映画『とうもろこしの島』の概要:アブハジア紛争の最中、アブハジア自治共和国とジョージアの境界を流れる川の中州でとうもろこし栽培をする老人と少女の姿を見つめたヒューマンドラマ。余計な台詞を排除した淡々とした演出が印象的な作品。
映画『とうもろこしの島』の作品情報
上映時間:100分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ギオルギ・オヴァシュヴィリ
キャスト:イリアス・サルマン、マリアム・ブトゥリシュヴィリ、イラクリ・サムシア、タメル・レヴェント etc
映画『とうもろこしの島』の登場人物(キャスト)
- 老人(イリアス・サルマン)
- アブハジア人の農民。エングリ川の中州に小屋を建ててとうもろこし栽培を始める。紛争においてはどちらに対しても関与しない姿勢を貫く。
- 少女(マリアム・ブトゥリシュヴィリ)
- 老人と共にとうもろこし栽培を手伝う。両親は既に他界している。ジョージア人兵士のことを魅力的と感じている。
- ジョージア兵(イラクリ・サムシア)
- エングリ川をボートで哨戒しており、少女に見とれてしまう。ある日、負傷して中州にたどり着き老人に看病してもらうことになる。
映画『とうもろこしの島』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『とうもろこしの島』のあらすじ【起】
コーカサス山脈のエングリ川に肥沃な土砂が流れ込んで中州が形成される。老人がボートを漕いでその中州までやって来る。老人は土を掘り返し、物の欠片を見つけるとポケットにしまう。そして中州が自分のものであることを示すために白い布を掲げる。
老人は木材をボートに積んで中州に戻ってくる。そして支柱を四隅に建てて、小屋の建設を始める。老人は次に、少女を連れて板材を運んでくる。少女は手作りの人形を大切そうに抱えていた。中州に着いた老人と少女は魚を捕まえるための罠を川に仕掛ける。そして2人は横になり、静かな時の流れを感じる。
老人と少女はノコギリで板材を切断して、長さを調整する。川にジョージア軍の哨戒船が姿を見せる。中州はジョージアとアブハジア自治共和国が争う境界地点に位置していたのだ。誰の土地かと尋ねる少女に対し、老人は中州が耕す者の土地だと説明する。老人は火を起こし、魚の罠を引き上げる。罠には大量の魚が捕れていた。老人がさばいた魚を少女が川の水で洗い、2人は焼いて食べる。
映画『とうもろこしの島』のあらすじ【承】
老人と少女は板材を柱に打ち付ける作業を始める。そして入り口に扉を設置する。続いて藁を運んできて来て、老人が丁寧に屋根に敷き詰める。こうして遂に小屋が完成する。少女が川の水で体を洗っていると、ジョージア軍の哨戒船が再び通り過ぎ、ジョージア兵が少女に目を奪われる。老人と少女は保存食にできるように魚を天日干しにする。
老人はショベルを研いで中州を耕し始める。老人が小屋の中で休憩していると、遠くで銃声が鳴り響く。老人は銃声のする対岸の森を見やり、再び作業を始める。少女は畑にトウモロコシの種を巻いて老人の手助けをする。しかし、雲行きが怪しくなり激しい雨が降り始める。老人と少女はボートを流されないようにしっかりと杭に結び直す。翌朝、中州の土砂の一部が流失してしまっていた。
老人は少女を連れて森で木を切る。その最中に再び銃声が響く。老人は少女に身を潜めるように合図する。老人と少女は切り取ってきた木々で中州の周囲に堤防を築き始める。トウモロコシの芽が出てきて、中州が緑に染まる。
映画『とうもろこしの島』のあらすじ【転】
老人と少女が中州に布団や猟銃を持ってくる。少女はぬいぐるみを小屋の壁につるして飾る。少女は川から汲んできた水をトウモロコシの芽にかける。ジョージア軍の哨戒船が中州の前を横切り、ジョージア兵が少女のことを見つめる。
老人は少女に学校の進捗具合を尋ねる。少女は来年が卒業だと答え、老人は死亡した両親に代わり自分が見届けられることを願う。夜中に少女が小屋を抜け出し川に入る。しかし、突然物音がしたため、ビックリした少女は溺れそうになる。何とか立ち上がった少女は慌てて小屋に戻る。
翌朝、少女と老人はトウモロコシ畑の中で負傷したジョージア兵を発見する。そこにアブハジア自治共和国の兵士達が船で通りすがり、老人によそ者を見なかったか尋ねてくる。老人はただ首を横に振る。老人と少女はジョージア兵を小屋に運び入れ、手当をする。老人は収穫したトウモロコシを少女に持たせて送り出すと、自らは中州に留まってジョージア兵の看病を続ける。こうして、ジョージア兵は自力で歩けるまでに回復する。
映画『とうもろこしの島』の結末・ラスト(ネタバレ)
ジョージア兵が木材を削っているところに少女がやって来る。少女はジョージア兵が魅力的だと声を掛けるが、言語が通じず理解されない。少女はジョージア兵に水をかけてふざけ始める。それに気付いた老人が厳しい目で見つめ、少女をボートで送り返す。
アブハジア自治共和国の兵士達が中州にやって来る、ジョージア兵は慌てて水の中に隠れ、老人は兵士達にワインを振る舞う。兵士達は去り際に敵兵を探していることを老人に説明する。その一件の後にジョージア兵は中州から姿を消してしまう。今度はジョージア軍がジョージア兵のことを探しに来るが、老人は誰もいないとだけ答える。
老人と少女はトウモロコシの収穫を始める。しかし、雨が激しく降り始めてしまう。老人と少女は収穫作業を懸命に続け、ありったけのトウモロコシをボートに積む。少女はボートを漕いで中州を離れるが、残った老人は小屋もろとも流されてしまう。僅かに残った中州に男がやって来る。男は土を掘り返して少女の人形を見つけると、それをボートに乗せる。
映画『とうもろこしの島』の感想・評価・レビュー
静かでありながら雄弁な作品。豊かな自然の営み、その中でとうもろこし栽培を続ける老人と少女の姿を通じて、紛争の虚しさが描かれている。説明や台詞がほとんど省かれていることで物語に普遍性がでている。表情一つで全てを語る出演者の演技も素晴らしく、ドキュメンタリーを見ているようだ。日本では『みかんの丘』と同時に公開されたが、そちらの方も素晴らしい作品なので併せて鑑賞することをお勧めする。(MIHOシネマ編集部)
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