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映画『そこのみにて光輝く』あらすじとネタバレ感想

映画『そこのみにて光輝く』の概要:モントリオール世界映画祭最優秀監督賞、キネマ旬報年間ベストナンバーワンを受賞するなど、国内外を問わず高い評価を得る作品。監督は「オカンの嫁入り」などで知られる呉美保監督。

映画『そこのみにて光輝く』 作品情報

そこのみにて光輝く

  • 製作年:2013年
  • 上映時間:120分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:呉美保
  • キャスト:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也 etc

映画『そこのみにて光輝く』 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『そこのみにて光輝く』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『そこのみにて光輝く』のあらすじを紹介します。

ずっと続けていた仕事をある理由で辞めた佐藤達夫(綾野剛)は、毎日を自堕落に生きていた。ある日、達夫がパチンコに興じていると、自分の近くに座っていた大城拓児(菅田将暉)という男にタバコの火を貸してほしいと頼まれる。それを機に達夫は拓児と知り合いとなり、拓児の家に出入りするようになる。

拓児は実家住まいで、両親と姉の四人暮らしである。薄汚いバラックで生活を送る拓児たちは、貧困にあえぎながらも脳梗塞で寝たきりになっている父の面倒を見ながら生活している。

ある日、達夫が訪れたスナックで拓児の姉である、千夏(池脇千鶴)に出くわす。そのスナックでは売春が行われており、達夫は千夏が自分の体を売って生活していることを知ってしまう。

千夏と達夫はお互いを次第に求めるようになり、次第に惹かれ合っていく。しかし、ある時、達夫は千夏が地元の有力者である中島(高橋和也)の愛人であることを知ってしまう。しかし、中島は拓児の弱みを握っており、むやみに引き離すことは出来ない。それを知った拓児は町で開催されていた祭りの会場に乗り込む。拓児は中島を見つけると中島に詰めより、ある行動に出る。

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映画『そこのみにて光輝く』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『そこのみにて光輝く』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

鬱屈した地方都市感と役者の妙

ゼロ年代の日本映画にしばしば見られるような閉塞感を味わうことができる作品である。閉塞感というと悪く聞こえてしまうかもしれないが、そういった荒廃した映像が持つ切なさというのはそれだけで映画的な気品に満ちているとも言えるのだ。

本作では函館を舞台にしているが、地方都市が持つ閉鎖感を上手く演出している。もちろん、この映画で描かれているものが実際の函館とイコールというわけではもちろんないことはここでお断りしておく。大城一家が置かれている状況は少し行き過ぎではないかと思うぐらいに不遇だ。しかしながら、絵空事ではなく常にリアリティを湛えている。これはなんといっても役者陣の演技によるところが大きいだろう。綾野剛演じる達夫は常に何かにつけ諦めているように見えるし、池脇千鶴演じる千夏は身も心も荒んでいる。特に千夏の傷みきった髪はそれだけでただごとではない切実さを孕んでいる。拓児演じる菅田将暉も、仮面ライダーWとは打って変わって、育ちの悪さ感を巧みに演じている。

呉美保監督の巧妙な演出

本作では、すべてのキャラクターに実在感を与えることに成功している。メイン三人が素晴らしいのはもちろんだが、高橋和也演じる中島の、ある特定地域のコミュニティでのみ威張っている感じもリアリティがある。これは呉美保監督の演出の巧みさと言わざるをえない。映画が始まってすぐ、汗ばんだ達夫の体が映し出されるのだが、そこから感じられる生活感やその匂い。さりげないが巧みである。

本作では撮影を「横道世之介」「桐島、部活やめるってよ」などを手がけた近藤龍人が担当し、脚本は「さよなら渓谷」「銀の匙 Silver Spoon」などを手がけた高田亮が担当している。まさに現代日本映画を牽引する実力派たちである。各人の持ち味を充分に引き出し物語を構築するという監督の手腕も見事だ。


可哀想だとか嫌だなあなんて気持ちになりつつも、どこか暖かくて人間味を感じる不思議な作品でした。綾野剛や菅田将暉と言った演技派な俳優が出演しているので自分の身近にはいないようなキャラクターでも何となくイメージができました。
菅田将暉はこれまで等身大のごく普通の男性を演じることが多かったですが、今作のように少し闇を持っているような家庭環境が複雑で育ちがあまり良くないのだろうなと感じさせるキャラクターを演じても全く違和感がありませんでした。
ストーリー、キャストどちらを取ってもクオリティが高く、非常に満足感のある作品でした。(女性 30代)

映画『そこのみにて光輝く』 まとめ

呉美保監督は本作の監督を依頼された際、自分に合った話ではないということで渋ったそうである。しかしながら、それをも押し切って呉美保監督に本作を監督させたプロデューサー陣の決定も賢明だ。実際、女性監督でしか撮れないであろう、どこかに優しさやしなやかさを備えた映像で構成されたのが本作である。ラブシーンについてもそれ自体が映画の目的となっているわけではなく、物語を紡ぐ上での手段として捉えられているため、映像の必然性がとても高いものになっている。

最後に、本作が持つような荒廃した雰囲気を持つ邦画作品として「回路」「マイナスカケルマイナス」「ときめきに死す」「誰も知らない」などもおすすめしておく。本作のような雰囲気を味わいたい方はぜひ観てほしい。

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