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映画『馬を放つ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『馬を放つ』の概要:キルギスの小さな村に住む男とその家族。ろうあ者ではあるものの妻とは仲が良く、幼い息子は言葉を話さないが、父親のことを慕っている。穏やかな生活を送る一方、男には家族に明かせない秘密があるのだった。

映画『馬を放つ』の作品情報

馬を放つ

製作年:2017年
上映時間:89分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:アクタン・アリム・クバト
キャスト:アクタン・アリム・クバト、ヌラリー・トゥルサンコジョフ、ザレマ・アサナリヴァ、タアライカン・アバゾバ etc

映画『馬を放つ』の登場人物(キャスト)

ケンタウロス(アクタン・アリム・クパト)
元映写技師で現在は大工として生計を立てている。馬の守護神カムアルバタを深く信仰し、馬を神聖視している。非常に温厚で無口。愛情深く妻と息子を大切にしている。
ヌルベルディ(ヌラリー・トゥルサンコジョフ)
ケンタウロスの息子。言葉が話せるにも関わらず、話そうとしない。会話は主に手話で、父親と馬の話が大好き。
マリパ(ザレマ・アサナリヴァ)
ケンタウロスの妻でろうあ者。耳が聞こえず話せないことを不幸だとは思わず、非常に前向き。夫と息子をとても愛している。
カラバイ(ボロット・ティンティミショブ)
一代で財を成した裕福な男性。強権的で威圧的。従兄のケンタウロスを気にかけ、何かと援助していた。遊牧民としての矜持を思い出し、ケンタウロスを許す。

映画『馬を放つ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『馬を放つ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『馬を放つ』のあらすじ【起】

キルギスのとある小さな村。その村にはケンタウロスと呼ばれる男とその家族が住んでいる。ケンタウロスの妻マリパはろうあ者であったが、主に夫婦は手話で会話するため、幼い息子ヌルベルディは話せるにも関わらず、一言も言葉を口にしなかった。しかも、ヌルベルディは同じ年頃の友人を持とうとせず、父の話ばかりを熱心に聞き一人で遊ぶばかり。そんな息子にケンタウロスは、数ある英雄譚の中から勇猛果敢な馬の話を聞かせているのだった。

同じ頃、村で一番裕福なカラバイの家から馬が盗まれたと警察に通報が入る。その馬は高額な競走馬で、カラバイは酷く憤慨し躍起となって捜索。果ては寄付を募るため、たまたま訪れたキリスト教の伝道師へ馬が見つかるよう祈らせ、見つかったら倍額寄付すると言うのだった。

遊牧文化を持つキルギスでは主にキリスト教が信仰されており、言語はキルギス語ではあるが、公用語はロシア語である。ケンタウロスは非常に穏やかな性質で、マリパとヌルベルディをとても大切にしていた。

道路脇で露天商を営む女性とお近づきになり、仲良く帰路を共にしたケンタウロス。彼の浮気疑惑が持ち上がり周囲が慌てている頃、カラバイの盗まれた馬がようやく発見される。彼は伝道師が祈ってくれたお陰だと大喜びし、倍額どころかそれ以上の寄付をするのだった。

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映画『馬を放つ』のあらすじ【承】

夫の浮気が真実か聞き出せず悶々としていたマリパだったが、ケンタウロスに変わった様子は見られない。甲斐甲斐しく子供の世話をし、妻を労わる彼に浮気など到底できそうにない。マリパは機嫌を直しヌルベルディを一度、透視ができる人に見てもらったらどうかと夫へ提案した。

翌日、透視ができる人のところへ息子を連れて行った夫婦。その結果、特に心配することもないらしい。
その頃、近くの村でも同じように競争馬が盗まれているという情報を得たカラバイは、犯人を見つけ出すべく罠を仕掛けることにする。

隣村のある男性が、カラバイに対抗して競走馬を購入したという噂が流れた。カラバイはその男と共謀し、競走馬を用意。着々と犯人捕縛の準備を進める。
いつも通り、露天商の女性へと会いに来たケンタウロスは、女性が夫らしき男性に暴力を振るわれ休んでいるという話を聞く。彼は心配になって女性の自宅を訪ねたが、夫と思われる男性はどうやら内縁関係の様子。ケンタウロスは彼女に誘われたが、妻がいるからと断って帰宅するのだった。

ところが、おせっかいな近所の女性から夫の行動を聞かされたマリパは疑心を募らせ、露天商の女性の自宅へ。家から夫が出て来るのを目撃。その夜、夫婦は浮気に関して大喧嘩してしまう。

映画『馬を放つ』のあらすじ【転】

深夜、家を抜け出したケンタウロスは、噂に聞いた競走馬を逃がすべく隣村の厩舎へ向かう。だが、彼はそれが罠だとは知らず捕まってしまうのだった。
駆け付けたカラバイは犯人を目にし、驚愕。仲間達を抑え、ケンタウロスから理由を聞くことにした。

ケンタウロスはカラバイの従兄だった。富を手に入れたカラバイは、50歳になっても独身であったケンタウロスへマリパを紹介し、結婚資金の全てを負担した。その後も彼のことを親戚として気にかけていたのである。それなのに、馬を盗むとは。ケンタウロスはカラバイの問い詰めに、涙を浮かべながら答えた。

その昔、ケンタウロスは馬の守護神カムアルバタの夢を見たと言う。カムアルバタはキルギスの遊牧民と絆を結ぶために群れを成してやって来たが、時代の変化と共に人々はそれらを忘れ、富と権力を求めては自然を破壊するようになる。このことにより、カムアルバタは酷く嘆き怒っていたと言うのだ。

そこで、ケンタウロスは許しを乞うため、競走馬として調教された馬を盗み夜通し乗り回していたのである。それは、口承で伝わる罪を乞う昔ながらのやり方だった。
話を聞いたカラバイはそれ以上、従兄を責めることができず、自分の行いを振り返る。

罪を犯したケンタウロスの件で、長老と村人たちによって処遇の相談が行われた。カラバイは遊牧民としての矜持を思い出すよう訴えかけ、従兄を自分の厩舎で働かせキリスト教の聖地メッカへの巡礼をさせようと提案。村人たちはそれに賛同した。

映画『馬を放つ』の結末・ラスト(ネタバレ)

剃髪しキリスト教を信仰するよう促されたケンタウロス。釈放され自宅へ戻ると、マリパはヌルベルディを連れて家を出て行った後だった。彼は深い悲しみと涙に暮れる。
約束通り剃髪し、祈りを捧げるために教会へ。その場所は元々映画館であり、未だに映写機が残っている。ケンタウロスはこっそり祈りの場から抜け出し、古き良き時代であった遊牧民時代の映像を映写機で流した。

このことにより、更にケンタウロスの立場が悪化。伝道師たちは彼を悪しき者だと詰ったが、村人たちは彼が持つ崇高な願いや行動の全てが悪いものではないと反論。教え以外の全てを悪だと言うキリスト教こそが悪ではないかと伝道師たちと村人間で対立が生じてしまう。
結果、ケンタウロスは村から追放されることになった。

村と外を繋ぐ吊り橋を渡り村外へ。行く宛てもなく歩を進めたケンタウロスは、野生の馬を捕まえている人々を目にする。その中に露天商の女性を辱めている男を発見。彼はこっそりと捕まえられた馬を放ち、逃走した。だが、彼はその途中で銃撃され川に倒れてしまう。

同時刻、吊り橋を渡り村へ戻る途中だったマリパとヌルベルディ。ケンタウロスが倒れた瞬間と同時にヌルベルディが転倒。幼子は母に助けられたが、起き上がった途端にお父さんと言葉を発する。驚いたマリパは喜び、何度も話すよう促すのだった。

映画『馬を放つ』の感想・評価・レビュー

監督は主演のアクタン・アリム・クパト。キルギスという国は、ウズベキスタンと中国の間にある小さな共和国である。元は遊牧民で映像内に映される景色は主に壮大な草原。遊牧民は自然と共に暮らし、自由をモットーにしている。それが、時代の変化と共に定住するようになり、新たな文化がもたらされるようになった。

今作では文明が進んだ結果、古き良きものが失われる危惧を描いているのだと思う。新たな文明により、人々は遊牧民であったことを忘れ自然を敬うことを忘れてしまった。主人公は競走馬にされる馬を密かに逃がしているのだが、それにはちゃんと崇高な理由がある。盗むという行為は良いことではないが、真理を見極め国としての新たな方向性を見出すべきだと訴えかけているのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)


「キルギス」という国を知っていますか?聞いたこともなかった私はこの作品を見て、ストーリーだけでなく「キルギス」という国についても知ることが出来、とても勉強になりました。壮大な自然を舞台に、私が今している生活とは全く違う生活をしている人達はどんなことに幸せを感じるのか、どんな苦難があるのか沢山のことを考えさせられました。
想像力を思いっきり働かせて、キルギスの大自然をイメージし、自分も村民の1人になった気持ちで鑑賞するとものすごく心に来ます。(女性 30代)

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