料理までご馳走してくれた。
翌日、ボブと買い物に出たジェームズは、路上で倒れていた昔の仲間を発見する。彼はヘロインの過剰摂取で、心肺停止状態になっていた。騒ぎを聞きつけたベティは、すぐに人工呼吸を施す。仲間は救急車で運ばれたが、結局命を落とす。
ベティの最愛の兄は、薬物の過剰摂取により、28歳の若さで亡くなっていた。ベティはそのショックから今も立ち直れず、実家を出て、兄が亡くなったこの家で暮らしている。その話を聞いたジェームズは、彼女としっかり向き合うためにも、断薬したいとヴァルに申し出る。しかし、ヴァルはまだ早いと考え、断薬を許可しない。
ボブが来てから順調だったジェームズの生活が、再び不安定になり始める。新年のお祝いに父親の家を訪ねた時、父親の新しい家族から毛嫌いされ、ジェームズは深く傷つく。さらに、路上で歌っている時も見知らぬ男に嫌がらせを受け、警察沙汰の騒ぎになる。その後、メタドンを服用していた薬局でベティと会い、薬物依存者であることが彼女にバレてしまう。ベティは、ジェームズが薬物依存者であることを知ってショックを受けていた。
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の結末・ラスト(ネタバレ)
騒ぎを起こしたため、路上で歌うことを禁止されたジェームズは、ホームレス支援の雑誌を売ってお金を稼ぐことにする。ここでもボブのおかげで多くの人が集まり、雑誌は順調に売れる。ジェームズとボブの噂を聞きつけた新聞記者は、2人のことを新聞記事にする。
しかし、ジェームズとボブの出現で、売り上げが下がってしまったホームレスは、縄張り荒らしだと本部に訴える。本部はこの訴えを認め、ジェームズに1ヶ月間の販売禁止を命じる。
収入がなくなり、ジェームズの暮らしは逼迫する。ジェームズはひもじい中でもボブの食料だけは確保してやり、何とか1ヶ月を耐え切る。しかし、ベティとは和解できないままだった。
再びホームレス支援の雑誌を売り始めたジェームズに、子連れの母親が声をかけてくる。母親は、子供が欲しがっているのでボブを買い取りたいと言い出す。ジェームズと母親が口論している最中、散歩中の犬がボブに吠えかかり、驚いたボブが逃げ出す。ジェームズは必死で後を追うが、ボブを見失ってしまう。
それから2晩もボブが帰らず、ジェームズは心身共にボロボロの状態となる。ヴァルは、1人になるのは危険だから父親の家へ行くよう忠告するが、ジェームズは家でボブの帰りを待つ。ジェームズは、ドラッグに頼りたくなる衝動を必死で抑えていた。そして、無事にボブが帰ってきた日、ジェームズは今度こそ本気で断薬しようと決意する。
今回はヴァルも賛成してくれた。ヴァルから、代替薬のメタドンを断つのはヘロインよりもきついと言われるが、ジェームズの気持ちは変わらない。断薬する前、ジェームズはベティに「これが終わったら、黙っていたことを償いたい」と言っておく。依存症に詳しいベティは、ジェームズが外へ出ないで済むように、断薬中の買い物を引き受けてくれる。
断薬の禁断症状は強烈だったが、ジェームズは必死でその苦しみを耐え抜く。ボブは片時もそばを離れず、禁断症状に苦しむジェームズを見守っていた。
ついに断薬に成功したジェームズは、ヴァルの更生プログラムを卒業する。ジェームズの姿に触発されたベティは、自分の人生を生きることにして、実家へ帰る。帰る前、ベティは自分の連絡先と預かっていた出版社からの手紙を渡してくれる。
その手紙には、ジェームズとボブの物語を本にしないかと書かれていた。本の執筆を決意したジェームズは、父親に会いに行き、今まで迷惑をかけてきたことを謝罪する。父親は「謝るのは私の方だ」と言ってくれ、親子は長年のわだかまりを解く。
ジェームズは苦労して初めての本を執筆し、いよいよ出版の日を迎える。本屋での出版記念イベントには、ヴァルやベティや父親夫婦も来てくれた。ジェームズはボブと一緒にみんなの前で挨拶をして、感謝の言葉を述べる。
その後、2人の本はベストセラーとなり、ジェームズは安定した暮らしを手に入れる。現在、ホームレスや動物のための慈善活動に従事しているジェームズの傍らには、今でもボブが寄り添っている。
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の感想・評価・レビュー
本作の原作はイギリスで大ベストセラーになったノンフィクション小説ということで、映画自体も実話をベースに作られており、ドラッグに溺れ、社会からドロップアウトした一人の青年の成長が丁寧に描かれている。
映画を彩る音楽も素晴らしく、劇中で主人公ジェームズが歌う楽曲の数々は彼の心象風景とクロスオーバーし、観る者の心を掴む。
また、野良猫のボブ(本物が出演)も最高にキュートな名演技を披露。作品をより味わい深いものにしている。(MIHOシネマ編集部)
ジェームズは薬物中毒の上ホームレスで人生のどん底を味わい、社会はおろか家族からも爪弾き者として扱われていたが、猫のボブと一緒に行動することで人々との接点ができ、心が前向きに変わっていく。一時はボブを優先するあまりジェームズ自身の生活が崩れそうになりヒヤヒヤする場面もあるが、守るもののできたジェームズは困難を克服し状況が少しずつ好転していくのにワクワクした。
ボブが人懐っこくて可愛いし、ボブに話しかけるジェームズの人柄や暮らしぶりもよかった。実話な上に猫は本物のボブが登場していることもあって心に響いた。あたたかい気持ちになれる作品だった。(女性 40代)
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