映画『マイ・ブックショップ』の概要:1959年、イギリスの小さな田舎町に書店を開いた未亡人。読書家で引き籠りの老紳士に支えられ書店も繁盛するのだが、それをよく思わない町の有力者夫人が彼女を追い出そうと、様々な画策を施行する。
映画『マイ・ブックショップ』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:イザベル・コイシェ
キャスト:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、パトリシア・クラークソン etc
映画『マイ・ブックショップ』の登場人物(キャスト)
- フローレンス・グリーン(エミリー・モーティマー)
- 16年前の戦争にて最愛の夫を亡くした未亡人。ロンドンの書店で書店員をしていたことがあり、本をこよなく愛している。小さな町になかった書店を開き、良質な本を提供。非常に穏やかで優しく、強い勇気を持っている。
- バイオレッド・ガマート(パトリシア・クラークソン)
- 町の有力者ガマート氏の妻。様々なコネを持ち、大きな権力を持っている。芸術センターを設立することが夢。非常にプライドが高く高慢で、自分の思い通りにならないフローレンスを徹底的に排除しようとする。
- エドモンド・ブランディッシュ(ビル・ナイ)
- 町の丘にあるホルトハウスの老齢な主人。妻と別れてから45年間、町の住人とはほとんど交流せずに引き籠っている。読書家で、フローレンスの勇気と穏やかな気質に心を打たれ、助力になろうとする。
映画『マイ・ブックショップ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『マイ・ブックショップ』のあらすじ【起】
1959年、イギリスの田舎町。戦争にて夫を亡くし失意に暮れていたフローレンス・グリーンはある日、町に唯一の書店を開こうと思い立つ。早速、銀行に掛け合って融資の相談をした。対応に現れた銀行員は酷く横柄でフローレンスの相談に否定的だったが、彼女はとても辛抱強い性格であったため、銀行員の言葉に腹を立てながらも説得に成功した。
町の人々はあまり読書をしなかったが、フローレンス自身、本が好きで読書の素晴らしさを知っている。7年間、空き家だったオールドハウスを修繕し、そこを本屋にしようと思った。オールドハウスはかなりボロボロであったが、修繕は少しずつ進んでいる。フローレンスはその家に居を移した。
町の有力者ガマート氏からパーティーへ招待されたフローレンス。主催のガマート氏へ挨拶した後、妻のバイオレットと会話。ところが、バイオレットはフローレンスが購入したオールドハウスを芸術センターにするつもりだったと言う。故に、書店ではなく芸術センターにして、フローレンスが管理すればいいと勝手なことを言うのだった。
後日、ある店の主人から店を買わないかと声をかけられる。フローレンスがオールドハウスを売り出すという噂を聞いたからだった。だが、その話を聞いたフローレンスは、店を探しているのはバイオレットなので彼女と話せばいいと返した。
バイオレットはオールドハウスからフローレンスを追い出そうとしている。そう察したフローレンスはオールドハウスの契約を急いで完了させるよう弁護士に話をつけた。
注文していた本が続々と配送されて来る。準備は着々と進み、書店の本棚にフローレンスが厳選した本が並び始める。書店の名前はオールドハウス書店に決め、看板の設置も終わった。
映画『マイ・ブックショップ』のあらすじ【承】
そんなある日、ホルトハウスと呼ばれる屋敷に住み、引き籠っていることで有名なエドモンド・ブランディッシュという老紳士から、フローレンス宛てに手紙が届けられる。エドモンドは妻が亡くなってから人嫌いで、滅多に屋敷から出ることがない。それなのに、彼は町での出来事を詳細に知っていると言う。手紙には書店を開く勇気のあるフローレンスを歓迎することと本の好み、お薦めの本と値段を記したメモを町の子供達に持たせて欲しい旨が書いてあった。
画してエドモンドはオールドハウス書店の最初の客となり、フローレンスはお薦めの本を少年に持たせることに。読書に興味がなかった町の人々は、開店すると店へ訪れ興味深く本を選んでいく。店は徐々に繁盛し、フローレンスは町の少女をアルバイトに起用。彼女は朝も昼も忙しく働くことになり、バイオレットの芸術センターの件をすっかり忘れていた。
アルバイトの少女とも打ち解け、おしゃべりにも花が咲く。少女は理数系でフローレンスは文系だった。故に小さなアルバイトさんは、読書は嫌いと言って憚らない。フローレンスは長い目で見て、いつか少女にも読書を楽しんで欲しいと思うのだった。
公営放送BBCに勤める男性から新版書籍『ロリータ』を書店に置いて欲しいと頼まれたフローレンス。内容に目を通し自分の店で出すべきかを悩む。そこで、彼女はエドモンドにも本を読んでもらい、感想を聞くことにした。すると数日後、エドモンドから屋敷に招待される。
日曜日。丘の上にあるホルトハウスへ。手紙のやりとりはしていたが、直接会うのは初めてである。2人で協力してお茶の準備を行い、ミルクティとケーキを囲んだ。エドモンドは町の噂は全くのでたらめで、死んだと噂される妻はロンドンで健在だと言う。更に彼はバイオレットがかなり立腹しており、フローレンスを追い出そうとしていることを知っていた。
バイオレットの夢は町に芸術センターを設立することらしいが、そもそも田舎の小さな町にそのようなものが必要だろうか。エドモンドは芸術センターよりも、書店の方が重要と考えているようだった。
バイオレットには有力者とのコネと大きな権力がある。いずれ彼女は、あらゆる手を使ってフローレンスを追い出そうとするだろう。怖くないのかと問われたフローレンスだったが、逡巡した後に否定した。そして、試しに薦めた『ロリータ』について感想を聞く。エドモンドが本について書店に並べても良いものだと言ったため、フローレンスは決心し大きな賭けに出ることにした。更にエドモンドはフローレンスの助けになりたいと申し出てくれ、屋敷への出入りも許した。
映画『マイ・ブックショップ』のあらすじ【転】
1959年、9月。『ロリータ』が書店に並び人だかりができるようになると、バイオレットから弁護士を介して手紙が届く。書店にできた人だかりに邪魔をされゆっくり買い物ができないと苦情を訴えてきたのである。そこで、フローレンスは自分の弁護士に長年、雇ってきたのだから雇い主を守護するべきだと抗議。書店の前には人だかりなどできておらず、通りを邪魔してはいないはずだった。この件について手紙のやりとりを何度か続け、フローレンスが勝利を得た。
一方、フローレンスを追い出したいバイオレットは、名所と公的資源について考える会に所属する甥の協力を得て、芸術センターの設立を法案として制定するよう画策。更に、フローレンスの店でアルバイトする少女のことを文科省へ密告した。少女が放課後に書店で働いていることは周知の事実であったため、フローレンスの店でのアルバイトは辞職することに。その後、少女の母親がやって来てオールドハウス書店の他に新たな書店ができるという噂を聞かされる。以前、店を売りたいと言っていた人物が、新たに書店を開くと言うのだ。
新しい書店はバイオレットの提案に乗った公爵が会社を立ち上げ、経営することになっていた。次々と周囲を固められ、追い込まれるフローレンス。次第にオールドハウス書店への客足も途絶え、売り上げが一気に低下。経営難に陥るも、できることはオールドハウスを売ることだけ。それだけはしたくないので、書店の経営を続けるしかなかった。
映画『マイ・ブックショップ』の結末・ラスト(ネタバレ)
海辺の岩場で海を眺めていたフローレンスの元に、エドモンドがやって来る。彼は彼女の勇気と穏やかな気質に心を打たれ密かに惹かれている。故に、フローレンスを助けるため、これまでずっと避けていたバイオレットと話し合いの場を持とうと決意していた。エドモンドの真摯な言葉に励まされたフローレンスは、新たに決意を固め諦めずに書店を続けることにした。
後日、BBC職員が恋人と別れたため、時間が空いたからフローレンスの助手になりたいと提案してくる。彼女は訝りながらも、試用期間を設けて彼を雇うことにした。ところが、男はフローレンスが出かけるとすぐに店を閉めてしまう。バイオレットとも友好関係を築いているため、信用ならない人物だった。
その日の朝、エドモンドはバイオレットの元を訪れ、フローレンスの追い出しをやめるよう説得した。だが、バイオレットは聞く耳を持たず交渉は決裂。腹を立てたエドモンドは、屋敷の前まで戻って来たところで倒れてしまう。彼はそのまま息を引き取ってしまい、フローレンスを深い悲しみに突き落とした。
その後、書店にバイオレットの夫が訪れる。彼は妻からエドモンドが芸術センターのことを褒めていたと聞かされていた。あまりの言いように傷ついたフローレンスは、ガマート氏を怒鳴りつけ追い出してしまった。
更に数日後、市の法案によりオールドハウスが強制収用の対象となる。しかも、許可した覚えのない検査が数回も行われていることを知らされ、愕然とする。助手として雇ったBBC職員が勝手に家の検査を行ったようだった。
全てにおいて追い詰められ成す術もなく、書店を失うことがほぼ決定してしまった。フローレンスは深い悲しみに襲われ、町からも追い出されることに。誰も彼もが彼女を排除しようとしている。荷物をまとめ船に乗り込んだフローレンス。見送りには元アルバイトの少女だけが駆け付けてくれた。ところが、船が出港した途端、オールドハウス書店の方角から火の手が上がる。どうやら少女が店に火を放ったようだった。
その後、少女はフローレンスの意思を受け継ぎ、嫌いだった読書をして町に書店を構えるまでに至った。少女だった彼女は、フローレンスが言っていた言葉は真実だったと今では心底、そう思うのだった。
映画『マイ・ブックショップ』の感想・評価・レビュー
ヒロインが書店を開いた町には、書店にまつわる良くない記録が残っている。そこへきてヒロインが書店を開業したものだから、老紳士は彼女を勇気のある人だと称える。保守的な町とはいえ、書店や本が害悪とは思えない。ヒロインはきちんと本を厳選して良質なものしか書店に出していないし、知識を広めるためには読書はうってつけだと思う。
1959年と戦後の時代である故なのか、ヒロインを追い詰める町の有力者夫人があまりに酷い。芸術センターの設立をするはずだったと言うのなら、ヒロインが書店を開いた家を5年も空き家にしておく意味が分からない。とにかく町ぐるみでヒロインを追い詰め村八分にして完全に追い出してしまうため、酷く切なくなる。(MIHOシネマ編集部)
オシャレな雰囲気のパッケージが気になり拝見しました。内容は予想と真逆の切ない物語で、観終えた後はどうしようもなくやるせない気持ちになりました。書店を開いただけで何でそんなに悪意のある行動がとれるのかと、終始モヤモヤを感じます。笑顔で耐える主人公の姿も観ていて辛い。クリスティーヌの最後の行為を主人公はどう受け取ったのか、ラストは観る人に考えさせる終わり方でしたね。曇り空のような作品、でも美しい作品です。(男性 20代)
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