ヨーロッパの映画業界で活躍している大女優のフランソワーズ・クレモン。彼女は自分の死期を悟っていた。そこで、フランソワーズはシントラの町に家族達を集め、皆を幸せに導くためにシナリオを練った。
映画『ポルトガル、夏の終わり』の作品情報
- タイトル
- ポルトガル、夏の終わり
- 原題
- Frankie
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2020年8月14日(金)
- 上映時間
- 100分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- アイラ・サックス
- 脚本
- マウリシオ・ザカリーアス
アイラ・サックス - 製作
- サイード・ベン・サイード
ミヒェル・メルクト - 製作総指揮
- ルーカス・ホアキン
- キャスト
- イザベル・ユペール
ブレンダン・グリーソン
マリサ・トメイ
ジェレミー・レニエ
パスカル・グレゴリー
ビネット・ロビンソン
アリヨン・バカーレ
グレッグ・キニア - 製作国
- フランス・ポルトガル合作
- 配給
- ギャガ
映画『ポルトガル、夏の終わり』の作品概要
町自体が世界遺産となっているポルトガルの都市・シントラが物語の舞台になっており、死期を悟った女優を中心に巻き起こる人間ドラマが描かれている。主演を務めたのは、フランスの名女優イザベル・ユペール。ブレンダン・グリーソン、マリサ・トメイ、ジェレミー・レニエ、パスカル・グレゴリーら豪華なキャストが脇を固めた。映画『人生は小説よりも奇なり』(14)を手掛けたアイラ・サックスがメガホンを取り、マウリシオ・ザカリーアスと共に脚本を執筆している。
映画『ポルトガル、夏の終わり』の予告動画
映画『ポルトガル、夏の終わり』の登場人物(キャスト)
- フランソワーズ・クレモン(イザベル・ユペール)
- 通称、フランキー。ヨーロッパの映画業界で活躍する大女優。自分の死期を悟っている。自信に満ち溢れた人物。
- ジミー(ブレンダン・グリーソン)
- フランソワーズの夫。フランソワーズのアプローチを受け、結婚した。
- アイリーン・ビアンキ(マリサ・トメイ)
- 映画業界で働くヘアメイクアップアーティスト。フランソワーズから信頼されている。
- ポール・ガニエ(ジェレミー・レニエ)
- フランソワーズの息子。自分を中心に物事を考えるフランソワーズに、反発心を抱いている。どこか頼りない性格。
- ミシェル・ガニエ(パスカル・グレゴリー)
- フランソワーズの前夫で、ポールの父親。フランソワーズと離婚した後に、自分がゲイだと気づく。
- シルヴィア・オンド(ビネット・ロビンソン)
- ジミーの娘。夫のイアンとの離婚を考えている。離婚後は娘のマヤと一緒に暮らそうとしており、住む場所を探している。
映画『ポルトガル、夏の終わり』のあらすじ(ネタバレなし)
フランソワ・クレモントはヨーロッパで女優として活躍していた。プールで泳いでいる姿を人に見られることも構わないほど、自信に満ち溢れた人物だった。そんな彼女は、自分の余命があと僅かであることを確信していた。
フランソワは「夏の終わりの休暇」として、ポルトガルの都市・シントラに家族や友人達を集めた。シントラは町自体が世界遺産となっており、美しい風景が魅力的な場所だった。フランソワは自分に残された時間を使い、大切な人達を幸せにしようとシナリオを練っていた。だが、それぞれが悩みや問題を抱えており、フランソワの予想とは外れたことばかりが起きていく。皆にとっての幸せとは一体何なのか、フランソワが辿り着いた人生の最期とは?
映画『ポルトガル、夏の終わり』の感想・評価
複雑な人間模様
主人公のフランソワーズ・クレモンはヨーロッパの映画業界で活躍する大女優である。第一線で活躍してきたこともあり、自信に満ち溢れた人物である。
フランソワーズは自分の死期を悟り、家族や大切な友達が幸せに暮らしていけるよう策を練る。そして、彼らをポルトガルの都市・シントラに呼び寄せた。集まったのは、夫のジミー、元夫のミシェル、息子のポール、友人でヘアメイクアップアーティストのアイリーン、アイリーンの恋人のゲイリー、ジミーの娘のシルヴィア一家。
一見幸せに見える彼らだったが、皆それぞれ悩みや問題を抱えていた。シルヴィア一家は離婚の危機の真っ只中におり、娘のマヤは喧嘩ばかりの両親に複雑な思いを抱いていた。アイリーンはゲイリーとの結婚を悩んでおり、ポールはフランソワーズの言う通りに生きることに悩んでいた。その結果、フランソワーズが練ったシナリオと、皆の思いは大きく外れていく。皆の幸せはどこにあるのか、フランソワーズはどのような思いを抱くことになるのか、彼らの心情に注目しながら見て欲しい。
世界遺産・シントラ
複雑な人間模様が魅力的な作品ではあるが、もう一つ本作の魅力を語る上で欠かせないのは、物語の舞台になっているポルトガルの都市・シントラである。36万人を超える人口が暮らしており、14世紀に建設されたシントラ宮殿や7~8世紀に建設されたムーアの城跡などがある。シントラは町自体が世界遺産として登録されており、上記のような歴史的建造物や広大な自然が見られる場所となっている。日本とも関係が深く、長崎県大村市と姉妹都市提携が行われている。
本作で描かれているのは、早朝から日が沈むまでの一日である。日の当たり方によって町の風景も大きく変わり、ラストまで見飽きない作品になっている。ストーリーと合わせてシントラの街並みや自然を楽しんで欲しい。
名女優イザベル・ユペール主演
主演を務めたのは、フランス出身の女優イザベル・ユペール。フランスの映画賞である「セザール賞・主演女優賞」に14回ノミネートされるなど、高い演技力に定評がある人物である。2016年に公開された映画『エル ELLE』ではアカデミー賞にノミネートされており、彼女の実力は国内に留まらず国外でも認められている。
主人公の夫のジミー役は、異色の経歴を持つブレンダン・グリーソン。現在のように映画俳優として活躍する前は、小学校の教師を務めていた。ヘアメイクアップアーティストのアイリーン役は、「アカデミー賞助演女優賞」を受賞したことがあるマリサ・トメイ。その他に、主人公の息子役はジェレミー・レニエ、主人公の元夫役はパスカル・グレゴリーが出演している。豪華なキャストが集結しており、見応えのある作品に仕上がっている。
映画『ポルトガル、夏の終わり』の公開前に見ておきたい映画
人生は小説よりも奇なり
アイラ・サックスが監督&製作を担当した作品で、マウリシオ・ザカリーアスと共に脚本も手掛けている。ニューヨークを舞台に結婚したゲイのカップルの姿を描いた作品。「第30回インディペンデント・スピリット賞 作品賞」を始め、様々な賞にノミネートされている。トニー賞を受賞したことがある名俳優、ジョン・リスゴーが主演を務めた。
ベンとジョージは39年間苦楽を共にしてきたゲイのカップルである。2011年ニューヨークで同性婚が認められたため、二人は結婚式を挙げた。友人や親族は祝福してくれた。だが、ジョージが務める音楽学校はゲイの結婚を認めず、解雇することを決定する。その結果、ジョージ達は今住んでいる部屋の家賃を払い続けることができず、家を出て行かなければならなくなる。新婚早々、二人は別居することになった。
詳細 人生は小説よりも奇なり
エル ELLE
イザベル・ユペールが主演を務めており、ゲーム会社の経営者を務めるミシェルを演じた。本作でのイザベルの演技は批評家から高く評価されており、「第89回アカデミー賞・主演女優賞」にノミネートされている。フィリップ・ジャン原作の小説『Oh…』を元に制作された作品で、自分を襲った覆面男の正体を暴こうとする女性の姿が描かれている。
ミシェル・ルブランは覆面男に襲われてしまう。警察に被害届を出す気はなく、自分の手で犯人を捜そうとしていた。実は彼女はある出来事がきっかけで、警察に対して強い不信感を抱いていた。元夫、部下、隣人、怪しいと感じる男達は周りにいた。そんな中、ミシェルに対しての嫌がらせの動画が、会社内でばら撒かれる。犯人は一体誰なのか、ミシェルの過去に一体何があったのか?
詳細 エル ELLE
最高の人生の見つけ方
ジャンル:ヒューマンドラマ。余命宣告を受けた二人の男性が、死ぬ前に「やりたいことリスト」に書いた事柄を実行しようと奮闘する様子が描かれている。2019年には日本でもリメイク作品が制作されており、吉永小百合×天海祐希が主演を務めたことでも大きな話題を集めた。アメリカ版はジャック・ニコルソン×モーガン・フリーマンが主演を務めている。
カーターは自動車修理工として真面目に働いてきた。ある日、病院で検査をして癌が見つかる。一方、エドワードは大富豪で、金が全ての男だった。ある日、エドワードは吐血し、検査の結果癌が見つかる。カーターとエドワードは同じ病室に入院することになり、出会った。二人は詳しい検査の結果、半年の命だと余命宣告を受ける。死ぬ前にやりたいことをリストに書き、一緒に行動に移すことにした。
詳細 最高の人生の見つけ方
映画『ポルトガル、夏の終わり』の評判・口コミ・レビュー
『ポルトガル、夏の終わり』問答を繰り返し探し物を見失っては彷徨う、歩き続けるよりほかない個々の歩んできた道の中にあらゆる風を感じる。死期を悟ったフランキーの姿は決して絶望はしないしなやかで倒れない草木。調和と親和 人生は思慮深い道。ロメール作品への敬意と返信の込められた良作◎ pic.twitter.com/J2rHLkQ0Dq
— Bellissima (@BellissM) August 14, 2020
『ポルトガル、夏の終わり』チネチッタにて鑑賞。時間を贅沢に使った、赦しの映画。舞台となっているポルトガルの街「シントラ」こそが主役といわんばかりに、あまりに美しい景観や自然音(空気の香りも嗅げそうな)が、登場人物たちのわだかまりをほどいていくような感覚。時に優しく入るメロディもいい pic.twitter.com/a5UbEJeTGc
— babby (@cipriani_s) August 16, 2020
『ポルトガル、夏の終わり』
大女優フランキーが自分の死期を悟り、家族と親友をポルトガルの世界遺産の街に呼び寄せる。まるで「グレタ・ガルボのような」泰然としたイザベル・ユペールの魅力。そこはかとなく漂うエロティシズム。物語的には消化不良だが、シントラの街の美しさにすっかり魅了された pic.twitter.com/uwJzhaC1Ka
— 続・池袋らぶせくしー (@RUsrjkCwbF354K8) August 16, 2020
『ポルトガル、夏の終わり』鑑賞。イザベル・ユペールを当て書きにしただけあり、彼女が主役以外には想像できない作品。避暑地の美しい風景の中で、彼女と親しい人々の小さなわだかまりが固定ショット中心に積み重ねられる。ポール・ガニエの駄目息子ぶりが良い。「アラベスク」などピアノ曲も印象的。 pic.twitter.com/E0lsgqBHNO
— ロゴパグ (@Ro_Go_Pa_G) August 14, 2020
『ポルトガル、夏の終わり』
イザベル・ユペール扮する大女優フランキーを中心に回る肉親群像劇。
風光明媚な世界遺産シントラの地を舞台としながら、交わされる台詞は常に内向的な浮遊感覚。立場が入れ換わりつつ孤独+孤独=孤独みたいな構図が延々続いたあと訪れる砂浜ラストカットの妙なる静けさ。 pic.twitter.com/uSGA4P2m4v
— pherim⚓ (@pherim) August 14, 2020
映画『ポルトガル、夏の終わり』のまとめ
人々の自然なやり取りを描いたヒューマンドラマ作品に定評があるアイラ・サックスがメガホンを取っている。今までに、ゲイのカップルの結婚後の騒動を描いた映画『人生は小説よりも奇なり』や不倫相手と妻との間で揺れる男性の姿を描いた映画『あぁ、結婚生活』などの作品を手掛けている。本作では、自分の死期を悟った大女優を中心に巻き起こる複雑な人間模様が描かれている。美しいシントラの町で主人公は何を感じるのか、登場人物達はどのような幸せを見つけるのか、彼らの気持ちに寄り添いながら楽しんで欲しい。
みんなの感想・レビュー