映画『サラエヴォの銃声』の概要:ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を描いた『ノー・マンズ・ランド』で脚光を浴びたダニス・タノヴィッチが再びサラエヴォを舞台に撮ったドラマ。ホテルでの群像劇を通じて第1次世界大戦から紛争までの歴史を総括する意欲作。
映画『サラエヴォの銃声』の作品情報
上映時間:85分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ダニス・タノヴィッチ
キャスト:ジャック・ウェベール、スネジャナ・ヴィドヴィッチ、イズディン・バイロヴィッチ、ヴェドラナ・セクサン etc
映画『サラエヴォの銃声』の登場人物(キャスト)
- ラミヤ(スネジャナ・ヴィドヴィッチ)
- ホテルの従業員。支配人から信頼を寄せられており、ホテル内を仕切っている。母親も同じホテルで働いている。
- ガブリロ(ムハメド・ハジョヴィッチ)
- セルビア人青年。オーストリア皇太子の暗殺犯と同じ名前をつけられている。世の中の現状に不満を抱いている。
映画『サラエヴォの銃声』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『サラエヴォの銃声』のあらすじ【起】
重大なイベント開催を控えたサラエヴォの有名ホテルに、フランスの要人がやって来る。受付にいたラミヤは直ちに支配人に電話をする。支配人は従業員がストライキを計画していることを不安に感じており、マフィアの男に連絡して対処を頼む。そして、受付にやって来て要人に挨拶する。支配人は要人を部屋まで案内しながら、数々の有名人が泊まったことがあることを紹介する。
ホテルの屋上ではレポーターが歴史学者にインタビューを行っていた。歴史学者は第一次世界大戦の発端となったオーストリア皇太子暗殺事件について解説していた。そこに次にインタビューを受ける予定だったガブリロが連れて来られる。番組プロデューサーは収録が長引いているので、ガブリロにしばらく待機するようにお願いする。
ラミヤはリネン室に向かう。その途中で前夜に関係を持った料理人に呼び止められるが、ラミヤは料理人を冷たくあしらう。ラミヤはリネン室で働く母に挨拶する。母はラミヤに今日のストライキをどうするかを聞く。給与の不払いが続いており、ストライキを計画していたのだ。ラミヤはストライキを敢行すればただ働きが長く続くだけだと反対する。
映画『サラエヴォの銃声』のあらすじ【承】
屋上では歴史学者のインタビューが続いていた。支配人は監視室に行き、要人の部屋の様子を確認する。要人はスピーチの練習をしていた。ラミヤは支配人にストライキが敢行されそうだと警告する。ホテル内では子供達が合唱の練習をしており、宴会場ではテーブルの準備が進んでいた。支配人は子供達への食事も用意するように指示する。
ラミヤが厨房に行って子供達のためのサンドイッチを作るように頼む。すると料理人が再び言い寄ってくるが、ラミヤは無視する。ラミヤが駐車場を通りかかると、ストライキの呼び掛け人がマフィア達に袋だたきにされていた。屋上では歴史学者が民族対立により紛争の舞台となってきたボスニア・ヘルツェゴビナの歴史を説明していた。
支配人はホテルのカジノにやって来て、マフィアの男に会う。マフィアの男はストライキのことは心配無用と安心させる。従業員がストライキのために結集するが、そこには呼び掛け人の姿がなかった。皆は新しいリーダーにラミヤの母を選ぶ。支配人は監視カメラで従業員が厨房に集まっているのを目撃し、ラミヤに様子を確認するように命じる。
映画『サラエヴォの銃声』のあらすじ【転】
要人はずっと演説の練習を続け、スプレニッツァの虐殺を防ぐことができなかった欧州の責任について言及する。屋上で歴史学者のインタビューがようやく終わり、ガブリロの番が回ってくる。レポーターはガブリロの名前が、皇太子の暗殺者と同じであることに驚き、挑戦的な議論を扇動する。ガブリロはセルビア人の立場から紛争の歴史を擁護する。
厨房に来たラミヤは母がストライキのリーダーに選ばれたことを知り、辞退するよう懇願する。しかし、母は一向に聞き入れようとしなかった。一方、支配人は料理人からラミヤの母がストライキのリーダーになったと聞き、ストライキをやめるように説得にやって来る。支配人は2日だけ時間をくれと頼む。しかし、ラミヤの母は支配人の申し入れを断る。ラミヤの裏切りと感じた支配人はラミヤを支配人室に呼びつけ、首を言い渡す。ラミヤはロッカー室で泣き崩れてしまう。
支配人はマフィアの男に会いに行き、ラミヤの母がストライキを決行しようとしていることを話す。一方、ラミヤは母に解雇の件を話に行く。そこにマフィアの手下がやって来てラミヤを部屋に押し込め、母を連れ去ってしまう。
映画『サラエヴォの銃声』の結末・ラスト(ネタバレ)
ガブリロは皇太子の暗殺者がこの時代に生きていたら誰を殺すかを問う。リポーターはガブリロが銃を持ち歩いていることに気付く。そして、今の時代では誰を殺しても重大な変化を生み出さず、暗殺者は自決するのが関の山だと話す。ガブリロは、政治家や銀行家を殺せば世の中は良くなると主張する。
料理人がラミヤを閉じこめられた部屋から救い出す。ラミヤは母を探してホテル中を走り回る。そして、ラミヤは支配人に母を助けるように懇願する。支配人はラミヤに迫ろうとして、ラミヤは逃げ出す。
リポーターはガブリロとの会話を録音していた。ガブリロはそれに気付きレコーダーを取り上げる。フランス人の要人が部屋を出て、エレベーターに乗る。そこに銃を持ったガブリロが通り掛かってしまい、暗殺犯だと勘違いしたセキュリティーの男に撃ち殺されてしまう。
ホテルは大混乱となり、人々は外に避難する。地下のバーに軟禁されていたラミヤの母は逃げ出す。要人は実は俳優で、サラエヴォをテーマにした舞台を演じるためにホテルを後にする。ラミヤはホテルの廊下で母を見付け、抱き合って喜ぶ。
映画『サラエヴォの銃声』の感想・評価・レビュー
ボスニア・ヘルツェゴビナについての相当な知識が求められる非常に難解な映画で、日本人にはハードルが高いかも知れない。劇中でリポーターがムスリム、ガブリロがセルビア、そして要人が欧州の立場を代弁している。ボスニアが他民族国家であることや、ボスニア紛争でどのような行為が行われてきたかを知れば、彼らの言葉が重みを帯びてくることだろう。国際的には評価が高く、ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞している。(MIHOシネマ編集部)
第1次世界大戦についてあまり詳しくないので、物語のことをきちんと把握できていないかもしれない。個人的に一番衝撃的だったのは、要人が実は俳優だったことである。しかも、暗殺犯だと間違えられて射殺されたガブリロが、可哀そうすぎる。ただ、もっと衝撃的な事件が待っているのかと期待していたので、ちょっと肩透かしを食らったような気持ちになった。ラミヤの境遇も可哀そうで、ストライキを先導する母と上司の板挟みは辛そうだった。(女性 30代)
作品の舞台やサラエヴォ事件、戦争についての知識が全く無いので物語をいまいち理解することが出来ませんでした。サラエヴォ事件から100年が経ち、記念式典が行われる「ホテル・ヨーロッパ」を舞台にした群像劇ですが、とにかく暗く混沌とした世界が繰り広げられていて、著名人が利用するホテルの華やかさを感じ取ることは出来ませんでした。
タイトルである『サラエヴォの銃声』。この銃声が鳴るまでを描いた作品だと思いますが、その後の展開は驚くほどあっさりしていてもう少し丁寧に描いて欲しかったなと感じました。(女性 30代)
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