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映画『キネマの天地』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『キネマの天地』の概要:昭和8年、映画の黄金期と呼ばれる時代を背景に、帝国館の売り子だったヒロインが蒲田撮影所にて様々な経験を経て、やがて看板女優へと名を連ねるまでの成長を描いた作品。監督は山田洋二で、ヒロインの父親役を渥美清が演じている。

映画『キネマの天地』の作品情報

キネマの天地

製作年:1986年
上映時間:135分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:山田洋次
キャスト:中井貴一、有森也実、渥美清、松坂慶子 etc

映画『キネマの天地』の登場人物(キャスト)

田中喜八(渥美清)
小春の父親。旅回りの役者で一目惚れした看板女優と結婚し、所帯を持つ。江戸っ子気質で小春とはいつも口喧嘩をしているが、娘をとても大切にしている。実は小春とは血がつながっていない。
島田健二郎(中井貴一)
蒲田撮影所にて脚本家を目指している。現在は助監督。商店の裕福な息子で品があり、礼儀正しい。小春に淡い恋心を抱いているが、面と向かって口説くことができない。
田中小春(有森也美)
帝国館にて売り子として働いていたところを、小倉監督にスカウトされる。島田に説得され大部屋女優から下積みを開始。様々な経験を経て、蒲田撮影所の看板女優となる。一生懸命で落ち込みやすい面はあるも、頑張り屋さん。
小倉金之助(すまけい)
帝国館で売り子をしている小春をスカウト。島田の才能を信じ育成する傍ら、小春を使うよう他の監督に薦めるなど、裏で支援もしている。

映画『キネマの天地』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『キネマの天地』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『キネマの天地』のあらすじ【起】

昭和8年、浅草映画街。帝国館にて売り子として働く田中小春は、父親の喜八と2人暮らし。彼女はある日、支配人に呼び出され現在、上映中の映画を製作した松竹の映画監督、小倉金之助にスカウトされる。小春は突然なことで、言葉も出ないのであった。

蒲田撮影所へやって来た小春は、撮影中の映画にいきなり端役として採用。ただ立っているだけの役であったが、機転が利かず叱られてばかり。そのせいで、端役ですら満足にできないのであった。

傷心のあまり、映画女優になる道を諦め帰宅した小春。父親の喜八は元旅回りの役者であったため、女優がどのようなものかを知っており、娘に何も分かっていないと怒鳴る。父親としては女優の道ではなく、娘には家庭を築く幸せを掴んで欲しいと思っている。しかも、映画というものを良く知りもせず、演技など必要ないと言い張るのだ。

小春は父親こそ何も分かっていないと父子は口喧嘩。しかし、何だかんだと言うものの、小春がスカウトされたことを密かに喜んでいた喜八。断ったと言うのだから、仕方ないと溜息を吐くのであった。

翌日、小春の元に助監督の島田健次郎が訪問。小春が帰った後、彼女が帰ったのは島田がきちんとフォローしなかったからだと、小倉に怒られたと言う。島田は大変、礼儀正しく父親と小春に謝罪。小倉は女優になりたい女はたくさんいるが、無理矢理にでも女優にしたい女は少ないと言っていたらしい。それを聞いた小春は再び女優になるべく、覚悟を決めて蒲田撮影所へ就職。一番下っ端の大部屋女優から始めるのであった。

撮影は全て一発撮りであるため、失敗は許されない。小春は通行人や町の小娘など、様々な役を日に何度も演じ続ける。
そうして、ようやく仕事にも慣れた頃、セリフのある役をもらった。セリフはたった一言だったが、喜八はその一言が大事なのだと言う。端役は端役なりに分をわきまえる必要があるのだ。喜八は自然体で、演技を見せる。思わず笑ってしまう演技だったが、さすがと言うべきだ。そこで喜八は、娘に対して演技指導をするのである。

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映画『キネマの天地』のあらすじ【承】

そうして、いよいよ撮影開始。監督は小春の演技に丁寧な説明と指導をし、根気強く付き合った。それでも上手くできない小春。喜八が言う通り、たった一言だけれどその一言には、様々な思いがあるのだと知るのだった。

そうして、完成した映画を早速、観に行った小春。自分のシーンはワンカットであったが、酷く感慨深い。そこへ、島田がやって来て、良くやっていると褒めてくれる。2人は喫茶店へ入り、目指す映画や演技について語り合う。島田は将来のために自らシナリオを執筆しており、その物語を熱く語るのであった。

季節は変わり夏。島田は小倉に完成したシナリオを提出した。だが、そのシナリオは方向性が違うと一刀両断されてしまう。監督たちはタイトルから構想を得て別の作品を製作。それは喜劇として描かれ、大いに人気を博した。

島田は諦めることなく、次の作品のシナリオ執筆を開始。小春はそんな彼の助けになればと、彼の身の回りの世話を行っていた。少なからず彼女は島田のことを慕っているが、島田は小春のことを思い、自らの思いを告げることができずにいるのだった。

そんなこんなで、小春の名前も次第に売れ始め、純情娘を演じさせるなら田中小春だと名前があがるほど、人気を得るようになる。
そんな時、人気俳優に誘われた小春。付き合いで酒を嗜むも、酔って気分を悪くしてしまう。俳優は自分の演技を見に来ているわけではないと、やさぐれた様子で彼女の同情を誘い、半ば無理矢理に関係を結んでしまうのであった。

撮影所ではとうとう小春までもが、奴の餌食になってしまったと噂が流れる。それ以来、小春は飲み歩くようになり酔っぱらっては遅い時間に帰った。喜八はそんな娘に、自分のようになって欲しくないと叱るのである。

映画『キネマの天地』のあらすじ【転】

島田は小春の噂にショックを受けてしまうが、監督の小倉にチャンスをもらい励まされる。
その日の夜、下宿先へ帰宅した島田は、しばらくぶりに自分を訪ねて来てくれた大学の先輩から小さな小包を預かる。先輩は一体何をしているのか。以前、会った時にも警察に追われていた。

世間ではドイツが怪しい動きをしており、戦争勃発の危険が高まっている。それなのに、自分達は呑気に映画を撮っている。島田は蒲田撮影所を辞めようと考えた。だが、先輩はどんなにくだらない映画でも、観客に元気や勇気を与えることは素晴らしいことだと言う。故に、映画作りをやめるなと止められるのであった。しかしそこへ、警察が突入。先輩は逮捕されてしまい、島田もまた協力者とみなされ逮捕されてしまうのであった。
事情聴取にて手酷く痛めつけられ、留置所へ入れられてしまった島田だったが、留置所を仕切る親分に映画人だと話すと歓迎される。

島田の実家は商店を営んでおり、裕福な家だった。彼は釈放された後、実家へ身を寄せるが、下働きの娘に映画の良さを聞いて撮影所へ戻ることにした。
スタジオへ戻って来た彼は偶然、小春と出会い無事を泣いて喜ばれる。そして、小倉はと言うと留置所でシナリオを書かなかったのかと言う始末。島田は気持ちを新たにし、シナリオの制作を開始するのであった。

年が明け、島田のシナリオが完成。上層部が手直しする必要もなく、映画の製作にゴーサインが出る。
ところが、春間近になって看板女優が男と駆け落ち。新作『浮草』の製作がストップしてしまう。

代役を立てるにしても、看板女優の代わりになる女優などいない。困り果てた小倉監督だったが、そこで島田が小春を薦めてくる。小倉は即座に却下したが、会議にて一応、提案。すると、監督たちは一様に小倉と同じ反応をするもふと、これが成功したら化けるかもしれないという可能性に賭けてみるのであった。

昨年の夏から胸の痛みを訴え、体調不良に陥っていた喜八。彼は自分の娘が主役を張れるのかと酷く心配していた。
そうして、撮影が開始。小倉はいつになく張り切っている様子で特に大きなトラブルもなく、撮影は順調に進んだ。

映画『キネマの天地』の結末・ラスト(ネタバレ)

だが、撮影も終盤に差し掛かった頃、一番の正念場で小春は上手く演じることができず、躓いてしまう。このままでは予定の封切までに間に合わない。
何十回となく同じシーンを繰り返すが、結果は何度やっても同じ。小春は弱り果ててしまい、島田は撮影の中止を進言。そのせいで更に撮影所の雰囲気も悪くなり、一触即発の空気に。小倉は中止の決断をし、小春に実家へ帰ってよく休めと声をかけた。

自分のせいで1シーンも撮れず、撮影を中止させてしまった小春は、自己嫌悪に陥ってしまう。
監督に言われた通りに実家へ帰った彼女は、女優を辞めたいと喜八に泣いて助けを求めた。すると、父親は母親との馴れ初めを語り始める。

旅回りの役者だった喜八は、別の一座の看板女優に一目惚れ。だが、彼女には当時、恋人がいてその男がまたろくでなしだった。男は恋人がいるにもかかわらず、別の女と駆け落ちしてしまう。喜八は惚れた女が不憫で仕方なかった。そこで、彼は彼女を慰め結婚を申し込んだ。すると、彼女は妊娠しているから喜八とは結婚できないと言うのだ。その時、喜八は一生この女を大事にしようと心に決めたのである。

生まれた子供は小春と名付けられた。喜八は別の男の子を宿した女を妻にし、産まれた子供を育てたのである。真実を聞いた小春は、なぜこんな時にそんな話をするのかと非難し、泣きながら家を飛び出すのだった。

翌日、撮影再開。昨日と同じシーンからである。小倉はテストと言いながらカメラを回すよう指示。小春は母親が喜八のプロポーズを断った時のことを想像して演じた。すると、小倉はもらい泣きしながら撮影にOKを出すのである。それは誰もが認める迫真の演技だった。

そうして『浮雲』が完成。映画は大ヒットを記録し、小春はとうとう看板女優へと名を連ねた。喜八は病気をおして娘の映画を観に帝国館へ。しかし、映画が始まると同時に喜八の容態が急変する。しかし、彼は苦しみを必死に我慢し映画を鑑賞。正念場では劇場の誰もが涙を流した。しかし、喜八は映画を観ながら息を引き取ってしまうのである。

その頃、蒲田撮影所では祭りが開催中。ドレスを身に纏った小春は、観衆に歌を披露していた。喜八の訃報を聞いた小倉は、娘の晴れ姿を見ながら逝ったかと呟くのであった。

映画『キネマの天地』の感想・評価・レビュー

学生時代、原宿や渋谷に遊びに行くと「スカウト」されたらどうしようなんて自惚れていた私は、この作品の小春に物凄く感情移入してしまいました。それと同時に「夢」を掴むためには幸せなことよりも、辛く苦しいことの方が多いのだと感じます。
スカウトされて「女優」としての下積みを始めた小春と、それを見守る父。昔、旅役者をしていた父が小春に演技を指導する姿は愛情に溢れていて、思わず涙がこぼれそうになりました。
やっと完成した作品のお披露目。ハッピーエンドかと思いきや、そこでも悲しい展開が待っていました。しっかりと纏まったストーリーでとても見やすかったです。(女性 30代)


1934年頃の松竹蒲田撮影所を舞台にスカウトされた新人女優が成長を経てトップスターになる様子が描かれている。
ヒロインの成長と共に当時の撮影の様子や女優達の奮闘が描かれており、とても興味深かった。そして、渥美清が演じる父親が娘を不器用ながら愛情深く見守る姿がとても胸を打つ。血の繋がらない娘であっても育て上げる父親の懐の深さに感銘を受けた。そして、反発しながらも父親の存在を支えに一流の女優を目指すヒロインの奮闘ぶりも良かった。現代とは比べるべくもないが、ひと昔前はこのようにして映画が作られていたのだという歴史をも描いた作品だと思う。(女性 40代)

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