この記事では、映画『狂覗』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『狂覗』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『狂覗』の作品情報
上映時間:81分
ジャンル:サスペンス、ミステリー、ホラー
監督:藤井秀剛
キャスト:杉山樹志、田中大貴、宮下純、坂井貴子 etc
映画『狂覗』の登場人物(キャスト)
- 森由紀夫(田中大貴)
- 生活指導担当の科学教師。関西弁。
- 谷野十(杉山樹志)
- 一度教師を辞めたが、森に頼まれ臨時教師としてやってきた。教師をやめるきっかけになった過去の事件をやましく思っている。
- 橋本瑞穂(宮下純)
- 美術の教師。荷物検査にあまり協力的ではない。
- 管直樹(桂弘)
- 数学の教師。女子高生と関係を持っていることを隠したい。
- 校長(種村江津子)
- 上西の発見者。世間体を気にして、あまり事件を大事にしたくない。
- 上西譲(宇羅げん)
- 集団リンチを受けて瀕死状態になっている教師。盗撮犯。
映画『狂覗』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『狂覗』のあらすじ【起】
豊玉第三中学校の校長室に、瀕死の状態の教師が倒れていた。発見した校長はすぐに警察に通報しようとしたが、ふと机の上のパソコン画面を目に留めた。「制服の下に隠された花びら」というタイトルのそのホームページは、女子学生のスカートの中が写された写真でいっぱいだった。
警察が調査をすれば、倒れていた教師・上西が生徒の盗撮を行っていたことにたどり着いてしまう。中学校の沽券に関わるため、校長は通報をやめた。上西を一旦保健室に運ばせ、暴行の犯人を探すために生活指導の森を呼び出す。
森は、体育の授業中に無人の教室で荷物検査をすることにした。荷物検査のため声をかけたのは、一度教師を辞めていた後輩の臨時教師・谷野。英語教師の片山、数学教師の管、そして美術教師の橋本もやってきたが、橋本は非協力的な態度で隅に座っていた。
生徒が知らないうちに、抜き打ちで荷物検査を行うことに気が引ける谷野。他の先生がどんどん生徒の荷物を漁っていくのを見ながら、仕方なく出てきたものを記録していった。

映画『狂覗』のあらすじ【承】
2年の生徒・万田は、芸能界からスカウトされるほどの美貌を持った成績優秀な女子だが、「猫を殺したことがある」などの妙な噂があった。万田の荷物の中にはカッターや画鋲があり、また手帳には「14歳に満たぬ者の行為は、それを罰せず」と書いていた。
万田の携帯にはロックがかかっていたため、先生たちはSDカードを取り出すことにした。慌てた管が「上西先生が万田とラブホテルに入るのを見た」という話をし始める。なぜそれを見ていたのか、なぜラブホテルにいたのか?と言われ、動揺する管。彼は、女子高生とホテルに入ろうとしていたところを万田に写真に撮られていたのだ。管は万田のSDカードを噛んで壊してしまう。
一方で黒板が汚いことに注目していた橋本は、消された文字の跡があることに気づいた。文字の跡をなぞってみると、どうやら「シネ」と書いてある。先生たちは、このクラスには万田によるいじめがあるのではないかと考え始めていた。
映画『狂覗』のあらすじ【転】
気分が悪くなってきた谷野は、記憶がフラッシュバックして幻覚を見る。窓の外を落ちてゆく女子生徒の姿。過去に教師をやめることになったきっかけの事件。
黒板を綺麗にすると、誰かが赤いスプレーをかけられたような跡が出現した。ゴミ箱の中からも、落書きされた教科書や髪の毛が出てくる。明らかないじめの痕跡に、先生たちはロックのかかっていない携帯から情報を得ようと探し始めた。
ロックのかかっていない携帯を発見すると、やりとりの履歴を表示させる。明らかになったのは、このクラスの生徒全員が上西の盗撮を知っており、集団リンチしているということだった。
そして、先ほどの万田の机が別人のものだったことも判明。万田の机はベランダから外に放り出されていた。万田はいじめをしていたのではなく、いじめを受けていたのだ。先ほど壊したSDカードが別人のものだったことに慌てた管が、万田の携帯を必死で探す。
一方で、生徒の持ち物から頭痛薬らしきものを飲んだ森は様子がおかしくなっており、谷野に「お前は生徒を殺害した」と言い放つ。谷野はまたパニックになり、事件がフラッシュバックしてしまった。
映画『狂覗』の結末・ラスト(ネタバレ)
肉体関係のあった教師が結婚することになって詰め寄った女子生徒が、運悪く屋上から転落した事故。谷野はかつてその現場を見てしまい、同僚の痴情のもつれがばれないよう「いじめによる自殺」と口裏を合わせていた。しかし、良心が咎めて耐えられなくなり、教師をやめたのだった。
ふと先生たちは、校庭に万田がいないことに気づいた。靴箱には靴がある。いじめによって服は破れている。つまり万田はどこにも行っておらず、この教室の中にいる。隠れる場所は一つしかない。授業が終わるチャイムが鳴った。
森は掃除用具のロッカーに近づいた。ロッカーの中の掃除用具はすべて外に出されている。ロッカーに開いた穴を覗くと、そこには目があった。先生たちのやりとりをすべて聞いていた万田は、「言ってやる」と小さく呟いている。
パニック状態で我を忘れた森は、掃除用具を掴むと穴に思い切り突き刺した。何度も何度も突き刺しているうちに、授業が終わった生徒たちが戻ってきていることに気づく。森は動転したまま後ずさりしていき、足を取られてベランダから落下。そのまま即死してしまった。
映画『狂覗』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
脛に疵を持つ者ばかりが集まる、終始どんよりした空気の会話劇。音楽の不穏さ、画面の陰鬱さ、回想や幻覚で混乱させるストーリーのなかで、一触即発の過激なやり取りが続く。
学校の抱える問題点を凝縮させて「実話に近い」テイストを作り出したものの、衝撃的なフィクションで締めくくるために見る人を退屈させない。シチュエーションが教室から離れないなかで、最低限のものを、演出で最大限にして魅せようという気概を感じさせた。(MIHOシネマ編集部)
日本にもこんな胸糞映画があるんだなあと感心してしまった今作。大人がとにかく汚くて反吐が出ます。実際に教師をしている人間の中にもこう言った汚い大人が居るのだろうなと思うと、本当に気持ちが悪かったです。
自分の痴情を隠すために人の粗を探したり、犯人探しをするような腐った大人にはなりたくないなと感じました。
タイトルの『狂覗』も最高ですよね。汚い大人を物凄くリアルに描いていたと思います。テンポが良いのでサクッと見られて面白かったです。(女性 30代)
深層心理をえぐるような狂気の視線が終始圧迫感を与え、最終的に主人公が自らの正気を失っていく様がリアルで怖かったです。ラストで彼が鏡に映る“狂気の顔”に気づく瞬間、その衝撃が胸を貫きました。映像や音響も巧妙で、視聴後もしばらく現実に戻れず、怖いけど忘れられない作品でした。(20代 男性)
序盤から続く微妙な違和感が、徐々に狂気へと雪崩れ込む演出が秀逸でした。主人公の女性が隣人の行動を監視し続けるうち、逆に自分が追い詰められていく過程がゾッとするほど生々しく描かれていました。ラストの「誰が狂っていたのか分からない」余韻が特に怖かったです。(30代 女性)
ストーカーものとホラーを掛け合わせたような不気味さがずっと続き、ラストの狂気噴出には鳥肌が立ちました。雨の夜に彼が窓越しに笑うシーンは映像美も重なり恐怖を倍増させていました。精神が崩壊する様子が冷ややかに描かれていて、「人間の内面の闇って怖い」と感じさせられました。(40代 男性)
少女が見つめる先に何があるのか…それがどんどん歪んでいき、最終的に現実との境界が崩壊していく展開が驚きでした。特に、彼女が急に鏡を割って叫ぶクライマックスには心臓を掴まれるような衝撃が。精神病理スリラーとして上質で、ただのホラーではない奥行きを感じました。(20代 女性)
主人公が拘束された照明の薄暗い部屋で徐々に視覚的錯覚に囚われていく演出が優秀。現実と幻覚が混ざり合って、観ているこちらも「これは現実?」と不安になります。ラストで全てが“狂視”の妄想だったと示唆された瞬間、ゾッとしました。心の闇を映像で描いた秀逸な作品でした。(30代 男性)
気味の悪い音響と、静かな長回しショットの組み合わせがずっと耳と視覚を締め付けてきて、恐怖心をどんどん掻き立てられました。主人公が他人の生活をのぞき見していたと思ったら、実は自分の心がのぞかれていたという逆転展開に鳥肌。最後まで緊張感が途切れない傑作です。(40代 女性)
ホラー映画ではなく、心理サスペンスとして最高に怖かったです。狂気がじわじわと迫ってくるような空気感、俳優の目と表情だけで演出される恐怖、音で重ねられる不安感…。ラストで主人公が「鏡の中の自分」を貫いているように見えるカットには深く衝撃を受けました。(50代 男性)
狂気を共有してしまうかのような映像手法が印象に残りました。視点が揺らぎ、見せられていないものを想像させる余白が多い。クライマックスで主人公が部屋中に張り巡らされた写真を破り捨てるシーンはカタルシスも感じましたが、同時に不気味さも強く残りました。(20代 女性)
映画『狂覗』を見た人におすすめの映画5選
ブラック・スワン
この映画を一言で表すと?
美と狂気が紙一重で交錯する、芸術と精神崩壊の心理スリラー。
どんな話?
完璧を求めるバレリーナ・ニナが、『白鳥の湖』の主役に選ばれたことで心のバランスを崩していく。自分と似たライバルの存在、母との関係、現実と幻覚の境界が曖昧になり、やがて彼女は自らの“黒”に支配されていく。
ここがおすすめ!
『狂覗』のように、主人公の視点がどんどん歪んでいく描写がスリリング。ナタリー・ポートマンの狂気に満ちた演技は圧巻で、芸術と精神の極限を体感できます。視覚・音響表現の美しさも必見です。
シャイニング
この映画を一言で表すと?
静けさの中で狂気が目を覚ます、ホラー映画の金字塔。
どんな話?
雪に閉ざされたホテルで管理人を務める一家。しかし父親ジャックは徐々に幻覚と狂気に蝕まれ、やがて家族に牙をむく。幽霊、時間のループ、超常現象が渦巻く中、恐怖がじわじわと忍び寄る。
ここがおすすめ!
『狂覗』のように、内面的な狂気が物語を主導するスタイルが際立ちます。ジャック・ニコルソンの怪演とスタンリー・キューブリック監督の圧倒的な映像美が融合し、観る者を不安と緊張で満たします。
パーフェクト・ブルー
この映画を一言で表すと?
虚構と現実の境界が崩壊する、狂気のサイコ・スリラー。
どんな話?
元アイドルの主人公・未麻が、女優転向後にストーカーや自分の“幻影”に苦しめられる。やがて、現実と妄想の区別がつかなくなり、彼女の精神は崩壊していく。
ここがおすすめ!
アニメでありながら、精神のゆがみやアイデンティティの混乱を見事に描いた名作。『狂覗』と同様に「覗く/覗かれる」関係が緊張感を生み、観客もその狂気に巻き込まれるような感覚を味わえます。
マザー!(mother!)
この映画を一言で表すと?
狂気と寓話が融合した、終始不穏なアート系スリラー。
どんな話?
詩人の夫と静かに暮らす若い妻のもとに、見知らぬ客が次々と現れ、家の中は混乱と狂気に満ちていく。現実離れした展開の中に、聖書的モチーフや人間のエゴが込められた象徴的な作品。
ここがおすすめ!
『狂覗』のように、1人の人物の視点を通して狂気に引きずり込まれるような恐怖を味わえます。観客の心をかき乱すラース・フォン・トリアー的な作風で、衝撃的なビジュアルと音響演出も圧巻。
ピアニスト
この映画を一言で表すと?
抑圧と欲望が交錯する、知的で病的な心理ドラマ。
どんな話?
音楽院の教授エリカは、表向きは厳格だが、内面には性的な衝動と支配欲を抱えている。生徒との関係が崩れていく中で、彼女の理性と欲望のバランスが狂っていく。
ここがおすすめ!
『狂覗』同様に、静かな描写でじわじわと狂気がにじみ出る作品。イザベル・ユペールの抑制された演技と、ミヒャエル・ハネケ監督の冷徹な視線が織りなす、濃密な心理劇が観る者を圧倒します。
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