映画『さよなら、人類』の概要:スウェーデンのコメディ・ドラマ作品。ロイ・アンダーソン監督・脚本による『リビング・トリロジー』の1つであり3作目。冴えない中年男性2人組は、人を楽しませるグッズの販売を行っている。彼らが出会う多種多様な人々を淡々と映し出している。
映画『さよなら、人類』の作品情報
上映時間:100分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:ロイ・アンダーソン
キャスト:ニルス・ヴェストブロム、ホルゲル・アンデション etc
映画『さよなら、人類』の登場人物(キャスト)
- サム(ニルス・ヴェストブロム)
- 四角い顔で体格の良い男性。ヨナタンと共に人を楽しませるグッズの販売をしている。悲観的なヨナタンしか友人がおらず、中盤には車に轢かれて杖歩行となる。
- ヨナタン(ホルゲル・アンデション)
- サムの相棒。悲観的で泣き虫。足が悪く引き摺って歩いており、体格や顔に丸みを帯びた壮年の男性。サムにはゾンビが寝ながら歩いているようだとからかわれる。
映画『さよなら、人類』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『さよなら、人類』のあらすじ【起】
3つの死との出会い。
死との出会い、その1。
妻との夕食のため、ワインの栓を開けようとした夫。オープナーでどんなに引っ張っても栓が抜けない。ふんばった彼は突如、胸痛に苦しみそのまま帰らぬ人となってしまうのだった。
死との出会い、その2。
高齢の母親が急変したとのことで、病院へ駆け付けた3人の兄妹。母の容態が安定したため、帰宅しても良いと医師から言われるが、母は鞄を握り締めて離さない。大事な鞄を天国に持って行けると思っているらしく、末の弟が取り上げようとするが、母は声を上げて拒否。兄と弟もまた意地になって引っ張り合いを展開し、母は帰らぬ人となってしまうのだった。
死との出会い、その3。
食堂にて会計を終えた後に突然、倒れた男性がそのまま息絶えてしまった。職員は30分以上、延命処置を施したが、息を吹き返すことはなく。食事は食べられることなく放置されたまま。そこで、職員は他の客に食事を分けることにしたのだった。
フラメンコのダンススタジオにて、若くてイケメンの青年に触れたくて仕方ない講師。ダンスの練習中、何度も触れてはやんわりと拒まれる。レッスン後、レストランにて講師は青年へモーションをかけたが、断られてしまうのだった。
散髪のために理容院を訪れたサムは、理容師の経歴を聞き電話対応している間に逃げ出して来る。彼は相棒のヨナタンと人を楽しませるグッズを販売して歩いていたが、予定どおりに散髪できなかったことが不満であった。
映画『さよなら、人類』のあらすじ【承】
待ち合わせ場所であるカフェバーにて、相棒と合流したサム。不機嫌の理由を問われたので答えたくないと言うと、ヨナタンは落ち込んで泣き出してしまう。彼はいつも否定的で落ち込みやすく泣き虫なのだ。そんなヨナタンのために、他の客が元気づけようとグッズを買ってくれることになった。
サムとヨナタンが販売しているのは、玩具の吸血鬼の牙や笑い袋などである。交渉は主にサムが行い、ヨナタンは実演する側だった。新製品は歯抜けおやじの仮面であったが、少々時代遅れな感は否めない。当然、雑貨店の店主にはウケなかった。
1943年、サムとヨナタンが行けつけのカフェバーは全盛期を迎えていた。店を仕切るママも若く、客の誰もが生き生きとしている。ママは美しい歌声を披露しつつ、酒を配って歩いたものだった。彼女が歌い始めると、他の客もこぞって歌い出す。お代はキスで十分だとママは客のキスを受け取り、次々と酒を渡すのであった。
それが現在。古き良き時代を知る老人は、店員に手伝われてコートを着た後、昔を偲びつつ帰宅するのだ。
グッズ販売を行うサムとヨナタン。次の雑貨屋へ商品の売れ筋を確認しにやって来た。どうやら納めた商品は数点売れたようだが、料金が支払われていない。再三の催促にも応じない店主へ直接声をかけたが、店主にも支払いをする金がないのだと叫ばれてしまうのだった。
町外れのカフェバーを訪れたサムとヨナタンは、道に迷っていた。彼らは金を貸した人物の家を探していたが、ひとまずは近くの店へ。そこで面白グッズの紹介をした。いつものように仮面を被ったヨナタン。だが、そこへ馬に乗った男性が現れ、女性はこの店から出て行けと威嚇。18世紀の隊服を着ていたが、女性を追い出した後、憲兵を呼んでなぜかゲームを楽しんでいた男性に鞭を振るわせる。時代錯誤な現象に驚きを隠せない一同。
しばらくすると、通りを騎馬隊が通り抜けスウェーデン国王のカール陛下が現れた。陛下は兵士の背を足蹴にして馬から降りると、バーの店員に飲み物を注文。店員はソーダ水を出しグラスに注いだ。陛下は一言、美味いと感想を述べる。更に若い店員に戦争へ随従しろと命令し、兵達に歌を唄わせるのであった。どうやら若い店員は陛下の好みの男性だった様子。
映画『さよなら、人類』のあらすじ【転】
サムとヨナタンが住むアパートに、ある女性が現れる。2人が住むアパートは入居者しか中に入れない規則で、女性は受付に現れた2人に契約書を見せ、なぜグッズの販売をしないのか詰問する。すると、ヨナタンは最近、ツキがなくサムが通りで車に轢かれたため、仕事を休んでいると言う。女性は仕入れ業者らしく、サムとヨナタンが仕入れたグッズの支払いをしろと迫り、2週間の猶予を与えて去って行った。
いつものカフェバーへ来たサムとヨナタンは、軍人らしい男性の話を聞いている。彼は以前にも予定を勘違いして約束を果たせなかった。どうやら、今回も予定に間に合わなかったようで、その経緯を滔々と語るのだった。
歯抜けおやじのマスクを被りながら、歌を聞いていたヨナタンの部屋へサムが訪れる。ヨナタンは今聞いている歌を何度も繰り返して聞いていると悲しくなると言う。サムはそんな彼に専門医への受診を勧めたが、ヨナタン自身も自分が心配だと言い、それでもひたすら同じ曲を何度も聞き続けるのだった。
軍隊が行軍して行った不思議なカフェバーの通りを、戦争帰りの兵士達が通り過ぎて行く。様子から察するにどうやら戦争には負けたらしく、兵達は疲れ切った様子でうなだれていた。すると、今回も陛下が来店。彼もまた酷く疲れているようで、自力で馬から降りることもできない。敗戦したせいで、国の半分を失ったと呟く。店に来ていた女性たちも戦争で夫を失ったらしく、涙に暮れているのだった。
映画『さよなら、人類』の結末・ラスト(ネタバレ)
車に轢かれたせいで杖歩行となったサムだったが、ヨナタンも足が悪いため、独特な歩き方をする。そんな彼をゾンビが寝ながら歩いているみたいだと揶揄するサム。彼は商売下手な相棒に苛立ちを募らせ、相棒を解消し販売の仕事を辞めると言い出す。だが、そもそも事の始まりはサムが言い出しっぺだった。ヨナタンは彼に誘われ相棒になったに過ぎない。それなのに自分を罵った挙句、勝手にやめると言う。ヨナタンはしきりにサムが言い出しっぺだろうと責めるのであった。
サムに見限られたヨナタンは、1人でも面白グッズの販売を続けようとするが、どうにも上手くいかない。
自宅へ戻ってしばらく後、サムは親友への態度を反省し、部屋を訪ねて許しを乞う。すると、ひとしきり謝罪を聞いたヨナタンも、自分も悪かったと許してくれるのだった。
ヨナタンの部屋に再びサムが訪れる。しょんぼりしたヨナタンは死者の夢を見たが、その中に自分もいたと話す。サムは明日からまた商売を再開するため、そんな様子では人を楽しませることはできないと言い、部屋を出て行く。すると、ヨナタンは廊下へ出て、人を利用することはいいことだろうかと問うのだった。
自転車屋の主人が店のドアを開け、中へ入る際に「また水曜に」と声を掛けて行く。すると、店の前にいた男性が、今日は水曜だろうかと周囲の人々に問い掛ける。周囲の人々は間違いなく水曜だと言うものの、男性は木曜日のような気がするとしきりに頭を捻る。そこへ、自転車に乗った若者がやって来て、空気圧を確認後、去り際に「また水曜だ」と言って去る。男性は納得して押し黙るのであった。
映画『さよなら、人類』の感想・評価・レビュー
様々な場面が映し出されるが、場所は定点カメラによって動くことはなく、その中を人々が動き回る。時にくすりと笑わせるシチュエーションを映し出し、あるいは悲しみの場面を映すなど多種多様。その中でも唯一、ストーリー性があるのはサムとヨナタンのやりとりである。
冴えない中年男性は2人で人を楽しませるグッズを販売しているが、そもそもグッズ自体が怪しい。更に彼らはにこりともせず、無表情なのに互いを労わる気持ちはとても感じられる。合間には必ず、元気そうで良かったと電話をする人々が映し出され、最終的には不思議とほわっと温かい気持ちにさせられる。なんとも不思議な作品。(MIHOシネマ編集部)
無表情でパッとしない二人の男が今作の主人公。サムとヨナタンは面白玩具の販売を仕事としていますが、営業とは思えないほど無表情で暗いオーラを纏っています。そんな2人の周りで起こる不思議な出来事。冒頭、3つの死の場面を紹介しますが最初はその意味がよく理解できなかったものの、物語が進むうちに死は意外と身近にあって思っているほど苦しいものでは無いと言っているような気がしました。
正直、今作が伝えたかったことはよく分かりませんが見る人それぞれが色々な感じ方が出来ると思います。(女性 30代)
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