実在したラブホテルを舞台にした直木賞受賞作品がとうとつ実写映画化。様々な人が集うラブホテルという場所で、一人の女性が自身の人生を見つめ直す良質なヒューマンドラマ。
映画『ホテルローヤル』の作品情報
- タイトル
- ホテルローヤル
- 原題
- なし
- 製作年
- 2020年
- 日本公開日
- 2020年11月13日(金)
- 上映時間
- 104分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 武正晴
- 脚本
- 清水友佳子
- 製作
- 狩野隆也
小西啓介
松井智
瓶子吉久
宮崎伸夫
佐竹一美
寺内達郎
本丸勝也
広瀬兼三 - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 波留
松山ケンイチ
余貴美子
原扶貴子
伊藤沙莉
岡山天音
正名僕蔵
内田慈 - 製作国
- 日本
- 配給
- ファントム・フィルム
映画『ホテルローヤル』の作品概要
かつて実際に存在したラブホテル、ホテルローヤル。ラブホテルを舞台にしているからといって、下ネタやギャグだと勘違いしている人はいないだろうか。本作は、あの直木賞も獲得した小説が元になっている。さらに、本作の監督を担当しているのは、過去にアカデミー受賞作品を手掛けた武正晴。キャスト陣には波瑠や安田顕、松山ケンイチに余貴美子など実力者ばかりを揃えた、かなり豪華な一作なのだ。舞台設定だけ聞いて、物語を勝手に判断してしまっては確実に損をする。良質な作品を見たいという人にこそ是非勧めたい一作。
映画『ホテルローヤル』の予告動画
映画『ホテルローヤル』の登場人物(キャスト)
- 田中雅代(波瑠)
- ラブホテルを実家に持つ女性。美大受験に失敗し、家業のラブホテルを手伝うことになる。
- 宮川聡史(松山ケンイチ)
- 雅代が密かに想いを寄せる男性。アダルトグッズ会社で営業をしている。
- 田中大吉(安田顕)
- 雅代の父。ホテルローヤルの創業者。実務は妻に任せ、自由気ままに生きている。
映画『ホテルローヤル』のあらすじ(ネタバレなし)
ホテルローヤルとは、北海道釧路にある小さなラブホテルの名前。釧路湿原を背に立つそのホテルを経営する夫婦には、一人娘がいた。その一人娘である雅代は美大に入ることを夢見ていたが、残念ながら受験に失敗。仕方なく、家業のラブホテルを手伝うことになる。ラブホテルには様々な客が訪れた。黙々と仕事をこなしていた雅代だったが、ある時事件が起きる。なんと、ホテルの一室で心中事件が起きたのだ。以降、マスコミに執拗に追われるようになった雅代の家族。そんな中、父親が病に倒れるという悲劇が重なってしまう。父が倒れたことによって、本格的に家業を引き継ぐことになった雅代。これまで流されるままに生きてきた雅代が、自分の人生に初めて向き合うことになる。
映画『ホテルローヤル』の感想・評価
ラブホが舞台
本作の舞台はラブホテル。恐らく多くの人が一度はラブホテルに行ったことがあるのではないだろうか。本来ラブホテルに行くことは決して恥ずかしいことではないのだが、あまり大っぴらに「これからラブホテルに行く!」と言うこともないだろう。日本人は性に対してオープンではない傾向にあるため、尚更である。そんな風潮の中、実家がラブホテルというのはどういった気持ちなのだろうか。幼い頃などは特に、中々友達などには打ち明けられないかもしれない。しかし、そんなラブホテルには様々な事情を抱えた人々が次々と訪れる。つまり、様々なドラマが起こり得る場所なのだ。そんなラブホテルを舞台に、果たしてどのような事件が起こるのだろうか。
自伝小説
本作の舞台となっているホテルローヤル。実はこのホテル、北海道釧路市に実在したホテルなのだ。何を隠そう、この作品は作者である桜木紫乃の、自伝的作品なのである。桜木は、実際にこのホテルローヤルを実家としていた。そして、実際に青春時代をこのホテルで過ごしていたのだった。残念ながらこのホテルは2012年に閉館しているが、最新作は当時のホテルローヤルをリアルに再現している。それは外観だけでなく、ホテル内の小物一つに至っても徹底的に拘っているのだ。実際にこんな場所がこの世の何処かに存在していたのだと考えると、なにか感慨深いものがある。ホテルローヤルが、再びこの世に蘇る。
彼女が選ぶ道は
元々美大を目指していた主人公、田中雅代。芸術はかなり難関度が高い分野。例に漏れず雅代も、受験に苦労することになる。浪人することも珍しくない世界ではあるが、なんと彼女が選んだのは実家のラブホテルで働くこと。元々目指していた芸術の道とはあまり関係がないように思われる世界である。そして、流されるままになんとなく生きてきた彼女。とある事件をきっかけに、彼女は自身の人生を見直すことになる。しかし、それまであまり自分の人生に向き合ってこなかった人間にとって、それはあまりに難解な問題。果たして彼女は、作中で経験した様々な出来事を経て、一体どういった選択肢を取るのだろうか。自分の人生に悩んだことがある人ならば、きっと雅代の気持ちを理解できることだろう。
映画『ホテルローヤル』の公開前に見ておきたい映画
百円の恋
本作の監督を務めた武正晴が過去にメガホンをとった作品。安藤サクラが主演を務め、アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得した。その他にも、最優秀脚本賞も獲得した、まさに名作中の名作。その武監督が監督しているのだから、最新作への期待も自ずと上がる。ヒロインである斎藤一子は、30歳を過ぎても実家で引きこもるという自堕落な毎日を送っていた。しかし、彼女の平穏な毎日は突如として終わりを迎えることとなる。一子の妹である二三子が子供を連れて実家に戻ってきたのだ。そして、その二人といざこざを起こしてしまった一子は家を追い出されてしまう。一人暮らしを始めた一子は、100円ショップで働き始める。そして、そこから一子の人生は大きく変わっていくことになる。
詳細 百円の恋
さよなら歌舞伎町
ラブホテルを舞台にした作品は過去にも存在した。それが本作。ラブホテルが多く位置する新宿歌舞伎町。元々、多くの人々が出入りする歌舞伎町。そんな歌舞伎町にあるラブホテルなのだから、当然普段は怒らないような事件も起こる。主人公の徹は、一流ホテルで働くことを夢見ている青年。しかし、現実は厳しく、彼はラブホテルの店長という座に甘んじていた。彼はそのことを周囲に打ち明けられず、悩む日々を送っていた。そんな彼の勤めるラブホテル、ホテル・アトラスには日々様々な客が訪れる。元保育士でAV女優になった美優や枕営業をしている徹の恋人、風俗のスカウトと家出少女など、様々な客が様々な事情を抱えてやってくるのだ。本来交わることのないはずの彼らの人生が、ホテル・アトラスで交わっていく。
詳細 さよなら歌舞伎町
GO
最新作の原題となっているのが、作家桜木紫乃による短編集。そして、本作は第149回直木賞を受賞するなど高い評価を得ているのだ。直木賞、正式名称を直木三十五賞とするこの文学賞は、1935年に幕を開けた日本の文学賞を代表する歴史ある賞。そして、本賞を獲得した作品は過去にも数多く映像化されている。その内の一つが本作である。監督に行定勲、脚本に宮藤官九郎、キャストに窪塚洋介や柴咲コウ、大竹しのぶなどのそうそうたるメンバーを起用した超豪華作。窪塚洋介演じる主人公の杉原は、在日韓国人で父親仕込みのボクシングで日々喧嘩に明け暮れていた。しかし、桜井という少女と出会ったことで、彼の生活に変化が訪れる。そんな中、親友であったジョンイルが日本人に刺されて命を落としてしまう。
詳細 GO
映画『ホテルローヤル』の評判・口コミ・レビュー
『ホテルローヤル』映画館にて139本目。
非日常が体験できる場所。だけど私にとってはそれが日常。幼い頃からラブホの娘として育った主人公が家業を継ぎ痛みや温かな思いやりを育む。ラストの繋がりは美しさを感じ編集は巧みだったが人物描写がやや薄味。効果的に使われた扉が印象的。 #EDDIE映画2020 pic.twitter.com/qH0EDDbMm2— EDDIE@Kings31-41👑 (@eddie2yuji) November 13, 2020
『ホテルローヤル』
場所とそこに集う人々の記憶の映画。世評ほどは悪くはないと思ったけど、各々のエピソードが弱いし、時間の経過と共にそれぞれの登場人物たちの心の中に積み上がってくるものが見えないのでラストも薄味に感じてしまう。
主題歌「白いページの中に」は良かったです。#背骨映画 pic.twitter.com/7PW92L3JyY— ☠️背◢⁴⁶骨☠️ (@1192seborn) November 15, 2020
「#ホテルローヤル」鑑賞
舞台は北海道のラブホテル。従業員も客も皆訳あり。原作も読みましたが、内容や役者さん達が悪いわけではない。しかし面白味に欠けるんだな。歌謡曲と演歌と童謡を混ぜ合わせてしまったようで、昭和感、悲哀感、嫌悪感も中途半端かなと。無表情な波瑠ちゃんは綺麗でした♡ pic.twitter.com/QcLTpNIw5z
— 山下真冬 (@mafuyu_cat) November 14, 2020
『ホテルローヤル』鑑賞。
ラブホテルの従業員たちとそこを訪れる客たちとの群像劇…なんだけど、各エピソードの描き込みが圧倒的に足りないので「思い入れのない人物が何かやってる」程度にしか思えなかった。終盤の波瑠パートで若干盛り返すものの後の祭り。構成と取捨選択のミスが全ての元凶。 pic.twitter.com/wNsI8pYG76— Rocky@六月の狂詩曲 (@rhapsodyinjune6) November 15, 2020
“ホテルローヤル”
ラブホテルを舞台に、まるで家族ドラマを観ている様な、ほのぼのとした物語と、それにマッチした音楽に、やっぱり違和感は否めないな。ラブホテルと、一つ棟にある住まいからの風景とか、活かせば面白い要素はあるものの、直木賞受賞の原作を、読みたいとは思えてこない作品だった。 pic.twitter.com/NKWyJ9IYco— 常山の住職 (@CinemaCLAIRfan) November 14, 2020
映画『ホテルローヤル』のまとめ
ラブホテルという場所は、非常に興味深いところである。利用客を見てみると、まさに恋愛真っ只中にいるカップルから全く関係性が分からないような組み合わせまで、幅広い層が見られる。彼らが一体どういった事情でここにいるのか、誰も分からないし、気にしていない。ホテルの外では許されないような関係でも、ホテル内では暗黙の了解で許されたりもする。まさに、お手軽に非日常感を味わえる場所であるともいえる。そんな場所を舞台にしているのだから、さぞ興味深い出来事が起こるに違いない。大人の男女に向けた良作。
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