映画『フランケン・ウィニー(2012)』の概要:「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のティム・バートンが描く、ホラー・ファンタジー。1984年に制作した短編を2012年に3D長編化。声の出演にエルザ役ウィノナ・ライダー、チャーリー・ターハン。
映画『フランケン・ウィニー』 作品情報
- 製作年:2012年
- 上映時間:87分
- ジャンル:SF、ホラー、ファンタジー
- 監督:ティム・バートン
- キャスト:キャサリン・オハラ、マーティン・ショート、マーティン・ランドー、チャーリー・ターハン etc
映画『フランケン・ウィニー』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『フランケン・ウィニー』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『フランケン・ウィニー(2012)』のあらすじを紹介します。
ニュー・オランダ町に住む、科学少年ヴィクター・フランケン(チャーリー・ターハン)。ヴィクターの唯一の友達は愛犬スパーキーだけ。ヴィクターは科学と映画が好きで、愛犬スパーキーを主人公にした映画を作り、家族で観るのが楽しみだった。
ある日、ヴィクターの通う小学校に赴任してきたのは、理科担当のジクルスキー先生(マーティン・ランドー)。”雷の正体は電気なんだ!”と科学の面白さを熱く語るが、ヴィクター以外の生徒やその親からは不人気。ヴィクター達生徒は、科学コンテストに向けて研究に取り組むことに。
ヴィクターは、いじめっ子のエドガーに一緒に研究しないかと誘われるが、断ります。友達がいないヴィクターを心配した父は、ヴィクターを草野球に誘います。ヴィクターは草野球で大ヒットを打つが、その直後、愛犬スパーキーが車に轢かれて死んでしまう。”心の中じゃ嫌だ!ここにいて欲しいんだ”と泣きます。
愛犬スパーキーの死で悲しみに暮れるヴィクター。ある日、ジクルスキー先生のカエルの実験を見て、電流を通せばスパーキーを生き返らせれるかもしれないと考えます。そして、激しい雨と雷の夜、スパーキーを甦らせる禁断の実験を行う。この実験はとても危険だったため、ヴィクターの住む地域に停電が発生。強烈な雷でヴィクターの心も放心状態。
しばらくスパーキーの様子を観察します。やがて、スパーキーのしっぽがゆっくり動きだし、ヴィクターを呼ぶように鳴いたのです!スパーキーを抱きしめるヴィクター。こうして、愛犬スパーキーを甦らせることに成功したが、誰にも知られないよう昼間は納屋に犬を隠します。ところがある日、エドガーにスパーキーが見つかってしまいます。
エドガーは、スパーキーの事を秘密にする代わりに死んだ魚を甦らせるよう、実験を強要します。スパーキーの時と同様に実験をすると、魚は生き返ったが透明の”見えない魚”になったのです。その後、同じクラスの別の生徒2人組が、”空飛ぶ実験”をして失敗。屋根から落ちて骨折してしまいます。この事故がもとで、ジグルスキー先生は学校を去ることに。
オランダ・デーの日。納屋に隠していたスパーキーが、母親に見つかってしまい、驚いたスパーキーが逃げてしまいます。ヴィクターの禁断の実験に影響された同級生たちが、死んだネズミやペットで甦りの実験をしたために、甦った動物達が巨大化&狂暴化してしまう。
祭りの会場では、代議士の姪であるエルザ(ウィノナ・ライダー)が歌を歌っていた。祭り会場を巨大化&狂暴化した動物達が襲う!ヴィクターは再会したスパーキーと共に巨大化&狂暴化した動物達を元に戻せるのか?
映画『フランケン・ウィニー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『フランケン・ウィニー(2012)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
犬を愛するすべての人に贈る!禁断のホラー・ファンタジー
ティム・バートン監督の原点ともいえる、主人公ヴィクターのキャラクターや不細工だけどかわいいスパーキー(犬)の描写に釘付けになります。本作「フランケン・ウィニー」は、「コープス・ブライド」(05)に繋がる物語だと思います。「コープス・ブライド」は、青年時代のヴィクターであり、本作はその少年時代のヴィクターを描いています。
特筆すべきなのは、愛らしいスパーキーの動きです。犬を飼っている人にはよく分かると思うのですが、感情豊かなしっぽや庭に放たれた時の喜び、鼻をくんくんさせて歩く姿など、とてもリアルでわくわくします。筆者も以前、犬を飼っていたのでその愛犬を思い出し、涙がこぼれてしまいました。ティム・バートン作品には、犬が必ずといっていいほど登場します。
例えば、「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」の犬ZERO、「コープス・ブライド」のヴィクターが幼い頃飼っていた愛犬スクラップスというように、主人公と共にいつも愛犬が寄り添っています。少年時代に無二の親友として、犬と出会っていたらとうらやましく思いますね。本作では、愛犬スパーキーを雷を使った禁断の実験で甦らせます。死んだ動物は2度と生き返らないし、子供が見て簡単に生き返ると思ったら大変という意見もあるようですが、ティム・バートンのアニメならいいんです!
それは、ヴィクターが命の尊さを1番よく理解しているからです。スパーキーが2度死ぬ&蘇生シーンに注目して下さい。”もう生き返らなくてもいいよ”とヴィクターが小さく呟いていますよ。また、ティム・バートン世界には不思議がいっぱい。ヴィクターとその家族以外の登場人物(子供や体育教師、代議士など)を観ると、目つきがまるでゾンビの様です。また性格もいじめっ子や問題行動をとる子供ばかり。いじめを具体的に描いていないけど、ヴィクターへの悪意?のようなものも感じます。
白黒の画面とストップ・モーションアニメで、そんな内面性までも鋭く描いてしまうところにティム・バートン作品最大の魅力があるのではないでしょうか。
映画への愛が詰まったシーンに注目せよ!
主人公ヴィクターの自主制作映画から始まり、オランダ・デーと呼ばれるお祭りで強大化&狂暴化した動物たちの姿に映画への愛があふれています。巨大化&狂暴化した動物達をカメラで追うと、足がまず現れて次に巨体が迫ってきます。まるで、映画「ゴジラ」のように。ヴィクターの自主制作映画でも、怪物が出てきました。また、ヴィクターの両親が観ていたのは、映画「フランケンシュタイン」。”甦り”の伏線にもなっています。
これらすべてを人形アニメで表現し、映写機やヴィクターの実験室など細かな設定や描写も怠らない職人気質に驚くハズです。本作のDVDでは、人形アニメの制作現場についても紹介していますので、興味を持った方はぜひご覧下さい。ティム・バートン監督は、実写映画も撮っていますが、人形アニメを観ることをおすすめします。ああ、スパーキーのフィギュアが欲しい!
映画『フランケン・ウィニー』 まとめ
ティム・バートン世界へようこそ。「フランケン・ウィニー」は、犬好きにはたまらない、ちょっと怖いファンタジーです。死んだ動物は2度と生き返らないけれど、愛情あふれる少年が望むのならずっと生き続けるよと教えてくれます。ラストを観て、あなたがどう感じるかは自由です。
本作の見どころは、愛らしいスパーキーのしっぽや鼻、動きがとてもリアルな点と科学少年ヴィクターのマッド・サイエンティストぶりです。犬好きでなくても、スパーキーのかわいらしさに癒されるでしょう。またヴィクターの考えを支えてくれる、理科担当・ジクルスキー先生の存在感も面白い。
理科離れが進んでいる今こそ、ジクルスキー先生やヴィクターのような存在が必要です。内向的なヴィクターは、ティム・バートン自身を投影した姿であり、叶えられない夢だからこそ、美しいのです。
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