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映画『監督失格』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『監督失格』の概要:AV女優・林由美香を愛した人々と、人を惹き付ける彼女の魅力を最大限引き出してカメラに収めた平野勝之によるドキュメンタリー。彼女が確かに生きていた記録と、この世から去る時までを追った平野なりの「葬式」映画である。プロデュースは庵野秀明。

映画『監督失格』の作品情報

監督失格

製作年:2011年
上映時間:111分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督:平野勝之
キャスト:林由美香、平野勝之、小栗冨美代 etc

映画『監督失格』の登場人物(キャスト)

林由美香
伝説のAV女優。どんなに無茶な企画、撮影方法でも「面白ければいい」と言って体当たり的な撮影に挑んだ。物怖じしない性格やサッパリとした発言が人気を呼び、多くのファンを生んだ。2005年の誕生日の前日、6月26日に自宅で亡くなった。
平野勝之
映画監督。AV監督。エロよりもエンタメに特化した作品を多く撮影しており、新人時代に惚れた由美香に認めて貰うため、無茶苦茶な企画で彼女を撮影し続けた。由美香と二人で自転車旅をする『自転車不倫野宿ツアー 由美香』を超える作品が撮れず悩む時期があった。タイトル通り由美香とは不倫関係にあったが、自転車での撮影を終えると二人の関係も終わった。
小栗冨美代
由美香の実母。ラーメン店チェーンの「野方ホープ」社長。角刈りで大っぴらな性格。その性格は娘にも受け継がれており、彼女の仕事を認めてからは良き相談相手だった。
カンパニー松尾
AV監督。1989年当時、由美香と交際していた。彼女と平野の関係を、嫉妬しつつも見守っていた。

映画『監督失格』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『監督失格』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『監督失格』のあらすじ【起】

2010年、10月6日。平野勝之は、ぎっくり腰で腰に激痛を感じながらも、自転車に乗って自身を撮影しなければならなかった。

14年前の1996年。『自転車不倫野宿ツアー 由美香』の企画で旅をしていた当時26歳の林由美香は、カメラに向かって平野と喧嘩したと証言した。原因は、不倫への罪悪感と過酷な旅によって情緒不安定になった平野が、由美香が東京の男友達に手紙を送ったことで激しく嫉妬したためだった。由美香は、初めての大喧嘩を撮影していなかった平野に「監督失格だね」と言った。

東京から1ヶ月かけて北海道の礼文島を目指す二人は、出発前に由美香の自転車練習を兼ねて彼女の母“由美香ママ”を尋ね、旅の計画を伝えた。ママは、娘の負けん気やチャレンジ精神を「信じているからね」と言い、彼女と平野を送り出した。

1996年、5月。誕生日を迎えた平野は、カメラを回しながら由美香のアパートを訪れた。由美香は、散らかった部屋も干された洗濯物も全て撮影させた。二人にとって、プライベートを撮影することは日常の一つだった。

由美香が酔い潰れ眠る寸前、平野は横たわった彼女の顔にカメラを向け「幸せですか?」と聞いた。彼女は「うん、幸せです」と答え、カメラの前で眠りに落ちた。

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映画『監督失格』のあらすじ【承】

1996年、7月19日。二人はいよいよ北海道へ向けて新宿を出発した。由美子は、初日から夏の暑さにダメージを受け「これからひと月以上こういう生活なのね」と涙を零した。それでも彼女が平野との旅を決めたのは、純粋な好奇心とチャレンジ精神によるものだった。

二人が出会った6年前、新人だった平野は既に有名女優となっていた由美香に恋をした。彼は由美香に認められたい一心で、彼女の記憶に残るような無謀な企画のAVを撮影し続けた。平野の気持ちに気付いていながら無視していた由美香だったが、撮影のインパクトが強く、彼を意識するようになったと言う。

平野と同業者であるカンパニー松尾は、1989年当時由美香と交際していた。しかし、本人曰く正式に付き合っていたわけではなかったようだ。松尾は由美香に恋をしその気持ちを告白したが、あっけなく玉砕、彼女の前で泣いたのだと言う。

喧嘩を繰り返しながらも礼文島に到着した由美香と平野は、さらに北にあるトド島へ上陸を果たし、全裸による記念撮影を行った。こうして、1997年に完成した『自転車不倫野宿ツアー 由美香』は『由美香』と改題され映画として公開されたが、旅が終わると同時に二人の不倫関係も終わった。

映画『監督失格』のあらすじ【転】

1998年、平野は由美子との美しい記憶を消し去るため、某女流監督と再び自転車の旅に出たが、結局由美香の影は消えず、「追伸、由美香様」から始まる作品になってしまった。平野は由美香と別れて以降、彼女以上の存在を見つけることはできなかった。

2005年、4月。由美子と細々と交流を続けていた平野は、彼女を起用した新しい企画を考えた。平野は、弟子のペヤングを交えて由美香へ次の企画を説明した。由美香は快諾し、本題もそこそこに結婚を意識している年下の彼氏を繋ぎとめたいと平野に愚痴を溢した。次の撮影は、由美香の誕生日に彼女の部屋で行うと約束しこの日は解散となった。

2005年、6月27日。平野は、いつものようにカメラを回しながら由美香のアパートを訪れた。しかし、チャイムを押しても彼女は出て来なかった。同行していた平野の弟子2号のカリヤも困惑した。

翌日、6月28日。平野は、仕事に対して真摯な姿勢で取り組む由美香が無断で撮影をキャンセルするとは考えられず、ペヤングを連れて再び彼女のアパートのチャイムを押した。彼らはカメラを回して待機するも、やはり由美香からの応答は無かったため、平野は由美香ママに連絡をした。

ママは、合鍵を持って娘のアパートへ駆け付けた。ドアを開けると、由美香の飼い犬と共に異臭が外へ漏れ出した。恐怖を感じたママが平野を先に部屋へ入れると、彼は居間を覗き込むなり「倒れてる、警察」と叫んだ。

林由美香は、6月26日の夜に亡くなっていた。酒と睡眠薬による事故死だった。

映画『監督失格』の結末・ラスト(ネタバレ)

2010年、8月。由美香が死んで以降映画を撮れなかった平野は、由美香ママのインタビューをカメラに収めた。ママは、当時を振り返り「人間は二度死ぬ」という言葉を噛みしめた。

あの日、気持ちのやり場を失ったママは、娘の死に平野が関わっているのではないかと疑った。ペヤングが通報の電話をするため床に置いたカメラは電源が入ったままになっており、警察や救急隊が部屋に入る姿さえ記録されていたのだ。誰も意図しないところで撮影が続いていたために、平野は各方面から疑われた。しかし、平野は弁護士を交え、ママとの間に映像を封印する合意書を作成した。

しかし、由美香の死から5年後の2010年、合意書は解除された。ママは再びカメラを持とうとする平野に「使っていいよ」と言ったのだ。由美香も14年前、平野に「撮っていいよ」と言った。由美香の記憶とママに背中を押された平野は、自分流の由美香の「葬式」をしようと走り始めた。

由美香との思い出を映画として編集する平野は、最後のプロットを練る段になってようやく自分の気持ちに気が付いた。彼は自分に向けたカメラへ「こんな簡単なことに5年も気付かなかった」「由美香と別れたくない」と吠えた。

そして2010年、10月6日。平野は自転車で泣きながら夜の街を疾走し、東京の空に向かって「行っちまえ!」と叫んだ。彼が5年間苦しみ抜いて出した、彼女への別れの言葉だった。

映画『監督失格』の感想・評価・レビュー

形はどうあれ愛に溢れた作品だった。

フィクションでよくある「男共を骨抜きにする魔性の女」像が、林由美香という人間そのものだった。ああいった女性のキャラクターは現実にも実在したのだ。

誰からも愛され、数多の穴兄弟がいて、それでも由美香は孤独に苦しんでいた。平野は、愛を欲する彼女にありったけの愛を捧げたが、どうにも一方通行で悩んでいたと思う。彼女のようなタイプはどこまでいっても孤独なのだ。それを性格と言うか思想と言うかは分からないが、人から愛されるのに人を愛せない人間はいる。恐らく自分自身を愛していないのだ。

このドキュメンタリーを見て、私も由美香に恋をした。孤高な彼女の幻影に憑りつかれてしまった。(MIHOシネマ編集部)


AV女優、林由美香とその不倫相手であった映画監督でありAV監督の平野との少し変わった「ラブストーリー」でした。林由美香は伝説的な存在で、どんな企画にも体当たりで挑むガッツと男を魅了する「魔性」の雰囲気を兼ね備えた天性のAV女優だったと思います。
そんな彼女はなぜ「愛」に執着したのか、どうして平野の愛は一方通行だったのかを周りの人の証言も交えながらドキュメンタリーチックに撮影している今作は、とにかく「愛」に溢れていて彼女を知らない人が見ても、彼女のことを好きになる作品だと感じました。(女性 30代)

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