この記事では、映画『一命』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『一命』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『一命』の作品情報
上映時間:126分
ジャンル:ヒューマンドラマ、時代劇
監督:三池崇史
キャスト:市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、竹中直人 etc
映画『一命』の登場人物(キャスト)
- 津雲半四郎(市川海老蔵)
- 千々岩求女の義父。貧しさゆえに狂言切腹に及んだ求女の無念を晴らすべく、井伊家に乗り込み、求女同様に切腹のため玄関先を貸して欲しいと申し出る。そして井伊家の面々に、真実を語る。
- 千々岩求女(瑛太)
- 育ての親である半四郎の娘、美穂と結婚をし、子を授かる。しかし、その子が病に臥せってしまい、医者に診せるために三両が必要となり、井伊家で狂言切腹に及ぶ。
- 美穂(満島ひかり)
- 半四郎の娘。金持ちの商人からの結婚の誘いを断り続け、求女と結婚する。幼い頃からの病が極貧のため悪化し、喀血をしてしまう。息子を授かるが、その子も病で失ってしまう。
- 斎藤勧解由(役所広司)
- 井伊家家老。武士の面目を重んじる人物。戦で負傷したのか足を引きずりながら歩いている。狂言切腹に及んだ求女に、武士に二言があってはならないと切腹を言いつける。
映画『一命』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『一命』のあらすじ【起】
津雲半四郎は、名門井伊家を訪ね、玄関先を切腹の場として借り受けたいと申し出る。それを聞いた家老の斎藤勧解由は、半四郎を座敷に招き入れ、数ヶ月前にも千々岩求女という男が、同じように切腹を申し出たと話し始めるのだった。
数ヶ月前、千々岩求女も井伊家で切腹を申し出ていた。井伊家の家臣、沢潟彦九郎、松崎隼人正、川辺右馬助の三人はどう対処すべきか話し合っていた。沢潟は家老斎藤勧解由に、最近流行りの「狂言切腹」だと報告をする。「狂言切腹」とは、生活に困った浪人たちが裕福な大名屋敷に押し掛け、玄関先などで切腹させてほしいと願い出て、面倒を避けたい屋敷の人間から金銭などを受け取る、ゆすりのような行為だった。沢潟は二度とこのような者が井伊家を訪れないように厳重な処置をするように斎藤に進言する。
求女は部屋に招かれ、家臣から君主へのお目通りのため着替えをして欲しいと湯殿に案内される。求女が湯を浴びている間、川辺は求女の刀を調べ、沢潟に報告するのだった。湯から上がった求女に着替えが用意されている。しかし、それは切腹のための死装束だった。慌てる求女に、切腹を強要する沢潟たち。そして求女は、庭で多くの井伊家家臣、そして斎藤が見る中、切腹をしなければならなくなるのだった。

映画『一命』のあらすじ【承】
求女は、一日だけ猶予を賜りたいと申し出るが、沢潟は求女に当家で狂言切腹は通用しないと言い放つ。さらに斎藤は、武士に二言があってはならないと言うのだった。求女の前に、彼が携えていた刀が置かれる。求女はその刀を抜くが、それは竹光であった。求女は竹光を持ったまま斎藤に近寄り、三両を無心する。そんな求女を沢潟は、情けない奴と言い捨てるのだった。
諦めた求女は竹光で切腹をしようとする。しかし、竹光では腹は切れず苦しむ。介錯の沢潟は刀を構えたまま、その姿を見ているだけだった。折れた竹光を腹に押し込み沢潟に介錯を求める求女。しかし、まだまだという沢潟。たまらず斎藤が庭に降り、求女を斬るのだった。
その話をした斎藤は、半四郎にどうするかを問う。半四郎は、武士に二言はないと言い、求女と同じように庭に案内される。半四郎は、介錯を沢潟彦九郎に頼みたいと言う。しかし沢潟は、出仕していなかった。半四郎は沢潟がいないのなら、松崎隼人正か川辺右馬助に介錯を頼みたいと言う。しかし沢潟、松崎、川辺の3人は昨夜から居場所が解らないのだった。斎藤は不審に思い、半四郎に真意を問う。
映画『一命』のあらすじ【転】
半四郎は語り出す。半四郎は千々岩求女を知っているのだった。半四郎は求女の父、千々岩甚内と同じ藩に仕える武士だった。お互い早くに妻を亡くし、男手一つで子どもを育てていた。災害による城の復旧工事が武家諸法度に抵触してしまい、藩はお咎めを受ける。そのことで甚内は心労がたたり、倒れてしまう。そして、息子の求女のことを半四郎に託すのだった。
武家諸法度の件で藩は財政が悪化し、浪人となった半四郎は、娘の美穂と求女を連れて江戸に出る。しかし、生活は困窮していた。数年がたち、美穂も求女も成長していた。半四郎は、美穂を嫁にもらってくれと求女に頭を下げる。そして、二人は夫婦となり、子どもも生まれる。半四郎たちは、貧しいながら幸せな生活を送っていた。
美穂が体調を崩し、喀血をしてしまう。日に日に弱っていく美穂のため、本を売り、薬や卵を買う求女。半四郎も娘のために金を工面するのだった。しかし、子どもが熱を出してしまう。医者に見せるが三両が必要と言われる。そして、その三両のため求女は、狂言切腹に及んだのだった。
帰ってこない求女を待ち続ける美穂と半四郎。そんな中、子どもが息をひきとってしまう。そこへ井伊家の使いのものが、求女の遺体を運んでくるのだった。井伊家の使いは、家老からという三両を置いて帰る。半四郎は使いのものを追いかけ、求女の最後の様子を聞き出す。しかしその間に美穂は、求女の竹光で自害するのだった。
映画『一命』の結末・ラスト(ネタバレ)
話し終えた半四郎は、斎藤に求女を哀れと思わなかったのかと問う。しかし、斎藤は武士には二言はなく、面目というものがあると答える。半四郎はさらに問う、ここにいる人たちは面目のためには死を恐れないのだな?と。
半四郎は、懐から三両を取り出し、返すと言い、更に沢潟、松崎、川辺の髷を庭に投げ捨てるのだった。前日、半四郎は三人を襲い、髷を切り落としたのだった。三人は恥じて、それで姿を隠している。半四郎は、武士の面目とは何かと斎藤に問う。そして、面目など下らんと言い放つのだった。
斎藤は、半四郎を切り捨てろと家臣に命じる。半四郎は、刀を抜く。それは求女と同じく竹光だった。その竹光を構える半四郎。家臣たちは、竹光の半四郎に次々と斬りかかるが、誰も半四郎を倒すことができない。しかし、半四郎の竹光が半分に折れてしまう。斎藤は、半四郎に乱心者と叫ぶ。半四郎は、乱心などしていない、生きてただ春を待っていただけだと答える。そして両手をあげ、斬られるままとなり絶命する。半四郎の脳裏に最後によぎったのは、美穂と求女の子、孫が生まれた時の喜びだった。
屋敷に戻ってきた沢潟、松崎、川辺の三人は、切腹をし自害する。しかし井伊家は、何事もなかったかのように君主を迎え、武士の面目を重んじるのだった。
映画『一命』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
この元ネタとなった『切腹』は私的には日本史上で最も優れた映画のトップ10には入る映画なので、幾分このリメイクには懐疑的であったしできれば元ネタを観てほしい。のだが、なかなか悪くなくて驚いた。もちろん役者の質的に現代の役者では表現しきれない部分はあるのだろうが、それでも瑛太と海老蔵には拍手を送りたい、時代にしいたげられた者が一命を賭して一矢報いるお話は気持ちがいいものだ。この作品を見てできれば元ネタを観てほしい。(男性 30代)
演出上グロテスクな部分も多くあるので、苦手な人はあまり観ない方がいいなと思ったが、時代劇というと観るのを構えてしまいがちになるが、この作品は展開が分かりやすかったので普段時代劇を観ない層の人にもおすすめできそうな作品になっている。
瑛太の迫真の演技がとても光っていて、切腹するシーンはこちらも本当に痛い思いをしているような気分になった。
このシーンは少し長すぎる気もしたが、千々岩求女の切ない存在を表すには必要な時間だったのかもしれない。(女性 20代)
三池崇史監督作品でありながらも、いつもの「三池ワールド」とはひと味違う、ものすごく洗練された、緊張感のある世界観に圧倒されました。市川海老蔵のセリフの一つ一つに魂が込められているような感じがして、心の底から発せられているような言葉に胸が熱くなりました。
「武士」の世界を描いた作品で、とてもスピード感がありますが、あの時代劇映画の「独特の間」は一切なく、とにかく爽快感が強かったです。難しい言い回しなどはありますが、とても楽しめました。もう一度見たくなる作品です。(女性 30代)
市川海老蔵の演じた半四郎は、紛うことなくあっぱれでした。低い声がよく通り、存在感も圧倒的で歌舞伎役者の実力が滲み出ています。登場人物全員が気の毒で、誰も浮かばれませんから覚悟して見ることをおすすめします。序盤の切腹シーンは恐ろしすぎて、しんどさを感じました。しかし、食事のシーンでは家族愛や生きることへの希望を感じられて救いがありました。和菓子や魚料理、ご飯、味噌汁など当時の食生活を忠実に再現しているようで面白かったです。(女性 30代)
『一命』は、ただの時代劇ではなく、人間の尊厳や名誉、そして武士道の虚構に切り込む社会派ドラマとして強烈な印象を残しました。市川海老蔵さん演じる主人公の悲哀と怒りが心に響き、特に息子同然の求女が竹光で切腹させられるシーンには怒りとやるせなさがこみ上げました。映像も美しく、ラストの復讐も静かで圧倒的。(30代 男性)
三池崇史監督の作品はバイオレンスのイメージが強かったのですが、『一命』は意外にも静かな怒りに満ちた作品でした。中盤までの丁寧な人物描写が後半の悲劇を際立たせ、切腹という日本独特の文化を通して“誇りとは何か”を突きつけてきます。武士道を盲信する社会の矛盾を描いた骨太なドラマです。(40代 女性)
最初は静かに進む展開に少し退屈を感じましたが、物語が進むにつれて主人公の過去と目的が明らかになり、どんどん引き込まれていきました。求女の最期の場面では、現代でも共感できる「命の重さ」や「制度の非情さ」に心が痛みました。深く考えさせられる良作です。(20代 女性)
『一命』はタイトルの通り、“命”というものをこれほどまでに重く、尊く描いた作品はそうそうありません。竹光での切腹という史上最悪の屈辱を受けながら、名誉のために苦悩する青年の姿に、胸が張り裂ける思いでした。これぞ、静かなる怒りを描いた名作。(50代 男性)
時代劇にあまり興味はなかったのですが、夫に勧められて観て大正解でした。貧困や名誉、家族愛といったテーマが盛り込まれていて、現代の私たちにも共感できる要素が多かったです。美しい所作や美術も素晴らしく、日本の伝統と矛盾が見事に融合された一作だと思います。(30代 女性)
武士道って本当に正しかったのか?そんな疑問を突きつけてくる映画。形式ばかりを重んじる体制の中で、人間としての誇りや感情をどう扱うかが問われます。求女の死に対する怒りが、主人公の静かな復讐へと昇華していく展開が見事。ラストのアクションもただの殺陣ではなく、魂の叫びでした。(20代 男性)
映画『一命』を見た人におすすめの映画5選
切腹(1962)
この映画を一言で表すと?
武士の名誉と偽りの正義を鋭く暴く、時代劇の金字塔。
どんな話?
江戸時代、浪人の津雲半四郎が切腹を願い出るが、その裏には悲劇的な真実と深い復讐の意図が隠されていた。武士道の虚構と人間の尊厳を描き出す、重厚なヒューマンドラマ。人の「一命」に宿る尊さと矛盾がテーマです。
ここがおすすめ!
『一命』の原点とも言える作品で、同様に武士の論理と個人の苦悩が対峙します。モノクロ映像がより一層緊張感を高め、仲代達矢の鬼気迫る演技は必見。心を抉るようなテーマと展開に引き込まれる傑作です。
武士の一分
この映画を一言で表すと?
静かな怒りと愛が交錯する、盲目の武士の人間ドラマ。
どんな話?
毒見役の武士・三村新之丞が、任務中の事故で失明。その後、妻の不義に苦しみながらも、自らの誇りと家族を守るために剣を取る。弱き者の正義と夫婦の絆を描いた、心温まる時代劇です。
ここがおすすめ!
『一命』と同じく「名誉」や「誇り」が物語の核。木村拓哉が見せる抑えた演技と、静かに燃える復讐の物語が感動を呼びます。暴力に頼らずとも伝わる強さ、静かに心を打つ良質な時代劇です。
たそがれ清兵衛
この映画を一言で表すと?
名もなき武士の誠実な生き様が胸を打つ、哀愁漂う時代劇。
どんな話?
出世欲のない地味な下級武士・井口清兵衛が、家族との時間を大切にしながらも、ある運命的な決闘に巻き込まれていく。小さな幸せを守るために戦う“名もなき侍”の物語。
ここがおすすめ!
『一命』と同様に、“武士とは何か”というテーマを丁寧に描いています。華やかさはないけれど、人間らしさと誠実さに満ちた主人公が観る者の心を掴みます。時代劇初心者にもおすすめの感動作です。
十三人の刺客(2010)
この映画を一言で表すと?
圧倒的アクションと重厚な人間ドラマが融合した、現代時代劇の決定版!
どんな話?
残虐非道な藩主を討つため、13人の侍たちが命を賭けて戦う壮絶な決死行。策略、忠義、正義がぶつかり合う中、男たちは己の信念を武器に戦いに挑む。緊迫感あふれるアクションと群像劇が見どころ。
ここがおすすめ!
三池崇史監督が手がけた骨太の時代劇で、『一命』同様に命の重みや正義の意味を問います。後半の戦闘シーンは圧巻で、観終わった後の余韻も強烈。アクション重視の方にもおすすめです。
雨あがる
この映画を一言で表すと?
ささやかな幸せと優しさが心に染み入る、静かな侍物語。
どんな話?
職を失った浪人・三沢伊兵衛が、旅の途中で村人や領主と交流しながら、自らの生き方を見つめ直していく物語。派手さはないが、心に沁みる温かさと誠実さが光る作品です。
ここがおすすめ!
『一命』のように、武士という立場と人間としての在り方を丁寧に描いています。黒澤明の脚本をもとにしており、穏やかな演出と美しい自然描写が印象的。静かで優しい時代劇が観たい方に最適な一本です。
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