映画『みかんの丘』の概要:アブハジア自治共和国のエストニア人集落でみかんを栽培するイヴォとマルゴスは、紛争が始まってもその土地を離れず、みかんを収穫している。ある日彼らは、敵対する二人の負傷兵を自宅で介抱することになった。
映画『みかんの丘』の作品情報
上映時間:87分
ジャンル:戦争
監督:ザザ・ウルシャゼ
キャスト:レンビット・ウルフサク、エルモ・ヌガネン、ギオルギ・ナカシゼ、ミハイル・メスヒ etc
映画『みかんの丘』の登場人物(キャスト)
- イヴォ(レムビット・ウルフサック)
- 紛争が始まってもエストニア人集落に残るみかん農家。敵対する兵士のアハメドとニカを、同じ屋根の下で介抱する。
- マルゴス(エルモ・ヌガネン)
- イヴォと共に集落に残るみかん農家。みかん栽培に情熱を燃やし、戦争中でも休む間を惜しんで収穫をする。
- アハメド(ギオルギ・ナカシゼ)
- アブハジアを支援するため、義勇兵として雇われたチェチェン人。怪我をしてイヴォの家に身を寄せる。
- ニカ(ミヘイル・メスヒ)
- ジョージア人兵士。紛争が始まる前は劇団員だったが、国を守るという義務感から兵士になった。
映画『みかんの丘』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『みかんの丘』のあらすじ【起】
年老いたみかん農家のイヴォは、アブハジア自治共和国にあるエストニア系移民集落で暮らしている。アブハジアはジョージア(旧グルジア)からの独立を求め、各地で紛争を起こしていた。エストニア人の多くは、戦争から逃れるために帰国していた。
武装したチェチェン人が、イヴォの家に来て食料を求めた。言われるままに食料を渡した後、彼は近所に住むマルゴスの家へ。彼の畑には、シーズンを迎えたみかんがいっぱい実っていた。みかん栽培に情熱を燃やす彼は、激戦が始まる前に少しでも多く収穫しようと、時間を惜しんで摘み取った。
その時、近くで銃声が聞こえた。先ほど会ったチェチェン人が、ジョージア軍と対戦していた。イヴォとマルゴスは、生き残ったチェチェン人とジョージア人をそれぞれ一人ずつ介抱し、亡くなった兵士を手厚く埋葬した。
イヴォは敵対する彼らを、自分の家の別々の部屋で匿うことにした。ジョージア人のニカは頭部を負傷して、まだ意識がない。チェチェン人のアハメドは、「ジョージア人は俺が殺すから、治療は無駄だ」とイヴォに言った。
映画『みかんの丘』のあらすじ【承】
イヴォとマルゴスは、ジョージア軍の車を隠すため、崖から落とした。イヴォが帰宅すると、アハメドがナイフを手にしたまま、ドアの前で倒れていた。意識のない男を襲おうとした彼をイヴォは責めた。
その後、ニカは意識を回復。アハメドは相変わらず殺してやると騒ぐが、イヴォは自分の家で人殺しはさせなかった。一歩でも家に出たら殺すぞ凄むアハメドだったが、実はお金で雇われた傭兵に過ぎず、家族のために戦っているとイヴォに明かした。
戦争中でもマルゴスの関心事はみかんの収穫だ。しかし、収穫を手伝うため兵士を寄こすと約束したはずの少佐が、まだ来てくれないのが気がかりだった。
アハメドが居間に座っていると、ニカが体を支えられながら入って来た。敵対する二人がテーブル越しに顔を合わせると、空気が張り詰めた。アハメドが軽くにやけただけで、ニカはカッとなりお茶をぶちまけた。喧嘩が始まりそうな二人を、イヴォたちは制した。アハメドは我慢し、ニカもイヴォに謝った。
映画『みかんの丘』のあらすじ【転】
翌朝、イヴォはマルゴスの家を訪れた。マルゴスは兵士を二人きりにして大丈夫かと心配する。しかしイヴォは、約束をしたから信じていると答えた。その夜、イヴォの家の居間に4人が集まり、くつろいでいる。ニカはカセットテープを修復し、アハメドはみかんを食べながら好きな音楽の話など、たわいもない話をして過ごした。
ニカの体調は日に日に回復する。アハメドとはいがみ合いながらも、同じ空間にいる時間が長くなってきた。彼らは徐々に打ち解け始めていた。
アブハジアの兵士たちが、最前線に向かう途中でイヴォの家に立ち寄った。イヴォはニカがジョージア人だとばれないように、口が聞けない振りをさせた。ジョージア人とチェチェン人の区別は、見た目では判断できないのだ。
兵士たちはニカを同志だと思って握手をした。イヴォは顔見知りの老兵アスランに声をかけ、マルゴスのみかん摘みを手伝ってあげてくれと頼んだ。アスランは気前よく、40人用意すると答えた。
映画『みかんの丘』の結末・ラスト(ネタバレ)
夜になり、4人は庭でバーベキューを始めた。ニカが挑発するとアハメドも言い返して激しい罵り合いとなり、イヴォはそんな二人を厳しく叱った。
マルゴスは、みかんを収穫できずに腐らせると心が痛むと語った。その時、彼の敷地に爆弾が撃ち込まれ、みかん畑は一瞬で炎に包まれてしまう。アスランの仕業だ。マルゴスはショックで膝から崩れ落ちた。
翌朝、アハメドはマルゴスにお金を渡すが断られた。アハメドとニカは互いの宗教を尊重し、仲間の死を悼んだ。ニカは兵役の前は劇団員だったと明かし、イヴォは戦争が終わったらアハメドと舞台を見に行くよ、と約束した。
そこにチェチェン兵が現れ、仲間であるはずのアハメドと言い合いになる。兵士が彼に銃を向けた瞬間、ニカが家の中からチェチェン兵に発砲。ニカはアハメドと共に、チェチェン兵と戦った。激しい銃撃戦で、ニカとマルゴスが死んでしまった。
イヴォとアハメドは棺桶を作り、マルゴスはみかん畑に、ニカはイヴォの息子の墓の側に埋めた。家族が恋しくなったアハメドは、家に帰ることに。ニカのカセットテープを聞きながら、我が家へと急ぐのだった。
映画『みかんの丘』の感想・評価・レビュー
ロシアに隣接するジョージア(旧グルジア)で、1989年から起きているアブハジア紛争を背景に、みかん農家のイヴォに起きた出来事を描いた映画。高齢のイヴォは、決して多くを語ろうとしないが、ジョージア人もアブハジア人もみんな同じなのだという、一貫した信念をもって行動している。その信念は、敵対する兵士たちの心を溶かしていった。両国は停戦しているが、領土問題は続いているようだ。イヴォたちのように解決できればと願わずにいられない。(MIHOシネマ編集部)
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