映画『リバーズ・エッジ』の概要:交際相手に虐められている美少年を助けたことで、彼が明かしてくれた秘密を共有することになったヒロイン。それは、学校裏の川原に遺体があるという事実だった。美少年と親密になることで、次第に周囲の不安や抱える問題が明らかになっていく。
映画『リバーズ・エッジ』の作品情報
上映時間:118分
ジャンル:サスペンス、青春
監督:行定勲
キャスト:二階堂ふみ、吉沢亮、上杉柊平、SUMIRE etc
映画『リバーズ・エッジ』の登場人物(キャスト)
- 若草ハルナ(二階堂ふみ)
- ごく普通の女子高生ではあるものの、何事にも揺り動かされない無関心の塊。観音崎と付き合っているものの、横暴な彼に呆れ果てている。虐められている山田を助けたことで親密になる。
- 山田一郎(吉沢亮)
- 大人しい性格の美少年で、観音崎に虐められている。小学生の頃から虐められてきた経緯を持ち、慣れている節がある。実は同性愛者でハルナにカミングアウトする。
- 観音崎(上杉柊平)
- ハルナの恋人で山田を虐めている。イケメンではあるものの、プライドが高く横柄で乱暴。実は両親や兄に放置されており極度の寂しがり。ハルナに惚れ込んでいるが、同じ思いを返してくれないことに不満を抱き、ルミで解消している。
- 吉川こずえ(SUMIRE)
- 高校生モデルをしている美少女。色素が薄くハーフのような容貌をしている。食べては吐くという行為を繰り返し、ハルナの後輩でレズビアン。ハルナを気に入っており、山田と一緒に秘密を共有している。
- 小山ルミ(土居志央梨)
- おしゃれに余念がないハルナの同級生で友人。観音崎と体の関係がある。不細工な姉とは不仲で、多数の男性と性的関係を持ち小遣い稼ぎをしている。貞操観念が低い。
- 田島カンナ(森川葵)
- 山田に気がある女子生徒。山田と親密なハルナに嫉妬心を燃やし、ストーキングするようになる。思い詰めた挙句、ハルナの自宅へ突入し焼身自殺を図る。
映画『リバーズ・エッジ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『リバーズ・エッジ』のあらすじ【起】
私服高校の学生である若草ハルナは、彼氏である観音崎に虐められている同級生の山田一郎が、廃墟のロッカーに閉じ込められたという話を耳にし、深夜にも関わらず助けに向かった。
翌日、ハルナは横暴を続ける観音崎に忠告したが、彼は虐めをやめることなく暴力はエスカレート。その度にハルナは山田の救出に向かい、何かとフォローするのだった。
そんなある日、またも山田を助けたハルナは、彼からお礼に自分の秘密を教えてあげると言われる。夜、山田と合流したハルナは彼から同性愛者であることをカミングアウトされ、更に学校裏の川原で白骨化した遺体を見せられるのだった。山田曰く、死体の存在は高校生モデルをしている吉川こずえも知っているらしい。山田とこずえはたまに2人で、この死体を眺めにやって来ると言う。
同じ頃、観音崎は同級生でハルナの友人、小山ルミを自宅に呼び寄せ薬でハイになり、激しい交合に励んでいた。首を絞めるなどしてアブノーマルな行為に没頭し、終わりのない快楽に耽る。
後日、ひょんなきっかけでこずえと会話する機会を得たハルナ。学校の屋上から山田が好意を寄せている男子生徒を教えてもらった。
映画『リバーズ・エッジ』のあらすじ【承】
そんなある日、学校裏の川原に、ある老人が財産を埋めたという噂が持ちきりになる。ハルナははっとしてこずえを探したが、見つけられなかった。
その時、こずえは人気がない美術室で暴食していたが、そこへ観音崎とルミが現れる。2人はまさかこずえがいるとは露とも思わず、爛れた関係を惜しげもなく展開。こずえは冷静にその行為を見つめ、トイレでまた嘔吐を続けるのだった。
噂を本気にした学生たちが徒党を組んで、捜索へ向かう。噂が実は嘘だと聞いたハルナは、遺体を隠す山田のために学生たちを止めようとしたが、勢いづいた彼らを止めることができなかった。
同性愛者であることを隠すため、田島カンナと付き合うことにした山田は、放課後に学校裏の川原を通りかかり異変を察する。そこでは財産を捜索する学生たちがたむろしていた。遺体が見つかってしまうと危惧した山田は、彼らを止めるために突撃したが、逆に痛めつけられてしまう。
同じく学校裏の川原へやって来たハルナは、そこで酷く殴られ血塗れになった山田を発見。結局この日、財産は見つからず遺体も無事だった。
その夜、山田とこずえ、ハルナは3人で遺体を埋葬しようと川原へ集結。協力して深い穴を掘る。間に休憩を挟みつつ、無事に遺体を埋葬した。
その後、山田はカンナと水族館へデート。その頃、ハルナは観音崎と体を重ねていた。だが、彼女は行為中でも興奮することなく、淡々とこなす。そんなハルナに不満を抱く観音崎。
カンナとのデートを終えた後、山田は行きずりの男とホテルへ。
一方、こずえは自宅でも暴食しては嘔吐する行為を繰り返していた。
映画『リバーズ・エッジ』のあらすじ【転】
山田は好きな男子生徒を眺めて思うだけで十分だと言う。それが、彼にとっては生きるための心の支えになっているのだろう。ハルナはそんな彼の心情を黙って聞いてあげるのだ。
多数の男性と関係を持っていたルミ。月経が来ないことで妊娠したのではないかと考える。そこで、彼女は誰の子供か日記に書いて計算したが、容易に分かるなら悩む必要はない。ルミには不細工で太った姉がいる。だが、姉妹仲は悪く姉はルミの部屋へ勝手に入って、妹の日記を開くのである。
山田に好意を寄せるカンナは、付き合っているはずなのに相手から同じ思いを返されないことで焦っていた。更に彼女は仲が良いハルナに嫉妬心を燃やし、ハルナの自宅へ無言電話を繰り返すようになる。しかも、山田の気を引きたいあまり、自分のことばかりを話してしまい、彼から煙たがられてしまうのだった。
翌朝、登校したハルナは、下駄箱に手紙が入っているのを発見。しかし、中を開くと恨み言ばかりが書いてあり、まるで呪いのようだった。差出人は不明で恨みを買うような相手に思い当たる節がない。
その日、ハルナはいつものように保健室で授業をサボっていたが、こずえが現れて焼却炉付近へ連れて行かれる。彼女はビニールに収められた猫の死体を見せるが、ハルナはショックを受け嘔吐。実は、山田と共にこの場所で殺された3匹の子猫を密かに育てていたのだ。ハルナは酷く胸を痛め、号泣してしまう。
夜、学校裏の川原に観音崎を呼び出したルナ。彼女は堕胎するための資金を彼に要求。恋人のハルナのことはとても気遣うのに実際、性欲を解消するためのルナには気遣う様子もない。不満を述べたルナは観音崎を蔑み、悪態を吐く。腹を立てた彼はルナに対して暴力を振るい、衝動的に首を絞めてしまうのだった。事切れたルナに茫然とした観音崎だったが、ふと顔を上げそこに山田が立っているのを目にする。
同じ頃、号泣したハルナを慰めるため、彼女を自宅へ招待したこずえ。彼女は暴食と嘔吐を繰り返している事実を明かし、ハルナが好きだと口づけをした。
山田は観音崎を連れてルナの遺体を埋葬しようと行動を開始。そこで、彼はこずえとハルナを助っ人として呼ぶことにした。ところが、準備を進めているうちにルナの意識が回復。彼女は川原から逃れ帰宅したが、自室に忌々しい姉が勝手に入っているのを目撃。姉妹は激しく罵り合い、激怒した姉はカッターで妹を酷く殺傷してしまうのだった。
映画『リバーズ・エッジ』の結末・ラスト(ネタバレ)
準備を整え川原へ戻った山田と観音崎だったが、そこにルナの姿はなく。助っ人のこずえとハルナも到着したが、埋めるための遺体がないため、途方に暮れてしまう。情けなくもハルナにすがりつく観音崎。彼は彼女に救いを求めて即物的な性衝動へと走るのであった。
呆れ果てた山田とこずえは帰路へ着いたが、その途中で火事現場に遭遇。どうやら自らに火を放った者が投身自殺を図ったらしい。焼死体はすでに何者であったか、外見では判断できないほどに焼け爛れていたが、遺体の付近に見覚えのある帽子を目にした山田。それは、カンナがいつも被っていたベレー帽だった。山田と仲が良いハルナに嫉妬心を募らせたカンナは、自らに火を放ちハルナの自宅へ飛び込んだらしい。
姉に酷く傷つけられたルナは一命を取り留めたものの、心を病んでしまいまともな受け答えができないほどになってしまった。ハルナの自宅もカンナのせいで酷い有様となり、一家は団地に住み続けることができなくなる。引っ越しの荷物整理に勤しむハルナだったが、手伝いのために観音崎がやって来る。
あれ以来、どことなくぎこちない2人。ハルナは引っ越しと共に観音崎とも別れるつもりだった。ハルナ自身、無関心の塊であるため、彼と別れたとしても感情が揺さぶられることはない。だた、ルミの中に芽生えた新たな命が姉によって奪われたことには少なからず、衝撃を受けた。全てにおいて無関心であるハルナではあるが、感情を揺さぶられ喜怒哀楽を心から感じて生きることを願ってはいる。しかし、それがいつになるのかは、本人にすら知る由もないのだった。
観音崎と別れたハルナの元に山田が訪れる。その後、彼と共に夜の散歩へ。山田とハルナの間には特別な絆などない。ただ、2人は同じ場所に立って互いに認め合っているだけだ。それでも、ハルナは山田と離れることに寂しさと悲しみの感情を抱いた。そうして、2人は陸橋の上から薄暗い空を眺め続けるのであった。
映画『リバーズ・エッジ』の感想・評価・レビュー
原作は岡崎京子による同名漫画。岡崎京子と言えば、『ヘルタースケルター』の著者でも名が知られている。今作は無関心の塊であるヒロインが、ゲイでいじめられっ子の美少年と親密になることで、周囲の様々な不安や感情がむき出しになっていくというものである。
それぞれに悩みや不安を抱えた若者達の姿をありのまま描いており、共感できることも多い。若さ故に行動に移してしまうことも、それで失敗して追い詰められることも分かる。ただ、衝動的に相手へと手を出す前に、何かなかったのかと思わないでもない。そんな紙一重の立ち位置にいる、危うい10代の繊細な感情を少々大げさに描いた作品。(MIHOシネマ編集部)
ストーリー、出演者の演技力など見どころの多い作品ですが、個人的には衣装が素敵で特に見応えがありました。原作が93~94年に連載された漫画で、おそらくその当時の時代によせたスタイリングだったのではないかと思います。また、それぞれのキャラクターに合わせて個性が良く出ており、こういう性格の子ってこういう私服着ていそうだなというリアルさが良かったです。さらにその衣装を着こなし、演技でも役柄を表現する役者のみなさんの演技力に加え、若手俳優を多く起用した配役も素晴らしいと思いました。(女性 20代)
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