映画『DAGON』の概要:友人のヨットでクルーズに来たポールとバーバラのカップル。しかし嵐のせいでヨットが座礁してしまい、友人の1人・ビッキーが脚を負傷する。ポールとバーバラは近くの漁村に助けを求めに行くのだが、寂れたその村は恐ろしく静まり返っていて……。
映画『DAGON』の作品情報
上映時間:95分
ジャンル:ホラー
監督:スチュアート・ゴードン
キャスト:フランシスコ・ラバル、エズラ・ゴッデン、ラクエル・メロノ、マカレナ・ゴメス etc
映画『DAGON』の登場人物(キャスト)
- ポール(エズラ・ゴッテン)
- 株で一儲けした、眼鏡が特徴の真面目な青年。恋人のバーバラとはその記念か、友人ハワードのヨットで船旅に訪れる。しかし、突如の嵐に見舞われヨットは座礁。脚を怪我した友人達を助けるために近くの漁村「インボッカ」を訪れるが、そこは「瞬きをしない」、「手に水かきのようなものがついた」、「首に3つの傷跡のある」、そして挙動のおかしい不気味な村人達が集う奇妙な村であった。
- バーバラ(クエル・メロノ)
- ポールの恋人。行動的な性格で、旅先でも仕事を忘れないポールに苛立ちパソコンを海へ投げ捨てるなどかなり勝気な面も。
- エゼキル(フランシスコ・ラバル)
- インボッカに住む唯一の「人間」。頭のおかしな酔っ払いとして村では扱われている老人。
- ウシア(マカレナ・ゴメス)
- ポールの夢の中で出会う人魚のような美しい女。その正体は……。
映画『DAGON』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『DAGON』のあらすじ【起】
友人・ハワードのヨットでバカンスに訪れていた、ポールとバーバラのカップル。眠りに就いていたポールは夢の中で、海に沈む黄金に触れようとした瞬間、美しい人魚に襲われ目を覚ます。投資で成功したポールは大金を手にしていたが、ヨットの中でも株価を気にしてばかり。口論になった2人を、ハワードとその妻、ビッキーは呆れたように眺める。そんな時、嵐でも来そうな空色を眺め、嫌な空気を覚える一同。ふと歌声のようなものが潮風に乗って聞こえてきて、視線を向ければ小さな村がぽつんと佇んでいるのが見える。
嫌な予感は的中し、村の方からやってきた暗雲と強風により岩に座礁してしまうヨット。その衝撃により、ビッキーが倒れてきた家具の下敷きになり脚を挟まれ、身動きが取れなくなってしまう。無線も繋がらず、ハワードは信号弾で村に合図を送るようにポールに命じる。しかし村には何故か人がおらず、直接ボートで村へ行くことに。浸水する前に急がねばとポールとバーバラが村へ向かい、ハワードはビッキーの傍で救援を待つ。そんな中、ビッキーが「水の中に何かがいる」と言い出す。血と泥で濁ったそこは暗く何も見えなかったが、やがてビッキーが悲鳴を上げたのと同時に水中で生き物が呼吸しているように蠢く。ハワードが銃で発砲し、それをボートで聞くポールとバーバラ。猶予はないと目前の村へ辿り着くが、やはりそのどこか寂れた漁村「インボッカ」は無人。村から聞こえる歌を頼りに教会へ向かうと、そこには「ダゴン秘密教会」と書かれている。それを見た瞬間、ハワードは何故か軽い頭痛を覚える。戸を開くが、中は真っ暗で誰もいない。不思議がっていると奥から司祭と思しき男が現れたので、事情を説明する。司祭に頼み、村から船を出してもらいヨットへ向かうことに。ヨットにはポールが乗り、バーバラが村に残って警察と医者に事情を説明する流れになるが、村では携帯が繋がらない。ため息を吐いていると、司祭が村のホテルに電話があると言ってくる。しかし、バーバラは見てしまった。司祭のその指先に水かきのようなものがついているのを。
気のせいなのか定かではないが村の住人らは皆、瞬きをしない。バーバラはどこか異様な村の中を、激しい雨に打たれながらも走る。村人達は外部からやってきたバーバラを警戒しているのか、異物でも見るかのような視線を向け、皆逃げるようにして窓を閉じたり背を向けて行く。逃れるようにしてバーバラはホテルへと辿り着くが、ホテルのオーナーらしき男に電話を貸してくれるよう頼んでも男は返事をしない。かっと見開いた目のまま、バーバラを見つめるだけだ。その時、先程の司祭が現れ、バーバラは事情を訴えようとするが、司祭とオーナーに襲われ拉致されてしまう。
一方でヨットへ向かったポールだったが、ヨットの中にハワードとビッキーの姿がどこにも見当たらない。仕方なく村へ引き返すことを余儀なくされるハワード。
映画『DAGON』のあらすじ【承】
ポールが再び村へ戻ると、司祭が「バーバラは50キロ先の警察へ向かった。1時間程で戻るからホテルで待っていてくれと言われた」と話す。嵐の中、ホテルへと辿り着くと、やはり無表情なオーナーがいた。バーバラの存在を問うが、オーナーは瞬き1つとせず何も答えない。仕方なくとりあえず部屋を借りることにすると、ようやくオーナーは反応を示したよう鍵を取りに振り返る。その時、オーナーの首筋に3本の不審な傷跡を見つけるポール。言葉を発さぬ不気味なオーナーから鍵を受け取ると、すぐに2階の部屋へと向かう。
通された部屋は最悪な程に汚く、劣悪な環境だ。相変わらずの天候の悪さに加え、何やら外が騒がしい。ポールが部屋の窓を開けると、村の中が人で溢れ返っている。人語ならぬ言語を話し、蠢く不気味な村人達に気を取られていると、村人らはポールを見つけるなり指を差し叫び出す。慌てて戸を閉めるが、村人達が一斉にポールの部屋目掛けて突き進んでくる。村人達はまるでゾンビのように押し寄せ、逃げ場を失ったポールは部屋の外へと落下してしまう。逃げていくと、謎の乾燥物が下げられた部屋へと辿り着く。ばれぬよう移動していると、その物体がどうも人の皮でできたミイラのように見える。怯え叫びそうになった矢先、吊り下げられていたそれらの中にまだ作られて間もない、生々しい皮を見つける――その物体は、変わり果てたハワードであった。思わず絶叫するポール。村人らはそれを聞きつけ襲ってくるが、ポールは手近にあった油を蹴り飛ばし、持っていたバーバラのジッポライターで火を灯し、窮地を凌ぐ。村人らは火を怯え逃げていく。村人らはもう人の形をしておらず、半魚人のような物体をしたものまで存在していた。
何とか逃げ出したポールが出会ったのは、1人の老人だ。老人は今までの村人とは違いポールを襲ったりはせず、むしろ逃げ出そうとさえした。ポールは彼を捕まえ力になってくれるように頼む。頷いた老人、エゼキルを見るなり、ポールは何故ハワードを殺したのか問いかける。エゼキルは新しい顔が欲しかったからだろうと言う。絶望するポールにエゼキルは言う、この漁村インボッカからは出られないと。何故自分達は殺されなくちゃならないと泣くポールに、エゼキルは自分の言葉を信じて欲しいとした上で、この村の秘密を語り始める。
映画『DAGON』のあらすじ【転】
かつてこの村、インボッカは神の村だった。漁師の子だったエゼキルだが、不作により魚が採れなくなってしまう。神に祈りを捧げても無駄に終わり、そんな中、突如村へと訪れたのはカンバロという名の船長だった。カンバロは海で黄金を見つけた偉大な男で、何も答えない神に祈る村人達を愚かだと言う。彼の知る神は魚だけではなく他のものも与えてくれると言うが、神父は許さなかった。すると、カンバロは「なら証拠として偉大な神・ダゴンを連れて来る」と言い夜の海に怪しげな呪文を唱える――「イア、イア、カトゥル・ファタガン」……その術に呼応するよう村はすぐ豊作になった。魚と共に黄金も採れるようになった。村人達はキリストを捨て、教会を破壊する。傍観していた村人達は「ダゴンを崇めるか、若しくは死か」を選ばなくてはいけなくなる。神父はカンバロに殺害され、やがて村人はダゴンを崇拝し始める。だが、黄金が採れなくなってくるとダゴンは生贄を求めた。神父の代わりにカンバロが村を支配し、ダゴンの生贄にエゼキルの両親を差し出したのであった。
話を聞き終え、皆目信じられないポール。しかし村に残された人間はもうこのエゼキルしかいないらしい。何故村人はエゼキルを殺さないのかと問えば、彼は「酔っ払いの狂人」だと放置されているようであった。ともかく村を脱出せねば、とポールは車を求めたが村にある車は、カンバロの孫・ザビエルが持っている物が1台あるだけだと言う。隠れながらその車がやってくるのを覗き込むポールとエゼキルだったが、降りてきたザビエルは両脚が悪いのか杖をついて歩いていた。どうも村の中には、「海に入るための姿」になるために歩けない者もいるらしい。すると、エゼキルは酔っ払ったふりをし、村人達の気を惹きつける囮役となるが、その間に車を奪おうとしたポールが誤ってクラクションを鳴らしてしまい気付かれる。ポールは慌てて教会へ逃げ込むが、執拗に追いかけてくる村人達。上の階の部屋へ逃げ込むと、そこには1人の女性がベッドにいた。そのゾッとするような美貌の女には見覚えがあった、悪夢に出てきた人魚だ――女は問う、「お父様?」。やがてポールを追いかけてきていた怪物、ダニエルが部屋に入ってきて誰か来なかったか、と聞くが女はポールを匿い誰も来ていないと答える。女の名はウシア。ポールは礼を言いに彼女の元へ近づくが、その魔性めいた美しさに魅入られたようウシアに目を奪われる。夢の中で何度か会ったことを伝えると、ウシアは「知っているわ」と微笑む。それからずっとポールのことを待っていたと言い彼のことを求め始めるが、ポールは彼女の下半身がイカを思わせる軟体動物のような脚であることに気付き、恐怖の余り逃げ出してしまう。しかし、結局は村人達の執拗な包囲によりポールもまた捕らえられてしまうのであった。
映画『DAGON』の結末・ラスト(ネタバレ)
目を覚ますと、牢のような場所にいた。中には何とバーバラがいて、再会を喜ぶポール。バーバラだけではなく、先程の老人・エゼキルとヨットで脚を挟んでいたビッキーも捕らえられていた。ビッキーの両脚は失われており、更に生贄としてダゴンに犯され孕まされていた。やがて村の連中がポール達の元へやってくるが、絶望したビッキーは逃げる意思さえなく村人の持っていたナイフを使い、腹を裂いてその場で自害する。バーバラも同じような目に遭わせようというのか、彼女は村人らに連れていかれ、ポールとエゼキルは司祭に連れられまた別の場所へと拘束される。
司祭に連れてこられたポールとエゼキルは、顔の皮を剥がされようとしていた。命乞いをするが司祭は笑い飛ばし、ポールは皮を剥がされようとするエゼキルに謝り続ける。全ては自分のせいだと。しかしエゼキルは「両親のことや、彼らが自分に望んだことを思い出させてくれた。ありがとう友よ」と、むしろ人として死ねることに感謝の意さえ述べ、聖書の言葉を口にしながら生きたまま皮を剥がされて死亡する。司祭のナイフがポールへと迫った時、それを止める声があった。姿を見せたのは車椅子に乗った女性――イカのような下半身を持つ美女・ウシアだ。ウシアはポールに自分の物だから助けた、と言い歪んだ愛情の籠った眼差しを向ける。自分はいいからバーバラは逃がせと言うポールに、ウシアは言う。もう1年もダゴンには生贄がいないと。生贄さえ与えれば自分達は永遠の命が与えられるが、その代償に半魚人のような姿になってしまう。ウシアはバーバラのことは忘れ「永遠があるだけの場所」へ行こうとポールに言う。それから、ウシアはポールを「儀式」へ連れて来いと司祭らに指示をし、去った。それに従いポールを解放する司祭らだが、ポールはエゼキルの皮を剥いだナイフで司祭やその場にいた村人らを殺害し、ガソリンを片手に儀式の行われている教会へと向かった。
教会ではバーバラが生贄に捧げられそうになっており、ウシアが祭壇で彼女の身体にナイフで紋章のようなものを刻み付けていた。剥いだ顔の皮を被った村人達は「イア、イア」と呪文を唱え、ウシアはダゴンの召喚を始める。地獄へ落ちろ、と叫ぶバーバラに「我々は永遠に生きるのよ」と不敵に笑う。吊られたバーバラの身体が、ダゴンが封印されている深い井戸のような場所へと沈められていく。そこへポールが駆け込み、ガソリンと共に炎を撒いて村人らを追い払う。何とか鎖を引き上げ、バーバラを救い出したものの、水中から這い出てきたダゴンに捕食され、バーバラは腕だけを残し帰らぬ人となった。
残された村人達から逆襲に遭うもののウシアが止めに入り、またそこへ現れたのはあの両脚の不自由なザビエル・カンバロ。ザビエルはポールを見るなり「夢に見るくらい探していたぞ、お前はカンバロだ」と言う。ウシアは脇腹の傷を証拠だと言い、ザビエルがかつて、村の外の人間と恋に落ち、このインボッカで結婚した。そして、設かった子がポールなのだと――ポールの本当の名はパブロ・カンバロ。ウシアは母違いの妹であり、ザビエルは人皮でできたマスクを外しながらその醜い姿を見せ喜ぶ。ダゴンの子なのよ、とウシアは訴えるがポールは化け物の仲間ではないと自らガソリンを被り、焼身自殺を図る。ウシアは絶叫し、炎に包まれた「兄」の手を引いてダゴンの封印されている水中へと飛び込んだ。全身炎で皮膚の爛れたポールは、いつか夢で見た人魚のように泳ぐウシアの後を追う。彼の精神はもはや暗黒に支配されたのか、笑顔さえ浮かべて泳いでいる。テロップにはこう称される――「我々は暗黒の深淵を潜り抜け深海の者達の巣で栄光に包まれ暮らすつもりだ」……。
映画『DAGON』の感想・評価・レビュー
クトゥルフ神話と聞いてピンと来る人も多いだろう、ラヴクラフト原作の『インスマウスの影』の映像化。漁村の雰囲気は原作で読んだ時の印象そのままで、また酔っ払いの爺さんがちゃんと出てくるのも驚き(扱いは不遇だが)。邪神・ダゴンの姿が最後にちょっとだけなのは低予算ゆえ仕方がなく、代わりと言っては何だがダゴンの娘・ウシア嬢が不気味で美しい。本当に永遠の命を与えられ、そのまま時が止まってしまったような容姿は一見の価値あり。後味の悪さもラヴクラフトらしい。(MIHOシネマ編集部)
楽しいクルージングになるはずがヨットが座礁。何とかたどり着いた村は古代の神「DAGON」を崇拝する半魚人の村だったというストーリーなのですが、見ていて鳥肌が立ってしまうほどジメジメとした気持ちの悪い空気が漂っていて良い意味で、不気味で不快な作品でした。
こういうB級感満載のなんでもありな作品が大好きなので個人的には大満足なのですが、人魚による拷問や神の姿は結構グロテスクなので苦手な方は気をつけてください。(女性 30代)
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