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映画『アヒルと鴨のコインロッカー』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』の概要:伊坂幸太郎の人気ミステリー小説を、中村義洋監督が映画化した作品。原作の複雑な伏線やトリックを見事にまとめ上げており、中村監督はこの作品で新藤兼人賞の金賞を受賞した。「アヒルと鴨」は本作に登場する外国人と日本人を比喩した表現。

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』の作品情報

アヒルと鴨のコインロッカー

製作年:2006年
上映時間:110分
ジャンル:ミステリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:中村義洋
キャスト:濱田岳、瑛太、関めぐみ、田村圭生 etc

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』の登場人物(キャスト)

椎名(濱田岳)
大学進学のため、仙台のアパートで一人暮らしを始めた青年。実家は東京で靴屋を営んでいる。ボブ・ディランの『風に吹かれたら』を口ずさんでいた時、隣人の河崎という男に声をかけられ、本屋襲撃を手伝うことになる。
ドルジ(瑛太)
椎名のアパートの右隣の隣人。河崎と名乗って椎名に近づき、本屋襲撃を手伝わせる。日本語は話せるが読み書きはできない。深い事情があって椎名を騙す。
琴美(関めぐみ)
ドルジの恋人だったペットショップの店員。河崎の元彼女。正義感の強い女性で、ペット殺しの犯人たちを許せず、彼らから目をつけられる。
河崎(松田龍平)
琴美の元彼。女好きで軽い男だが、独特の魅力がある。ドルジに日本語を教えてやる。HIVに感染しており、密かに病院へ通っている。ボブ・ディランを敬愛しており、彼の歌声を「神様の声」と表現する。
麗子(大塚寧々)
琴美が働くペットショップの店長。ポーカーフェイスでいつも怒っているように見えるが、本当は心の優しい女性。ドルジたちの過去を知る人物。
江尻(関暁夫)
ペット殺しの犯人グループの主犯格。不良仲間の男女とペットの犬や猫を盗み、酷い虐待をして殺していた。大きな本屋の息子。
隣の山形県人(田村圭生)
河崎と名乗っていたドルジが、彼をブータン人のドルジに仕立てて、椎名に琴美のことなどを話す。実は東北訛りのある山形県人。

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』のあらすじ【起】

仙台の大学へ進学することになった椎名は、アパートで一人暮らしを始める。引越しの日、母親から持たされた手土産を持ち、向かって左隣の部屋へ挨拶に行く。しかし隣人は無愛想で、すぐに部屋へ引っ込んでしまう。

玄関前でボブ・ディランの『風に吹かれたら』を口ずさみながら、ダンボールの整理していた椎名は、背後から「ディラン」と声をかけられる。声をかけてきたのは右隣の隣人で、いきなり椎名を自分の部屋に誘う。

隣人は自分のことを「河崎」と名乗り、親しみがわくので呼び捨てにするよう椎名に言う。そして「隣の隣はブータン人だ」と教えてくれる。椎名は、左隣の隣人が無愛想だったのは、彼が外人だったからだと納得する。

河崎は、日本語が不自由なブータン人に広辞苑をプレゼントしたいので、一緒に本屋を襲って欲しいと椎名に頼む。椎名が呆れて帰ろうとすると「ペットショップの店長の麗子を信用するな」と意味不明なことを言う。椎名は気味が悪くなり、早々に河崎の部屋を出る。

翌日の入学式の日。椎名が帰りのバスを待っていると、まだ日本語を話せないアジア系の留学生が、バスの路線がわからなくて困っていた。しかし誰も彼女を助けようとせず、運転手もバスを発車させようとする。すると1人の女性がバスの扉が閉まるのを制し、運転手に抗議する。椎名はなんとなく罪悪感を感じる。

アパートへの帰り道、左隣の隣人に会った椎名は「何か困っていることはありませんか?」と声をかける。彼は妙な顔をして「いいえ」と言って去っていく。

その話を河崎にすると「彼は恋人を失った、話しかけるな」と言われてしまう。河崎の話によると、隣のブータン人はドルジという名前で、琴美という日本人の恋人がいた。車に轢かれそうになっていた犬をドルジが助け、それを見ていた琴美と恋に落ち、2人は同棲していたらしい。河崎は琴美の元彼で、動物園で撮った彼女とのツーショット写真を見せてくれる。

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映画『アヒルと鴨のコインロッカー』のあらすじ【承】

河崎は再び「本屋を襲いに行くぞ」と言い出す。お人好しの椎名は河崎のペースに乗せられ、一緒に本屋へ向かう。河崎は本屋襲撃のために、モデルガンまで用意していた。椎名は躊躇していたが、河崎はさっさと本屋へ入ってしまう。

椎名は仕方なく、河崎の指示通り動く。椎名はモデルガンを持って裏口に立ち、『風に吹かれたら』を歌い始める。歌い終わると1回ドアを蹴り、これを10回繰り返す。それが河崎の司令だった。椎名は怯えながらも任務を完了し、急いで車に戻る。河崎はすでに車内にいて、椎名を見て笑う。強盗は成功したようだが、河崎が盗んできたのは広辞苑ではなく広辞林だった。

翌日、キャンパス内で昨日の女性を見かけた椎名は、彼女に声をかける。女性が市内でペットショップをやっていると聞き、椎名は河崎の言葉を思い出す。「麗子さんじゃないですよね?」と聞くと、女性はなぜ自分の名前を知っているのかと訝しがる。椎名が河崎の話をすると、麗子は妙な顔をする。麗子が「ブータン人を捜しにきた」と言うので、椎名は「アパートにいますよ」と教えてやる。

麗子は椎名に、琴美が自分の店の店員だったこと、2年前にこの辺りでは残忍なペット殺し事件が多発していたこと、そして河崎が病気であることを話す。麗子は「河崎君には気をつけろ」と忠告し、椎名に自分の連絡先を教える。

教科書を買い揃えていた椎名は、昨日買った教科書がどれだったかわからなくなり、河崎に自分の部屋の本棚を調べて欲しいと電話する。しかし河崎は「本がない」と答える。

河崎の言う通り、昨日買ったはずの教科書がなくなっており、椎名は本屋の店員が広辞林を取り返しにきたのかもしれないと怯える。椎名は探りを入れるため本屋へ出向き、女性店員に「昨日遅くまで電気がついていましたね」と声をかけてみる。店員は、江尻という店長のバカ息子が店で騒いでいたのではないかと話す。江尻がクスリをやっていると聞き、椎名は川崎も薬物中毒者ではないかと疑う。

その夜、河崎が車でどこかへ出かけていくのを見て、椎名の不安はさらに募る。翌日、椎名は麗子の店へ行き、河崎のことを聞いてみる。河崎の病気は薬物中毒などではなく、HIVだった。

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』のあらすじ【転】

その日、椎名は母親から父親が胃ガンであると知らされる。母親は、椎名が大学を辞め、靴屋を継ぐことを望んでいた。

椎名は再び河崎を尾行しようとして見つかり、一緒に弁当屋へいく。椎名は麗子に会ったことを打ち明け、ペット殺しの話を聞く。ドルジと琴美はペット殺しの犯行現場を目撃し、3人組の犯人グループに襲われそうになったことがある。ドルジが反撃して逃げることはできたが、「警察に言ってやるから!」と叫んだ琴美は3人組に目をつけられる。

河崎は弁当屋でおにぎりを買い、また車でどこかへ行ってしまう。翌日、椎名は麗子に頼んで車を出してもらい、河崎の車を尾行する。河崎が砂浜へ向かう道に入ったので、麗子は車を停車させ、河崎が帰るのを待ってから、砂浜へ向かう。

砂浜には、タイヤの跡が途切れた場所からススキの野原の方向に、何かを引きずった跡があった。麗子と椎名は、その跡を辿って野原へ入り、1本の松の木にたどり着く。その木の根元には、ナイフで足を刺され、意識を失った状態の江尻がくくりつけられていた。麗子の通報で警察が駆けつけ、江尻は一命を取り留める。椎名が「河崎がやったんですか?」と聞くと、麗子は「河崎君はもうこの世にいない、ブータン人に聞いてごらん」と謎の言葉を返す。

椎名は左隣の部屋を訪ね、辞書を貸して欲しいと頼んでみる。その会話から、彼がブータン人ではなく、山形出身の日本人であることがわかる。椎名は真実を確かめるため、河崎に参考書を見せ「ディランの詩集読む?」と聞いてみる。椎名の予想通り、河崎は字が読めないらしく、ただの参考書を詩集と思い込んで受け取る。椎名にそれを指摘され、河崎は、自分がブータンから来たドルジという名の留学生であることを打ち明ける。そして、ドルジと琴美と河崎の物語を語り始める。

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』の結末・ラスト(ネタバレ)

ドルジはほとんどに日本語が話せないまま、仙台の大学へ入学してきた。孤独な日々を送っていたある日、車に轢かれそうになった犬を助けて琴美と知り合う。琴美が英語を話せたので、2人は会話ができた。2人はすぐ恋に落ち、ドルジは琴美の部屋で暮らし始める。

動物園でデートをしていた2人は、女連れの河崎と出会う。河崎は琴美の元彼で、ボブ・ディランを神様と崇める面白い男だった。しかしあまりに女好きなため、琴美が河崎に愛想を尽かして2人は別れていた。河崎はドルジを気に入り、ドルジの日本語教師を買って出る。椎名は、その時撮った3人の写真を見せてもらう。

ある晩、夜道を歩いていたドルジと琴美は、ペット殺しの現場を目撃する。犯人グループは男性2名女性1名の3人組で、その中にはあの江尻がいた。3人組から逃げる際、琴美はバスの定期券を落としてしまう。

琴美は彼らを憎み「あんな奴ら、鳥葬にしてしまえばいい」となじる。信仰深いドルジは、彼らに石をぶつけたことを後悔していた。琴美は「神様に見て見ぬフリをしてもらおう」と言って、ディランのCDを棚の中にしまい込む。

次の日の夜、琴美はアパートに帰る途中で3人組に襲われ、拉致されそうになる。そこへ河崎が現れ、金属バットを振り回して、彼らを撃退してくれる。ドルジが琴美の身を案じ、河崎にボディガードを頼んでいた。

河崎は琴美のことを心配し「このアパートに引っ越してこようか」と言い出す。琴美は先ほど河崎が鼻血を出したことを気にしており、彼の体を心配する。琴美は、ドルジのボイスレコーダーに偶然録音された病院での会話から、河崎がHIVに感染していることを知っていた。琴美は「私にはドルジがいるから」と言って、河崎を安心させる。

しかし3人組は諦めておらず、琴美の自宅に電話をかけてくる。留守電に録音された音声から、彼らがボーリング場にいることを知った琴美は、自らボーリング場へ出かけていく。琴美は、無抵抗な犬や猫を殺す奴らのことが、どうしても許せなかった。

琴美に同行したドルジは、ボーリング場内のゲームセンターに3人組がいることを確認する。琴美が呼んできた警察は、日本語が不自由なドルジをバカにし、彼の警告を無視して正面から3人組に近づく。ドルジが心配した通り、3人組は裏口から逃げ出し、車に乗り込む。琴美は車の前に立ちはだかり、彼らを止めようとする。それでも江尻はアクセルを踏み、琴美を撥ねる。猛スピードで駐車場を出た車は、トラックと衝突し、江尻以外の2人は即死する。頭から血を流して倒れていた琴美は、車に積まれていた子犬が逃げていくのを見て微笑み、そのまま息をひきとる。

琴美が死んでからも、河崎とドルジの友情は続いていた。とある新聞記事で、江尻が釈放されたことを知った河崎は、復讐を決意する。河崎とドルジは江尻を拉致するため、本屋を襲いにいく。しかし病状が悪化していた河崎は、店の前で倒れ、病院へ向かう車内で死んでしまう。

独りぼっちになったドルジは、河崎のジャケットを着て、河崎になろうとする。アパートで2人を懐かしんでいたドルジは、『風に吹かれて』を口ずさむ椎名の歌声を聴く。ドルジは運命を感じ、椎名に声をかける。ドルジが河崎と名乗ったのは、外人だと相手にしてもらえないと考えたからだった。

そして椎名と本屋を襲撃し、江尻を拉致して車のトランクに隠した。ドルジは江尻を松の木の根元で殺し、琴美の望んだ鳥葬にするつもりだった。しかし結局殺すことができず、麗子に発見されてしまったのだ。

真実を知り、椎名はなんとも言えない気持ちになる。そこへ母親からすぐに戻ってくるよう電話がある。ドルジは椎名を駅まで送ることにして外へ出る。アパートの前には麗子がいた。

麗子は椎名を駅まで送る車内で、ドルジに自首を勧める。ドルジは冗談めかして「そうですね」と答える。

改札口まできた椎名は、リュックからラジカセを取り出し、コインロッカーの中にしまう。椎名がラジカセのスイッチを入れると、ディランの『風に吹かれたら』が流れ始める。椎名はドルジに「神様を閉じ込めるんだ、見て見ぬフリをしてもらおう」と言って、コインロッカーの鍵を閉める。2人は曖昧に再会の約束をして、言葉少なに別れる。

大通りへ出たドルジは、道路に飛び出そうとした子犬を見つけて走り出す。そして新幹線に乗った椎名は、牛タン弁当を広げたまま眠ってしまう。コインロッカーの中からは『風に吹かれたら』が流れ続けていた。

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』の感想・評価・レビュー

ごく普通な大学生の椎名が事件に巻き込まれ、様々な事実が発覚していく内容だったが、とても面白く夢中になってしまっていた。最初の、椎名とドルジの出会いから違和感を感じ、また琴音や河崎との出会いで徐々に真相が明らかになっていくため、出会う人達がどのような人物であるのか、また思っている気持ちなどを想像したり、考えさせられたりした。最後の、椎名がコインロッカーに入れたラジカセから、風に吹かれたらという歌が流れているのを見て、感慨深いものを感じた。それぞれを演じた役者達の、個性が全面に出ていた演技も素晴らしかった。(女性 20代)


さすが伊坂幸太郎原作の映画なだけあって、話にとても引き込まれる。
物語は序盤の平和な雰囲気からラストに向けてだんだんと変わっていく。観終わった後は、何とも切ない気持ちになる。
出演している俳優陣は皆個性的なキャラクターではあるが、ぶつかり合うことなく作品に溶け込んでいる。全員が作品を理解して演じているような印象を受けた。特に主演の濱田岳と瑛太の演技は素晴らしかった。濱田岳は本当に「平凡」を演じるのが上手く、感情移入してしまう。(男性 20代)


原作者伊坂幸太郎さんの小説の雰囲気が見事に実写として出ていてとても嬉しくなった。
小説を読んだ主人公のイメージと浜田岳はぴったりで演技も素晴らしく良かった。
この作品は中盤までの登場人物のちょっとおかしいなと思うところや、見逃してしまう言動や行動全てが伏線になっているので注意深く観て欲しい。

観終わった後はストーリーの伏線もすべて回収されて、この映画で伝えたかったこともしっかりと理解でき本当にすっきり出来る作品になっている。(女性 20代)


アッと驚く結末が待っているストーリーは、作家・伊坂幸太郎の真骨頂である。
さらに素晴らしいのが魅力的な登場人物たちのキャラクターとセリフだ。大どんでん返しモノは気持ちの悪い裏切られ方をするものが多いが、この作品は秀逸。納得の裏切りに遭うのだ。
それもこれも、全体に散りばめられた伏線に、すべて説得力が宿っていることに他ならない。
他人に流されやすい主人公の大学生・椎名を演じる濱田岳、河崎役の瑛太、両者の演技も味を醸し出している。
そして最後には、その「現実」に心を打たれてしまうのだ。(男性 40代)


ボブ・ディランの名曲『風に吹かれて』にのせて綴られていく、優しく切ない物語です。仙台を舞台に、全体を通して爽やかでのどかな空気感で進んでいきますが、その中にじわじわと恐怖・怒り・痛みが滲んでいて、また最後の最後にどんでん返しが待っており、予想を大きく裏切られます。さすが伊坂さん、と思わず唸ってしまいました。

俳優陣の演技もとても素晴らしく、濱田岳さんの一見弱々しいけれど優しく思いやりのある雰囲気や、瑛太さんの笑顔なのにどこか怖くて切ない表情にとても惹かれました。全ての謎が解けた後にもう一度見直すと、このセリフはどんな気持ちで言っていたのだろう、と改めて考えさせられます。ぜひ繰り返し見てほしい作品です。(女性 20代)


邦画らしい穏やかなストーリーかと思いきや、後半で一気に伏線回収し、ガラッと違う話になり驚きます。少し不思議な点はあるけど、大学生の日常を見守るような気分で観ていた前半がすべて伏線だったとは、やられた!と思いました。

主演の濱田岳さん、永山瑛太さんはじめ、どの方もはまり役でとても自然でした。意味が分かると結構怖いストーリーでもあるのですが、作品のキーともなる主題歌ののんびりした空気のおかげか、とても穏やかに温かい気持ちで観られる、不思議な作品です。(女性 20代)


もっと尺が欲しかった。とにかく短すぎてそれだけが残念でした。伊坂幸太郎原作の、映像化不可能と言われてきたこの作品。濱田岳や瑛太など、俳優陣の演技が本当に素晴らしく、原作にも劣らない面白さでした。
作品を通して流れるボブ・ディランの「風に吹かれて」。この曲がすごく印象的で耳に残ります。後半の伏線回収も見事で、何度見ても飽きずに引き込まれてしまう作品です。
原作を読んでから鑑賞すると、より楽しめるのではないでしょうか。(女性 30代)

みんなの感想・レビュー

  1. ぽすぽす より:

    前半は穏やかな邦画らしい作品で、後半一気に謎が解け、前半は全て伏線だったことに気づきます。椎名ののんびりした雰囲気に惑わされ、油断してしまいました。最後まで観終わった瞬間に、もう一度観たくなりました。
    お人好しで流されやすい椎名を演じた濱田さんはじめ、出演者の演技力が素晴らしかったと思います。この作品のどこか違和感があるような、柔らかいのに鋭さもあるような、不思議で独特な空気はこのメンバーだからこそ、出せたのではないでしょうか。

  2. アリィ より:

    前半は不思議なストーリーに翻弄され、本当の河崎役、松田龍平が出てくる中盤辺りからぐいぐい惹き込まれました。ドルジの気持ちを考えると切なさが込み上げます。コメディのような雰囲気なのに、心臓を強く締め付けられるような痛ましいシーンが多く、鑑賞後は物思いに耽りました。「助けられる人は助けたい、そう思うようになった」麗子のセリフが、心に染み入ります。ボブ・ディランの『風に吹かれて』が映画を優しく彩っています。

  3. googly より:

    最初は、大学生になったばかりの椎名の日常から始まります。そこから徐々に、彼の周りで妙な出来事が起こり始めます。隣人と本屋に広辞苑を盗みに入ることになったり、教科書が盗まれてしまったり…。ですが、その全てが伏線になっており、どんどん世界に引き込まれていきます。さすが伊坂幸太郎の原作です。
    すべての謎が明らかになると、悲しい事件が背景にあったことがわかり、何とも言えない気持ちになります。最後に椎名が、神様にはコインロッカーの中でしばらく目を背けてもらおうと、ラジカセをコインロッカーに入れるシーンは、ドルジ・河崎・琴美3人の思いが詰まっている気がして、すごく好きでした。

  4. 森田 より:

    どんでん返しがあるお話なのだけど、その秘密を隠すために映像をうまく使っているのが見所。インチキ一歩手前な気もしなくはないけど、濱田岳演じる主人公の目線に合わせて観ると案外すんなり受け入れられる。
    そして濱田岳、その秘密が明らかになった時に「そうだったのか」と放心するシーンがとても好きだ。
    良く考えると悲しく切ないお話だけど、主人公が何も裁かないのが救いだろうか。「いつか」を決めない「またね」が優しい。

  5. グリー より:

    さすが伊坂幸太郎の本が原作になっているだけあって、多くの題材が出てきて考えることがとても多かった。以前に、原作を読んで強い衝撃を受けたが、それが映像になると強烈さが増したように思える。

    軽くない映画で観終わった後は、言葉が出なくなる。また、登場人物それぞれが問題を抱えていて心が切なくなるが皆とても素敵で大好きになった。

    全てが繋がったとき私はやるせなさで泣いてしまった。

  6. 匿名 より:

    ボブ・ディランの「風に吹かれて」をテーマに、2年前に起こってしまった悲劇への復讐と、その物語に巻き込まれた平凡な青年の様子を、淡々と描いた映画。
    後に「まほろ駅前多田便利軒」シリーズで共演する事となる、瑛太と松田龍平が共に出演しているのも面白い。
    「信じるかどうかはあなた次第」という決め台詞で、都市伝説を紹介する事で有名になった、芸人の関暁夫がペット事件の犯人役で出演しているのも意外性がある。

    名言が数多く作られた作品でもあり、ラストシーンで椎名がコインロッカーに、ボブ・ディランが流れたままのCDプレイヤーをしまいこんでしまうシーンは印象深い。
    映画を見た後、ボブ・ディランの「風に吹かれて」を、思わず口ずさんでしまうような作品だ。

  7. 匿名 より:

    つかみどころのない、ちょっと変わった青年河崎と、平凡な青年椎名のやりとりから、徐々に重い雰囲気のストーリーになっていくにもかかわらず、濱田岳の飄々とした演技が息継ぎになっている。
    ブータン人だと思っていた隣人が、実は山形出身で訛りがあったというだけであり、隣の隣、つまり河崎がブータン人のドルジだったと判明してからも、真剣さはあれど重い雰囲気にはさせない。
    どう見ても日本人であり、片言の日本語も使わない河崎と、日本語が上手く話せないブータン人のドルジ、2役を演じた瑛太も違和感がない。
    しかし、急に日本語をマスターしてしまっている点はツッコミどころになっている。

    ラストを見ている側の想像にお任せ、という大量生産されている作風ではあるものの、2年前の琴美が見た最後の映像に映った犬と重なり、なんともいえないラストになっている。
    また、麗子が常に怒っているような表情だと説明するシーンは、必要あったのだろうか。
    そしていくら名物だとしても、牛タン弁当について何度も確認を取るシーンの多さにはあきれてしまう。

  8. 匿名 より:

    大どんでん返しにやられた、と思う映画。
    かといって、スピード感あふれる作品でもなく、淡々と進む日常の中で椎名と河崎、そこから2年前の出来事へと発展していく作品だ。

    回想シーンで、最初は日本人のようで日本人ではない雰囲気のある俳優、田村圭生をドルジ役に置きながら、椎名が河崎の正体に気が付いた後はドルジを瑛太が演じるという、こだわりぬいた演出がされている。
    現在が進むと共に、2年前のドルジ、河崎、琴美の物語も同時に進むというカットバック形式の映画で俳優まで変わるのだが、ドルジ役が変わると共に、椎名が引っ越してくるシーンでピタリとパズルのピースがはまったかのような、スッキリとした感覚を味わえる。
    ストーリーにもひとりの傍観者として、ありふれた雰囲気を持つ”普通”の若者であり、3人の物語に巻き込まれてしまった椎名役の濱田岳が、出すぎず引きすぎず、視聴者と同じ目線で見ている、という雰囲気があるために感情移入しやすい。