映画『殺人の追憶』の概要:「殺人の追憶」は、ポン・ジュノ監督の2003年の韓国映画。実際に起きた連続強姦殺人事件を基に描いたクライム・サスペンス。暴力で解決しようとするパク刑事と科学捜査で追うソ刑事の対決が見どころ。ソン・ガンホ主演。
映画『殺人の追憶』 作品情報
- 製作年:2003年
- 上映時間:130分
- ジャンル:サスペンス、ミステリー
- 監督:ポン・ジュノ
- キャスト:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、キム・レハ etc
映画『殺人の追憶』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『殺人の追憶』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『殺人の追憶』のあらすじを紹介します。
1986年10月。のどかな農村の用水路から、拘束され殺害された女性の遺体が発見された。田舎の警察力では、現場保存も満足にできない。この連続強姦殺人事件を担当したのは、パク刑事(ソン・ガンホ)。人を見る目はあると自負するが、全て暴力で解決してきた男。
捜査が思う様に進まない中、ソウルから科学捜査に長けたソ・テユン(キム・サンギョン)刑事が派遣されてきます。パク刑事は、被害者イ・ヒャンスクにつきまとっていたクァンホに目をつけ、同僚の刑事と共に激しい尋問と暴力で自供させようとします。
クァンホはまるで実際に見たかのように殺害方法(絞殺、そして頭に下着を被せた等。)を話します。一度は、クァンホが犯人だということで解決したかのように見えたが、ソ刑事は遺体の状況から、クァンホの麻痺した手では犯行が不可能であると断定。
そんな中、再び事件が起きます。雨が降る夜に同じ手口で犯行が起きたのだ。そして1つの共通点を得ます。それは、夕方のラジオ放送で”憂欝な手紙”という曲が流れた日と殺害された雨の日が一致するという事実!その証拠となる葉書を確保しようとするのだが、なかなか手に入らない。
やがてラジオ局にある葉書からリクエストを出した青年を見つけ出し、唯一被害に遭いながらも助かった女性の証言(”手が女性のように柔らかかった”)と一致したため、逮捕に踏み切るが。現場に残された体液と一致するかが問題となります。ところがdnaは一致しなかったのだ。
ソ刑事は、激しく被疑者を殴り殺そうとします。それを必死に止める、パク刑事。事件は未解決のまま、打ち切られてしまう。
2003年。刑事をやめ、セールスマンに転職した元パク刑事は、改めて事件の現場を訪れます。そこで出会った少女から、恐ろしい話を聞きます。”おじさんみたいに覗いている人がいたわ””ふつうの顔の人だった”。それは、あの事件の犯人が今もこの村で生存しているという事実だった。
映画『殺人の追憶』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『殺人の追憶』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
暴力VS科学捜査~犯人は誰なのか?
1986年代に実際に起きた、連続強姦殺人事件を基に描いているのですが、時代の古さや農村の閉塞感がかえって、事件の恐怖を増幅させているように思えます。作品には、暴力で事件を解決しようとするパク刑事と科学捜査で追うソ刑事の2人の対比が描かれています。一見、科学捜査によって解決するかにみえた事件が、犯人のDNAとは不適合という結果終わり、事件は迷宮入りです。
この結果にはショックでした。そしてなによりも、怒りで暴力へと走るソ刑事とそれを必死で阻止しようとするパク刑事という立場が逆転してしまったことが、この映画最大の面白さです。事件当時はまだDNA検査が始まったばかりで、現在に比べればはるかに精度が低いものであったと推測できます。やはり、女性の証言と一致した手を持つ青年が犯人なのではないでしょうか。迷宮入りしてしまったことが観ていてくやしい。
と同時に犯罪には終わりがないという恐怖も感じます。ポン・ジュノ監督は、犯罪に対して暴力vs科学捜査という対比や時代背景、死体のリアル感などとても工夫して描いています。逆転の構図や最後のオチも完璧!良質なミステリー小説を読んでいるかの様なスリルもあり、尋問シーンの暴力は嫌いだが、高く評価します。改めて、サスペンス系韓国映画の凄さに打ちのめされる作品です。
笑劇!刑事生活
本作はクライム・サスペンスですが、劇中のいたるところで面白い刑事の生活を観ることができます。気になった点は、刑事が昼ごはんを食べながら見るのが、”捜査課長”というドラマ。また遺体の解剖シーンのあとにみんなで焼き肉を食べるといった流れ。アクション・カットの多用と生活感の対比が面白いのです。また、殺された少女の叫び声と警察署内に鳴り響く電話など緊張感が続きます。
殺人事件というと非日常の出来事のように思えますが、実は日常生活の延長線上にあり、ある日、ブラックホールのようにぽっかり空いているのを発見することなのかもしれません。恐怖や伏線が何十にも重ねられている作品。1度、観たら忘れることができません。この映画を観ずにしては、サスペンス系韓国映画について語れないでしょう。
韓国映画って面白いなと感じるきっかけとなった今作。過激な描写が多かったり、復讐の要素を前面に押し出していたりと、見ていて精神的に疲れる作品が多いのですがそれが韓国映画の良さ、面白さと言っても過言ではないでしょう。
映画の中のストーリーなのにどこかリアルで、自分の身近でもこんなことが起きているのでは?と錯覚させるような世界観は素晴らしいです。
モヤモヤするようなバットエンドも今作の魅力の一つなので最後まで集中して見て欲しいです。(女性 30代)
「犯人は誰だろう」とかなり期待して観てしまいました。
冷静で情熱的なソ刑事をよそに、パク刑事があっさりと真犯人を見つけてしまうのかなあ、と思っていたけれど…。ポン・ジュノ監督の作品はそんな単純なものではなかったですね。
ラストのシーンで少女の話を聞いたパク刑事が、このあとどうするのかがとても気になります。
パク刑事を演じたソン・ガンホは、決してハンサムではないのに表情に力があって引き込まれる。不思議な魅力の持ち主だと思います。(女性 40代)
映画『殺人の追憶』 まとめ
サスペンス系韓国映画の面白さや暴力的要素などエンターティンメント性の全てが詰まった作品です。本作は、2003年に製作され、物語も同じ年で終わっていますが、犯罪の陰湿さや不気味さが後を引いています。元パク刑事のその後は描かれていますが、科学捜査に長けていたソ刑事のその後も気になるところ。冤罪が作られていく過程(暴力で解決しようとすること)や、パク刑事とソ刑事の立場が逆転するといった面白さなど様々な角度が楽しめます。
なぜ、こんな面白い映画が韓国で作れるのだろう?2003年に製作されたのに現在でも充分通用する映画です。それは、ポン・ジュノ監督の細部にわたる演出力が冴えているからです。見事としかいいようがない。その演出を”ポンテール”(ポン・ジュノとディティールを組み合わせた造語)という。ポン・ジュノ監督作では、本作と「母なる証明」(09)、そして「海にかかる霧」(14)を観ることをおすすめします。更に完成度の高い世界を堪能できますよ。
みんなの感想・レビュー
確かに面白い作品だった。ただ、最後をバッドエンド的に終わらせる手法は卑怯。
バッドエンドは印象に残りやすいし、それだけで名作感が出る、チープなわりに効果の大きい手法なのでフェアじゃない。
小説版では犯人がちゃんと描かれているらしいので、なおさら。
バッドエンドの映画は評価点を半分にするくらいで評価すべきだと思う。
ポン・ジュノ作品は、私にはモヤモヤ感が残るものが多いです。なのに新作を観てしまいます。クセになるといいましょうか…。
余談ですが、刑事がドロップキックとか背後から片足跳び蹴りするのを見ると、ポン・ジュノ作品だなぁと思います(笑)
そしてソン・ガンホ氏の「生活感」を漂わせる緻密な演技はさすがです。
殺人の追憶は私の韓国映画の鑑賞ランキングではベスト5に入る名作です。実は韓国映画が最初に借りて観たのがこの作品。それ以来韓国映画を漁るように観続けています。
ハリウッドで何百億もかけて作る映画より、韓国映画のほうが数倍面白い!日本映画はもう駄目。