映画『再会の食卓』の概要:ベルリン国際映画祭にて銀熊賞(最優秀脚本賞)を受賞した一作。中国と台湾の歴史により生き別れた元夫婦は再び一緒に暮らそうとするが、情深い現在の夫を前に想いを揺らがせていく。
映画『再会の食卓』の作品情報
上映時間:96分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ワン・チュアンアン
キャスト:リサ・ルー、リン・フォン、シュー・ツァイゲン、モニカ・モー etc
映画『再会の食卓』の登場人物(キャスト)
- ユィアー(リサ・ルー)
- 夫・イェンションと生き別れ、幼い息子を抱え絶望の淵ルーと出会う。文革中、支えてくれたルーとの間に2人の娘を授かり安定した家庭を築いていたが、イェンションと再会し心が揺らいでしまう。
- イェンション(リン・フェン)
- 国民党兵士として敗戦を経験している。退却後、台湾に身を寄せ新たな家庭を築いていた。妻を亡くし、ユィアーと一緒に暮らそうと上海まで会いに出向く。
- ルー・シャンミン(シュー・ツァイゲン)
- ユィアーの夫。事実婚であり、証明書などはないものの温かい家庭を築いてきた。ユィアーの決断を受け、快く見送ろうと強がってしまう。
映画『再会の食卓』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『再会の食卓』のあらすじ【起】
1949年、国民党が共産党に敗れ台湾へ退却。数十万世帯の国民党軍兵士家族が生き別れとなった。1987年を迎え、台湾当局は退役軍人の本土帰省をようやく許可。多くの家族は失った時間を取り戻し始めるのだった。
ユィアーの夫・イェンションも国民党兵士の一人である。ユィアーを上海に残し、台湾で新しい家庭を築いたというイェンション。その事実は手紙で知らされた。イェンションから妻が亡くなり、一人になったという内容の手紙が届いたのである。上海に戻るため会いたいともその手紙には書かれていた。複雑な時代背景を理解しがたい子供たちだが、豪勢な食事を用意しイェンションを迎えることにする。
ユィアーは幼い息子を抱え、一人上海で絶望の淵に立たされた過去がある。その時で出会ったのが夫・ルーである。二人の間には娘が二人いた。ルーを筆頭に、イェンションを快く迎えた一家。新しいベッドと布団を用意して待っていたユィアーだが、その夜は深く会話することはなかった。
翌日、バスツアーに一緒に参加したユィアーとイェンション。時間は次第に二人の距離を埋めていき、バスで眠りに落ちてしまった時には手を取り合っていた。同行した孫娘・ナナはその様子を見守る。入居予定のマンションを見せたユィアーは、生き別れた日の真相について話題を切り出した。明確には答えないイェンシャンだが、息子・ジエングオの成長を目の当たりにし安堵し、本来の目的を口にした。実は台湾でユィアーと一緒に暮らしたいことを伝えにわざわざ上海まで会いに来たのである。
映画『再会の食卓』のあらすじ【承】
お互いの年齢を考え、残された時間を共にしたいイェンション。しかしユィアーは文革中に自分とジエングオの命を救ってくれた恩から、ルーを裏切ることはできないと困惑するのだった。その頃、ルーはイェンションに美味しいご飯を振る舞おうと、市場で奮発して買い物をしていた。子供たちが居ない隙に、イェンションと台湾へ行きたい気持ちを告白しようとしていたユィアー。しかし、倹約家のルーがイェンションのために贅沢をさせようとする情深さを前に、言い出しにくくなってしまったのである。
ユィアーの気持ちを知ったイェンションは、3人で食卓を囲みながら相談することにした。どんな返答が来るか不安がるユィアーをよそに、ルーは台湾への移住を快諾する。イェンションを「兄」と呼び、子供たちにも相談する段取りまで考えてくれるのだった。
子供たちのリアクションは両極端だった。ジエングオは賛成するもルーとの間に生まれた2人の娘は当然大反対するのだった。娘夫婦も巻き込んでの大喧嘩に発展したが、ルーは離婚するという決意を変えなかった。
映画『再会の食卓』のあらすじ【転】
ユィアーとルーは離婚に向けて動き出した。結婚当時は証明書の発行などなく、役所での手続きに必要な書類が揃わなかった。事実婚であることから、証明書を発行するために「結婚写真」を撮ってくるように言われた二人。ルーは写真館に急いでいこうと、ユィアーを急かすのだった。
熟年婚だと勘違いした写真館の主人は、寄り添って明るく笑うように指示をする。しかしユィアーは罪悪感でいっぱいのままである。見事に結婚証明書を取得した二人は離婚の手続きを進めようとするが、合意書を作るためには財産分与についてもまとめなくてはならず不動産の保有証明も必要だと発覚する。しかし、二人の持っているマンションはまだ建設中である。離婚手続きのためにこの日二人は、正式に結婚しただけになってしまった。
その頃、イェンションはユィアーのナナと展望台に居た。上海の町を見下ろしながら、祖父母の過ごした時間を感じたかったのだ。家族と合流したユィアーとルー。ルーは出費を気にせず外食し、たばこも吸い始めた。自棄に明るく振る舞うルーだったが、うるさいと他の客から注意を受け、騒ぎを起こしてしまう。さらに脳梗塞で突然倒れてしまうのだった。
映画『再会の食卓』の結末・ラスト(ネタバレ)
自宅療養が始まったルーだが、食欲がなくどんどん衰弱していく。刺激を与えてしまったせいだと自分を責めるユィアー。イェンションは亡くなった妻に習った料理を振る舞い、ルーを元気付けようとした。ユィアーの提案で20年貯蔵したお酒も一緒に食卓に上げることにする。少し元気を取り戻したルーは、1949年2月14日について話題に出した。それぞれの運命を変えることになった日である。
上海に帰りたかった日々を語るイェンション。同じ時代を生きた3人は、歌いながら思い出を共有した。そしてイェンションは一人で台湾に帰ることを決めたとルーに報告する。すでにユィアーとは話をしていたのだ。2日後、ジエングオと一緒に見送りに行ったユィアーは、「もう二度と会えないかもしれない」と涙を流した。
新築のマンションに引っ越したルーとユィアー。ルーのお祝いの最中に、ナナは結婚の報告をした。しかし相手は結婚証明書を取ったらすぐに2年アメリカに行くと聞いたユィアーは、夫婦がバラバラに暮らすことを反対した。ルーは食事をまず済ませようと不安がるユィアーをなだめるのだった。
映画『再会の食卓』の感想・評価・レビュー
国家間の歴史に阻まれた関係。家庭という枠組みの中で、感情をどう落ち着かせるのか。難しい題材であった。ワン・チュアンアン監督の「トゥヤーの結婚」は好みの作品だったのだが、当作は知識不足によりイマイチ感情をのせきれなかった。自分達に残された時間はどれくらいなのか明確には見えずとも、短いことだけは分かっていると大胆な行動に移すことができるのだろうか。互いに支え合ったルーとユィアーならではの愛情表現として、一度別れを決断する様はとても勇ましくも思えた。(MIHOシネマ編集部)
今の旦那さんがいい人すぎて、あんまり人のことばかり思っていると損してしまうとドキドキしながら見ていましたが、彼は損得なんて考えていなくて、単純に妻のことを、妻の全てを愛していたのだろうと感じました。
一見わがままで自由奔放な妻に見えますが、そんなところも彼女の愛すべき要素の1つだったと思います。
元旦那と今の旦那と3人で食卓を囲む。そんなことってありますか?絶対にありえないような状況を、微笑ましく見せてくれる今作の温かさに心が安らぎました。(女性 30代)
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