映画『つばさ』の概要:記念すべき第1回アカデミー賞作品賞受賞作で、白黒のサイレント映画。飛行士に憧れる青年が恋敵でもある親友と飛行士へ志願。やがて2人は戦場で名コンビと名を馳せるようになる。ところが、2人は1人の女性を巡って仲違いしたまま出撃してしまう。
映画『つばさ』の作品情報
上映時間:140分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
キャスト:クララ・ボウ、チャールズ・“バディ”・ロジャース、リチャード・アーレン、ゲイリー・クーパー etc
映画『つばさ』の登場人物(キャスト)
- ジャック・パウエル(チャールズ・ロジャーズ)
- 飛行機乗りに憧れている青年。シルヴィアに恋心を抱きデヴィッドと競い合っているが、戦場では名コンビとなる。
- メアリー・プレストン(クララ・ボウ)
- ジャックの家の隣人の田舎娘。ジャックに恋をしているが、相手にされず戦地にまで追いかけて行く。自動車部隊に所属し物資の運び屋をしていたが、失恋後は故郷へ帰還する。
- シルヴィア・ルイス(ジョビナ・ラルストン)
- 都会から来た裕福な家柄の美しい娘。一途にデヴィッドを愛し待ち続ける。
- デヴィッド・アームストロング(リチャード・アーレン)
- 町一番の資産家の息子。品行方正で礼儀正しい好青年。ジャックの親友でシルヴィアと恋仲にある。
映画『つばさ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『つばさ』のあらすじ【起】
1917年、小さな田舎町に住むジャック・パウエルは、飛行機乗りに憧れを抱いていた。隣人の娘メアリー・プレストンは、ジャックに恋心を抱いていたが、当の彼には相手にされておらず、キスの誘いをすげなく断れてしまう。現在、町一番の資産家の息子デヴィッド・アームストロングの元には、都会から来た美しい娘シルヴィア・ルイスがいる。ジャックはシルヴィアに好意を寄せており、メアリーは袖にされているのだった。
その年に第一次世界大戦が勃発。シルヴィアはデヴィッドに恋をしており、彼のために自分の顔写真を入れたロケットペンダントを送ることにする。ジャックは戦争勃発と同時に飛行機乗りへ志願し、出発の前日にシルヴィアへと会いに行った。そこで、ペンダントを発見した彼は、彼女が自分のために用意してくれたのだと勘違いし、そのペンダントを持って行ってしまう。シルヴィアは後から来たデヴィッドに事情を話し、愛の証として自らの純潔を捧げるのだった。
そうして、飛行士として若者が各地から集められる。その中にはもちろん、ジャックとデヴィッドもいた。彼らはまず地上の訓練場で数々の厳しい訓練を積む。訓練にて着々と仲間意識を持ち、絆を深める青年たち。
その頃、故郷では婦人自動車部隊の設立に当たって、隊員の募集が新聞に掲載される。メアリーは隊員へ志願することにした。
しばらく後、ようやく地上訓練が終了。次は実機での飛行訓練へ。ところが、ジャックとデヴィッドが所属する部隊の部隊長が、飛行訓練中に事故を起こしてしまい、帰らぬ人となってしまう。このことで、戦争へ行く前に訓練で死ぬこともあるのだと、実感する2人なのであった。
部隊長の荷物をまとめている途中で、2人に飛行準備の命令が下る。そうして、ようやく実機へと搭乗。その間にも戦争は勢いを増し、国の威信と誇りをかけた激戦へと化している。飛行訓練を兼ね、海軍の飛行場へ移動した後、自分の飛行機が与えられた。ジャックは自分の機に流星をペイントし、車と同じ流星号と名付けた。
映画『つばさ』のあらすじ【承】
早朝、ジャックとデヴィッドは新兵として初のパトロールへ出撃。上官からくれぐれも油断するなと言われつつ、意気揚々と実機へと乗り込み空へ。ところが、偵察部隊の彼らは最悪なことにドイツ空軍のエースにして飛行部隊のリーダーとその部隊に遭遇してしまう。敵軍は容赦なく攻撃合図を行い、交戦せざるを得ない状況に。
上空3万3千キロにて戦闘が開始される。だが、敵機の銃弾に次々と仲間機が墜落。デヴィッドはドイツ空軍エースと対峙することになるも、被弾により機銃が故障してしまう。すると、エースは攻撃意思が無くなったとみなし、彼を見逃してくれる。
同じ頃、ジャックは2機に追い詰められていた。彼はとうとう被弾し墜落。地上を逃走するも更に追い打ちをかけられる。だが、幸運なことに墜落場所は英国軍の塹壕であったため、どうにか助かるのであった。
数週間後には新米飛行士もベテランとなる。戦闘で破壊され寸断された道路も手際よく修復された。
しばらく後、ドイツ空軍の強大な戦闘機、ゴーダ機が大量の弾薬を積んでいるとの情報が入る。メルベールには弾薬が集積されており、襲撃されてはひとたまりもない。自動車部隊のメアリーはその小さな村へ毎日のように、医療品や食料を運んでいた。
ある日、メルベールの上空にゴーダ機が現れる。護衛機を含めた3機は風を読むために旋回。そこへ物資を運んで来たメアリーが到着する。彼女は突如、始まった爆撃に恐怖を覚えつつ建物の残骸に身を潜めてやり過ごした。すると、そこへ2機のアメリカ機が登場。ジャックとデヴィッドである。2人は協力して護衛機とゴーダ機を堕とした。
これにより、2人は英雄として名を連ね、勲章を賜ることに。
映画『つばさ』のあらすじ【転】
勲章を得た者には更に休暇も与えられる。ジャックとデヴィッドはパリへ繰り出し、羽を伸ばした。パリは世界的歓楽街と呼ばれ、戦争による死の恐怖を一時、忘れさせてくれる。故に、パリには大概、休暇中の兵士が溢れていた。
戦争へ米国が参加したことにより、連合軍は歴史的な総攻撃の準備を進める。そして、ついにその時が来た。連合軍は休暇中の兵達を全て呼び戻し、戦闘準備を命じる。当然、その命令はジャックとデヴィッドへも課せられた。ところが、ジャックはパリの酒場で盛大な酒盛り中。メアリーはジャックに会うため、酒場へとやって来たが、少し離れている間に様変わりしてしまった彼に不安を隠せない。
彼女はついにジャックへと声をかけ、招集命令が出ていることを知らせたが、酷く酔っぱらった彼に意味が理解できるはずもなく。そこで、彼女はドレスへ着替え娼婦の恰好をし、相手の娼婦からジャックを獲得。そのまま部屋へ向かったが、彼は酔っぱらって寝入ってしまう。メアリーは彼の衣服を脱がせようとして、自分の写真とシルヴィアのペンダントを発見。
写真は簡単に燃えてしまうが、ロケットペンダントは残る。メアリーは再びの失恋に悲しみ命令書を置いて去って行った。
総攻撃を控えフランスの道路は行進する兵隊で埋め尽くされた。休暇は終わりを告げ、再び戦いの日々へ。そんな時、デヴィッドがもう戻れないかもしれないと、縁起でもないことを口走る。ジャックは彼を励ましたが、メアリーが自動車部隊を辞めて故郷へ帰るという新聞記事を目にして動揺する。同僚にメアリーのことを馬鹿にされ、激怒したジャック。
だが、彼はシルヴィアを愛していると言って憚らない。このことでデヴィッドと口論となってしまい仲違いしてしまう2人。更に仲直りする間もなく出撃命令が出てしまい、デヴィッドは咄嗟のことでお守りを忘れてしまう。いつもの掛け声もできぬまま、2人は戦いと向かうのであった。
映画『つばさ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ジャックとデヴィッドのコンビは、敵軍でも注視されている。相手は2人を引き離そうと躍起になった。そうして、引き離されたデヴィッドは窮地に立たされ、対してジャックは2機の敵軍偵察気球を発見。激しい戦闘が展開する中、ジャックは気球を撃ち落とし無事に帰還。だが、デヴィッドは追い詰められ墜落させられてしまう。しかも、墜落場所は敵陣地の中。それでもどうにか追手から逃れた。
同じ頃、基地でデヴィッドの帰還を待っていたジャックだったが、親友はいつまで待っても戻らない。しかし、そこへ敵機が飛来し、手紙を落として行った。手紙はドイツ空軍のエースからで、デヴィッドが墜落し捕虜になるのを拒んだため、死亡したと書いてあった。仲間は誰もがその事実に愕然とし、ジャックもまた酷く肩を落とした。
連合軍はその日の夜のうちに移動を開始し、夜明け前には目的地へ到着。敵の侵入を防いでいた鉄条網を外し、爆薬を広範囲に設置した。そうして、大々的に爆破。総攻撃を仕掛け、一気に片を付けるつもりだった。ひたすら前進し、激しい戦闘を展開。
その猛攻撃に敵予備軍も戦地へと急いでいた。そこへ通りかかったジャック。彼は予備軍を空から襲撃し、現れたドイツ軍の将軍と副官を倒した。
昼前までに連合軍は前線へ到達。米軍も進撃し戦線へ加わる。敵軍もまた必死の反撃を行った。
その頃、どうにか逃れていたデヴィッドは、マッド河の沼地をさ迷い敵軍の基地を発見していた。彼はドイツ軍の戦闘機を奪い逃亡。基地は大変な大騒ぎとなり、ただちに彼を追撃したが、失敗してしまう。
やがて、敵軍が敗走。連合軍は見事勝利を収めた。戦場には無数の遺体が転がり、酷い有様である。ジャックはその様子を目にし、そして米軍基地へ飛行するドイツ軍の戦闘機を発見する。それにはデヴィッドが乗っていたが、ジャックは敵だと思い込み攻撃。デヴィッドは必死に訴えるも彼の声はジャックに届かない。
そうして、とうとうジャックによって墜落させられ、民家へと突っ込んでしまう。敵機を落としたことで、喜び勇んで地上へ降りたジャック。だが、相手の飛行士を目にして驚愕する。デヴィッドはすでに瀕死状態だった。彼の死を看取ったジャックは遺体を基地へと連れ帰り、荷物の整理をして共に故郷へと帰還した。
ジャックは親友の実家へ遺品を渡して報告を行い、その日の夜にメアリーと再会する。彼女に励まされた彼は、今後の人生を前向きに捉えメアリーと共に生きようと決意するのだった。
映画『つばさ』の感想・評価・レビュー
アカデミー賞作品賞を受賞するだけあって、当時の映画では珍しいほど、かなり迫力のある映像が見られる。サイレント映画ではあるが、俳優達の演技が非常に多彩で感情豊か。この作品での空中戦は後の『スター・ウォーズ』シリーズでも参考にされたらしい。
パイロットのアップ映像では、俳優が演技をしながらフィルムを自力で回したとエピソードが残っている。とてもそうは思えない感情豊かな映像である。主人公のようなやんちゃタイプが大概、大きなことを成して生き残ると予想していたが、その通りになった。それを追い越すほど、空中戦での生き生きとした迫力のある映像は素晴らしい。(MIHOシネマ編集部)
親友であり恋敵である男たちの物語は熱気や勇敢で前向きな気持ち、一途な愛に溢れていてサイレント作品でありながら心にしっかりと響いてきました。
白黒のサイレント映画は全く馴染みの無いジャンルなので少し不安がありましたが、第1回のアカデミー賞受賞作品ということで鑑賞しました。
見終わった時にはこの作品の秀逸なストーリーや観客を世界観に引き込むクオリティに驚き唖然としてしまいました。
前向きなラストではあるものの、何か心にぽっかり穴が空いたような気持ちになりました。(女性 30代)
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