映画『孤独なふりした世界で』の概要:世界に1人生き残ったと思っている男と、人間のほとんどいない世界で支配される女の物語。静かに波もなく進んでいく物語なのに、なぜか目が離せない映画。『ゲーム・オブ・スローンズ』で活躍したピーター・ディンクレイジと様々な映画で主演を務めるエル・ファニング、2人の世界観に引き込まれること間違いなし。
映画『孤独なふりした世界で』の作品情報
上映時間:99分
ジャンル:SF、ヒューマンドラマ
監督:リード・モラーノ
キャスト:ピーター・ディンクレイジ、エル・ファニング、シャルロット・ゲンズブール、ポール・ジアマッティ etc
映画『孤独なふりした世界で』の登場人物(キャスト)
- デル(ピーター・ディンクレイジ)
- 背の低い物静かな男。図書館で働いていたため、死体処理と一緒に貸していた本の回収もしている。たくさんの人間がいた時よりも、1人になった今の方が孤独を感じないと思っている。
- グレース(エル・ファニング)
- デルの前に突然現れた金髪の女。気ままな性格で、デルと共に死体の片付けを始める。パトリックに娘役をやらされている。
- バイオレット(シャルロット・ゲンズブール)
- パトリックに逆らえず、グレースの母親役をやらされている。
- パトリック(ポール・ジアマッティ)
- グレースの父親役。グレースとバイオレットを支配して親子役をやらせている。感情をコントロールする実験をしている。
映画『孤独なふりした世界で』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『孤独なふりした世界で』のあらすじ【起】
誰1人として人の歩いていない町。ある一軒家に侵入するデルは、引き出しを物色し電池や写真、本を袋の中に入れていく。一通り物色が終わると、家の前にスプレーで「×」を噴きかける。住まいでもある図書館に戻ると、持ってきた本を棚に戻す。そして、再び物色した家に戻ると、干からびた死体を毛布でくるみ、掘っておいた穴へ埋める。
デルは食料を調達するため、湖へと船を漕いで行く。夜に湖で釣った魚を1人食べていると、突然夜空に花火が上がる。デルは静かにそれを眺めている。
昼間に町中を歩いていると、誰もいないはずの町から車の警報機が聞こえてきた。そっと近づくデルの目に入ったのは、意識を失ったグレースであった。見知らぬ部屋で目を覚ましたグレースは、鍵の閉まった扉を叩き呼びかける。するとデルがやって来て、「出て行け」と言う。
しかし、グレースは出て行かず、デルの後をついて行く。初めは迷惑そうなデルだったが、次第にグレースと会話をするようになる。しかし、デルの様子を見ていたグレースは、荷物をまとめて出て行こうとする。車に乗り込んだグレースが叫んでいると、デルがやって来て一緒に生活することを許すのである。
映画『孤独なふりした世界で』のあらすじ【承】
デルとグレース以外誰もいない町で、たった2人の生活が始まる。グレースは最初に運ばれた部屋で荷ほどきをし、デルは図書館で本の整理をしている。
ある時、デルが車に乗って町を走っていると、グレースの乗る車が猛スピードで目の前を通り過ぎて行く。グレースが向かっていたのは、死体がそのままになった家だった。その家に1人でやってきたグレースは、勝手に死体の処理を始める。車で追いかけて来たデルは、グレースの行動を見て死体処理の手伝いを許した。
死体処理の仕方にはデルのこだわりがあり、グレースはそれを教わりながら片付けや死体処理を覚えていく。毛布でくるんだ死体を掘った穴のところまで運び、祈る代わりに10秒呼吸を止めて埋葬する。死体の処理が終わり、2人で真っ暗のスーパーにやって来た。デルは静かに必要な物だけを取っていき、グレースは食べたい物を想像しながら、雑に色んな物をカゴの中に入れていく。
ある日、グレースがデルを探すために図書館の地下に入っていくと、そこにはデルの部屋があった。吸い込まれるようにその部屋へと入っていくグレースは、机の上に置かれたファイルを見てしまう。その中には、町にいた人達の写真が挟んであった。引き出しを次々に開けて、たくさんの写真を見ていくグレースは、どこか不信感を募らせた様子だった。しかし、物音でデルが戻って来たことに気づいたグレースは、写真を元に戻し部屋を出て行く。
音楽を聴きながら自転車を漕いでいたグレースは、ある一軒家に目が止まる。何かに引き寄せられるようにその家へと近づいていき、グレースは中へと入って行く。色々な物が散乱した家の中には、一匹の犬がいた。グレースはその犬に首輪をつけて、図書館に連れ帰るのであった。
犬のドッグがやって来てからは、2人の穏やかな日々が続く。そんなある日、ドッグが図書館の本を噛んで破いてしまう。焦ったグレースは本を隠そうとするが、気づいたデルは近づいて行く。するとドッグが、デルの手に噛み付いてしまう。
デルが自分で傷の手当てをしようとしていると、そこにグレースがやって来て手当てしてくれる。グレースに感謝するデルだったが、考えた込んだ様子でいる。グレースがまだ寝ている明け方、デルはドッグを外に出してしまう。グレースが目を覚ますと、ドッグがいないことに気づく。2人で探しに行くことになるが、ドッグが見つかることはなかった。
映画『孤独なふりした世界で』のあらすじ【転】
ドッグがいなくなった後、一見穏やかに過ごしている2人だが、お互いに不信感を抱いた様子でいる。ある時、それぞれでお酒を飲んでいると、グレースはデルに詰め寄る。今まで抱いてきた不信感をぶつけるグレースは、デルの部屋にあった写真のファイルを投げつけて去って行く。
デルは、ある一軒家の前に立っている。中に入り写真を眺めていると、グレースがやって来た。しかしデルは、すぐに出て行ってしまう。作物を育てているビニールハウスで作業をしている時、デルはグレースに死体処理の手伝いをお願いする。
本格的に2人で死体処理をするようになり、どんどん作業は進んでいく。たくさんの家の死体を埋葬し、ソーラーパネルの修理までしてしまう。電気を使えるようになり、無線で連絡を取り合うようになる。
ある時、グレースが町を歩いていると地図にない家を発見し、その中へと入って行く。そこは、処理のされていないデルの家だった。グレースが家の中に入ったことに気づき、慌ててやって来たデルは片付けを渋る。しかし、グレースの言葉によって死体の埋葬を始める。
デルの家の片付けと死体の処理が終わり、すっかり日は落ちている。車の運転席で待つデルの横にグレースが乗り込むと、グレースは深刻な表情で話し始めた。グレースは初めて自分の話しをデルに聞かせ、突然キスをする。
映画『孤独なふりした世界で』の結末・ラスト(ネタバレ)
昨日と同じ服のままグレースのベッドで寝ていたデルが目を覚ますと、下の階から複数の話し声がすることに気づく。デルは引き出しに隠していた銃を取り出す。ズボンの後ろに隠し、静かに下の階に降りて行く。するとそこには、グレースの親を名乗る2人が朝食を食べていた。父親は団欒の様子を出しているが、グレースは強張った表情している。1人で話しをしている父親は、デルに他にも生存者がいることを話す。
グレースからは誰もいないと聞いていたデルは、驚きと共にグレースに対する怒りを感じる。父親はグレースに対して、一緒に帰ってくるよう言う。それに答えようとしないグレースは、母親と目が合うが黙っている。その様子を見ていたデルは立ち上がり、グレースを振り切って車で去って行く。
デルが去った後、グレースは荷造りをするため部屋にいる。するとそこに母親を名乗る女がやって来て、1人では耐えられないと言い、グレースに一緒に来るよう泣きつく。
グレースを置いていったデルは、1人で本の整理をしている。そこにグレースの父親が現れ、自分達の家に一緒に来るよう言う。しかしデルは、その話を断る。残念そうにする父親だったが、その辺の本を手に取り、住所をメモして去って行く。そして、グレースを乗せた車は走り出す。後部座席に乗っているグレースは、我慢できずに泣いてしまう。
再び1人になったデルは、感情のない表情で釣りをし、町をさまよう。誰もいない家に石を投げつけ、返事のない無線を手にしている。グレースと過ごした日々を思い出していたのだ。そしてデルは、グレースの元へ行くことを決意する。父親の残した図書館のメモを頼りに、遠く離れたグレースの元へと車を乗り継いで向かう。
たくさんの電気が灯る町へと到着したデルは、グレースのいる家へと向かう。そこにはグレースの親を名乗る2人がいた。夜が更けるのを車で待っていたデルは、町が静かになると家の中へと静かに入って行く。そこにはたくさんの管に繋がれ、手術を受けた後のグレースの姿があった。
デルがそっと呼びかけると、グレースは目を覚ます。身体に繋がれた管を外し、2人で出ていこうとするが、起きてきた父親に遭遇してしまう。グレースにマイナスの感情をなくす手術をした父親は、自分のおこないがいかに正しいかを2人に力説する。しかし、銃を持っていたグレースは、父親を撃ち抜く。その場に倒れた父親が、再び動くことはなかった。
金魚を手に持ったグレースは、デルの運転する車に乗り込む。すっかり朝になった町には、幸せそうに暮らすたくさんの住人がいた。その姿を眺めながら、2人は自分の町へと戻って行く。
映画『孤独なふりした世界で』の感想・評価・レビュー
もし世界に自分1人だけになったらという想像を、リアルに描いたような映画。色々と説明の足りない部分もあるが、意図的にそうしているようにも感じる内容になっている。グレースが登場することで、世紀末的なラブストーリーの展開があるのかとも思ったが、全くの違う展開に別の意味で期待を裏切られた。観る側の解釈によって大きく意味が変わりそうで、ぜひ人と一緒に見て欲しい1本だと思う。独特の世界観に引き込まれる、2人の演技だけでも観る価値は充分にある。(MIHOシネマ編集部)
もし一人だけ世界に残ってしまったら、楽しさなんて感じる間もないぐらい寂しくて仕方がないと思う。誰もいない街並みは静かで、独特の不気味さがあった。一人で伸び伸びしたいと思う瞬間があるのも、普段孤独ではないからなんだろうなと改めて感じた。デルもグレースと出会ったことで寂しさを思い出したのかもしれない。奇妙な物語ではあるが、人がいない世界というのも気軽に体感できるものではないので、興味があったら見てみるのも良いのではないかと思う。(女性 30代)
本作は、人類が死に絶えた世界で生きながらえていたデルのもとに現れた少女グレースとの交流を描いたSFヒューマンドラマ作品。
光と影のコントラストを効果的に用いたカットはどれも美しかった。
また、劇中では人類が何故死に絶えたかは語られず、謎を残して鑑賞者にゆだねるようなストーリーで、世界の終末という静かな雰囲気に浸れてとても良かった。
こういう世界で一人、静かな暮らしをしてみたい。
表情や仕草から感情や状況を想像しながら観れる新しいタイプの作品。(女性 20代)
大人数でわいわい過ごすのが苦手な私。一人で落ち着いた時間を過ごす方が有意義でためになる時間を過ごせると思うからです。しかし、この意見を他人に押し付けたいわけではないので「誰もいない世界」で自分一人で暮らすデルを少し羨ましく思いました。しかし、グレースと出会ったことによって再び思い出してしまった人との繋がり。その温かさは簡単に消せるものではなく、誰かのために、誰かがいるからこそ人は強く生きていけるのだと感じました。(女性 30代)
『ゲーム・オブ・スローンズ』視聴以降すっかりピーター・ディンクレイジのファンになってしまったので、彼目的で作品に興味を持った。
人々が死に絶えた街で孤独に日々を送っている主人公。彼のセリフに「みんなが居た時の方が孤独だった」というものがある。はっとさせられた。孤独とは誰かと一緒にいないという事ではないのだ。誰からも理解されないという事こそ孤独なのだ。
それでも終盤、出会った女性を救いにまだ人が残っている街へ向かう場面で、まだ完全に人に絶望したわけではない彼の姿に涙が出た。派手なシーンはないが淡々と描かれているので、お酒を飲みながら一人静かに見たい映画だ。(男性 30代)
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