映画『ハーフネルソン』の概要:薬物中毒の歴史教師とドラッグディーラーたちに囲まれて育った女子生徒の交流を描く一作。ライアン・ゴズリングがアカデミー主演男優賞にノミネートされ、注目を浴びたきっかけの作品である。
映画『ハーフネルソン』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ライアン・フレック
キャスト:ライアン・ゴズリング、シャリーカ・エップス、アンソニー・マッキー、モニーク・ガブリエラ・カーネン etc
映画『ハーフネルソン』の登場人物(キャスト)
- ダン・デューン(ライアン・ゴズリング)
- 中学校で歴史を教える教師。一見人気の教師でありながら、私生活は薬物で溺れていた。薬物を使用しているところを一人の女子生徒に見られてしまったことを機に、少しずつ気持ちを寄せていく。
- ドレイ(シャリーカ・エップス)
- ダンの生徒であり、バスケットボールチームの選手の一人。身の回りに薬物がある環境で育ち、ダンの秘密も暴くことなく関係を深めていく。
- フランク(アンソニー・マッキー)
- ドレイの兄の仕事仲間。ドラッグディーラーとして生計を立て、ドレイを家業に巻き込もうとしていた。
映画『ハーフネルソン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ハーフネルソン』のあらすじ【起】
自宅でひとり、うつろな表情で鼻歌まじりのダン。彼はブルックリンの中学校で歴史の教師をしている。やる気のなさそうな立ち振る舞いは、同じ教師達からは疎まれているが、生徒からの支持率は高いダン。それは他の教師達とは少し違い、砕けたスタイルでの授業が功を総じているのだった。一方でプライベートはというと、滞納したクレジットの請求電話に追われ、癖付いたコカインから抜けられず薬物に蝕まれている一面も持っていた。同僚や生徒には「麻薬中毒者」であることがバレないように振る舞うが、禁断症状でまともに歩くことすらできないことも多々あった。
バスケットボールチームのコーチも担当しているダン。ストレスのはけ口はお酒とクスリである。バーでのナンパもうまくいかず、仲間からより効果的なクスリを勧められる始末のダン。いつか立て直せると甘く考えていたが、中毒者と化した精神はコントロールが効かなくなりつつあった。
そんな中、留守電に昔の恋人から地元に戻ってきているとメッセージが残されていた。
映画『ハーフネルソン』のあらすじ【承】
バスケットボールチームの試合があったとある日。チームはあっさりと負けてしまい、子供たち一人ひとりに励ましの声をかけるがやりきれない表情のダン。その様子を見ていた留守電の女性。彼女の母親の様子を気遣うも、その日の誘いには乗ることはなかった。
誰も残っていないことをしきりに確認するダンは、トイレの個室に篭りコカインを吸い始めた。油断していたダンは、生徒のドレイにその姿を目撃されてしまう。コカインで意識が朦朧としているため、取り繕うことも隠すことも、立ち去ることもできないままその場を動けないダン。しかし、ドレイはいたって冷静にダンを介抱するのであった。
ダンはドレイを車で自宅へ送り届けた。一言「また明日」とだけ伝えたドレイは、一人無表情にご飯を温め慣れた様子で寂しい食事をする。
この日を境に、ドレイはダンを学校で見守るようになった。
ドレイはダンの私生活の実態を人に言わず、隠したまま過ごしていた。
ドレイの両親は別居も同然で、冷戦状態にあった。さらに兄は、元ドラッグディーラーであり収監されていた。悪いことをしてしまったとはいえ、兄のことが好きなドレイは面会へと向かう。この時のドレイは学校ではあまり見せない、穏やかな表情であった。
映画『ハーフネルソン』のあらすじ【転】
学校帰りのドレイは兄の友人であり仕事仲間だったフランクに、昼食をご馳走してもらう。フランクはドレイの心の隙間に入り込むように、母の代わりにバスケットボールチームの試合を見に行く約束をするのであった。一方で、ダンは久しぶりに連絡をくれた昔の恋人と公園で過ごしていた。あわよくば復縁も期待していたダンだったが、彼女の口から「結婚」と「妊娠」の告白を受けるのだった。
バスケットボールチームの試合中、ダンは審判の判定に納得がいかず暴言を吐き退場させられてしまう。その帰り道、ドレイを車で家まで送り届け、彼女が自分の秘密を隠してくれていることに安堵した。自宅までの帰路の途中、バーに立ち寄ったダン。そこで出会った女性と一晩を過ごす中で、自分は薬物から立ち直れない不安を吐き出すのであった。
とある日の放課後、ドレイはダンに帰り道送ってほしいとお願いする。ドレイの自宅へ着いたが、ドレイは鍵を失くしてしまい自宅へ入ることができなかった。仕方なくダンは自宅へ招くことにするが、その様子を見ていたフランクはドレイへ話しかけた。怪しげな様子のフランクに気を付けるよう、ダンはドレイに注意喚起をしたのだった。
後日、学校の行事から一人抜け出して帰ろうとするドレイ。彼女を迎えに来ていたのはフランクだった。フランクとの交流を止めるため、ダンはドレイを自宅まで送ろうとする。しかし、ドレイはダンの言葉を聞き入れず、フランクの車に乗ってしまったのだった。
映画『ハーフネルソン』の結末・ラスト(ネタバレ)
とある日ドレイは、ダンに自分もフランクのようになるのではないかと心の内をこぼした。
居ても立っても居られなくなったダンは、フランクの元を訪ねドレイと縁を切るように申し出る。しかし、客商売のフランクはダンよりも口が上手であった。まんまと丸め込まれたフランクは、情けなさから元恋人の自宅へ押しかけ無理に関係を迫ってしまう。きっぱりと断られ、自暴自棄になったダン。翌日も授業に身が入らず上の空のままだった。
心配するドレイをよそに、ダンはドレイを突き放そうとする。放課後はダンと過ごしていたドレイは、フランクの家で仲間と過ごすようになる。次第にドレイはフランクの誘導の元「運び屋」の仕事に手を染め始めるのだった。そしてなんとも不遇なことに、ドレイが届けに行った先にはダンが待っていた。心を寄せ始めていた教師と生徒が、運び屋と購入者に変わった瞬間である。翌日、授業には臨時で代理の教師が立っていた。心配したドレイは、迎えに来たフランクの誘いを断り、ダンの家を訪れた。朦朧としたままドレイを自宅にあげたダン。ドレイはダンに髭を剃らせ、身なりを整えることでまず意識を持ちなおさせた。自分を救ってくれたダンに恩返しするかのように、隣に座り一緒に笑い合うのだった。
映画『ハーフネルソン』の感想・評価・レビュー
女性と男性教師の秘密、と聞くと恋愛に発展しそうな匂いがする。しかし、あどけなさが残る、いい意味で「女」ではないドレイ役のシャリーカ・エップの存在は今作の大きな救いであった。不幸な境遇や自身の弱さがダンとドレイを雁字搦めにするのではなく、片腕を抑え込んだ状況で、もう片方の腕を互いに支え合うような印象の一作。
原案である短編映画『Gowanus, Brooklyn』も併せて鑑賞したい。(MIHOシネマ編集部)
本作は、薬物中毒の中学の人気歴史教員とドラッグディーラーの小間使いに誘われている女生徒の交流を描いたヒューマンドラマ作品。
スローテンポで進行するので、少々眠気を感じそうだったが、淡々と静かな作品の世界観と2人の距離感が絶妙で、優しさが感じられて良かった。
特に、ライアン・ゴズリングの表情の演技が魅力的でとても引き込まれた。
お互いの弱さに寄り添うところが素敵で、鑑賞後に優しい気持ちになれる作品。(女性 20代)
みんなの感想・レビュー