映画『ふがいない僕は空を見た』の概要:不妊に悩む主婦との不倫関係に引き込まれた高校生・卓巳と、彼の周囲の人々の思いや変化、成長を描いた物語。それぞれの登場人物が抱えている事情や苦悩、そしてそれらが絡み合って進む物語が、観る者を引き込む。
映画『ふがいない僕は空を見た』の作品情報
上映時間:142分
ジャンル:青春、ヒューマンドラマ
監督:タナダユキ
キャスト:永山絢斗、田畑智子、窪田正孝、小篠恵奈 etc
映画『ふがいない僕は空を見た』の登場人物(キャスト)
- 斉藤卓巳(永山絢斗)
- アニメイベントで知り合った人妻に誘われて関係を持つが、行為の模様が町中にばらまかれることとなる。
- 岡本里美(田畑智子)
- 姑に疎まれて、夫にも手を差し伸べてもらえない生活に苦悩する中、大好きなアニメキャラに似た卓巳に入れ込んでいく。
- 福田良太(窪田正孝)
- 卓巳の同級生。団地暮らしの貧乏な生活から抜け出そうともがく。自分の境遇に同情し、施しを与えてくる卓巳に嫌悪感を持つ。
- 岡本慶一郎(山中崇)
- 里美の夫。里美と卓巳の情事に気づき、動画と画像をインターネット上に拡散する。
映画『ふがいない僕は空を見た』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ふがいない僕は空を見た』のあらすじ【起】
ある高校生が部屋に入ると、ドアの側にはカツラや衣装が置いてある。そして、部屋のベッドに寝そべる女性は魔法少女のようなコスチュームを身にまとっている。
高校生がコスチュームに着替えると、紙に描かれた台本に従って女性と性行為を始めた。
行為が終わると、「そろそろ旦那が帰ってくるから」と、女性が2万円を渡した。
高校生の名前は斉藤卓巳。彼はアニメのイベントでその女性、岡本里美と出会った。卓巳は、里美が好きなアニメキャラクターに似ていることから声をかけられ、お金と引き換えに体の関係を持っていたのだった。
卓巳自身は同じ高校の松永七奈が好きだったのだが、ある日七奈の方から卓巳に告白してきた。付き合って欲しいと言われた卓巳だったが、その場では付き合わず、少し待って欲しいと七奈に告げる。
卓巳は、七奈と付き合うためには里美との関係を終わらせる必要があると考え、もう里美の家には来ないと告げる。里美はそんなのは嫌だと激しく拒絶し、卓巳はいつか自分の元へ必ず帰ってくると言い放った。
映画『ふがいない僕は空を見た』のあらすじ【承】
里美は、なかなか子供ができないことを姑に心配され、日々プレッシャーにさらされていた。そして、ある日体外受精という不妊治療を強く薦められる。里美も夫の慶一郎も子供ができにくい体質で、妊娠を望んでいなかったが、姑は涙ながらに執拗に里美を責める。
結局、断りきれずに不妊治療を始めた里美だったが、治療は苦痛を伴うものであった。それでも子供はできず、里美は姑から罵倒されていた。
そんな生活の中、ずっと自分が憧れていたキャラクターに似ていた卓巳との関係は、里美にとってかけがえのない癒しであり、心の支えだったのだ。
里美の様子がおかしいと疑っていた慶一郎は家に盗撮機を仕掛け、里美たちの情事を知ってしまう。慶一郎と姑は、行為の動画を里美に対して突き出す。里美は土下座して離婚を懇願したが、全く聞き入れられず、代理母を探すためにアメリカへ行かされることとなる。
その後、結局里美の元へ再び訪れた卓巳は、またも里美との行為を慶一郎に盗撮され、彼らの動画と画像がネット上にばらまかれてしまう。
映画『ふがいない僕は空を見た』のあらすじ【転】
福田良太は、卓巳の友達である。夜はコンビニでアルバイトをこなし、痴呆症の祖母のために非常に切り詰めた厳しい暮らしをしていた。卓巳は、彼の生活の状況を理解して自分の母の料理をおすそ分けしたりしていたのだったが、良太は自分が見下されているような思いもあり、もらった食べ物をこっそり捨てていた。
そんな良太にも、卓巳の画像が届く。画像と動画は学校中で話題の的になっており、卓巳は学校に行かずに引きこもってしまう。
良太は団地での貧しい暮らしに心底嫌気がさしていた。彼は団地暮らしから抜け出せる兆しもなく、どこにも行き場のないストレスを抱えていた。しかし、その鬱憤は卓巳の画像をばらまいているときだけは晴らせたのであった。
アルバイトの先輩の田岡は、そんな良太を心配して勉強を教えたり、良太の祖母を病院に入れる便宜を図ったり、何かと助けていた。田岡に感謝する良太だったが、ある日田岡が児童へのわいせつの容疑で逮捕される。田岡は、自分が性衝動を抑えられないことに悩み、せめてそこ以外の部分では善人でいるために良太を助けていたのであった。
映画『ふがいない僕は空を見た』の結末・ラスト(ネタバレ)
卓巳が里美と最後に肌を重ねた日、里美は、卓巳にアメリカ行きのことを話す。一度は里美を拒絶し、離れようとした卓巳だったが、今度は逆に里美にすがりついて置いていかないでくれと懇願する。しかし、里美は穏やかな笑みを浮かべ、卓巳に別れを告げたのであった。
卓巳への嫌がらせは続いており、家にまで悪意のある郵便や品物が届いていた。しかし、卓巳の母親は、卓巳を責め立てたり取り乱したりはせず、終始落ち着いた様子だった。
彼女は助産師として、シビアな出産の場面に立ち会い続けており、無事生まれてきた子供や生まれて来られなかった子供、生まれてきたのにほんの短時間で死んでしまった子供の姿を見続けていた。
そんな彼女にとって、息子である卓巳は生きてそこにいるだけで十分なのである。
ある日、卓巳が夜中の神社で里美を想って泣いているところに母親が出くわす。彼女は、卓巳を含めた全ての子供のことをお祈りしに来たのだと言い、ただ、卓巳には生きていて欲しいのだと伝える。
卓巳は、次の日から再び学校に通い始めた。いつの間にか良太も合流し、言葉は交わさなくとも、二人は一緒に教室に入った。そしてクラスメイトに揶揄されながらも、卓巳はそのクラスメイトに笑みを返す。
映画『ふがいない僕は空を見た』の感想・評価・レビュー
最初はよくある不倫ものの映画かと想っていたが、物語が進む中でどんどん引き込まれ、登場人物たちの苦悩や思いに共感し涙が溢れた。同じシーンがそれぞれの登場人物の視点で描かれることでより深く心情を理解することができた。この物語にはコスプレ情事や児童性愛、同性愛など様々な自らの性に悩まされる人物が登場するため、終盤の「僕たちは、僕たちの人生を、本当に自分で選んだか」という文章が、まさに物語を統括しているように思えた。(MIHOシネマ編集部)
辛いことや恥ずかしいことがあったり、周りの人に迷惑をかけてしまったりしても、生きているだけで幸せということに、改めて気づかされました。息子がどんな状況になっても、生きてそこにいてくれるだけで十分と、広い心で見守り続けてくれる母の優しさに感動しました。自分だったらこんなに温かい言葉をかけられるだろうかと、器の大きさに驚き、いつか母親になれたらこんな風に育ててあげたいと思いました。
この映画のように、夫がいてきれいな家があっても幸せとは限らず、人には見せない悩みや苦労を誰もが抱えていることを忘れずにいたいなと、教訓となる作品でした。(女性 20代)
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