この記事では、映画『飼育の部屋(2002)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『飼育の部屋(2002)』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『飼育の部屋』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:キム・テグワン
キャスト:小沢和義、桜井真由美、山口祥行、鈴木一功 etc
映画『飼育の部屋』の登場人物(キャスト)
- 佐川松男(小沢和義)
- 郵便局員として日々真面目に働く男性。まどかに心底惚れており、彼女を拉致監禁する。思い込みが激しく、監禁さえすれば、まどかが自分を愛すると思い込んでいる。
- 鈴木まどか(桜井真由美)
- 短大に通う若い女性。松男に誘拐され、厳しい監視下に置かれる。松男からの一方的な愛に嫌悪感を示している。
映画『飼育の部屋』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『飼育の部屋』のあらすじ【起】
佐川松男はどこにでもいるような平凡な男性で、郵便局員として働いていた。しかし、彼は人一倍執着心が強く、特に好意を寄せる女性には剥き出しの執着心を見せていた。
そんな松男は、アパートで1人暮らしをする鈴木まどかという女性に恋をしていた。松男は郵便局員の特権を乱用し、まどか宛に送られる郵便物を集めては、全て開封し、中身のチェックを行っていた。
まどかを拉致監禁し、自分の恋人に育てることを夢見た松男は、彼女の“飼育計画”を念入りに立てる。
ついに誘拐する準備を整えた松男は、嘘を吐いて仕事を休み、仕事着を身に纏うと、まどかが住むアパートに訪れた。
インターホンを押すと、薄着で不用心な姿のまどかが玄関から現れる。まどかに偽物の郵便物を差し出し、サインをさせると、松男はスタンガンを取り出し、彼女を気絶させる。
玄関から移動し、室内まで彼女を抱いて運ぶと、ソファに寝かせ、ロープで両足首を固定する。松男はまどかの口にガムテープを貼ると、彼女の携帯電話を操作し、バイト先や彼氏に偽のメールを送り、アリバイ工作をする。

映画『飼育の部屋』のあらすじ【承】
まどかは夜まで眠り続け、松男の部屋で目を覚ます。目にはアイマスク、口にはガムテープ、両手首には手錠、両足首にも拘束具を付けられ、体の自由を奪われたまま、まどかはベッドに寝かされていた。
松男の部屋は物が少なく、すっきりしていたが、壁には防音設備として、卵の紙パックがぎっしり貼られており、歪な空間が生み出されていた。
まどかは、自身の置かれている状況に恐怖を抱き、身をよじって暴れる。落ち着かない素振りのまどかを見た松男は、イラつきを隠せず、彼女につらく当たるが、すぐに平静を取り戻す。松男は監禁することで、まどかの純粋な愛を得ることを、心から望んでいた。
地獄の監禁生活が始まった。まどかは、松男が出勤している際は拘束具を着けられ、大人しくしていることを求められた。
松男はまどかとの間でルールを作った。それは、彼女が抵抗するごとに、彼女の携帯電話の連絡先を少しずつ消していくというルールだった。
まどかの携帯電話には250件の連絡先が登録されており、松男は「50件消えたら君を触り、連絡先が消える度に君に近づいていく。半分以上消えたら君を襲う」と、まどかを脅迫する。
映画『飼育の部屋』のあらすじ【転】
ある日、部屋の本棚から犯罪心理学の本を見つけたまどかは、その本を広げ、ある項目を目にする。そのページには、“ストックホルム症候群”という現象の説明が載っており、“監禁下に晒された被害者が加害者に好意を抱く”という症例が記載されていた。松男はまどかをストックホルム症候群に仕立て上げようとしていたのだ。
松男の思惑を知った後、まどかはなるべく愛想良く振る舞い、松男の機嫌を取るように努めた。ある夜、松男の隙を狙い、まどかは松男のアパートから脱走する。しかし、外には人がおらず、まどかを助けてくれる者は誰もいなかった。
松男に捕まり、観念したまどかは、彼の車に乗せられ、車内で一晩を過ごす。海辺に車を止めると、まどかは海の方向へ走り、海に身を投げようとする。しかし、松男の制止もあり、まどかが命を落とすことはなかった。
2人は海辺で抱き合い、お互いを愛する覚悟を決めたかのように、体を重ね合い、愛し合った。その件を境に、2人は頻繁に体を重ねるようになり、松男とまどかは穏やかな生活を送るようになった。
映画『飼育の部屋』の結末・ラスト(ネタバレ)
まどかが誘拐されてから1年が過ぎようとしていた。その頃、松男の住むアパートの1階に山田という青年が引っ越してくる。その山田から「猫飼ってません?」と聞かれ、松男は一瞬たじろいでしまう。
帰宅すると、松男は新居を建て、そこに2人で住む計画をまどかに聞かせる。「これでもう私達は正式な恋人だね」と言うまどかの表情は穏やかそのものだった。
そんなまどかを見た松男は、彼女が自分を愛していることを確信し、これまでにない程の幸せを感じていた。松男の外出時には、いつも手錠をされていたまどかだったが、その日は手錠を外され、優しい表情で彼の出勤を見送るのだった。
仕事帰り、アパートの1階を通った松男は、隣人の山田から「上から何か水が漏れている」と聞き、慌てて階段を上り、室内を確認すると、そこにまどかの姿は見当たらず、彼女が逃亡していることに気がつく。
部屋から飛び出し、階段を駆け下りて1階へ向かった松男だったが、アパートに駆けつけた警察に取り押さえられ、そのまま警察署へ連行される。
取り調べ室にポツンと座る松男。すると、女性の弁護士が現れ、まどかの真意を語り始める。まどかは最初から最後まで松男を愛していなかった。愛する演技をひたすら続け、助かるタイミングを探していたのだ。
1年後、松男には懲役7年の実刑判決が下されたものの、世間の怒りは収まらず、彼を重刑に処すことを望む声が相次いだ。
一方、自由の身になれたまどかは、平和な生活を取り戻したが、地獄のような監禁生活がトラウマとなり、日常的に悪い思い出が蘇るフラッシュバック現象に悩まされていた。まどかが受けた傷は大きく、彼女の苦しみは続くのであった。
映画『飼育の部屋』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
恐ろしいことに、女性が誘拐監禁される事件は映画に留まらず、世界中で起きている。『飼育の部屋』はもちろんフィクションだが、まどかのような被害者がこの世にいることは事実だ。彼女達はトラウマを抱え、普通の生活を送ることが難しいことも少なくない。松男の機嫌を取るために、まどかは愛想良く振る舞うが、全て自身を守るための演技であることを考えると、切なさを感じる。監禁下に置かれた被害者は、暴力を受けないために加害者に従う他なく、その苦しみは計り知れない。(MIHOシネマ編集部)
松男の自分勝手すぎる行動に物凄い嫌悪感を抱きました。女性はナンパされることでさえ、不快に思うんです。好きでもない人に下心丸出しで声をかけられ、断れば嫌な態度を取られる。そんな理不尽な経験をしたことのある女性は少なくないと思います。ナンパと監禁は比べ物になりませんが、まどかは本当に強い女性だと感じました。逃げることを諦めず、自分の人生を諦めなかった。今回は運良く逃げることが出来ましたが、その後もトラウマに悩まされるであろう彼女を見ると松男のような身勝手な犯罪者に怒りが込み上げてきます。(女性 30代)
性の目覚めと狂気が混在する、不思議な余韻を残す作品でした。少女が監禁されるという設定だけでもショッキングなのに、加害者との奇妙な関係性が次第に歪んでいく過程が不気味で印象的。見終わった後も「これは恋なのか、それとも支配なのか」と考えさせられました。映像もどこか幻想的で、現実感が薄れる感覚があり、それが逆に怖さを引き立てていたように思います。人を選ぶ作品ですが、刺さる人には刺さると思います。(20代 男性)
最初は純粋な誘拐監禁ものかと思っていたら、後半にかけて少女の心の変化が描かれていくことで、単なる被害者と加害者の図式を越えていくのが印象的でした。少女が監禁生活の中で感情を持っていく様子は、不気味でありながらもどこかリアル。人間の心の弱さや依存、孤独に対する欲求がよく描かれていたと思います。映像の色使いと音の静けさも、独特の世界観を作っていて、後味がじわりと残る映画でした。(30代 女性)
かなり特殊なテーマで、万人受けはしないと思いますが、私はかなり惹きつけられました。監禁という絶望的な状況の中で、少女が自分の居場所を見出していく様子は異常でありながらも人間の本質をえぐっている気がしました。加害者と被害者の立場が曖昧になっていく描写がうまくて、怖さと切なさが同居する不思議な感情に包まれました。ある意味、心理的ホラーとしても機能していて、深く考えさせられる作品です。(40代 男性)
映画というよりも一種の心理実験を見ているような感覚でした。少女が拉致されながらも、次第に犯人に依存していく様子は、まさにストックホルム症候群的で、見ていてぞっとしました。とはいえ、彼女の感情には妙に説得力があり、「なぜそうなるのか」を観客に考えさせる力があります。映像や演出もあえて抑えたトーンで、静かに狂気を描いていたのが好印象。正解のないテーマに挑んだ、勇気ある作品だと思います。(50代 女性)
独特な空気感がクセになる作品でした。設定だけ見ればかなり重たくて気が滅入りそうですが、映像の美しさやセリフの少なさがむしろ詩的で、暗さを感じさせません。少女の心情が丁寧に描かれていて、感情の揺らぎがとてもリアルでした。加害者との関係が徐々に変化していく様子は不気味でもあり、どこか愛のようにも見えてしまう…その曖昧さに惹かれました。観る人によって解釈が変わる作品だと思います。(30代 男性)
「飼育」というタイトルがまさに内容を象徴しています。監禁された少女の視点で描かれる物語は、閉塞感と狂気に満ちていて、一瞬たりとも安心できませんでした。犯人の存在も一方的な悪ではなく、どこか壊れた人間として描かれていて、それがまた怖かったです。少女が彼に心を許し始める展開には嫌悪感すら覚えましたが、それがこの映画の狙いなのだと思います。問題作だけど、強烈な印象を残す一本です。(40代 女性)
美少女監禁モノという表面的なジャンルに収まらない、深くて重たい作品でした。ヒロインの無垢さと危うさが同居していて、見ているこちらも精神的にぐらつかされます。特に、彼女が加害者に自発的に寄り添おうとする描写は痛々しくて、胸が締めつけられました。すべてが静かに進行するので派手さはありませんが、ラストの余韻は強烈。あえて感情を抑えた演出がリアリティを増していて、観る価値はあると思います。(20代 女性)
テーマが重たすぎて観る前は少し身構えましたが、思っていたよりも静かで内省的な映画でした。監禁された少女が少しずつ変化していく様子が丁寧に描かれていて、感情の移ろいがよく伝わってきます。途中で「助かってほしい」と思いながらも、彼女自身がそこに安らぎを感じ始めているように見えるシーンには、混乱と切なさが入り混じりました。演技も素晴らしくて、全体として完成度の高い心理ドラマだと思います。(50代 男性)
映画『飼育の部屋』を見た人におすすめの映画5選
完全なる飼育
この映画を一言で表すと?
支配と依存の境界線を描く、禁断の心理スリラー。
どんな話?
女子高生が中年男に監禁され、奇妙な共同生活を強いられる中で、支配と愛情が錯綜する関係性が生まれていく。異常な状況下で育まれる感情は果たして愛か、それともただの狂気か。観る者の価値観を揺さぶる問題作です。
ここがおすすめ!
タイトル通り「飼育」関係に焦点を当てた作品で、『飼育の部屋』に通じるテーマ性があります。映像や演出も丁寧で、主演二人の演技が圧巻。倫理的に賛否を呼ぶ内容ながら、深く考えさせられる作品です。
冷たい熱帯魚
この映画を一言で表すと?
平凡な日常が地獄に変わる、実話ベースの狂気のバイオレンスドラマ。
どんな話?
真面目でおとなしい熱帯魚店主が、強引な実業家と関わったことで殺人の片棒を担がされ、次第に自らの正気すら失っていく…。実在の連続殺人事件に着想を得た、衝撃的な人間堕落の物語。
ここがおすすめ!
人間の狂気と支配関係、そしてモラルの崩壊を、容赦なく突きつけてくる園子温監督の代表作。過激な描写もありますが、心理描写の深さや演技力には唸らされます。『飼育の部屋』の心理的緊迫感が好きな方におすすめ。
ミスト
この映画を一言で表すと?
極限状態の密室で人間性が暴かれる、心理ホラーの傑作。
どんな話?
突如町を包む謎の霧の中に現れる“何か”。スーパーマーケットに閉じ込められた人々は、恐怖と疑念に支配されながら、次第に仲間同士で対立を深めていく。
ここがおすすめ!
外敵よりも人間の内面にある恐怖を描いた名作。密室劇としての緊迫感や、救いのない衝撃的なラストは、観る者に強烈な印象を与えます。閉鎖された空間での心理劇が好きな方にぴったりです。
箱入り息子の恋
この映画を一言で表すと?
不器用な男女の関係性にじんわり涙する、繊細なラブストーリー。
どんな話?
親に頼りきりで生きてきた真面目な独身男と、盲目の女性との出会いを描いた物語。周囲の反対や心の壁に直面しながらも、二人の関係は少しずつ深まっていく。
ここがおすすめ!
一見ジャンルは違えど、「閉じられた関係性の中で育まれる繊細な感情」という点で『飼育の部屋』に通じる要素あり。恋愛の形は人それぞれ、ということを優しく教えてくれる作品です。
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
静かに心を蝕む孤独と育児放棄を描く、社会派ヒューマンドラマ。
どんな話?
母親に置き去りにされた子どもたちが、誰にも知られず、ひっそりとアパートで生き延びようとする。実話を元にした、衝撃と静寂が交錯する傑作。
ここがおすすめ!
子どもたちが社会から隔絶されるという点で、『飼育の部屋』の閉鎖感と通じる部分が多いです。是枝裕和監督の淡々とした演出が、むしろ心をえぐる。観た後の余韻が長く残る一作。
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