映画『隠された時間』の概要:行方不明になった少年が、大人になって少女の前に現れる。様々な証拠から彼が心を寄せた少年だと信じた少女は、必死になって真実を叫ぶも周囲は誰も信じようとはしない。どんなに年を経ても互いを思う純愛と、大人世界の嘘を対比に描いたファンタジー。
映画『隠された時間』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ
監督:オム・テファ
キャスト:カン・ドンウォン、シン・ウンス、イ・ヒョジェ、キム・ヒウォン etc
映画『隠された時間』の登場人物(キャスト)
- ソンミン(少年期:イ・ヒョンジェ / 青年期:カン・ドンウォン)
- 児童養護施設の少年。スリンと同年でスリンに惹かれている。記憶力が良く強い精神力と信念を持っている。時間の狭間に16年閉じ込められ28歳となって現実へ戻る。手先が器用で彫り物が得意。
- スリン(シン・ウンス)
- 12歳の少女。母親の死後、義父に養育されているが、馴染めずに異世界や幽体離脱に興味を持ち始める。独自の文字を考案しソンミンと共有。唯一、大人になったソンミンを見つけ周囲に真実を叫び続けるも信用されず、苦しい境遇へ追い込まれてしまう。
- スリンの義父(キム・ヒウォン)
- 再婚相手の連れ子であるスリンを引き取って育てている。スリンを守ろうと必死に奮闘するも、娘の言う話を頑なに信じない。
- アン刑事(クォン・ヘヒョ)
- 少年誘拐事件の担当者。スリンの話を信じず、大人になったソンミンを誘拐犯として捕らえようとする。
- ミン・ギョンヒ(ムン・ソリ)
- 児童心理学者。スリンの奇想天外な話を信じ、彼女の話を本にして真実を世間へ訴える手助けをしてくれる。スリンにとって姉であり母親のような存在。
- テシク(オム・テグ)
- ソンミンの友達。泣いた姿を誰も見たことがない強気な少年だったが、一緒に時間の狭間に囚われた友人が持病で亡くなったことにより弱気になってしまう。大人になっても狭間から出られないことを嘆き、海へ身を投げる。
映画『隠された時間』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『隠された時間』のあらすじ【起】
交通事故で母親を亡くし、義父に引き取られたスリン。小学校6年生の夏の終わり、義父の仕事の都合で島へ移住することになった。
スリンは地元の小学校へ編入。唯一の肉親を失ったスリンは、義父とも上手く馴染めず次第に現実逃避として異世界や幽体離脱など不思議な現象に興味を持ち始める。
すると、学校でもスリンは変な子だと噂されるようになり益々、孤立していくのだった。
そんなある日、彼女は学校帰りに児童養護施設に住む同級生ソンミンと出会う。彼は憂い顔のスリンに一目で心を奪われるのだった。
翌日の放課後からスリンとソンミンは2人だけの時間を共有し始める。スリンが独自に考案した文字で秘密裏にやり取りし、2人の距離は徐々に縮まる。
数日後、道を歩いていてソンミンとその友人達に遭遇したスリン。彼らがトンネル工事の発破を見に行くと言うため、スリン含め総勢4人で一緒に山へ向かった。しかし到着後、いつまで待っても発破は始まらず。周辺を探索し子供が1人潜り込める小さな洞穴を発見する。
中へ入った4人は穴の先の泉で光る卵を発見。彼らは卵を取って外へ出た。友人のテシクがこれは時間を食べる妖怪の卵に違いないと言う。それは満月の日に現れる洞窟内にあるらしい。話の途中、スリンは母親から貰ったヘアピンを失くしたことに気付き、再び洞窟内へ。ピンは無事に拾えたが、帰ろうとした矢先に地面が揺れる。急いで外へ出たが、そこにいるはずのソンミン達がどこにもいない。地面には割れた卵の殻が散らばっているだけだった。
映画『隠された時間』のあらすじ【承】
辺りは次第に暗くなり、山中をさ迷い歩くスリン。彼女は捜索隊にてすぐに保護されるも、3人の少年達は一向に見つからず。少年の家族達はスリンとその義父へ怒りをぶつけ始める。
誘拐事件の担当になったアン刑事はスリンから話を聞き、洞穴へ案内してもらおうとしたが、少女は何度も道を誤り見つけられず。その最中、1人の少年の遺体がなぜか浜辺の公園で発見される。
少年の死因は持病である喘息の悪化であった。これにより、更にスリンへの風当たりが酷くなる。その後、テシクと亡くなった少年の自宅前に当日、着ていた服が発見される。警察はただちに服を置いた人物の捜索を開始。
そんな中、家にいたスリンの元へ何者かがやって来る。その人を追って山へ入り、謎の男と遭遇。男はスリンの名前を呼びながら自分はソンミンだと言う。見知らぬ男に襲われると思ったスリンは叫びながら自宅へ。すぐさまアン刑事が呼ばれた。
刑事は捜索隊を招集し、近隣一帯を捜索。ノートの束が見つかり、咄嗟にそれは自分のだと受け取るスリン。それは、ソンミンとやり取りをしていたノートだ。中にはスリンとソンミンしか知らない文字で日記が書かれていた。
スリンが洞窟へ引き返した後、ソンミン達は卵を割ることにした。しかし、卵に中身はなく。ソンミンは洞窟内へ戻り、異常に気付く。次に町へ戻り様子を見て回った。全ての時が止まっていた。
少年達の姿は鏡に映らず、物は空中に留まり世界は無音。喘息持ちの少年は吸入器を手に入れようとしたが、時が止まっているために使えず。ボートのエンジンもかからず、島の外へ出ることもできない。水は水だが、ゼリーのような感触だった。
日記を読み進めたスリンは出会った男が本当にソンミンなのだと確信し、アン刑事に嘘を吐いたと話して捜索を中止してもらった。
映画『隠された時間』のあらすじ【転】
その後、少年の喘息が悪化し命を落としてしまう。このことで強気だったテシクが一変。2人は浜辺の公園に少年の遺体を埋めて弔った。
そうして、テシクとソンミンは時が止まった世界で生き延び、立派な青年へと成長する。
寝て目が覚めたら1日が経過したとして計算し通算2145日目、2人はじきに20歳を迎えようとしていた。大人になれば、この世界から出られると僅かながらに希望を得た2人だったが、以降も時間の狭間から抜け出せずにしばらくが経過。すると、テシクが塞ぎ込んでしまう。身体は大人になったが、時の狭間からは出られない。そうして、テシクの一言でソンミンの精神状態もバランスを崩してしまう。それまで冷静で前向きだったソンミンが苦悩する姿を目の当たりにしたテシク。そのせいで彼は絶望を感じてしまうのだった。
そんな折、月の形が変化していることに気付いたソンミン。しかし、どこを探してもテシクの姿が見当たらない。月は次第に変化し満月になろうとした時、テシクを発見。彼は絶望し崖から海へ身を投げていた。相棒を失ったソンミンもまた絶望し自らも海へと身を投げた。しかし次の瞬間、時が動き出しテシクの遺体は海の底へと落ちていった。
浜辺で目を覚ましたソンミン。彼は動き出した世界に恐怖し、身を縮めて移動。そうして、スリンと出会ったのである。
日記を読んだ翌日、スリンは雨が降る中を山の廃屋へ向かった。その一室で怯えるように膝を抱える青年を発見。日記が真実ならば、彼は大人になったソンミンである。スリンとソンミンは互いに泣きながら、再会を喜ぶのだった。
その後、スリンは彼のことを周囲へ信じさせようと奮闘。その度、何かとナーバスになるソンミンの支えとなった。それから、日記を翻訳しソンミンとテシクの友人に見せる。だが、少年は信じてくれず。その上、彼のせいで証拠となる日記は海へ投げ捨てられてしまう。警察では監視カメラに写った青年ソンミンが誘拐犯だと疑われ、目撃者の情報を募っていた。
映画『隠された時間』の結末・ラスト(ネタバレ)
その後、児童養護施設へ向かったスリン。慎重に話をするが、そこへ義父が現れ連れ戻されてしまう。その間際、彼女の合図を見たソンミンは施設の先生と会うも、先生は彼をソンミンと認めず不審者扱いするのだった。
義父に連れ戻されたスリンは自室に閉じ込められるが、ソンミンのお陰で家から脱出。誰も話を信じてくれないと嘆いたスリンは、もう1つ卵があることを思い出し、皆の前で割ろうと提案。しかし、ソンミンはそれを拒否し2人で島を出ようと言うのだった。
荷物をまとめてフェリー乗り場へやって来たスリンとソンミンだったが、テレビのニュースで青年が誘拐犯だと報じられてしまい、2人は慌てて逃走。検問で発見されてしまい、警察から追われる身になる。スリンはソンミンを逃がすため、自ら警察へ投降することにした。
夜になり警察署のトイレから脱走したスリンは、山へ入り洞穴の泉から卵を入手した。奇しくもその日は満月だった。
警察はスリンを追って山へ捜索隊を送り出している。洞穴の前でソンミンと合流したが、彼は誘拐犯として自首すると言う。その時、トンネル工事の発破によって地面が揺れる。ソンミンはその隙に卵を持って逃走。彼を追ってスリンも走った。
海沿いの崖へ到達したソンミン。そこへ、アン刑事率いる警察が到着する。スリンは必死にソンミンを庇うも、横から突撃して来た警官によって揉み合いになり、誤ってスリンが崖下へ。咄嗟にアン刑事が助けに入り、ぎりぎりのところで彼女を掴まえる。スリンは必死にソンミンへ助けを求めるも、敢無く落下。これで終わりかと思われた。
浜辺の波打ち際で覚醒したスリン。アン刑事も傍に横たわっていた。恐らく、ソンミンが自分を助けるために卵を使ったのだと思った。
その後、スリンはアン刑事に促され青年に脅されて協力したと供述。義父と娘は島民の非難の対象となり、家の壁には落書きが絶えなかった。事件が終息し落ち着いた頃、スリンは児童心理学者であるミン・ギョンヒの協力を得て、自分の体験を本にしてもらうことにした。
無事に本が出版された後、スリンはミッション系の中学へ進学。ミン・ギョンヒから暖かく見送られフェリー乗り場へ。その際、彼女は桟橋に見覚えのある後ろ姿を目撃するも、無事にフェリーへ搭乗。しかし、フェリーの中でまたも見覚えのある姿を垣間見る。追って行くと、そこには年を経たソンミンが立っているのだった。
映画『隠された時間』の感想・評価・レビュー
止まった時間や時間の狭間、時の流れを変化させる卵など、とてもファンタジーなストーリーでしたが、ソンミンを演じるカン・ドンウォンがとても美しく、消えてしまいそうな儚さがあり目が離せませんでした。
時空の歪みやパラレルワールドと言う考え方でストーリーを纏める作品は沢山ありますが、今作はどの時間軸が現実なのか分からなくなる展開で、最後までそれがはっきりしないのがとても良かったと思います。
ソンミンのいる世界と少女のいる世界。2人が同じ世界で、同じ時間を共有することが出来ればどんなに幸せだろうと感じる作品でした。(女性 30代)
時空の卵に時の狭間とファンタジー要素が満載だが、少女と大人になってしまった少年の互いを信じる心がとても素敵な作品だと思う。時の狭間でも時が流れるというのには少々疑問を感じるが、時の妖怪の卵ということで納得しておこうと思う。元の時間に戻った際、少女と大人になった少年の絆の強さに感動し、数年後に再会できたことに涙した。ただし、年齢差は歴然となってしまったため、切なさは倍増。少年役のカン・ドンウォンの演技力が素晴らしかった。(女性 40代)
時間に閉じ込められるという、全くもって新しい概念のタイムトラベル作品です。時間と空間が止まった世界を、長時間見せてくれることが大変嬉しいです。海も空も音も風も、全てが停止した世界は、始めのうちは楽しいでしょう。しかし、やがて虚しさを感じ、絶望の念すら湧いてくるかもしれません。主人公の「没頭すれば、主観的な時間は早く流れる」というセリフは、時が流れないことへの苦痛を切実に表現しています。人は一人では生きられず、沢山の人達のおかげで生きられるのでしょう。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー