映画『エル ELLE』の概要:ゲーム会社を経営するヒロイン。彼女はある日の午後、自宅にて覆面をした男に襲われ強姦されてしまう。過去の出来事から警察や報道関係を厭っていたヒロインは、自らの周囲に犯人がいると確信し、密かに犯人捜しをするのだった。人間関係を丁寧に描いた作品。
映画『エル ELLE』の作品情報
上映時間:131分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
キャスト:イザベル・ユペール、ロラン・ラフィット、アンヌ・コンシニ、シャルル・ベルリング etc
映画『エル ELLE』の登場人物(キャスト)
- ミシェル・ルブラン(イザベル・ユペール)
- 親友のアンナと共同でゲーム会社を経営している。金髪で美しい熟女。アンナの夫ロベールと不倫関係にあったが、覆面の男に強姦された後、関係を終わらせる。幼少期の経験から情が薄く、切り替えが早い。警察や報道関係者は特に嫌いで、息子のヴァンサンとの関係も良くない。
- ロベール(クリスチャン・ベルケル)
- アンナの夫でミシェルと不倫をしている。性欲が強く、ミシェルに身体の関係を強要しようとする。どこか傲慢な様子が目につく。
- アンナ(アンヌ・コンシニ)
- ロベールの妻でミシェルの親友。会社の共同経営者。ミシェルを心から信頼している。ロベールとの間に子供を儲けるも死産。ミシェルの息子に母乳を与えたこともあり、自分の子のように愛情をかけている。
- パトリック(ロラン・ラフィット)
- ミシェルの近所に住む銀行員。敬虔なクリスチャンで一人暮らしのミシェルを何かと気遣っている。実はミシェルを強姦した犯人。鬱屈した心を抱え、罪を重ねている。
- ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)
- ミシェルとリシャールの息子。元麻薬の売人であったが、現在の恋人が妊娠したことで、生まれてくる子供のためにまっとうな道を歩もうとしている。ミシェルとはウマが合わない。
- リシャール・カサマヨウ(シャルル・ベルラン)
- ミシェルの元夫で売れない小説家。一人暮らしのミシェルを心配している。新しい恋人はヨガの講師。
映画『エル ELLE』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『エル ELLE』のあらすじ【起】
親友アンナを共同経営者とし、ゲーム会社を経営するミシェル・ルブランはある日、自宅にて覆面をした全身黒服の男に襲われ強姦されてしまう。しかし、彼女はその後、慌てたり嘆いたりもせず何事もなかったかのように淡々と片づけをし、翌日も仕事へ向かった。
会社でのミシェルは強権的で、部下からのアドバイスを聞き入れずに自分の意見を第一に貫き通している。故に、男性職員からは反発されるか、あるいは盲信されるかのどちらかしかない。彼女には1人息子ヴァンサンがいたが、彼は元麻薬の売人で現在は妊娠中の恋人のため、目下まともになる道を目指しているようだった。
ミシェルの母親は自宅に若い男を引っ張り込み自由な性生活を送っている。父親は服役中でもうじき仮釈放の審査を受けるという話だった。
その日の夜、帰宅したミシェルのスマホに犯人と思しき人物からメールがくる。年の割には具合が良かったという内容だったが、彼女は過去に警察から酷い目に遭わされていたため、自力で解決しようと心に決める。
アンナとその夫ロベール、元夫で売れない作家リシャール・カサマヨウには襲われたことを報告した。一同は口を揃えて警察に届けろと口にしたが、ミシェルにはその気がないのだった。
アンナの夫ロベールとミシェルは不倫関係にあったが、どちらかと言うと身体だけのドライな関係で、ロベールの方がミシェルの身体に執着しているように思える。
その夜、会社に残っていたミシェルのスマホにまたもメールが届く。その日に着ているシャツを揶揄した内容だった。彼女はその内容から、犯人は自分の近くにいる人物だと確信する。
映画『エル ELLE』のあらすじ【承】
今から39年前、ミシェルの父親は凄惨な殺人事件にて終身刑になった。この事件は大々的にニュースでも流れ、ミシェルや母親は長い間、周囲の住民から数々の嫌がらせを受けている。それは現在も進行中であった。
しかしそんな時、ゲームのCG動画を加工しミシェルの卑猥な動画が会社内へ流布。送り主の判明には時間がかかるとのことだった。
ヴァンサンの恋人が胎盤剥離で子供を出産。これにはアンナも駆けつけ喜んでくれた。
自分を囲む人々の中から、怪しい人物を何人かピックアップし、それぞれに行動を観察するミシェル。彼女は射撃が得意な会社の部下から、銃の扱い方や撃ち方を学んだ。
そんな折、ミシェルがクリスマスパーティーを主催。母親とその恋人、アンナ夫妻、ヴァンサン家族、元夫とその恋人、近所に住むパトリック夫妻を招待した。一同が揃ってテーブルへつき食事をしたが突然、母親が恋人と再婚すると宣言。ミシェルは母親に対しても良い感情を持っていなかったため、いい歳をして恥ずかしくないのかと言ってしまうのだった。
それでもパーティーは和やかに進んだが、深夜0時を過ぎた頃、酒に酔った母親が脳梗塞で倒れ、意識不明に陥ってしまう。急いで病院へ搬送したが、今後も意識の回復は見込めないという話だった。
翌朝、執拗にミシェルの身体を求めてくるロベールに、別れを告げたミシェル。しかし、病室で付き添いをしているミシェルの目前で、母親の容態が急変。そのまま息を引き取ってしまう。
疲れ切って帰宅したミシェルだったが、自室にてあるものを発見する。ベッドの上に置かれたPC画面には、抑えられなかったと打ち込まれてあり、そのすぐ傍には精液が巻き散らされてあった。彼女はシーツを剥がして溜息をついた。
映画『エル ELLE』のあらすじ【転】
後日、母親の遺灰を撒くため、高台へ来た一行。しかし、ここで息子の恋人が怒り出し、赤ん坊を連れて帰ってしまう。恋人が産んだ子供は明らかに肌の色が違うため、赤ん坊はヴァンサンの子供じゃないと指摘するミシェルだったが、そのせいで息子も怒って去ってしまう。ミシェルは母親の遺灰を適当に撒いて帰った。
強風が吹く夜だった。深夜にも関わらず、雨戸を閉めた方が良いとパトリックが訪れる。彼に対し、密かにモーションをかけていたミシェルは関係を持てると期待するも、パトリックは寸前で正気に戻り逃げ帰ってしまう。
その後、動画の作り主が好意的な男性社員だったことが判明。彼女は彼の股間を見せてもらうことで罪を許した。
問題が1つ片付き帰宅したミシェルだったが、自宅に侵入していた覆面の男に再び襲われてしまう。彼女は必死に抵抗し、犯人のマスクを剥がすことに成功。犯人はなんと敬虔なクリスチャンでもあるパトリックだった。しかし、ミシェルは犯人が判明しても尚、警察に通報することはしなかった。
父親の仮釈放申請が却下されたとニュースで知ったミシェルは、父親と面会することにする。しかし、刑務所を訪れたミシェルを待っていたのは、父親が自殺したという知らせだった。彼女は父親の遺体と面会し、耳元で今までの恨み言を呟くのだった。
その帰り、運転中のミシェルに着信があり記者から取材を申し込まれるも、車の前に野生のシカが飛び出して来たため、交通事故に遭ってしまう。アンナもリシャールも電話に出ないので、仕方なくパトリックに連絡を取った。
すぐさま駆け付けてくれたパトリックによって救出されたミシェル。幸い命に別状はなく、足の裂傷と捻挫だけで済んだ。傷の手当をしてくれたパトリックに、なぜ自分を強姦したのかと聞くと、彼は必要なことだったからと答えた。
映画『エル ELLE』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌日、ミシェルは母親が住んでいたアパートを売りに出し、母親の恋人と口論。出て行ってもらうよう話した。
数日後、ヴァンサンが失業した上に子供を連れて家出をして来る。恋人が子供を連れてアメリカに行くと言い出したからだった。しかし、恋人が子供を連れ戻しに来てしまい、ミシェルはしばらく息子と一緒に住むことになる。ヴァンサンは産まれた子供のためを思い、例え自分の子供でなくても良い父親になろうとしていたらしい。
息子のことを見直したミシェル。スーパーでパトリックと遭遇し、3人で夕食を摂ることに。酒で早々にダウンしたヴァンサンをそのままに、パトリックとミシェルは2人だけの会話を楽しむ。どこか互いに惹かれ合っていた2人は、会話の流れから地下のボイラー室へ。
中へ入ると途端にサド気質を顕わにしてミシェルへ襲い掛かるパトリック。ミシェルはそれを敢えて受け止めその後、そ知らぬふりをして息子と共に帰宅した。
ゲームの完成が陽の目を見た日。アンナから夫が浮気をしていると話をされる。
その夜はゲームの完成を祝いパーティーが開かれたが、ミシェルはそこでアンナにロベールの浮気相手は自分だと暴露。ショックを受けたアンナはロベールと喧嘩になり、ミシェルは早々にパトリックと帰宅した。
その道中、パトリックに自分がしてきた行いを明らかにしろと話す。そうでなければ、自分が警察へ行き全てを暴露すると脅したミシェル。すると、自宅へ入ったところで覆面を被ったパトリックが現れる。彼は自らが抱える鬱屈した欲望をミシェルで果たそうと、彼女を殴り続けた。だが、そこへ密かに追って来たヴァンサンが現れパトリックの頭部を背後から強打。血塗れになったパトリックは自ら覆面を脱ぎ、なぜと呟いた後、倒れて息を引き取るのだった。
その後、警察には犯人が隣人だったとは知らなかったと説明。事なきを得た。パトリックの妻は引っ越しを決意し、ミシェルとは良い関係で別れることになり、ヴァンサンは恋人と仲直りした。ミシェルは今までの頑なさがなくなりどこか晴れやかとなり、息子の恋人をも歓迎できるようになった。
そうして、彼女は犯人を倒したことでようやく、父親と母親を許して墓参りをする。そこへ、アンナが現れミシェルと仲直り。アンナは自宅を売り払って、ミシェルの家に居候したいと申し出る。2人は笑いながら帰路に就くのであった。
映画『エル ELLE』の感想・評価・レビュー
正直、誰の感情も理解することができなかった。皆が皆、屈折した思いを抱えており、執着心や欲望に対しての思いが強いように感じた。ミシェルとアンナの友情が続くことで物語としては一応ハッピーエンドかもしれないが、どこか納得できない気持ちが残った。ただ、主人公を演じたイザベル・ユペールが妖艶な美しさを持つ女性で、彼女の演技に引き込まれた。ミシェルに傾倒する男性が現れるのも納得である。美しさと怖さを感じる、異色のサスペンス作品だと思う。(女性 30代)
イザベル・ユペールは色気のある熟女というイメージがあり、今作にもぴったりだと感じていましたが、色気以上に「女の怖さ」「本性」「性癖」など注目してしまう部分が沢山ありました。
レイプシーンから始まる今作はかなり過激でハードな内容でした。そして、作品の至る所で「性」を感じ、良い意味で気持ち悪かったです。男性から歪んだ「性癖」を突きつけられても平然としている主人公。普通では無い彼女の反応に、女の怖さと強かさを感じる作品でした。(女性 30代)
全く予想できない超展開が続くので、驚き戸惑いながらも、イザベル・ユペールの堂々たる存在感と圧倒的な演技に納得させられてしまう。常識や理屈では説明がつかない部分が人間にはたくさんあるし、多かれ少なかれ、誰もがそういうものを抱えて生きているのだなと思わされる。そして人間の欲望の果てしなさが怖くもなった。
不穏で、時に不快なのに終始笑えてしまう、とても不思議な作品だった。(女性 20代)
さすがのイザベル・ユペールと言ったところ。ただ、主人公の気持ちには共感できなかったし、理解できなかった。過去に父親が殺人を犯したことで警察や周囲から批難されてきたので、警察が信用できないという気持ちは分かる。中盤を過ぎるまで主人公が周囲を信用できず頑なになっていたのも分からないでもない。確実に変わったと思われるのは、両親が亡くなった後だろう。変わるきっかけは母親の死だったと思う。遺灰を適当に撒く点がいかに母親を嫌悪していたかが分かるシーンでとても印象深かった。(女性 40代)
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