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映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』の概要:生前、わずか10篇の詩を発表しただけで、無名だった女性詩人エミリ・ディキンスンの生涯を描いた伝記的作品。没後、発見された1800篇以上もの詩篇の中から厳選した20篇の詩と共に、孤独で崇高な生き方を描いている。

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』の作品情報

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン

製作年:2016年
上映時間:125分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:テレンス・デイヴィス
キャスト:シンシア・ニクソン、ジェニファー・イーリー、キース・キャラダイン、ジョディ・メイ etc

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』の登場人物(キャスト)

エミリ・ディキンスン(若年:エマ・ベル / 壮年:シンシア・ニクソン)
福音主義に抵抗を感じ、自分の魂は自分のものだと断言。確固たる意思を持ち、それを惜しげもなく口にすることができる女性。韻文の才があり、常に詩を書き綴っている。崇高で厳格。自己評価はかなり低く頑固。容貌も他より酷く劣っていると思っている。
ラヴェニア・ディキンスン(ジェニファー・イーリー)
愛称ヴィニー。エミリの妹で理解者。孤独な姉を労わり、愛さずにいられない人と評する。辛辣な言葉を口にする姉を、強い言葉で身を守っていると言う。
エドワード・ディキンスン(キース・キャラダイン)
エミリの父親で弁護士。神経質で頑固な面はあるものの、家族を愛し大切にしている。礼節や敬意を持って人と接しなさいと子供達に教える。厳格でいかめしい容貌。
スーザン・ギルバート(ジョディ・メイ)
兄嫁。心優しい女性で義理の妹達とも仲良し。頭が良くエミリが詩を綴る理由を聞き、その孤独を知って涙を流す。密かにエミリの味方となり支える。
ヴライリング・バッファム(キャサリン・ベイリー)
資産家の娘でエミリの親友。エミリと同じように福音主義には反対で、俗世っぽいものの言い方をする。ユーモアがあり経営者のような考え方をしている。
オースティン・ディキンスン(ダンカン・ダフ)
エミリの兄で弁護士。正義感に溢れ誠実で真面目。家族を大切にしており、スーザンとの間に息子を儲ける。

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』のあらすじ【起】

19世紀半ば、マサチューセッツ州。家族と離れ、マウント・ホリヨーク女子専門学校に通っていたエミリ・ディキンスンは、福音主義の教えに抵抗を覚え堂々と反論する意思の強い女性だった。
そんな彼女をある日、家族が迎えに来る。エミリの父エドワードは弁護士、兄オースティンも弁護士を目指しており、妹ラヴェニア、通称ヴィニーはいつでも姉の味方で可愛らしい女性だった。

エミリは当時の女性像、従順であれという性質とは少し違っていて、自分の意思をはっきりと告げ行動に表すしっかり者で、詩を書く才能がある。親戚はそんな彼女を非難したが、家族は全員がエミリはそのままで良いのだと、彼女の在り方を賛成し支えてくれていた。

自宅へ戻ってからしばらく後、資産家の娘ヴライリング・バッファムが訪ねて来る。彼女は革新的な考え方をする女性で、エミリは初対面からヴライリングに好意を抱く。ヴライリングもまた福音主義に反した考え方をする女性で、自分は魅力的でしょうと堂々と口にする面白い人物だった。

そんなある日、祈りの場にて跪くよう促されたエミリは頑として跪かず、父に強く叱られてしまう。エドワードには少々神経質な面があり少しでも皿が汚れていると指摘するような人だったが、エミリは父への反抗として目の前で皿を割り、汚れが取れたと言うのだった。

ヴライリングは口が達者で、まるで経営者のような言葉を話す。エミリはそんな彼女に自分との共通点を見つけたような気になり、親交を深めるのであった。
やがて、ハーバード大学へ通っていた兄オースティンが弁護士として仕事をすることになり、スーザン・ギルバートという女性と結婚。実家の隣家へ住むことになる。

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映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』のあらすじ【承】

そんな折、スーザンが男の子を出産。一家に新たな家族が増え、エミリは愛すべき甥に自作の詩を即興で送った。だが、時代は常に変化しており、南北戦争が勃発。エドワードは後継者としてオースティンに残るよう命令。ところが、正義感溢れるオースティンには父の命令など到底、受け入れられず父と息子は口論となり結局、オースティンは家に残ることになった。

南北戦争は60万人以上の死者を出し悲惨な結果で終結。エミリは戦争に対しても詩を綴っている。この戦争にて奴隷制度は廃止されたが、エミリ曰くそもそもの奴隷制度が間違っていたのだ。この件に関し兄と論議を醸した妹。その日の朝方、エミリの元へスーザンがやって来る。午前3時から朝までの時間は、エミリが詩を綴る大事な時間だった。

エミリ曰く、詩を綴ることはただの日課で、自分を救済するためのものらしい。故に、人並みに結婚し子を儲けたスーザンには素晴らしい人生がある。スーザンはエミリには詩があると言うが、エミリは自分達のような者は常に剥奪される身であるため、飢えを耐え忍ぶには救いが必要だ。それが彼女にとっての詩なのであった。厳格なまでのそんな考えに、スーザンは思わず涙。

ある日、教会の説教を聞きに向かったエミリ。彼女は説教をした牧師に恋心を抱く。だが、彼はすでに妻帯者であったため、望みは薄い。それでも親交を深めたいので、牧師夫婦をお茶に誘った。ところが、牧師夫婦は非常に厳格で信心深く、特に牧師の妻とはまるで馬が合わない。そこで、エミリは牧師に庭を案内することにし、妻の対応はヴィニーに任せることにした。

牧師へと詩を送ったエミリ。彼はエミリの詩は素晴らしいと絶賛。彼女は詩人として世に幾つかの作品を発表していたが、さほど多くはなく高望みもしていない。それは以前、女に大作など作れるはずがないと非難されたせいでもある。加えて彼女自身も自分の詩は後世に残れば良いという控えめな考えであった。

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』のあらすじ【転】

エミリが片思いで浮かれている時、ヴライリングが結婚すると言い出す。相手は数学者で物の捉え方が面白いらしい。結婚は安穏な墓場のようなものと捉えていたヴライリングだったが、いずれは自分も慣れると柔軟に受け入れようとしている。ただ、表向きは従順に振る舞うが、心はいつでも自由である。彼女はエミリに自分の深淵を常に見つめ、善悪を受け入れて心のままにありなさいと言うのであった。

ヴライリングが結婚で遠方へ行くことになりその上、牧師までもがサンフランシスコへ行くという知らせが入る。エミリは皆が自分を見捨てると悲観的になり、知らせをくれたヴィニーと口喧嘩。そもそも、エミリは自分が美しい容貌を持っているとは思っておらず、自己評価がかなり低かった。周囲から見ればそれは全く解せない評価であったが、本人は生来の頑固さから考えを改めようとしない。エミリは人知れず失恋に咽び泣き、そんな彼女を妹は慰めるのであった。

ヴライリングが結婚してしばらく後、父エドワードが死去。厳格でありながらも、深い愛情を持った父を家族全員が偲んで泣いた。エミリはあまりの悲しみに葬儀へ参列できず、引き籠ってしまう。そうして3日後、エミリはなぜか白い服を着用して現れる。そんなこともあり、頑固さも相まってエミリはますます意固地になり、気難しい性格へ。

口答えをする上に自己評価が低いせいで否定的。好意を持って近づいてくる人物には辛辣な口を利き、反発ばかりして容易に受け入れようとしない。
エミリへと好意を寄せる青年が現れても、酷い言葉を投げつけては追い返す始末。見兼ねたヴィニーが注意しても態度を改めることをしなかった。

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』の結末・ラスト(ネタバレ)

それから後、引き籠っていたエミリに不測の事態が起こる。若い頃から時折、感じていた背中の痛みが近頃では頻回だった。両手足に浮腫みが発生し、やがて彼女は部屋で倒れ長い時間、痙攣に苦しむ。彼女は自分の身があまり長くないのではないかと感じ、医師の診察を受けた。

発熱に嘔吐と酷い腰痛に苛まれるエミリに、医師はブライト病だと告げる。それは腎臓の病で治療法は未だ確立されておらず、利尿剤と便秘薬で症状を緩和するしかなかった。
その後、高齢の母親が発作に倒れ介護が必要な状態に。エミリとヴィニーは献身的に母親の世話を行い、やがて母親は家族全員に見守られながら息を引き取るのだった。

両親の死を経た後も引き籠もり続け、病気の苦しみと戦うエミリ。ある深夜、オースティンの浮気現場を目撃してしまう。彼女は相手の女性を追い返し、兄を責め立てた。だが、オースティンは悪びれもせず、妻とは別物だと言う。スーザンは素晴らしい女性なのに、彼女を蔑ろにする兄を許すことはできない。オースティンは強い言葉で責め立てる妹に激怒して、部屋を出て行ってしまうのだった。

そんな兄と姉の喧嘩に末の妹であるヴィニーは、エミリは辛辣な言葉で自分の身を守っていると言う。高潔で厳格過ぎるエミリは、人間の本性を理解することを拒絶し相手に聖人であることを求める。故に、兄の不貞が許せないのだ。そんな姉にヴィニーは間違っているとはっきり告げた。するとエミリ自身、自分が間違っていることを自覚しているが、それでもどうしても許すことができないのだと涙するのである。
その日の夜、エミリが痙攣の発作を起こす。家族は一丸となって彼女の看病をし、そうして最期の息が吐き出されるのを見守るのであった。

一生涯、独身で過ごし高潔で厳格。自己評価は常に低く、確固たる強い意志を持ち孤独だったエミリ。
エミリ・ディキンスンが生前、発表した作品はわずか10篇のみであったが、没後の1886年、ヴィニーは整理ダンスの引き出しから、清書され46束にまとめられた詩稿を発見する。それは1800篇近くにも及ぶ、エミリの詩稿であった。後の世に発表されたエミリの詩は世界でも絶賛され、各界へ多大なる影響を及ぼし今も尚、多くの芸術家へ影響を与えている。

映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』の感想・評価・レビュー

偉大なる女性詩人エミリ・ディキンスンの生涯を描いた伝記的作品である今作。主演はベテラン女優のシンシア・ニクソン。わずかな表情の変化や、往年時の厳しい態度、病気の症状を詳細に渡り徹底して演じている。シンシア自身、エミリ・ディキンスンの熱心な愛読者であることから、役柄に対しての熱意が感じられる。

作中でも厳選された20篇の詩が使われおり、それらの詩は心に響くものばかり。素晴らしい言葉と韻文は信奉されるに値するものと思われ、いかに素晴らしい詩人であったかが分かる。実際に詩を読んでいるかのような素晴らしい作品である。(MIHOシネマ編集部)


本作は、アメリカの詩人エミリー・ディキンスンの生涯を描いたヒューマンドラマ作品。
劇中の舞台の殆どがディキンスン家の住居と庭だけなのに、とても壮大でドラマチックに映し出されていた。
彼女の静かさの中にある鋭さや情熱が表現されたシーンに、心が熱くなり印象に残っている。
自分の時間を持つことはもちろん、心の自由を求めることが当時の女性たちにとってどれほど大変なことだっただろうか。
彼女が最後まで孤独を恐れず、芯を持つ姿がとてもかっこよかった。(女性 20代)


女性は従順でなければならず今よりももっと生きづらい時代、エミリにとって詩を書くことが唯一の自由だったのかなと感じた。妹のラヴェニアはそんな姉のことをきちんと理解しており、支えている姿が素敵だった。姉妹と言えども、ここまで自分のことを理解してくれる人はなかなかいないと思う。
シンシア・ニクソンははまり役だったと思う。厳格で、自分の自信がなくて、不器用なエミリという女性を、見事に表現していた。(女性 30代)


「私を一度も愛してくれたことのない世界への手紙」と言うフレーズにグッときてしまった今作。社会への不満や今の現状を打破する方法など、特に何も考えずに生きてきてしまった私。全て満足している訳では無いけど、生きていけるからいいかと思って何か不満を口にしたことはありませんでしたが、エミリの行動や発言を見ていると、私の考え方はただの諦めなのだと感じました。
全ての人がエミリのような生き方を出来るとは思いません。しかし、エミリのように声をあげて世界を変えようとしてくれる存在がいることを忘れてはいけないなと感じました。(女性 30代)

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