映画『友罪』の概要:町工場で働くことになった益田と鈴木。二人は同じ寮で生活する中で仲良くなっていくが、ある時、益田は鈴木が過去に世間を騒がせた小学生殺人事件の犯人、青柳だということに気がついてしまう。
映画『友罪』の作品情報
上映時間:128分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:瀬々敬久
キャスト:生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月 etc
映画『友罪』の登場人物(キャスト)
- 益田(生田斗真)
- 元新聞記者。マスコミのちからで真実を暴き、誰かを助けることができるのではないかと記者になったが、現実を知って幻滅し、その世界から離れていった。中学時代に桜井学という友達が自殺しており、その原因が自分にあると考えている。
- 鈴木 / 青柳健太郎(瑛太)
- 少年期に小学生を殺した六芒星事件と呼ばれる殺人事件の犯人。少年院を出所後は、愛知の工場で働いていたが近くで事件があり、警察から調べられる。無関係だったが、その後、その場を勝手に離れ、益田の働く工場に流れてくる。
- 山内(佐藤浩市)
- タクシー運転手。二人の息子がいるが、長男は殺人犯、次男の正人は交通事故で子供を三人殺している。今は家族バラバラに暮らしている。罪を犯した者は幸せになることができないと考えているが、家族ならばいつか再びひとつになることができるのではないかとも考えている。
- 白石(富田靖子)
- 医療少年院の指導員。青柳健太郎も指導し、社会復帰させる。仕事で忙殺される日々を送ったせいで、娘からの信頼はほとんどない。
- 美代子(夏帆)
- コールセンターで働く女性。過去に恋人に騙され、AVに出演させられている。逃げてもどこまでも追いかけてくる恋人に恐怖している。
映画『友罪』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『友罪』のあらすじ【起】
町工場に益田と鈴木という二人の男が試用期間でやってきた。二人とも暗く、鈴木においては挨拶すらできないほど。益田は元新聞記者、鈴木は溶接の資格を持っているらしかった。
益田と鈴木は会社の寮で暮らすことになり、同僚の清水、内海による四人での生活が始まる。だが、鈴木は根暗な態度のせいで、仲間たちから嫌われていった。清水たちは鈴木の部屋をガサ入れする。付き合わされた益田は、部屋の中にスケッチブックを見つけた。そこには上手に絵が描かれていた。中には母親くらいの女性のヌードもあった。
最初はとっつきにくさを感じていたが、寮生活の中で打ち解け始めていった益田は、鈴木に、子供の頃に自殺した友達と雰囲気が似ていると言った。鈴木は、俺が自殺したら悲しいかと益田に問う。益田は、悲しいと答えた。
医療少年院に勤める白石は院長に呼び止められた。過去に出所していった青柳健太郎が、勤め先の愛知の工場からいなくなったという。青柳は少年期に小学生の子供を二人殺した六芒星事件と言われる殺人事件の犯人だった。
埼玉県のトンネルで小学生の刺殺体が発見された。関連性はないかもしれないが、週刊誌の編集長は、記者の清美に青柳の特集記事を書けと指示する。
タクシー運転手をしている山内の次男・正人は交通事故で子供を三人事故死させていた。マスコミやストレス、周りへの迷惑に対処するため、家族を解体し、今はバラバラに暮らしていた。
映画『友罪』のあらすじ【承】
鈴木に電話で呼び出され、会うことになった白石。実は、鈴木は青柳だった。白石は少年院にも内緒で鈴木に会いに来た。鈴木が今、どこで何をしているのか聞き出そうとするが、曖昧な返事を返されてしまう。
山内の家族はバラバラだったが、義父の葬儀で、久しぶりに妻と顔を合わせた。その時、正人に結婚を前提にした恋人がおり、妊娠もしていると告げられる。それを聞いた山内は激怒する。
益田は中学時代の友、桜井学の実家を訪ねた。桜井は中学時に自殺していた。病気で生い先短い桜井の母親から、いつも学の友達でいてくれてありがとう、いつまでも強く正しい人でいてほしいと言われる。
コールセンターで働く美代子が元カレにつき纏われているところを助けた鈴木。寡黙だが優しい態度の鈴木に、美代子は好意を抱いていく。
工場で機械の見張りを頼まれた益田。だが、体調不良で朦朧とし、誤って機械に指を挟み、切断してしまう。大急ぎでタクシーで病院に向かおうとしたとき、鈴木が切断した指を氷水につけて持ってきてくれた。鈴木の機転で指は無事に繋げることができた。
益田は記者時代の同僚で元恋人の清美から、六芒星事件の調査協力を依頼されるが断った。指の退院祝いに清水、内海、美代子、そして鈴木で飲みに出掛ける。カラオケを歌う鈴木を益田はスマホで動画撮影した。
帰り道、鈴木に改めて指の礼を言った益田。それに対し、益田くんは友達だからと鈴木は答えた。
調査に行き詰まる清美に、仕方なく協力することにした益田。ネットで事件の画像検索をしていると、青柳の学生時代の写真が出てくる。それを見た益田は、鈴木が青柳ではないかと思い始める。スケッチブックに描かれていた女性が白石だということも分かり、鈴木への疑心は強くなっていった。
桜井の母親の危篤を知らされ、益田は駆けつけた。死ぬ前に、自分の罪を告白しようとするが、何も知りたくないと言って息を引き取った。
山内は正人に会いに行った。子供の命を奪ったお前が、自分の子供を喜べるのかと説教するが、人を殺した人は幸せになることや、笑うことはできないのかと反論してきた。だが、山内はそれに対しても、できないと一蹴する。
白石が娘に呼び出され、妊娠したのでサインをしてくれと言いだす。動揺した白石は、しっかりと話し合おうとするが、今まで不良たちの面倒ばかりを見ていたのに、今更、母親面するなと怒った娘は、その場から立ち去ってしまう。
映画『友罪』のあらすじ【転】
美代子は鈴木に好意を抱いていたが、鈴木は一線を越えないように頑なな態度を取り続けていた。そんな時、寮にDVDが届けられる。中身は美代子が出演しているAVだった。清水と内海は面白おかしくそれを見ていたが、そこに帰ってきた鈴木はテレビをバットで破壊。清水は怒り、殴りかかった。益田が止めたことで、その場はなんとか収束した。
益田は鈴木に、友達なら過去に何をやったか教えてほしいと言うが、鈴木は行かないと、と呟くと美代子の所へと向かった。美代子は元カレの仲間に拘束され、部屋で撮影されながら強姦されていた。鈴木が到着した時には、男たちの姿はなかった。
上京した美代子は元カレと出会い、知らぬ間にAVの世界に引きずり込まれていた。田舎に逃げても追いかけてこられ、家族にも迷惑ばかりかけていると泣く美代子。そこに、元カレがやってきた。元カレと対峙した鈴木は暴力を受け続けるが、俺を殺してくれと掴みかかった。挙句には、石を手に自分の頭部を殴り続けた。恐怖を感じた元カレは、二人の前から姿を消した。
鈴木のことが知りたくなった益田は本格的な取材を開始する。犯行現場を回り、彼の幼稚園からの知人を訪ねた。できあがった原稿を読んだ清美は絶賛。だが、益田は自分が彼を知りたくて書いただけで、雑誌には載せないという。
鈴木と益田は二人で飲みに行った。その時、鈴木は子供の頃に人を殺してしまったことを告白。そして、益田が抱える罪についても教えてくれと言う。だが、鈴木の自分本位の発言に益田は怒り、殺めた人の命について考えたことがあるのかと問い詰める。鈴木は、死んで償うことも、生きる価値もないと分かっているが、それでも生きたいと思ってしまうと語った。
埼玉県のトンネルで起きた小学生殺人の犯人が捕まった。40代の男による犯行だった。青柳とは無関係だったが、企画はそのまま続行することになる。
映画『友罪』の結末・ラスト(ネタバレ)
青柳こと少年Aの記事が雑誌に載った。記事を読んだ美代子は、すぐに鈴木のことだと分かり、距離を置いてしまう。益田が寮に戻ると、清水も内海も雑誌を読んでおり、気が滅入ると冷たい態度だった。会いにきた益田に、みんなと知り合えてよかった、ありがとうと話す鈴木。益田は泣きながら、ごめんとしか言うことができなかった。翌朝、鈴木はひっそりと寮からいなくなった。
白石に病院から連絡が入った。中絶した娘のところへ駆けつけた白石に、娘は、子供がいなければ金もかからず、犯罪者にしたり、殺されたりする恐怖を味わわずにすむと話し出す。だが、白石は、子供は素晴らしいものをくれる存在だと娘を抱きしめた。
正人は山内の反対を押し切って結婚する。後日、正人は電話で、俺たちのことを忘れてくれ、あんたのことも忘れるからと山内に告げた。亡くなった子供たちには悪いと思っている、これからも償っていくつもりだと語る正人に、山内は、そうかとだけ返事をした。
益田は中学時代に桜井から頼りにされていたのだが、自分がいじめられることを恐れたため、いじめに加担してしまった。それでも、桜井は益田に心を開いてくれていた。だが、限界がきた桜井は、僕が死んでもかまわないかと益田に問いかけてきた。それに対して益田は、勝手にすればと返事をしてしまった。その後、桜井は自殺し、その会話が最後の会話となった。益田は自分の心無い言葉が桜井を殺したのだと自責の念に囚われていた。
益田は桜井の自殺現場へとやってくると、しっかりと自分の過去と向き合った。それは、死なせたくない友達、生きていてほしい友達のために、どうしてもやらなくてはいけないことだった。大切な鈴木という友達のために。
映画『友罪』の感想・評価・レビュー
『友罪』というタイトルだが、それ以外の物語が多数展開し、メインのメッセージがぼやけてしまっている印象。“友の罪”とするならば、そのことだけを重点において描いたほうが良いと思うのだが、本作は人生を台無しにされた犯人家族や、AV嬢、少年院の指導員、マスコミなど多数な視点を盛り込みすぎている。『命』や『生きる』といった題名ならば、納得がいったかもしれない。友としての説得力を生むには、益田と鈴木が対話する十分な時間が必要だが、それも足りなかったと感じた。(MIHOシネマ編集部)
様々なストーリーが同時進行し、分かりそうで分からないまま終わってしまった印象です。犯罪の加害者、その家族、遺族、友人など、それぞれの視点から感情移入できると、より深く考えさせられる作品だったのかもしれません。時間の関係なのか、それぞれが薄いと感じてしまいました。
しかし主演の二人はもちろん、他も演技派の方ばかりで、苦しさや辛さが強く伝わり、眉間に皺を寄せながら見入ってしまいました。(女性 20代)
観ているうちについつい考え込んでしまう作品。もしも自分の子供が罪を犯したら、好きになった人、仲良くなった人が過去に殺人を犯していたら、自分だったらどうするだろうと考えさせられてしまう。被害者遺族はもちろんのこと、加害者家族の気持ち、その後の人生を思うと胸が痛くなった。誰よりも佐藤浩市に一番感情移入してしまった。
複数の人間の人生を同時に描いており少し見づらくも感じる部分もあったが、重たく深い、もっと知られるべき作品だと思う。(女性 20代)
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