映画『木靴の樹』の概要:19世紀末のイタリア、ベルガモ地方。地主の土地に住む農民、4家族の生活をドキュメンタリータッチで描いている。イタリアの巨匠エルマンノ・オルミ監督の代表作であり、農民家族の生活を見守るかのようなヒューマンドラマ。
映画『木靴の樹』の作品情報
上映時間:187分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:エルマンノ・オルミ
キャスト:ルイジ・オルナーギ、オマール・ブリニョッリ、ルチア・ペツォーリ、フランコ・ピレンガ etc
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映画『木靴の樹』の登場人物(キャスト)
- バティスティ(ルイジ・オルナーギ)
- 一家の長で3人の子供の父親。働き者で家族をとても大切にしている。口が達者で集会ではいつも笑い話を披露し、皆を楽しませている。穏やかで優しく敬虔なクリスチャン。
- バティスティーナ(フランチェスカ・モリッジ)
- 一家の母で3人の子供の母親。子供の世話をしつつ、家の仕事や農家の仕事を手伝っている。女衆の手助けを得て、3人目の子供を出産。良き母であり妻。敬虔なクリスチャン。
- ミネク(オマール・ブリニョッリ)
- バティスティの長男。推定6歳。神父の薦めにより、町の学校へ通う。親の言うことを良く聞くとても良い子。
映画『木靴の樹』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『木靴の樹』のあらすじ【起】
19世紀末、イタリアのロンバルディア州。ある地域に4軒の農家が住んでいた。彼らが住む土地、住居や樹木、一部の家畜は地主の物であるため、収穫の3分の2を地主へと献上しその地で生活することを許されていた。
その中のバディスティ一家の父バティスティと母バティスティーナは、教会の神父から長男ミネクを学校に通わせるようにと言われる。夫婦は農作業の働き手が減るのは困ると話したが、神父からミネクは神に選ばれたのだと言われてしまえば、強い意見など言えないのであった。
広大な農地を4軒の家族が全員で協力して耕し、主にとうもろこしを栽培している。幼い子供であってもできることは多く、働き手の一人として数えられる。どの家も敬虔なクリスチャンでバティスティ家も同様だ。夜が明ける前から起き出し、家畜の世話を行う。そんな中、まだ幼いミネクは鞄を手に学校へ。
4軒の農家は集合住宅に住んでおり、身を寄せ合って暮らしている。幼い子供から恋多き若者、大人達は互いに気遣いながら日々、生活を送っていた。彼らは一様に貧しく時折、地主の家から聞こえる音楽に耳を傾けることもあった。
もうじきクリスマスを迎える頃、外には雪が降り始める。バディスティーナは3人目の子供を身籠っており、子供は他にミネクを含めて2人。子供達はまだ幼くバティスティ一家はまだ若い家族だった。バティスティは3人目の出産の準備をそろそろ始めなくてはと話す。妻は他の家族の女衆に出産を手伝ってもらうと言うが、夫は医者を頼もうと言うのだった。
映画『木靴の樹』のあらすじ【承】
そんなある日、4家族は立派に育った豚を捌くことに。管理人に見守られながら男衆が協力して豚の解体を行う中、神父がやって来る。
神父はバティスティにミネクの様子を聞き、その後は未亡人で洗濯女として働きながら、父親と5人の子供を育てる女性の元へ。この一家の長男は15歳を迎え家族を支えるため、働きに出ている。下の3人の子たちは女の子で、まだ幼い。神父は下の女の子たちを好意から預かると言ってくれたが、女性は迷っており長男に相談。すると、下の子たちはじきに立派な働き手になるため、預けない方が良いと言うのだった。
それからしばらく後、この一家で飼っていた牛が、病気で動けなくなってしまう。牛が死んでしまうと作業が進まず、一家の生活はたちまち立ち行かなくなる。困った母は一心に神へと祈り教会へ。教会の脇を流れる川の水を汲んで、牛に飲ませた。すると、不思議なことに病気だった牛が元気になるのだった。
やがて、春が訪れ町では祭りが行われる。ケチな一家の主人は1枚の金貨を拾って、それを泥が詰まった馬の蹄の中に隠した。
翌日、ケチな主人が馬の蹄の泥を見直している頃、バティスティ一家に新たな命が誕生。結局、バティスティーナは医者を呼ばず女衆に出産を頼んだ。
映画『木靴の樹』のあらすじ【転】
その日、学校帰りにミネクの木靴が壊れてしまう。少年は靴を紐で結わえて帰ろうとしたが、どうにも歩きにくい。靴下を脱いで片足だけ裸足で帰路に就いた。そうして、帰った息子の木靴が壊れたと知った父は、母には内緒でミネクを労る。夕方の教会の鐘が鳴ると、父は長男の木靴を作るべく密かに手頃の樹を伐った。樹木でさえも地主の物である。誰かに見られては元も子もない。彼は証拠を隠し木っ端は川に流した。
夜も徹して作り、ミネクの新しい木靴が完成。翌日、少年は新しい靴を履いて学校へ行った。週に何回か4組の家族が集まる集会がある。その場では作話が上手なバティスティが皆に笑い話を聞かせるのが、農民の楽しみの一つでもあった。
そんなある時、馬の蹄に隠した金貨が消えてしまったことで馬を怒らせたケチな主人。馬と喧嘩をするという事態が発生。主人は馬が金貨を失くしたと責めるが、隠し場所を蹄に詰まった泥の中にする主人の方が悪い。
畑を耕す時期がやって来る。年頃の娘がいる一家が結婚式をすることになった。町の若い男と1年の交際期間を経て、嫁入りすることが決まったのである。式は早朝に行われ、新郎新婦はその後、ミラノにいる伯母の元へ結婚の報告をするため、向かう予定になっていた。
映画『木靴の樹』の結末・ラスト(ネタバレ)
河を下る中型の貨物船へと一緒に乗り込む。船にエンジンは無く全てが人力。昼になると船の上でお弁当を広げる。午後になりミラノへ到着。街ではデモ隊が騒動を起こしたため、多くの兵隊が走り回っていた。新婦の伯母は修道院で親のいない子供の面倒を見ている。叔母は結婚してすぐに来てくれた姪夫婦を歓迎し、その日は教会に泊めてくれるのだった。
翌日、新婚夫婦の元に赤ん坊を抱いた伯母がやって来て、子供を引き取って欲しいと言う。養育費や衣類の準備もあり年に2回、修道院から養育費が支給されるらしい。夫婦は赤ん坊の里親になることにした。
ケチな主人が育てる早生りのトマトが収穫を迎えた頃、川岸のポプラの樹が1本、伐り倒されていることに気付いた地主。早速、犯人探しが開始され、バティスティであることが判明。一家は地主から追い出されることになった。農民が住む場所を追い出されるということは、死ねと言われていることと同じである。飼っていた牛も没収され、無一文になってしまったバティスティ一家。他の3家族は、酷いと言いながらも祈ることしかできなかった。
その日の内に馬車1台分の荷物をまとめ、一家で集合住宅を出る。彼らが出て行った後、他の3家族は全員が外に出て、バティスティ一家の姿をひっそりと見送るのであった。
映画『木靴の樹』の感想・評価・レビュー
出演者は全員、素人で地元の農民を起用しており、明かりも全てが自然光を利用するという徹底してリアルを追求した作品。1978年制作の作品であるが、幼い子供がまだ木靴を履いているという事実に驚きを隠せない。それだけ、貧しい暮らしであったことが分かる。
それぞれの家族に視点を移しながらストーリーが展開していくが、当時の男性は誰もが髭を生やすのが当たり前であったためか、全員の相貌が似ていて少々、判別がしにくい。貧乏ながらも子供達は元気に外で遊び、農作業や大人達の言うことを良く聞いて生活の手助けしている。シーンのどれもが絵画のようだと称されているが、まさにその通りだと思う。(MIHOシネマ編集部)
本作は、19世紀、北イタリアのベルガモ地方に暮らす4つの農民家族をドキュメンタリータッチで描いたヒューマンドラマ作品。
後半、父親が息子に木靴を作るために地主の家の近くの木を切り倒したことがきっかけで、さらに厳しい環境へと追いやられてしまうシーンがタイトルを示唆している。
「貧しい人ほど神の近くにいる」という台詞からは、キリスト教の強い信仰心が窺えた。
187分という長さは耐え難かったが、貧しくも気高く生きる人々の姿が美しい名作。(女性 20代)
「家族」の大切さを教えてくれる素敵な作品でした。「祈る」事に重きを置いていてそれが当たり前な日常は、無信仰な私からするととても特別なことに感じました。
祈るのも働くのも「生きていく」ため、そして「家族」の為であるということ。その家族の為にした事によって、家族が困難な目に遭ってしまっても、その困難を乗り越えるのも「家族みんな」であるということ。貧しくても家族で協力し合って生きていく姿はとても感動しました。(女性 30代)
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