映画『パンチライン』の概要:「パンチライン」(原題:Punchline)は、1988年のアメリカ映画。監督デヴィッド・セルツァー。主演は「ノーマ・レイ」、「プレイス・イン・ザ・ハート」で二度のオスカーに輝いた、サリー・フィールド。「マネー・ピット」、「ビッグ」でヒットを飛ばし、後の「フィラデルフィア」、「フォレスト・ガンプ/一期一会」でこちらも二度のオスカーに輝くトム・ハンクス。主演の二人は「フォレスト・ガンプ/一期一会」で親子役として共演している。共演には性格俳優のジョン・グッドマン。
映画『パンチライン』 作品情報
- 製作年:1988年
- 上映時間:127分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
- 監督:デヴィッド・セルツァー
- キャスト:トム・ハンクス、サリー・フィールド、ジョン・グッドマン、マーク・ライデル etc
映画『パンチライン』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『パンチライン』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『パンチライン』のあらすじを紹介します。
医師の家庭に育ち、自分の意に反して医学校に通わされているスティーヴン(トム・ハンクス)は、シニカルでありながら苦悩を笑い飛ばす巧みな話術で、スタンダップコメディのステージにアルバイトとして出演していた。現実が辛さに満ち溢れているほど彼の芸は輝きを増し、多くの笑いを取っている人気者だった。
一方、子持ちの専業主婦であるライラ(サリー・フィールド)は裏でネタを買わなければならないほど笑いを取るのに苦戦を強いられ、大枚で購入した取っておきのネタも客からオチを叫ばれ、会場から失笑を買うような切れ味の悪さを露呈していた。そんなライラにスティーヴンは、気紛れからオリジナルのネタを生み出す秘訣を伝授するようになり、ライラは少しずつコメディエンヌとして上達しはじめる。一方でスティーヴンは医学校の口頭試験で不合格となり退学となってしまうが、彼はそのことを家族に隠して、スタンダップコメディアンを本格的に追求しようと思うようになる。しかしテレビ関係者がスカウトを兼ねてクラブを訪れた夜、彼の家族がスティーヴンの公演を聞きつけ会場に現れてしまう。突然の出来事に動揺したスティーヴンは実力を発揮できず、医学校で苦手としていた解剖実験等の辛い想い出についてダラダラと喋り出してしまう。何とか面白いトークを探り出そうとするスティーヴンだったが、自身のトラウマを暴露して泥沼に嵌った彼はとうとう泣き出してしまい、その夜の公演は大失敗に終わってしまった。
ライラはスティーヴンが抱えていたコンプレックスを慰め、コメディとは逆の立場となって良き相談相手となる。スティーヴンは彼女の優しさに触れ、駆け落ちしようと真剣に申し込むが、家族を愛しているという理由であっさりと振られてしまう。
そんな中、クラブオーナーの配慮によりコメディアンが全員参加する大会が開催される。審査員は全てテレビや業界の大物達で、優勝すれば大スターへの道が約束される大会だった。各々が最強の持ちネタを披露し大会は大いに盛り上がる。スティーヴンの数々のアドバイスにより、見違えるほどのコメディエンヌとして成長したライラも客席から爆笑を取っていたが、その中に初めて彼女の公演を目にする夫のジョンがいた。それまでは彼女を理解できず、やるだけ無駄だと反対していたジョンだったが、今まで知らなかった妻の生き生きとした表情に魅了され、暮らしの中からライラが考え出したネタの数々を通して、いかに自分たちが幸せな家庭だということに気づいた様子である。それまでは言い争いが絶えなかった二人だったが、笑いが夫婦の絆を取り戻していった。
映画『パンチライン』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『パンチライン』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
トム・ハンクスのフレッシュな演技が新鮮
エディ・マーフィやジム・キャリーと言うハリウッドのスターが、スタンダップコメディアン出身というのは周知の事実だが、この映画であるようにスタンダップコメディは大方が素人芸というのが殆どで、日本の漫才とはニュアンスが少し違う。アメリカではアンダーグラウンドの世界であるが、笑いというものがメディアの中心になっている背景がない反面、ハリウッドという世界的な巨大市場への登竜門として存在するニュアンスが近いだろう。当然アメリカでもコメディを放送するテレビ番組は存在するが、マーケットとしては映画の方が大きく、ビジネスチャンスとして映画の出演を夢としているコメディアンの方が多いかも知れない。トム・ハンクスもアメリカで有名なテレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演していた。彼にとってはこの手の役柄はお得意とする分野で、初期の作品「マネー・ピット」や、ダン・エイクロイドとの共演作である「ドラグネット 正義一直線」では、突出したコメディセンスを披露している。トム・ハンクスのお笑い芸というのは、エディ・マーフィのような黒人独特のスラングやブラックジョークではなく、自虐的なナンセンスで笑いを取る独特のものだ。初期の作品ではその笑いのペーソスが大いに前面に押し出されており、本作でも売り出し中のトム・ハンクスのフレッシュなコメディが堪能できる。
オールマイティーなサリー・フィールド
本作出演時のサリー・フィールドは既に貫禄充分であり、オスカー女優としてトム・ハンクスを引っ張ってゆくような余裕を感じさせる。コメディアンとしてはダメな役どころであるが、主婦の経験から逆にスティーヴンの相談役になってしまうところの余裕は、どんな役を演じてもオールマイティーにこなしてしまう幅の広さを窺わせる。そして最終的にコメディエンヌとして成長したときの演技なども見事な流暢さで、主婦の演技とコメディエンヌの演技を見事に使い分けている。当時まだそれほど名が知れていないトム・ハンクスを上手くリードしながら、ダメなコメディアンを演じるという役者として複雑な役どころをきっちりと演じ分け、八面六臂の活躍を見せるところはさすがである。
映画『パンチライン』 まとめ
コメディではあるが、コメディの現場を舞台にしているという話であり、ステージ以外でのコメディはそう多くは望めない。トム・ハンクス演じるスティーヴンと、サリー・フィールド演じるライラの、同じ世界で葛藤する青春ドラマとでも言えばいいのだろうか。それを苦悩や葛藤ばかりに感じられないところは、背景がコメディアンの世界だからであろう。実際にコメディとして表現しているのなら少し物足りない演出ではあるが、業界の裏でその世界に生き場所を求め四苦八苦する人間ドラマとしては佳作である。成功という結果が家庭の幸せに繋がるという部分においても、様々に種類のある「笑い」ではあるが、それが生活に潤いを与えてくれる重要なものであるということを認識させてくれる作品である。トム・ハンクスとサリー・フィールドが主役を演じるところで、その意識が充分に伝わって来るほのぼのコメディである。
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