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映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』あらすじとネタバレ感想

映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』の概要:法隆寺の鬼と呼ばれた宮大工がいる。法隆寺大修理や薬師寺伽藍の再建に携わった宮大工・西岡常一の仕事ぶりを監督が長期にわたり西岡氏の弟子を通じて取材したドキュメンタリー。神社建築の基礎がここにある。

映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』 作品情報

鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言

  • 製作年:2011年
  • 上映時間:88分
  • ジャンル:ドキュメンタリー、ヒューマンドラマ
  • 監督:山崎佑次
  • キャスト:西岡常一 etc

映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★☆☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★★

[miho21]

映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』のあらすじを紹介します。

奈良県斑鳩町の代々宮大工を営む家に生まれた西岡さんは、祖父から宮大工の仕事の三原則を教わった。用材は木を買わず山で買え、木は成長の方位のまま使え、木組みは木の癖で組めというもの。その根源にあるのは、木を知るには土を知れ、という事だった。全ての命の源である土を知らなければ建物は出来ない。

北向きの方角に建っている建物に、南向きに聳え立つ山の木材を使っては成らない。今は良くても、何十年、何百年の時を経るといつか歪みが来てしまうというのだ。そんな建物が増えた事に対して西岡氏はこう嘆く。

『そんな事をしたら木が、山が泣きよります・・・』

自然への深い理解なくして全ての建造物は成立たない。一度は建築学を学ぶため工業高校行きを考えた西岡氏が高校行きを諦めて宮大工の道に入ったのは、祖父の偉大なる教えがあったからだった・・・

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映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

企画から撮影まで長期に渡ったドキュメンタリー

映画が公開されたのは2012年になっているが、この映画、監督の山崎氏が取り掛かったのは、西岡氏が存命だった’80年代から。
西岡氏に逢う前に山崎氏は、神社建築について6年間学び、’90年にようやく西岡氏本人に企画書を送り逢えたという。しかしその時、西岡氏の体はガンに侵されていた。撮影は’90年から西岡氏が現場に居た間の、三年半に渡って行なわれ、西岡氏は’95年に他界。
監督した山崎氏も、その場にいた弟子の棟梁や宮大工たちも『遺言状』と受取ったドキュメンタリーだったらしい。

ものづくりの大切さが垣間見える

宮大工として、建物の建つ方向と、使う木材となる木が生えている山まで考える西岡氏。その根底にあるのは、木は製材した後でも『生きている』という概念がある事である。

西岡氏曰く、木には年輪があり微妙にねじれているので、この組み合わせを相殺し、建物が歪まないようにするのが宮大工の技だという。正倉院の校倉作は、その最たるものと言える。千年の風雨に耐えうる寺社を建てるための教えの全てが西岡氏の祖父から西岡氏、そして彼の孫ぐらいの年の宮大工や棟梁に受け継がれていく様がドキュメンタリーに描かれている。

木を買うときは山ごと買えという教えも、山に生えている木のみた時点で、この木は柱に向いている、この木のこの部分は壁面に向いていると見極める目を養うためでもあるという事を私たちに教えてくれる事がありがたい。

古きを知り、現代に繋げる

西岡氏は、宮大工である祖父に『土を知れ』といわれ、農業学校に通わされ、1年間農業をさせられる。

が『稲を作ってるのに何も学んでない、本ばかり読んでいる』と叱責されてしまう。その時から材質に触れ合うことの重要性がわかったと西岡氏は言っている。そして古き良きものを修復する立場である以上、工具が現代のものであってはおかしいという概念から法隆寺が建立された飛鳥時代の工具を復活させるなど、創意工夫をし、現代にその技をよみがえらせている所もかいまみえます。
また職人の殆どは口下手かつ技は盗めというのに対し、西岡氏は、この世代の職人にしては珍しく教え上手で孫世代にも親しまれ易い姿が垣間見れる。


自分が作るものに対して真っ向から向き合い、納得がいくまで絶対に妥協しない西岡常一さんの姿勢に感動するとともに、宮大工の世界の厳しさや難しさ、そして日本の伝統的な趣きや粋を感じられるドキュメンタリー映画です。
今のために作るのではなく、数百年後の後世に残るものを作るという一見頑固にも見える筋の通ったやり方に、日本の伝統文化の素晴らしさを改めて感じました。魂を込めて作られたものだと知ってからその建物を見ると、細部にまでこだわられた繊細な仕事や、熱い熱量を感じることが出来ると思います。
西岡棟梁のような存在にはなれなくても、自分の仕事にプライドを持って、魂を込めてチャレンジしていきたいなと思わせてくれました。(女性 30代)

映画『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』 まとめ

この映画は職人のおじいちゃんが、黙々と自分の半生や仕事ぶりを喋る姿で構成されている部分と、彼の仕事を評価する弟子たちや教授たちの証言で構成されている。

西岡氏の名を一躍有名にした、法隆寺修復は長期に渡る上、ガンに侵された以上身体的にも無理があり自分が陣頭指揮をとるのは難しいと、西岡氏は思っていたそうだ。しかし最終的には寺を愛するその気持ちで西岡氏は引き受けてしまったらしい。
法隆寺の鬼が残した遺言は、弟子たちの手により後世に伝えられるだろうし、西岡氏の残した著作はこのDVDの他にもある。この映画で、西岡氏の建築学に興味をもたれた方は、他の著作も紐解いてみてはいかがだろうか。

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