これまで短編作品を中心として手がけることが多かった榊原有佑監督が、とうとう長編映画に挑む。自身が理学療法士であった経験を活かし、リアリティのある感動作に仕上がっている。
映画『栞』の作品情報
- タイトル
- 栞
- 原題
- なし
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2018年10月26日(金)
- 上映時間
- 118分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 榊原有佑
- 脚本
- 榊原有佑
眞武泰徳 - 製作
- 伊藤主税
小出由佳 - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 三浦貴大
阿部進之介
白石聖
池端レイナ
前原滉
佐藤玲
福本清三
鶴見辰吾 - 製作国
- 日本
- 配給
- NexTone
映画『栞』の作品概要
三浦友和と山口百恵を両親に持つ、最強の二世こと三浦貴大。これまで数々の作品に出演ではその演技力が高く評価されてきた彼が、今作では主演に挑戦。彼が演じるのは、真面目で患者や仕事に真摯に向き合う若き理学療法士。しかし、報われない日々に、仕事と医療に限界を感じてしまう。そんな心の内の葛藤を、三浦はどのように表現するのか。日本理学療法士協会から全面的なバックアップを受けて制作された期待作。日々の困難に打ちひしがれている人にオススメの一作。
映画『栞』の予告動画
映画『栞』の登場人物(キャスト)
- 高野雅哉(三浦貴大)
- 病院勤務の真面目な理学療法士。自分の仕事と力に限界を感じていたところ、とある患者と出会う。
- 藤村孝志(阿部進之介)
- 元ラグビー日本選手だったが、試合中の怪我で高野のいる病院に入院してくる。懸命にリハビリに取り組む姿は、高野の心を動かす。
- 鶴見辰吾(高野稔)
- 雅哉の父親。脳腫瘍を患っており、息子のいる病院に入院してくる。息子とは疎遠状態にあった。
映画『栞』のあらすじ(ネタバレなし)
大分県にあるとある病院。その病院で、一人の青年が理学療法士として勤務していた。その男の名前は高野雅哉。彼は一人一人の患者に真摯に向き合い、彼らを治そうとする真面目な人物だった。そんなある日、彼の元になんと自身の父親が入院してくる。暫く疎遠になっていた父親の、すっかり弱ってしまった様子を目にした高野は衝撃を受ける。そして、治療の効果も中々みられず、父親は少しずつ弱っていくのだった。その他にも担当患者の状態が悪化するなど、高野は自分の力と仕事に限界を感じ始めるようになる。そんな頃、ラグビーの試合で怪我をした患者が運ばれてくる。その感謝と関わっていくうちに、高野は失いかけていた自らの仕事の意味を再び見出していくのだった。
映画『栞』の感想・評価
リアリティのあるストーリー
医療映画やドラマは、確実に視聴率が取れるとされ題材に取り上げられやすい。そのドラマチックな展開で多くの観客を喜ばせる一方で、あまりに非現実的、現実と異なると実際の現場を知る者から批判が上がることも少なくない。今作は広い医療の現場の中でも、理学療法士に焦点を当てた作品。そして、なんと今作の監督である榊原有佑は、理学療法士としての経験があるという珍しい経歴を持っている。イメージとしての理学療法士だけでなく、実際の世界もよく知っていることになる榊原監督。そのため、よくありがちな非現実的な描写は少なくなることが予測される。医療者の人でも、引っかからずに最後まで見ることのできる一本。リアリティのあるストーリーが楽しめる。
『二世』脱却となるか、三浦貴大の演技に注目
三浦貴大、最近では映画やドラマで数多く目にするようになったため、彼のことを一俳優だと思っている人も少なくないだろう。勿論素晴らしい演技力を持つ彼は俳優であることは間違いないのだが、彼はデビュー当時、凄すぎる両親を持つ二世として脚光を浴びていた。その両親とは、伝説のアイドル山口百恵、そして、日本アカデミー賞を受賞している大俳優、三浦友和である。その両親の圧倒的な存在感のため、自身も確かな演技力を持っているにも関わらず、三浦貴大は『二世』タレントの分類として括られてきた。しかし、最近立て続けにドラマや映画の出演が決まっている三浦貴大。それは彼の演技力が徐々に認められてきた結果ではないだろうか。今作でも、二世としてではなく、三浦貴大としての存在感を発揮できるか、要注目。
どこまでも厳しい、医療の世界
日進月歩の医療の世界。近年医療が益々発展し、より多くの患者の命が救われるようになった。しかし、それでも尚、救えない命、治せない病気はある。どれだけ医療者が手を尽くしても、全く改善しない問題の数々。そんな状況の中で、主人公である高野もまた一度は厳しい現実に打ちひしがれてしまう。しかし、そんな高野を救うのもまた患者。病という理不尽な問題に直面しても、ひたむきに快方に向かって努力を続ける患者達。医療者はそんな患者達から力をもらい、日々ギリギリのところで踏みとどまり自分にできることを模索しているのである。日々厳しい状況と向き合っている医療者の葛藤がよく分かる一本。今、何かの病と闘っている人の心にも響くはず。
映画『栞』の公開前に見ておきたい映画
神様のカルテ
2011年に、大人気アイドルグループ『嵐』のメンバー、櫻井翔によって映画化された作品。その感動的なストーリーが人気を博し、2014年に続編も製作されている。舞台が病院、主人公が医療の世界の厳しい現実に苦悩する、というストーリーなど共通点が多い。また、最新作『栞』が理学療法士としての経験がある榊原有佑が監督を務めている一方で、本作も現役の医師が執筆した小説が基になっている。どちらも実際の職業を良く知る人物が携わっているということで、リアリティのある作品に仕上がっている。松本にある地域病院。それなりに規模の大きいその病院には、日々数多くの患者が運ばれてくる。医師、栗原はそんな患者達との関わりの中で、数多くのことを学んでいく。
詳細 神様のカルテ
BAILE TOKYO
最新作、『栞』の監督である榊原有佑が2016年に手がけたドキュメンタリー映画。日本の東京都をホームタウンとするプロサッカークラブ、『FC東京』。Jリーグの中でもトップのJ1リーグに所属する実力のあるクラブであり、熱狂的なサポーターも多いと人気もあるチーム。本作では、そんなFC東京の2015年シーズンを徹底的に追いかけ、綿密な取材を元に制作されている。製作側の本気、サッカーの熱気が共に画面越しに伝わってくる名作。サッカーが好き、FC東京のサポーターであるという人には勿論、あまりサッカーやJリーグに詳しくない、という人でも楽しめる作品に仕上がっている。今作をきっかけに、サポーターデビューする人も少なくないかもしれない。
詳細 BAILE TOKYO
手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~
最新作、『栞』の主役は山口百恵と三浦友和の息子である、2世タレントの三浦貴大。三浦貴大にとって初主演映画となった最新作。一方で、今作、『手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~』にも三浦と同じ2世タレントが出演している。石田純一と松原千明の娘、すみれである。ドラマや映画よりも、舞台の方が出演数が多いすみれ。そんな彼女にとって、今作が記念すべき映画初出演となった。元々は劇場で上演されていた戯曲だったが、その人気から映画化が決定した。主役を、よく芸人からモノマネされていることでも話題の川平慈英が務めたことでも話題となった。親の七光りだけではない、実力のある2世タレントの姿を楽しむことができる一本。
詳細 手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~
映画『栞』の評判・口コミ・レビュー
#映画栞 昨夜観ました
高野先生や藤村さんの全くカッコつけてなく素直な心の動きを観て涙、涙。生と死は紙一重。人生を一冊の本としたら、立ち止まりたい時もある。栞を挟んで少し時間が経ち成長した自分が!そんな時この映画をきっと思い出す。心にささる映画、ピアノの音にグッときた。#三浦貴大 pic.twitter.com/liP3bPugks— しーちゃん (@iVDL46Eac2VVZf4) 2018年10月28日
映画「栞」見てきた。これはドラマじゃなくて本当に誰かの生活の一コマなんだと思うと、父親が主人公に語りかけた言葉がどれだけ重いか。環境は違えど、どんな仕事もきっと誰かの助けにはなってるんだろう。俺もきっとそうなんだろう、実感はないけれどきっと前に進めているんだう。
— エピ (@epigonen79) 2018年10月26日
映画「栞」(初日舞台挨拶)鑑賞。
私自身が今、母指cm関節症の治療のため(←全然大した事ないヤツ)ptさんのお世話になっているので、とても身近な題材として捉える事ができました。
希望と絶望と葛藤が交錯する医療現場を丁寧に描いていて、ドキュメンタリー作品を見ているようでした。— chie (@chie00yuki) 2018年10月26日
映画「栞」。阿部進之介さん演じる半身不随になり明るく振る舞うラガーマンの痛々しさを始め、胸が苦しくなる場面が多い。けど、ご都合主義なしで真正面から描かれた死と生に目を背けられず。主人公の三浦貴大さんの誠実ゆえの苦悩、妹の白石聖さんの溢れる涙も響く。 #映画栞 #阿部進之介
— 斉藤貴志(ライター) (@missiletakashi) 2018年10月27日
壇世里奈さんが出演されている映画「栞」をTジョイ博多で観てきた。
派手さは無いけど、しっかりと作られた作品、これは軽々しく命のことを語れないと思いましたね。
病院が舞台で、決して失敗しない女医が出てくるわけでもないが、主役の医学療法師の青年が悩む姿は、心が潰れそうになりました。#栞 pic.twitter.com/OnkTxtZsAN— こなきち (@konakichi0728) 2018年10月27日
映画『栞』のまとめ
近年数多くの医療ドラマ、映画が発表されている。そして、そのいずれもが大ヒットを納めている。これは、観客が普段私達の生活にはない非日常感を医療現場に求めているからだろう。しかし、この作品はどちらかというと医療の静の部分を切り取った一本。大きな怪我を負った患者が運ばれてくるなどの事態はあるものの、医療者の葛藤や、患者との関わりを通した変化といった内なる部分を主軸としている。近年の医療ドラマの影響で、医療現場は常にハプニングが起こる慌ただしい場所と考えている人も多い中、それだけではないことを教えてくれる作品となっている。
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