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映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』の概要:蒼井優、阿部サダヲを主演に迎えたミステリー映画。『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』など、暴力的な作品が多い白石和彌監督が、共感度0%と言われる原作を個性的に映画化。

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映画『彼女がその名を知らない鳥たち』の作品情報

彼女がその名を知らない鳥たち

製作年:2017年
上映時間:123分
ジャンル:ミステリー、ラブストーリー
監督:白石和彌
キャスト:蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、村川絵梨 etc

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』の登場人物(キャスト)

十和子(蒼井優)
陣治と同棲をしており、無職。過去に黒崎と付き合っていたが、暴力を振るわれるという、ひどい別れ方をした。陣治とは仕事を通じて知り合い、熱烈なアタックの末、付き合いだす。黒崎とのことがあって、笑うこともできないほどの精神状態だったが、陣治と一緒にいるうちに、笑顔を取り戻した。だが、今では愛情も冷め、陣治を煙たく思っている。
陣治(阿部サダヲ)
十和子と付き合っている。建設現場で働いており、いつでも日焼けしている。性格は明るく、いつも笑顔でいるが、それ故に、気が弱そうに見られてしまう。50歳も間近。咳も止まらないが煙草はやめられない。タネなしで、子供を作ることができない。
水島(松坂桃李)
時計店の責任者。既婚。十和子と出会い、関係を持つ。一人旅が趣味と口では言っているが、全部、本などから得た情報を羅列するだけの嘘つき。
黒崎(竹野内豊)
十和子の前の恋人。十和子との結婚を口にするが、それは実現せず、別れ話を持ち出す。別れたくないと強情な十和子を殴り、頬骨と肋骨を折るという非情な男。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のあらすじ【起】

十和子は陣治と付き合って長い。二人は同棲する仲だが、十和子の陣治への気持ちは、すでにすっかり無くなっていた。顔を合わせても会話も少なく、部屋も別々。うだつの上がらない陣治を、嫌悪する日々が続いていた。しかし、陣治は違った。十和子を幸せにできるのは自分しかいないと、献身的に十和子に尽くしていた。料理を作り、金を渡し、いつでも笑顔でいる。十和子は陣治に食べさせてもらっている生活を送りながらも、現状に不満を募らせるばかりだった。

ある日、十和子は大切な時計をダメにされたと、修理を依頼した時計店にクレームの電話を入れる。後日、時計店の責任者である水島から、代わりの時計を準備するので、お宅にお邪魔しても良いかと電話があった。時計店を覗いて水島の顔を確認すると、顔立ちの良い好青年だった。十和子は慌てて部屋を掃除し、水島を迎える準備をする。

水島が部屋へとやってきた。準備した時計に納得がいかない十和子。“あの時計は大切なものなんです”と泣き崩れる十和子に、水島は思わず口づけをしてしまう。突然のことに、お互いに動揺したが、水島は“来週、また来ます”と言い残して去っていった。十和子は来週を待たずに、時計店へ水島に会いに行く。そして二人は、そのままホテルで関係を持ってしまう。水島は、こうなる運命だったと十和子に優しく言った。

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映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のあらすじ【承】

翌日、帰りが遅かったことを心配した十和子の姉・美鈴がやってきて、なぜ遅くなったのか尋ねてきた。そして、“黒崎さんと会っていたのだろう”と問い詰める。黒崎は十和子の前の恋人で、十和子は彼にベタボレだったが、別れる時、ひどい暴力を受けていた。十和子は、もう何年も黒崎には会っていないと美鈴と陣治に言った。陣治も美鈴に“黒崎だけは絶対にない”と言い放つ。

姉の言葉で、黒崎とのことを思い出した十和子は、携帯電話に残っていた黒崎の番号に、勢いで掛けてしまう。だが、相手が出る前に、すぐに通話を切った。それからしばらくして、十和子の部屋に警察がやってくる。要件は、黒崎に電話を掛けたことへの質問だけだったが、その時、黒崎が5年前から失踪し、行方不明になっていることを知る。

水島との密会は続いていた。夜、陣治がどこへ行くのかと尋ねても、十和子は軽くあしらって水島とホテルへ。だが、ホテルを出た時、陣治が陰に隠れて自分たちを見ていることを発見する。自分が尾行されていたと知った十和子は、少し陣治のことが怖くなってくる。

十和子は黒崎の妻、国枝カヨの家を訪ねた。黒崎は生前、金銭問題でトラブルを抱えており、暴力団の脅しや、尾行などもよくあったのだという。カヨは“黒崎は誰かに殺されたのだと思う”と強い口調で言った。

カヨの家を訪ねた際、十和子はカヨの叔父と遭遇。叔父は“お前を憶えている”などと意味深なことを言うが、十和子にはさっぱりだった。居心地の悪さを感じ、次第に恐怖を感じはじめた十和子は、その場から逃げ出してしまう。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のあらすじ【転】

水島から十和子に電話が入った。水島の自宅の郵便受けに、オトナのおもちゃが入っており、妻が自分を不信がっているという。更に、会社の顧客リストも紛失したのだそうだ。水島は、これは全部、陣治のやった嫌がらせなのではないかと言う。焦った水島は、しばらく会うのは控えよう提案。十和子は調べてみると言い、水島を落ち着かせた。

陣治の挙動不審な行動に、十和子はとうとう陣治に、“黒崎さんに何かしていないか”と問いかけた。陣治は重い口を開き、“殺して、土に埋めた。5年前の仕事場だった建設現場の下で骨になっている”と語った。喚き泣く十和子に、“もう終わりやな”と呟く陣治。だが、二人はその後、一緒に食事をし、翌朝には今まで通りの日常的な朝を迎える。

十和子は水島に会いたいと、駄々をこねた。仕方なしに会いに来た水島の口から、書類があっけなく見つかったことを聞かされる。何も教えられていなかったことに、落胆する十和子。水島はホテルに誘い、“妻とはいずれ別れる。君を幸せにすると約束する”と囁いた。その言葉に反応し、十和子は何かを思い出す。そして、買ったばかりの果物ナイフで水島を刺した。痛みにのたうち回る水島。そこへ陣治がやってきて、十和子を取り押さえた。陣治は水島に、これは全部自分がやったこと、警察に行くのならそう言えと叫び、水島を追い払った。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』の結末・ラスト(ネタバレ)

実は、十和子は記憶喪失になっていた。だが、水島を刺したとき、全てを思いだした。十和子は昔、黒崎と付き合っていた頃、黒崎からあるお願いをされた。実力者のカヨの叔父に援助してもらうため、抱かれてきてほしいと。二人の幸せのためだと言われた十和子は、叔父に抱かれる。しかし、黒崎はカヨと結婚。嫌がる十和子は殴られ、脅迫されて捨てられてしまう。陣治と付き合いだして数年後、再び黒崎から連絡があった。喜ぶ十和子だったが、黒崎の目的は、もう一度、叔父に抱かれてきてほしいというものだった。十和子は思わず、持ってきていたナイフで黒崎を刺し殺してしまう。

十和子からの電話で、現場に駆けつけた陣治は、黒崎の死体を処理し、十和子を自宅へと連れ帰った。目覚めた十和子は、事件に関する全てのことをすっかり忘れていた。それを知って、陣治は神に感謝する。このまま、いつまでも思いだしませんように、と。

全てを思いだした十和子は、もう生きていけないし、生きていたくもないと泣きじゃくった。それを見た陣治は、“俺がなんとかする。お前の全てを俺がもっていってやる”と言うと、高台の柵によじ登った。陣治は十和子に、“子供を作って、俺を産んでほしい”と笑顔で言い残すと、そのまま高台から飛び降りた。呆然とする十和子の頭上に、鳥たちが舞い上がる。彼女が、その名を知らない鳥たちが。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』の感想・評価・レビュー

蒼井優演じる十和子が、そこまで魅力のある女性には描かれていなかったため、阿部サダヲ演じる陣治が、なぜそこまで彼女のために生きていたのかが観ていて全く分かりませんでした。「本当にそれは愛なのか?」と思ってしまう行動の数々だったけど、それでも愛と言わなければ説明がつかないものばかりで、少し苦しい気持ちにもなりました。どんな態度を取られても、まるで自分の大切な子どもを守るかのように接していて、陣治の姿は見ていて痛々しく、切なかったです。ですが、「彼は日々の生活がすごく幸せだったんだろうな」と感じさせられるラストは、じーんと心に沁みるようで、とても良かったです。(女性 20代)


十和子の現在の彼と元カレ、そして今好きな彼との物語。
愛情を注いでいる恋人に愛想をつかされ、浮気までされているのにも関わらず、「笑ってくれたらそでいい」と明るく振る舞う陣治の本音が最後まで分からずに疑問が残った。
そこまで彼女を必死にかばい、執着する必要がどこにあったのだろうか。
最後はあまりにも衝撃的で、予測できないところが面白かった。
陣治の優しさに、歪んだ愛情を持つ人間の怖さを感じるような終わり方が、観終わった後に余韻を残していて良かった。(女性 20代)


こんなラブストーリー初めてだ。というか、これは恋愛映画なのか疑問だ。噂には聞いていたが、本当に全く共感できる部分が一つもなかった。

十和子のために、陣治はなぜそこまでするのか。ただ、陣治が彼女を心底愛していたことだけは分かったが、彼女にその価値があるのか考えてしまった。もはや私の考えとは遠い領域の映画で観終わった後は、呆然としてしまう。

共感度はゼロだが何か考えてしまうものがある映画だ。(女性 20代)


今作の監督である白石監督は、「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」など、ノンフィクション映画で知られている。どちらの作品も心にずっしりと残る重たさがあるが、今作も負けず劣らず、むしろ白石作品の中でも1番ずっしりときた。
登場人物に感情移入なんて全くできない。評判通り共感なんてできなかった。しかし、ラストは切なさと悲しさで心がはち切れそうになる。映画が終わった後も心に残る作品を作るのが本当にうまい監督だと思う。
阿部サダオはなぜここまで上手いのだろうか。怪演と言っても過言ではなかった。(男性 20代)


見終わった後に心に重たいものが残る作品。どの人物も狂気的で、どの人物も身勝手なように感じた。陣治が自分の全てをかけて十和子を愛していることも、冷酷な黒崎に惹かれた十和子のことも、簡単に関係を持った十和子と水島のことも、気持ちを理解することは難しかった。「共感度0%」と言われているのがよく分かる。どんな人生を歩めば、こんな破滅的な性格になるのかが気になる。それと、十和子は陣治の願いを叶えようとするのか、物語のその後も気になる。(女性 30代)


俳優陣の演技力に唸りました。特に、阿部サダヲがずば抜けて素晴らしかったです。松坂桃李演じる、水島の卑しい人柄も見事でした。事の真相が後半で明らかになると、陣治の深すぎる愛に気がつくことでしょう。陣治の十和子への想いは、男女の愛情というよりも父親が娘を守るような、壮大でひたむきなもののように感じました。物語の運びも絶妙で、オープニングからラストまで一切目が離せません。沼田まほかるらしい作品と言えます。(女性 30代)


「共感度0%」というキャッチコピーがぴったりな今作。出てくる人間誰にも共感することは出来ないし、主人公の十和子も陣治も歪んだ「愛」を履き違えている気がして不快感しか残りませんでした。
ラストのオチこそ予想出来なかったものの、十和子が陣治に出会い笑顔を取り戻したことや、他の男に気持ちが向いている事を知っても咎めない陣治など「伏線」のようなシーンは沢山ありました。
ラブストーリーと呼ぶのは間違っているかも知れませんが、陣治の行動が「愛」故のものならばこれは狂気に満ちた「ラブストーリー」なのでしょう。(女性 30代)


暗めの恋愛系のストーリーかと思いきや、しっかりとしたミステリーで、意外な作品でした。陣治が十和子を想う気持ちが深すぎて、号泣してしまいました。
身なりもみすぼらしく、体調も悪そう、頭もあまり良くなさそうな陣治が非常にリアルで、阿部サダヲさんの表現力のすごさを感じました。
コツコツ働いて真面目に生きている者からすると、なんだこいつと思ってしまうような十和子も、蒼井優さんが演じることで、なぜか男の人が放っておかない魅力がありました。原作通りなのか、蒼井優さん自身の魅力かは分かりませんが、不思議な色気があり、唯一無二の役者さんだなと改めて感じました。(女性 20代)


まさに「共感度0%」のラブストーリー。予告では「究極の愛」と謳っているが、これは究極の愛と言っていいのだろうか。小汚い陣治とわがままで自由奔放な十和子の物語だが、陣治演じる阿部サダヲの演技が上手すぎて終始陣治に対する不快感でいっぱいになってしまう。恋愛映画として観ていられるのは松坂桃李演じる水島の部分だけだろう。まあ彼も普通ではないのだが…。この作品の登場人物は誰一人まともではない。全員が違う意味で狂っている。見終わった後もしばらく余韻が残る、とにかく濃い、そんな映画だ。(女性 20代)

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みんなの感想・レビュー

  1. tumugi より:

    登場人物の誰にも共感できないのに、なぜか強く引き込まれてしまった。
    粗野で小汚い陣治と自堕落で自分本位な十和子を、阿部サダヲと蒼井優が見事な演技で表現している。

    恋人同士とは言いがたい二人のいびつな関係。陣治の異常なまでの十和子への愛。少しも憧れはしないけれど、最後は私自身も救われたような気持ちになった。
    どうしようもなく駄目な部分は誰にでもある。この作品は、そんな人間の弱い心に静かに響くのかもしれない。