映画『三尺魂』の概要:自殺サイトをきっかけに集まった四人の男女が、山奥の小屋で花火を使って爆死しようと考えた。だが、爆発させてみると、時間が爆発前に戻ってしまう。四人は、なぜ時間が戻るのか考え始めるのだが……。
映画『三尺魂』の作品情報
上映時間:93分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:加藤悦生
キャスト:村上穂乃佳、木ノ本嶺浩、辻しのぶ、津田寛治 etc
映画『三尺魂』の登場人物(キャスト)
- ハッパ / 城戸(津田寛治)
- 花火職人。最初に山小屋に到着し、自殺用の花火を設置する。多額の借金があり、それを自身の保険金でなんとかしようと考え、自殺を決意する。
- ベイビードール / 高村(木ノ本嶺浩)
- 研修医。山小屋には二番目にやってくる。先輩医師のきつい発言から、うつ病をわずらっている。精神的に疲弊し、自殺を考えた。
- ツバサ / ふみ(辻しのぶ)
- 山小屋に三番目にやってくる女性。我が子を乗せて運転中に交通事故に遭い、自分は助かったが息子は亡くなってしまう。息子への償いとして自殺を考えた。
- 月子 / 希子(村上穂乃佳)
- 女子高生、山小屋に最後にやってくる。同級生からイジメにあっており、自殺して復讐しようと考えた。
映画『三尺魂』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『三尺魂』のあらすじ【起】
イノチクラブというSNSで知り合ったハッパ、ベイビードール、ツバサ、月子の四人は皆で一緒に自殺する計画を立てた。人里離れた山奥の掘っ立て小屋に、ハッパは三尺もある大きな花火玉を用意した。これを爆発させて、皆で爆死しようと考えていたのだ。
しばらくすると、ベイビードールと名乗る青年がやってくる。さらに、ツバサと言う主婦らしき女性もやってきた。だが、約束の時間を15分過ぎても、月子がやってこない。不参加だと思ったハッパは、花火の点火スイッチの説明を始めた。
そこに、月子がやってきた。月子を見て三人は仰天する。彼女は女子高生だった。三人は、まだ若い月子に自殺はしないほうがいいとアドバイスした。だが、月子は死ぬ気でここに来ていたため、聞く耳を持たなかった。皆が止めるのも聞かずに点火スイッチを押し、花火を爆発させてしまった。
だが、気がつくと、ハッパは花火が爆発する前に戻ってきていた。花火も玉のまま置いてあり、小屋もバラバラになっていない。だが、ハッパは花火の高熱と体がバラバラになった感触は憶えていた。状況を理解できずにいると、ベイビードールが扉を開けて入ってきた。
映画『三尺魂』のあらすじ【承】
ハッパはデジャブだと思い始める。そこにツバサもやってきた。ハッパは、予想が正しかったら、もうすぐ月子がくると言った。その通りになり、月子がやってきた。ハッパが混乱していると、再び月子が花火を爆発させてしまう。
気がつくと、やはり爆発前に戻っているハッパ。今度は、ベイビードールにも記憶が残っていた。ふたりは時間の輪に閉じ込められたのではないかと考える。何も覚えていないツバサに、この状況を伝えたいが、上手く伝えられない。そのうち、今度は錯乱したツバサが花火を爆発させた。
時間は戻り、ハッパとベイビードールは少しこのループに慣れ始めていた。今度はツバサにも記憶が残っていた。三人は、なぜ時間がループするのか考え、月子が原因ではないかと結論を出す。未来ある女子高生を死なせずに返せば、ループから抜け出せるのではないかと。
だが、月子を説得するのはなかなか難しく、隙をついてはすぐに花火を爆発させてしまった。月子が小屋に来る前に爆発させれば死ねるのではないかと考えて実行してみたが、やはりループして戻ってきてしまった。
映画『三尺魂』のあらすじ【転】
彼らは次第に本名で話すようになっていた。ハッパは城戸、ベイビードールは高村、ツバサはふみという名前だった。無限ループから脱出するには、月子をきちんと家に帰さなければいけないようだった。
月子を前に、どう説得するか考えていた高村は、ふと城戸に自殺の理由を尋ねてみた。城戸は花火職人だったが、花火大会で打ち上げに失敗し、多額の借金を背負ってしまったのだという。妻と娘のため、彼らが自分の保険金で生活していけるよう、自殺を選んだのだった。
ふみの自殺理由は、交通事故で息子を亡くしてしまったことへの償いからだった。ふみは月子に、子供に自殺されたら親は深い悲しみを感じるだろうと言うが、月子はそれも承知の上だと言う。
月子のカバンの中身を見た高村は、彼女がイジメにあっていることに気がついた。月子はイジメっこへの復讐のため、自殺を選んだのだ。だが、三人はそんなことをしても意味はないと月子を説得した。しかし、やっぱり死ぬと言って花火を爆破。時間は再びループしてしまう。
高村は前回の爆発前、月子の携帯の着信履歴を盗み見ていた。何度も美江さんという人物から着信があったという。高村は自分の携帯でその番号に電話したが、出てもらえなかった。
その時、高村の携帯に着信があった。送信者の名を見て高村は取り乱し、うつ病の薬を飲みだす。
高村は研修医だったが、自信のない態度を指摘され続け、うつ病になっていた。城戸は、医者がうつ病なんておかしいと言い始め、しまいにはナヨナヨする高村に、死ぬ気でやってみろよと叫んでしまった。
だが、城戸の言葉に高村は、娘のために死ぬのもおかしなことだと反論。月子以外の三人は、何度もループする中で、未来のことを考えてもいいのではないかと思い始める。そこに、美江さんから着信があった。月子のことを希子という本名で呼んだ美江さんは、希子の父の再婚相手だった。美江さんは希子がイジメにあっているのを気づけなくてごめんと謝った。
希子は美江さんの言葉には心を動かされたが、状況が全く読めず混乱し、これは夢だと言いだす。そして、三人が説得する中、花火のスイッチを押した。
映画『三尺魂』の結末・ラスト(ネタバレ)
三人には、もう希子にかける言葉は残っていなかった。希子が小屋に到着しても、皆、無言のままだった。困惑する希子に城戸は“もう俺たちには君を止める言葉が残っていない。だけど、俺は希子ちゃんが死んだら悲しい”と伝えた。
城戸の言葉に希子は泣きながら、夢を見たと話し出した。夢の中も、こことそっくり同じで、皆とそっくり同じ人たちがいたのだと。そして、自分が花火を爆発させてしまうのだと。希子はとうとう自殺を思い直した。打ち上げられ、夜空を飾った花火を見た四人は、それぞれの生活に戻って行った。
その後、城戸は花火職人として更に腕を上げ、花火大会を成功させた。家族とも仲良く暮らしている。その花火大会を見に来ていた希子は、素敵な男性と出会い、結婚した。希子は子供を産んだが難産だった。名医のおかげで無事に出産できたのだが、その名医とは高村のことだった。希子の娘が幼稚園くらいになった頃、車に轢かれそうになった。だが、それを助けてくれた人がいた。それは、あのふみだった。人は皆、誰かと繋がっている。決して一人ではないのだ。
映画『三尺魂』の感想・評価・レビュー
映画よりも舞台劇にしたほうが面白いと思う。ループする作品の原則は、どんどんと状況をエスカレートさせていくことだと思うが、本作は予算も少なく、話を膨らませる小道具も少ない。四人のエピソードと三尺玉の花火だけで間を持たせたのは評価できる。だが、映画的娯楽を強調するのならば、もっと大胆に突飛になっていっても良かったかもしれない。せっかく三尺玉があるのだから、それに押しつぶされて死亡してループしたり、花火自体を不発にさせようとしたりしても面白かったのではないだろうか。(MIHOシネマ編集部)
舞台を見ているような不思議な感覚に陥る作品。自殺をするために山小屋に集まった4人が自殺しようとするとタイムリープしてしまい、ちゃんと「自殺」するためにタイムリープから抜け出そうとする設定は新しいなと感じました。
個人的に演出やカメラワークがかなり好きでした。狭い空間で少人数で展開される会話劇は前半はコメディっぽい要素がありクスッと笑ってしまうようなシーンがありながら、後半はしっかりと空気をぴりっとさせてストーリーに集中させてくれます。(女性 30代)
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