この記事では、映画『フィギュアなあなた』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『フィギュアなあなた』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『フィギュアなあなた』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:ラブストーリー
監督:石井隆
キャスト:柄本佑、佐々木心音、竹中直人、風間ルミ etc
映画『フィギュアなあなた』の登場人物(キャスト)
- 内山健太郎(柄本佑)
- オタク気質でフィギュアを集めるのが趣味。出版社の編集部に所属しているも、無能扱いされ言いたいことも言えない性格。毎夜、フィギュアを相手に性欲を解消している。会社を辞めた後に心を病み、マネキンに愛を囁く生活を続けるようになる。
- ココネ(佐々木心音)
- サチコとアッキーナの店にいた精巧な作りのフィギュア。まるで人のような感触で時々、言葉を話す。戦闘能力は高い。可愛らしい容貌と豊満な肉体を持っている。
- ヨッちゃん(風間ルミ)
- レズビアンの女性で喧嘩がめっぽう強い。柄が悪く短気。執拗に健太郎を追いかけ、痛めつける。
映画『フィギュアなあなた』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『フィギュアなあなた』のあらすじ【起】
出版会社の編集部に務めている内山健太郎は、部長から押し付けられた仕事をどうにかこなして本を出版したが、返品率70%を越えてしまったことで、経営会議にて無能を責められてしまう。だが、彼は言い返せない性質で一方的に責められるばかり。更には部長から総務部へ異動を命じられ、同じ部署に務める恋人とも上手くいかなくなってしまう。
翌日、出勤すると同僚達が自分のデスクを片付けている。部長に問い合わせると異動命令を出したのだから、さっさと去れと言われてしまうのだった。
ストレスの発散法と言えば、夜な夜な飲み歩き風俗店をハシゴ。酔っぱらって愚痴を吐き出す健太郎は、風俗嬢に乱暴を働き店から追い出されるのだった。
その帰り、ビルの階段で女性カップルとぶつかり絡んでしまう健太郎。相手はスーツを着た柄の悪いヨッちゃんという女性で喧嘩がとても強かった。怪我を負いながらもどうにか逃げ出した健太郎は、逃げ延びたビルの一室にて大量の覚せい剤を発見してしまう。早々に踵を返し部屋から出た彼は、ふと振り返って同じ階の店に目を止めた。その店はすでに閉店していたが、サチコとアッキーナという看板がかかっている。
中へ入るとマネキンが山と積まれていた。その中に人の死体を発見。本当に人間かを確かめた健太郎。だが、よくよく見るとそれは死体ではなく、限りなく精巧に作られたフィギュアだった。手触りも人と変わらず、可愛らしい女性である。更に彼の興味は下半身へ。陰部も実に精巧に作られていたが、さすがに性交部までは作られていなかった。

映画『フィギュアなあなた』のあらすじ【承】
その頃、ヨッちゃんは健太郎を追って同じビルの同じ階へ到達。あの覚せい剤の部屋へ入ってしまう。
一方、健太郎はというと、フィギュアの作りを丹念に確認中。胸を揉みしだき、1人でストーリーを展開。ついには、もよおしてしまい自慰に至ってしまう。
その時、隣室でヨッちゃんの怒声を耳にした健太郎。咄嗟に身を隠すも発見され、追い詰められる。ヨッちゃんとその恋人は思う存分、彼を痛めつけると去って行った。
血塗れになりながら、精巧なフィギュアへと寄り添って意識を失った健太郎だったが、ヨッちゃんの怒声に再び覚醒。ヨッちゃんは覚せい剤の部屋へ戻り、中にいた怪しげな男達3人と乱闘を開始。銃で撃たれてしまう。残されたヨッちゃんの恋人は、マネキンの店へ逃れて来るも男達に捕まり凌辱されてしまう。
健太郎は異変を察して物陰に身を隠し、それら一部始終を目撃。ヨッちゃんと恋人は銃殺され、更に健太郎まで見つかってしまう。男達に囲まれ窮地に追いやられたその時、彼はあの精巧なフィギュアが動き出す様を目にするのだった。
驚くべきことにフィギュアは3人の男達を、たちまちの内に倒してしまう。殴られても撃たれても、彼女はフィギュアであるために傷はついても怪我は負わない。フィギュアは奴らが持っていた銃を奪い、3人の男達を銃殺してしまった。
映画『フィギュアなあなた』のあらすじ【転】
そのままマネキンの店で夜を明かした健太郎。フィギュアの傷を確認。更に自分の傷が回復していることに気付き茫然とするも、出勤時間が迫っていることに一瞬、焦る。だが、もう会社に行かなくても良いのだと思い出した。
昨夜はヨッちゃんを含め5人の遺体がマネキンの山に積まれていたが、朝になって見てみると遺体が見当たらない。隣室へ向かうが、覚せい剤の痕跡も見当たらなかった。
どうなっているのか、分からなくなった健太郎。ふと、家に帰ろうと思い立つ。自分を助けてくれたフィギュアを抱きかかえ帰ろうとするも、これが異常に重い。どうにか抱えてビルを出た。
フィギュアを持ち帰るのに日が暮れる。彼女の身体は動かないが、言葉は時々交わせることが分かった。健太郎は彼女にココネと名付ける。
その後、就活のために何社もの面接を受けたが、健太郎を雇ってくれる会社はなかなか見つからなかった。どうやら辞めた会社から、彼に関しての噂が流れているらしい。
健太郎は献身的にココネの世話をしながら生活を続けた。
生活費はまだあったが、収入がない。そのために健太郎は競馬レースに賭けて収入を勝ち取ろうとしたが、結果は惨敗。もうお終いだと絶望に駆られた彼は、衝動的に自殺しようとする。しかし、ここにきてココネが動き出し、彼の自殺を阻止。
映画『フィギュアなあなた』の結末・ラスト(ネタバレ)
彼女が言葉を話すのも、全て自分の妄想だと思っていたが、どうやらそれは違ったようだ。彼女は健太郎に乱暴されそうになり、部屋の中を逃げ出した。その時、健太郎は彼女の陰部に挿入部ができていることを発見。フィギュアだと思っていたが、実は人間なのか。
健太郎は衝動的にココネを抱いてしまうのだった。
その後、ココネを着飾っては性交に耽る健太郎。真面目に働くこともせず、賭け事で一発当ててから仕事を探すと言う。彼女はひたすらに彼を励まして勝負へと送り出すのだった。
しかし、結果はまたも惨敗を色濃く滲ませる。粘りに粘った健太郎。最後の大勝負で勝利を収める。彼は大金を手にし、帰宅の途に就いた。
大喜びで町を駆ける健太郎。途中、道路を横切る際、ココネにそっくりな女性を助ける。その後、ようやく帰宅するも部屋のどこにもココネの姿は見当たらなかった。彼女は健太郎に何も言わないまま、家を出て行ってしまったのだ。肩を落とす健太郎だったがその時、どこからか歌声が聞こえてくる。その声がココネに似ていることに気付いた健太郎は、歌声が聞こえるマンションの屋上へ向かった。
果たして、そこにはバレリーナの衣装を纏ったココネが歌を唄い、舞を踊っている。しばし、その光景に見入っていた彼は成果の報告をして彼女と笑い合い、一緒にダンスを楽しむのだった。
ココネと結婚し、会社にも嘱望され誰からも祝福される幸せな人生を夢見ていた健太郎。彼はココネによく似た女性を助け、トラックに轢かれてしまった。それでも帰宅した健太郎は、自宅にて横たわるただのマネキンをココネと呼び愛を囁くのだ。
映画『フィギュアなあなた』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
エロが含まれるファンタジーというカテゴリーになっているが、どちらかというとVシネにとても近い作品になっていて普段そういう作品を観ることに抵抗がある人にはおすすめできない作品になっている。こういう作品を見るときにいかに現実的に考えずに観ることが出来るかが大切だと個人的には思っている。
柄本祐は本人が以前、このような作品が好きだと言っているのを観ていたからか、普段出ている作品よりもこの映画の役はハマっているように感じた。(女性 20代)
石井隆監督が自ら原作・脚本を手掛けたR18+指定作品。主演に榎本佑が演じているが、彼独特の演技が光っている。
今作の内容にはかなりのエロスが含まれており、更にマネキンを愛でた挙句、擬人化してしまうという特殊な性癖が描かれる。苦手な人には受け付けられないだろうジャンルだと思うし、実際自分もかなり引き気味で観た。主人公の境遇や性格的な面には同情するが、孤独ゆえの所業に心を病んでいるとしか思えず、心理的にも奥深くまで踏み込んで描かれているので、エスカレートしたその先が気になって最後まで進んでしまう。ある意味、怖いもの見たさという心理が働いたのかもしれない。嫌いじゃないが、鑑賞するにはそれなりの覚悟が必要になる作品。(女性 40代)
石井隆監督の独特な世界観が全面に出た、まさに“妄想と現実の境界”を描いた一作。主人公が偶然手にしたフィギュアが美女になって現れる展開は奇抜だけど面白い。佐々木心音の無機質な演技が作品の雰囲気にマッチしていて、後半のヤクザとの対峙やバレエ演出には驚かされた。意外と哲学的。(30代 男性)
最初はコメディかと思っていたけど、途中からどんどん精神的に追い込まれていく主人公の様子が怖かったです。フィギュアと暮らしながら現実との境が曖昧になっていく過程は、見ていて不安になりました。佐々木心音さんの存在がミステリアスで、最後まで何者なのかはっきりしないのも良かったです。(20代 女性)
主人公の妄想と現実が入り混じる演出が斬新だった。美少女フィギュアとの恋愛という突飛なテーマながら、孤独や欲望を突き詰めて描く姿勢には感心した。ただ後半の展開がやや冗長で、もっと短くまとめた方がテンポは良くなったかも。佐々木心音の魅力は文句なし。(40代 男性)
石井隆作品らしい幻想的かつ倒錯的な物語でした。フィギュアが実体化し、主人公と生活するという設定は現実逃避そのもの。途中の暴力描写はやや唐突だったけど、ラストのバレエシーンが不思議と美しく感じられた。人間の欲望と孤独をここまで露骨に描いた作品は貴重です。(50代 女性)
妄想が暴走するとこうなるのか…と背筋が寒くなった。主人公の感情に全く共感できないのに、なぜか見入ってしまったのは、フィギュアの存在感と異様な雰囲気のせいかも。佐々木心音の演技は美しくも怖かった。B級感満載だけど、嫌いじゃない作品。(20代 男性)
ある意味“人形愛”の究極系。女性視点だとちょっと生々しく感じた部分もあるけど、そこが逆に印象に残る。佐々木心音さんの無表情な演技が不気味でクセになる。現実と妄想のギリギリのバランスで進行するので、結末まで常に不安な緊張感が漂っていた。(30代 女性)
男の妄想が具現化されたような世界で、正直リアルすぎて引く場面もあったけど、それをあえて真正面から描いているのはすごいと思う。途中からのヤクザ展開は正直浮いていたけど、全体として不条理劇として楽しめた。異色な邦画を探している人にはおすすめかも。(40代 男性)
少し前の映画だけど、今観ても強烈な印象を受けました。あくまで“妄想世界の物語”という前提を理解していないと、展開についていけないかもしれないです。佐々木心音さんの存在が常に現実と虚構の中間にいるようで、その演出が興味深かった。映像は美しかったです。(50代 女性)
映画『フィギュアなあなた』を見た人におすすめの映画5選
アメリカン・ビューティー
この映画を一言で表すと?
日常に潜む欲望と妄想の美しさと崩壊を描いた衝撃作。
どんな話?
冴えない中年男性が、娘の友人に心を奪われることで、自らの人生を見つめ直すようになり、日常の欲望と虚構に飲まれていく。表向きは平穏な家族の裏にある崩壊の兆しが、丁寧かつ鮮烈に描かれている。
ここがおすすめ!
妄想と現実の境目が曖昧になっていく描写や、主人公の内面描写が秀逸。『フィギュアなあなた』のような“幻想の中に逃避する男”というテーマに惹かれた人には、共感と衝撃が同時に訪れる名作です。
ラースと、その彼女
この映画を一言で表すと?
抱き人形との恋が、心を癒すセラピーになる優しい物語。
どんな話?
極度の対人恐怖を抱えた青年が、“ビアンカ”という等身大の人形と恋に落ちる。町の人々は戸惑いながらも彼の妄想に付き合い、やがて彼自身の心に変化が生まれていく。
ここがおすすめ!
『フィギュアなあなた』と同じく、人間以外の存在に救いを見出す孤独な男性の物語。こちらは終始温かく、観終わった後に優しい余韻が残る。社会と個人の関係にも考えさせられる感動作です。
鉄男 TETSUO
この映画を一言で表すと?
人間の肉体が機械と融合する、破壊的アートSF。
どんな話?
謎の男が“鉄”に侵食され、肉体が金属と化していくカオスな映像世界。暴力と性、機械的変異を通して人間の本能や狂気をむき出しにする、塚本晋也監督の衝撃作。
ここがおすすめ!
暴力・欲望・幻想の爆発という点で、『フィギュアなあなた』のカオティックな演出と通ずる部分が多い。アートとホラーの中間のような体感映画で、尖った作品を求める方に刺さるはず。
ピアニスト(ミヒャエル・ハネケ監督)
この映画を一言で表すと?
抑圧された欲望が爆発する、狂気と静寂の心理ドラマ。
どんな話?
厳格な母と暮らす中年のピアノ教師が、教え子に対して歪んだ愛情を抱き、自らを破滅へと追い込んでいく。抑圧・暴力・性的逸脱が冷徹に描かれる衝撃作。
ここがおすすめ!
性的な妄想と現実の間をさまよう人物像は、『フィギュアなあなた』の主人公にも通じる。ハネケらしい緊張感のある演出と、イザベル・ユペールの鬼気迫る演技が際立ちます。
変態村
この映画を一言で表すと?
ユーモアと異常性が交差する、悪夢のようなブラックファンタジー。
どんな話?
田舎町にやってきた青年が、村人たちの奇妙な儀式や性にまつわる風習に巻き込まれていく。常識が通じない村で起こる出来事は、次第に常軌を逸していく。
ここがおすすめ!
狂気と滑稽さ、セクシュアリティと幻想が混ざった世界観は、『フィギュアなあなた』のシュールな雰囲気と相性抜群。フランス発の異色カルト作として、強烈なインパクトを与えてくれます。
みんなの感想・レビュー