映画『マザー!』の概要:静かに暮らしている作家夫婦のもとに、見知らぬ来客が現れる。それ以来、次から次へと来客がやってきて、夫婦の生活はめちゃくちゃにされていく。登場人物は何かしらのメタファーとなっており、“母親”=“地球”、“彼”=“神”と考えると、作品を理解しやすい。
映画『マザー!』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:ホラー、サスペンス
監督:ダーレン・アロノフスキー
キャスト:ジェニファー・ローレンス、ハビエル・バルデム、エド・ハリス、ミシェル・ファイファー etc
映画『マザー!』の登場人物(キャスト)
- “母親”(ジェニファー・ローレンス)
- “彼”の妻。住んでいる屋敷の修繕をしている。作家である夫を献身的に支える。夫と静かに暮らしていきたいと思っている。
- “彼”(ハビエル・バルデム)
- スランプに陥った著名な作家。新作を書くためのインスピレーションを待っている。
- “男”(エド・ハリス)
- 医者で“彼”の書く詩の大ファン。ヘビースモーカー。
- “女”(ミシェル・ファイファー)
- “男”の妻。自由奔放で、たまに棘のある言葉を発する。
映画『マザー!』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『マザー!』のあらすじ【起】
“彼”が手に持っていたクリスタルをそっと台座に乗せると、辺りはみるみる明るくなり、その灯りは部屋を映し出し、寝室を映し出し、ベッドで眠る“母親”を映し出した。そして、“母親”が目を覚ます。
田舎の平原にポツンと建っている古い屋敷。そこに作家である“彼”と、若妻の“母親”が住んでいた。“彼”は著名な作家だったが、新作のアイディアがなかなか浮かばず、苦悩していた。妻である“母親”は、毎日の家事のほかに古くなった屋敷の修繕をしていた。
ある夜、人里離れた寂しい場所だというのに、玄関のチャイムを鳴らす者がいる。ドアを開けると、一人の“男”が立っていた。“男”は医者で、論文を書き上げるために来たのだという。この屋敷を民宿と間違えてしまったようで、すぐに帰ろうとするが、“彼”は夜も遅いので泊まっていきなさいと“男”を招き入れた。“彼”の行動に“母親”はひどく動揺する。
翌朝、またしても訪問者が現れる。それは“男”の妻である“女”だった。二人は、まるで昔からの友人のように、馴れ馴れしく屋敷に居座った。“母親”はどんどんと不安を募らせていった。
映画『マザー!』のあらすじ【承】
“彼”の書斎にはクリスタルが飾られていた。以前、“彼”の屋敷が火事になってしまったことがあり、何もかも燃えてしまった。だが、クリスタルだけが灰の中から出てきた。このおかげで、“彼”はやり直す力を得て、“母親”にも会えたのだという。“彼”はこのクリスタルを、誰の手にも触れさせなかった。
“女”と“男”はクリスタルを見ようと勝手に書斎に入り、誤ってクリスタルを落として粉々にしてしまう。それを知った“彼”は激怒し、書斎から二人を追い出した。そして、書斎のドアに板を打ち付けて、二度と彼らが入れないようにしてしまった。
しばらくすると、今度は“男”と“女”の息子たちがやってきた。“兄”と“弟”は、相続権のことで争っていた。“弟”ばかりが可愛がられ、大切にされていることに腹を立てた“兄”は、口論の末、“弟”に飛びかかり、重傷を負わせてしまう。“兄”は屋敷を逃げ出し、皆は“弟”を病院へと運んでいった。屋敷には“母親”が一人だけで留守番をすることになった。
“彼”が病院から戻ってきた。手当てしたが間に合わず、“弟”は死んでしまったと“母親”に告げる。次の日、屋敷には喪服を着た大勢の人々がやってくる。何も聞かされていない“母親”はびっくりするが、どうやら“弟”の葬式をこの屋敷でやるらしい。悲しみにくれる人々に詩人である“彼”は慰めの言葉を捧げた。
次第に、集まった人々は屋敷で好き勝手なことを始める。夫婦の寝室で性行為に及ぼうとするカップル、屋敷の壁を許可なくペンキで塗る男、台所のシンクに座る女。“母親”はシンクに座る女に、修繕前だから座らないでくれと言うが、女は大丈夫だと座り続けた。だが、シンクは壊れ、水道管も破裂。辺りはすっかり水浸しになる。怒った“母親”は、その場にいた者を全員、屋敷から追い出した。
映画『マザー!』のあらすじ【転】
“母親”は“彼”に、なぜ知らない人たちを平気で屋敷に入れるのかと問いただす。“彼”は刺激がほしかったと答える。新作を書くには、新しい人間関係や発想が必要なのだと。二人は口論になるが、“母親”が抱えていた不満に気がついた“彼”は、彼女を抱きしめ、その夜、二人はベッドを共にする。
朝、目覚めると“母親”は自分が妊娠していることに気がついた。最初は信じられなかった“彼”も、すぐに理解を示しだす。そして、それがきっかけとなり、“彼”にインスピレーションが降りてきた。“彼”はひたすらにペンを動かした。
“母親”のお腹が大きくなった頃、詩が完成する。それを読んだ“母親”は感動の涙を流す。すぐさま、編集者から電話がかかってきた。“母親”はお祝いの食事を用意するが、そこに再び大勢の来客が現れる。詩を読んだ人々は“彼”に会いに、遠方からやってきたのだ。
人々は勝手に屋敷の中に入りだした。トイレを使い、床で眠り、用意した食事を勝手に食べはじめ、屋敷の物を盗んでいった。彼らの行動はどんどんエスカレートし、宗教的な行進まで始めたりする。屋敷の中は人でいっぱいになり、とうとう屋敷を壊し始める者たちまで現れた。
産気づく中、“母親”が目にしたのは、まさに地獄絵図だった。屋敷の中はすっかりと様変わりしていた。いつの間にか作られた檻に閉じ込められる女たちや、火炎瓶が飛び交う暴動まで発生する。そして、ついには戦場のような状態になってしまう。
安全な場所を見つけた“母親”は、“彼”に守られながら男の子を出産する。“彼”の詩に共感した信者たちは、“彼”と“母親”のあいだに生まれた赤子に会いたがるが、“母親”は断固として拒否した。だが、ふと居眠りをした瞬間、“彼”は赤子を連れて信者たちのもとへと行ってしまった。信者たちは赤子を崇拝するが、熱狂のあまり首の骨が折れ、赤子は死んでしまう。“母親”が赤子のもとへと駆けつけると、その身体はバラバラになっており、信者たちは赤子の肉を食べていた。
映画『マザー!』の結末・ラスト(ネタバレ)
“母親”は発狂し、信者たちをガラスの破片で切り裂きはじめた。しかし、すぐに取り押さえられ、逆にリンチにあってしまう。ボロボロになった“母親”を“彼”が救い出すが、“彼”の口からは、彼らを許してやってほしいという言葉が繰り返されるばかり。精神の限界がきた“母親”は、地下室へと走り、オイルタンクに火をつけると焼身自殺をはかった。屋敷は炎に包まれ、辺り一面、全て黒焦げになってしまう。
あれだけの業火だったというのに、“彼”は無傷だった。黒焦げになって、息も絶え絶えの“母親”は、あなたは何者?と問いかける。「私は私だ。君を始まりへと連れていく」と答える“彼”。そして、自分は創造することを務めにしている者だとも言った。この世界に完璧などない、だから創造するのだと。
“彼”は最後に欲しいものがあると言った。それは“母親”の愛だった。うなずく“母親”の胸に手を入れ、心臓を取り出した“彼”は、その心臓の中からクリスタルという形の愛を手にする。そして“母親”は灰となり崩れ去った。
“彼”は笑みを浮かべ、クリスタルを台座の上に置いた。辺りはみるみる明るくなり、その灯りは部屋を映し出し、寝室を映し出し、ベッドで眠る“新しい母親”を映し出した。“新しい母親”が目を覚ます。そして、“彼”は再び、創造をやり直すのだった。
映画『マザー!』の感想・評価・レビュー
嫌悪感に包まれるやかましさと猥雑さが自分たちを指すと知り、どうしたらいいか途方に暮れる。映画全体が暗喩で構成されており高い知性を感じる映画。反論不可能なほどの自分たちの醜さを突きつけるという試みはアイデアに富んだものではあると認めるが、ある日突然、何の前知識を持たずこの映画に出会った自分にとっては交通事故にも似た悲しみがあった。鑑賞時に自分のコンデションを高めておこう。(男性 30代)
日本で公開中止となった問題作。キリスト教や創世記を現代っぽく描いた作品のようで、知識のない私には少し難しい作品であった。作品とキリスト教を重ね合わせて説明している方のブログを読んで、ようやく納得することが出来た。
静かに暮らしている夫婦のもとに突如見知らぬ男がやってくるが、夫はためらうことなく家に入れてしまう。一方、妻は不快感を露わにするが、妻の反応が普通ではないだろうか。終始妻に同情、感情移入してしまい、もやもやせずにはいられなかった。ホラー映画の中でも独特な異色ホラー。観る人を選ぶ作品だと思うが、挑戦してみてほしい一作。(女性 20代)
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