映画『純平、考え直せ』の概要:ヤクザの下っ端である純平は、組長から鉄砲玉となって敵対する組の幹部を撃ち殺して来いと命令される。純平は、とあることで知り合った加奈に気に入られる。二人は決行の日までの三日間を過ごすのだが……。
映画『純平、考え直せ』の作品情報
上映時間:95分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:森岡利行
キャスト:野村周平、柳ゆり菜、毎熊克哉、岡山天音 etc
映画『純平、考え直せ』の登場人物(キャスト)
- 坂本純平(野村周平)
- 下っ端のヤクザ。北島というアニキの舎弟として仕えており、任侠を重んじている。17歳で家を飛び出してから実家には帰っていない。危ない見た目とは裏腹に義理人情に厚く、人助けもよく行う。
- 山本加奈(柳ゆり菜)
- 不動産屋で働くOL。店にクレームを入れにきたことで純平と知り合う。最初は退屈から逃れたいだけで純平に興味を持っていたが、やがて本気で純平を愛するようになり、彼に死んでほしくないと思うようになる。
映画『純平、考え直せ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『純平、考え直せ』のあらすじ【起】
ある朝、新聞の朝刊に歌舞伎町で発砲事件が起きたという記事が載った。暴力団の対立によるものだったが、その事件はネット界隈でちょっとした噂になっていた。
下っ端ヤクザの坂本純平は今時の若者には珍しく義理人情に厚く任侠を重んじる男だった。組のアニキである北島の舎弟となり、北島を尊敬し絶対の服従を誓っているほどだ。
困りごとを放っておけない性格の純平は、ナイトクラブで働くアンナが不動産屋から敷金を巻き上げられたと聞くと、すぐさま店に乗り込んで金を返せと息巻いた。だが、その不動産屋は別の組の息がかかっており、純平は現れたヤクザたちにボコボコにされてしまう。
組長に呼ばれた純平は、組のために鉄砲玉になる覚悟はあるかと問われる。純平は二つ返事で了承した。決行は三日後。拳銃と金を渡された純平は、決行の日までシャバを楽しんでおけと肩を叩かれた。
不動産屋で働く山本加奈は退屈な毎日と同僚の白神からのしつこいお誘いにウンザリしていた。そんな加奈はこの間、店に乗り込んできた純平に興味を抱いていた。と、そこに再び純平が拳銃を持って現れる。純平はアンナの敷金を取り戻すと店を去って行ったが、たまらなくなった加奈は店を飛び出して純平の後を追いかけた。
純平を見つけた加奈は彼に話しかけた。純平は面倒くさそうに相手をしていたが、裸足で駆けてきた加奈の足を洗ってあげた。次第に親密な空気が流れ、二人はそのままホテルで関係を持った。
映画『純平、考え直せ』のあらすじ【承】
純平は殺す相手の下見をするため、出かける準備をしていた。どこに行くのかと加奈に聞かれたので、鉄砲玉になるのだと正直に説明した。加奈はからかっていると信じなかったが、戻る前に消えていろと言って純平はホテルを出て行った。
殺す幹部はいつもある場所へ行く。近くのコインランドリーに偵察に来た純平は、そこで客待ちするゲイのゴローから幹部が来るタイミングを聞き出す。
加奈はSNSで“鉄砲玉をする男の子と一緒にいる”とコメントする。それはSNSで繋がった様々な人達に読まれた。その中にはイジメで自殺を考える女子高生・なつみや、弁護士を目指すホスト・草太郎、ホームレスの西尾などもいた。だが、ほとんどの者が真実を言っているとは思っていなかった。
ホテルに戻った純平は、まだ加奈がいることに呆れながらも彼女を連れて歩くようになった。加奈は事あるごとに状況をコメントしていった。返信コメントのほとんどがバカにしたようなものばかりだったが、皆、興味は持っており暇つぶし的にコメントは増えていった。
北島は純平のことを心配しつつ、彼に頭を下げてきた。尊敬するアニキの思ってもみない行動に純平は胸を突かれ、必ず仕事をやり遂げると北島に約束する。
なつみは加奈と純平のリア充ぶりに少し嫉妬し、批判的なコメントを残す。草太郎は、もし人を撃ち殺した場合、初犯でも10年は食らうと専門的なアドバイスをコメントする。
高級ホテルのスイートルームに泊まることにした純平と加奈。やがて二人はお互いに特別な感情を持つようになり、短い時間を惜しむように愛し合う。
映画『純平、考え直せ』のあらすじ【転】
逃亡用のバイクを手に入れようと考えた純平は、加奈を連れて地元へと向かった。元暴走族の組長で高校時代の先輩からバイクを用立ててもらう。
純平は17歳で家を飛び出してから母親には会っていなかったが、加奈の言葉で実家に顔を出すことにした。スナックを経営する母親は素っ気ない態度だったが、純平はヤクザになったこと、期待されていることなどを話した。去り際、母親は、またねと純平に告げた。
加奈は次第に純平に鉄砲玉になってほしくない気持ちになっていた。心境が変化したのは加奈だけではなかった。SNSの多くの者たちも純平に死んでほしくないと思い始めていた。このまま海外に逃げようと提案する加奈だったが、純平は聞く耳を持たず二人は喧嘩してしまった。勢いでそのことをSNSにコメントしたせいで、加奈は“純平”という名前を出してしまう。ネット民たちは盛り上がり、純平の名前は一気にネットに拡散される。
逃亡資金を得ようと加奈は働いていた不動産屋に忍び込み、金庫から大金を持ち逃げする。だが、その様子を白神がこっそりと見ていた。白神はSNSもチェックしており二人の行動を後追いしていた。加奈の後を尾行してホテルにやってきた白神は、彼女を強姦しながら髪を切り、盗まれた金を奪っていった。
純平は組の仲間から北島に上手く使われていると言われて動揺する。ホテルに戻り、変わり果てた加奈を見た純平は白神を殺しに行こうとするが加奈に止められた。そばにいてという加奈を抱きしめながら、お互いの夢について話した二人。戻ったら一緒に南の島に行こうと約束し、終わったら迎えに行くので神社で待っていてくれと純平は加奈に告げた。
映画『純平、考え直せ』の結末・ラスト(ネタバレ)
なつみは引きこもりだったが、純平と加奈が気になり新宿へ向かおうと家を飛び出した。それは草太郎も同じで、ホストクラブの仕事中だったが店を飛び出して二人を探しに歌舞伎町を彷徨い歩いた。
白神は金を持って店に戻ってきた。そこに純平が後を追ってやってきて白神に銃を突きつける。だが、引き金を引くのは寸前のところで止め、代わりに白神を殴り倒し半殺しにした。周りの同僚やヤクザたちは驚いて純平に飛びかかった。応戦したが多勢に無勢、純平はボコボコにされ路上に放り出されてしまう。ただ、拳銃はそのままポケットの中に残っていた。
SNSでは二人を心配する声が高まっていた。多くの者たちは“純平、考え直せ”とコメントし、純平に間違いを犯してほしくないと願っていた。それを読んだ加奈は“みんな、ありがとう。私は純平と生きていく”とコメントを残すと、携帯をゴミ箱に捨てて神社へと向かった。
コインランドリーにやってきた純平はゴローと話をした。ゴローもSNSで純平のことを知っていたが、彼は止めようとはしていなかった。やがて幹部がやってきた。純平は静かに立ち上がると幹部の後を追い、呼びかけると引き金を引いた。
夜明けがやってきた。二人を見つけられなかったなつみは少し責任を感じながら家に戻った。玄関では母親が心配そうに娘の帰りを待っていてくれた。草太郎は明け方の町で失意の中、座り込んでいた。
神社で待っていた加奈は、純平がこちらに歩いてくるのを見かけ、喜んで駆け寄った。純平は加奈を抱きしめると、南の島に行こうと囁いた。嬉しそうに付いていこうとした加奈だったが、携帯を忘れたと踵を返した。はたと気がついて加奈は純平を振り返った。だが、そこには誰もいなかった。最後に見た幻と現実に包まれながら、加奈の頬を涙が伝っていった。
映画『純平、考え直せ』の感想・評価・レビュー
要点がはっきりしていて、すっきりした脚本。SNSを絡ませているが、本人たちとネット民の距離感がリアルで良かった。大きなムーブメントになる訳でもなく、小さく終わっていく。でも心に響く人達も必ずいるという規模の表現が見事だったと思う。野村周平と柳ゆり菜の演技が素晴らしく、特に柳の体を張った濡れ場は感心。日本版『トゥルー・ロマンス』を見ているような気分にさせてくれた。ラストはベタだが胸に来る。不覚にも号泣。(MIHOシネマ編集部)
主人公の坂本純平は現代では珍しいぐらい熱い男で、少し前の任侠映画を見ているかのようだった。それに対し、ヒロインの山本加奈が現状をSNSに呟いているところが、今っぽいなと思った。
題名の通り、「純平、考え直せ」と心の中で願いながら、物語を見続けていた。考え直すきっかけもチャンスもたくさんあったと思うので、余計にこの結末が切なく感じた。悪くない終わり方だったと思うが、加奈と純平が幸せになる未来も見てみたかったなと思う。(女性 30代)
純平がヤクザでありながら愛すべきキャラクターで、面倒くさそうな顔をしながらもすごく優しかったり、兄貴分との関係をとても大切にしていたりと自然と純平を見守るような気持ちになっていました。SNS上で繋がる人たちもきっと同じことを思っていて、興味や好奇心だけの人もいたでしょうが、私のように「純平、考え直せ」と思って何かしようと行動に出た人も少なくなかったはずです。
しかし、SNS上の繋がりなんて所詮赤の他人でこの純平の話だって興味が薄れれば忘れてしまう出来事。人情味に溢れる優しい純平と彼を見守った人たちの関係がなんとも切なくてラストは涙がこぼれてしまいました。(女性 30代)
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