映画『グッバイ・ゴダール!』の概要:世界から天才と称される映画監督ジャン=リュック・ゴダールの妻・アンヌの自伝的小説を映像化した一作。物語の語り手となるアンヌは、ステイシー・マーティンが演じている。
映画『グッバイ・ゴダール!』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、伝記
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
キャスト:ルイ・ガレル、ステイシー・マーティン、ベレニス・ベジョ、ミシャ・レスコー etc
映画『グッバイ・ゴダール!』の登場人物(キャスト)
- ジャン=リュック・ゴダール(ルイ・ガレル)
- 数多くの名画を世に放ち、映画界に革新を起こした監督。孤独を愛するが、妻のアンヌに依存している。政治活動に翻弄され、自身の作品に関しても否定し始めてしまう。
- アンヌ・ビアゼムスキー(ステイシー・マーティン)
- 女優であり、政治学を先行する20歳の女性。夫となるジャン=リュック・ゴダールに主演へ抜擢され有名になる。祖父はノーベル文学賞の受賞者であり、育ちが良い女性。
- ミシェル・ロジエ(ベレニス・ベジョ)
- ゴダール夫婦の友人。若くして変わり者のゴダールと結婚したアンヌを気にかけてくれる存在。思考に翻弄されるゴダールとは度々喧嘩するが、正しい方へ導こうとしていた。
映画『グッバイ・ゴダール!』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『グッバイ・ゴダール!』のあらすじ【起】
世界中が才能を認め、映画の概念を超えたとされる監督・ジャン=リュック・ゴダール。そんなゴダールにはもうすぐ20歳を迎える恋人・アンヌがいる。若く美しいアンヌと過ごす日々は愛情に溢れていたが、女優業もしているアンヌに「いつか捨てられるのではないか」と危惧している一面もあった。
ゴダールは1967年に手がけた作品「中国女」で毛沢東主義の学生として主演に抜擢し、才能を開花させた。しかしアンヌに対して俳優業のみならず、学業にも専念して政治学を学んで欲しいと思い、未来を想定しているのであった。とある朝、ゴダールはプロポーズをした。もちろん受けたアンヌだったが、頑なに孤独を愛するゴダールに時折困惑することもあった。
中国の大使館と新作の上映について交渉しに行った。しかし、交渉滅裂。新婚旅行も兼ねた中国旅行は夢に終わるのだった。世間はゴダールの新作よりも、ノーベル文学賞を受賞したモーリアックの孫娘と結婚したことに注目をしていた。新作の会見だというのに記者の質問は私生活に関することばかり続くのだった。
映画『グッバイ・ゴダール!』のあらすじ【承】
新作映画は酷評を受けた。精神的に参ってしまうゴダールに対して、アンヌは「撮影を楽しむ余裕を取り返して欲しい」」と思い支え続けていた。そんな中、世間では当時の政権に反するデモが日に日に過激化していた。アンヌと共にデモに参加していたゴダールは娯楽映画を作る意欲が低くなっていき、警察への反抗心ばかりが高まっていた。
ある日アンヌが通う学校の討論会に参加したゴダール。「勝手にしやがれ」の監督と紹介され、突然発言を求められたが、ゴダールの言葉は学生たちには響くことがなく討論会から追い出されてしまう始末だった。アンヌは口ばかり先行する不甲斐ない夫の姿に呆れ始めていた。そんな中、あるパーティーで自分以外の若い男性と話すアンヌの姿にゴダールは嫉妬する。孤独を好むゴダールだったが、独りにされるのは嫌うのであった。
ある日ゴダールはデモに参加しながら撮影をしていた。ようやく娯楽映画に関して意欲を取り戻したように見えたが、見知らぬ男性に「カンヌ映画祭は終わった」と言われ影響を受けてしまう。その後参加した食事会で、広告業の男性と娯楽について言い合いになり、再び眼鏡を壊してしまうのだった。
映画『グッバイ・ゴダール!』のあらすじ【転】
友人・クルーノの作品が出品されるため、ゴダールの意思を汲み取りながらも、アンヌはカンヌ映画祭に行きたいと考えていた。ミシェルの勧めもあり、ゴダールに初めて反抗したアンヌ。数名の文化人とカンヌ映画祭を中止させるべきだと意思表示をしていたゴダールだったが、独りになりたくないため嫌々ながらアンヌについて行くのだった。
バカンス気分のアンヌ達にたてつくような態度を見せるゴダール。カンヌ映画祭は思惑通り中止となるが、アンヌのように楽しむことはできずにいた。二人の心の距離が生まれ始めたころ、パリへ戻ることになった。移動手段がないゴダールは、ミシェル夫婦の車に乗せてもらうこととなるが、同乗したクルーノと言い争いになってしまった。なだめようとするミシェルの夫にも文句を言いだしたゴダールに対して、アンヌは何のフォローもできずただ沈黙を貫き通すのだった。
パリに戻ったゴダールは、「正しい状況と方向」に向かおうとしていた。友人と「ジガ・ヴェルトフ集団」を結成し、自分の名前ではなくグループとして活動しようとするのだった。
映画『グッバイ・ゴダール!』の結末・ラスト(ネタバレ)
映画に対して全否定するゴダールは、招待されたロンドンでの討論会でも大ブーイングを受けた。映画人への批判を続ける過剰なゴダールの言葉に、賛同することはできないアンヌ。自分を世界に示してくれた存在であるゴダールをできる限り愛そうと思っているが、心の溝は深くなり始めていた。
アンヌはフェレーリの作品で主演に抜擢され、撮影のためイタリアに行くことになった。チェコでの撮影に同行して欲しかったゴダールだったが、妻の決断を止めることができず二人は2か月ほど別居することとなった。本音を隠しながら生活していたアンヌは、撮影により解放され始めていた。しかし、ゴダールは突如撮影現場を訪ねてきた。嫉妬に狂うゴダールはアンヌを責め立てた。限界を迎えたアンヌは「もう愛してない」と言い放ちベッドに向かうのだった。翌朝、アンヌが声をかけてもゴダールは動かなかった。必死に助けを求めたアンヌのおかげで一命は取り留めたものの、二人は離婚を免れなかった。
チェコでの撮影を再開したゴダール。スタッフと言い合いになってしまい、政治を取るのか、映画を取るのか選択を迫られたゴダールは、多数決をしようと提案する。夫婦間の苦悩は少しだけ、ゴダールを正しい方向に導いたのだろう。
映画『グッバイ・ゴダール!』の感想・評価・レビュー
19歳から20歳になる多感な時期、アンヌはゴダールという才能に全てを捧げていた。結末だけを見れば、可哀そうな男の話のようにも取れるが、コミカルな要素が多くユーモアのある一作であった。度重なる眼鏡の破損や「裸体の撮影」をバカにしておきながら、自分達は全裸であるなど、クスクスと笑えるシーンが多い。自分を開花させてくれた相手は愛情の対象なのだろうか。「恋は盲目」と言うが勘違いが生んだ高揚感の連続なのかもしれない。ステイシー・マーティンの美しさを堪能できる時間であった。(MIHOシネマ編集部)
才能のある人と生活するのって大変だなあと思う作品でした。映画監督や画家、女優など才能がある人って皆自分のポリシーやプライドを物凄く大切にしていて、才能があるからこそそれに反対されたり否定されることを嫌がりますよね。もし、そんな才能のある2人が夫婦だったら「ああ、こうなってしまうのか…」と感じました。
他人の作品を否定するのは理解できます。自分が作ったものとは世界観が違うのだから。しかし、自分が生み出したものさえも否定し、妻への嫉妬に狂うゴダールの姿はまさにその才能を爆発させているような気がして「大変だなあ」と感じました。(女性 30代)
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