映画『国家が破産する日』の概要:経済の急成長を遂げた韓国は、1997年に通貨危機を迎えた。実際に起きた経済危機の裏側を描いた社会派ドラマ。キム・ヘスを主演に、人気若手俳優ユ・アインや韓国映画初出演となるバンサン・カッセルなどが脇を固める一作。
映画『国家が破産する日』の作品情報
上映時間:114分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:チェ・グクヒ
キャスト:キム・ヘス、ユ・アイン、ホ・ジュノ、チョ・ウジン etc
映画『国家が破産する日』の登場人物(キャスト)
- ハン・シヒョン(キム・ヘス)
- 韓国銀行の通貨政策チーム長。部下からの信頼も厚く、的確な判断が強みの女性。政府の人間を相手にしても強気で対応するため、敵を作りやすい。
- ユン・ジョン(ハクユ・アイン)
- 総合金融会社で優秀な成績を残す営業マンだったが、独自の調査で国家破産を予測する。早々に辞職し、新たな施策をもって顧客と金策に走り回る。
- ガプス(ホ・ジュノ)
- 小さな町工場を営む男性。共同経営者の押しに負け、手形で契約をしてしまい大損失を背負うことになる。
映画『国家が破産する日』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『国家が破産する日』のあらすじ【起】
「投資家は今すぐ韓国から離れろ」陰ながらそのような情報が流れていた。しかし一般市民が知りうる情報では、景気は上昇中であることのみ流れその先の闇など予測もできなかった。
新入社員を迎え、気前よく金一封を配ったジョンハク。しかし、対韓投資から手を引く外国人投資家が増え表情を曇らせていた。偶然ラジオで流れた「女性時代」という番組では市民の苦しい状況が伝えられていたのである。
通貨対策チームは忙しなく動き出していた。経済首席と落ち合ったシヒョンは各責任者を集めさせ鬼気迫る状況を伝えた。自国の輸出入が保証できない状況、つまり「国家破産」まで1週間後には迫っているということを的確に説明するのだった。すぐに大統領への報告をすることになった大臣たち。大統領は大臣たちの顔も見ず、「宴は終わったのか」と呟いた。
ジョンハクは国家破産を予測し辞職した。ジョンハクを信用する顧客たちを集め、新たなビジネスを展開するつもりなのだ。借金を担保に借金を繰り返す市場経済と国家は同様であることを説き顧客たちを動揺させる。国を疑うことのない者は立ち去るが、ジョンハクはラジオ番組「女性時代」に投稿された経済危機の知らせを見せしめにする。プレゼンは失敗したように思えたが、2名の投資家がジョンハクを信じ投資を決意した。
一方でシヒョンたちは経済破綻を防ぐ術を話し合っていた。国民に知らせるべきだというシヒョンの案は淘汰された。国民はもちろん金融機関にも「非公開」でプロジェクトは進行することとなる。マスメディアを使い、経済は上昇しつつあるとすり込みも続けるのだった。
映画『国家が破産する日』のあらすじ【承】
ウォンの下落など知ることもない町工場の経営者ガプスは、大手百貨店からの大量発注を手形決済という条件で受けてしまっていた。気付いた時にはすでに遅く、取り消しのつかない事態に追い込まれていた。トップ企業が続々と倒産し、自殺者も多く出た。
大きな不良債権や不毛な慣れあいによる負の連鎖を目の当たりにしたシヒョンたち。しかし指揮を執る大臣はいつまでもシヒョンたちチームを認めず、IMF(国際通貨基金)の手を借り韓国経済を変えようと目論んでいた。次官の懸命な判断でシヒョンの意思は尊重されることとなるが、大臣は何かを含んだ笑顔を見せた。それは対策チーム長を変えるよう根回ししていたためである。対策チームのメンバーを「銀行員」と呼ぶ次官は、自分と同じ方向性の者を責任者に置き、IMFへの支援要請を遂行するつもりであった。
一方で、ジョンハクたちは見事に大きな儲けを得た。さらには政策決定までの政府の道筋まで見事に読んでいるジョンハク。マスコミも水面下では危機的情報であると掴み始めていた。しかし、政府は全てを否定する。ジョンハクを信じた投資家たちも不安を抱くほどであった。
強引に遂行されたIMFとの協議。合意内容もわからないまま覚書を交わす危険な展開にシヒョンは警告を出すが、次官と新チーム長は聞く耳を持たない。ずっと否認し続けていた内容を、全て認め国民に「国家破産」を伝えるのだった。
映画『国家が破産する日』のあらすじ【転】
第二回の議会を迎える。手を貸す代償としてIMFは前提条件「総合金融会社11社を営業停止し不渡りにすること」を挙げた。庶民への打撃を考えシヒョンは反対するが、次官は拒絶する理由はないと言い切った。そして提示された6つの条件。「政策金利を上げること」を筆頭に「外国人投資家の限度額を上げること」やこれまでの外貨の制限を大きく揺るがす者であった。経済の自立性を侵害する内容ではIMF設立目的に反するとシヒョンは声を上げたが、その矢先韓国の通貨は大きく下落した。
自国が置かれた立場を理解するほど、目の前で自らの命を終えた男性の顔が思い返されるシヒョン。アメリカの経済庁次官が同じホテルに滞在していることに気付いたシヒョンは、部下の情報もあり、IMFの後ろにはアメリカ政府が居ると勘づいた。提示条件に資本市場の開放が含まれていることで疑念を深めたシヒョンは第三回議会で、協議拒絶の意思表示をする。協議の責任者である主席は、次官とシヒョンの間に挟まれ頭を抱えるのだった。
社員の給与も支払えず、資金繰りに頭を抱えるガプス。紙くず同然となった手形を握りしめ、差し押さえられた工場を背にある覚悟を決める。一方で値下がりした不動産を多く買い付けたジョンハクたちは、豪華なマンションに拠点を移すがその部屋には人影があった。奥の部屋で自ら首をくくった男が天井からぶら下がっていたのである。
映画『国家が破産する日』の結末・ラスト(ネタバレ)
シヒョンはIMFの提示条件を公開する決心をする。マスコミ向けに独自の経済予測を展開したが、政府の力が及び国民に明かされることはなかった。一方で首席はIMFとの合意を公表する。世間では金融の軸となる11社の営業停止により、多くの企業は倒産に追い込まれ整理解雇が続いた。非正規労働者が世の中に溢れ、経済だけではなく雇用も安定しなくなってしまう状況に国民は太刀打ちできないのだった。
頼みの綱の取引先社長も不渡手形を掴まされ、自ら命を絶った。追い込まれたガプスも後を追おうとするが、家族の姿が頭によぎり行動には移せなかった。そして最後の頼みの綱をあたりに外へ出るのだった。
シヒョンはIMFとの交渉記録を書き残し、辞表を提出した。荷物をまとめ、会社を出ようとしたとき兄の姿を見かける。実はガプスとシヒョンは兄弟であった。銀行の内情に詳しい妹を頼りに金策を練ろうとしていたのである。130万人超えの失業者を生み、多くの自殺者を招いてしまった通貨危機。自分の無力さを痛感したシヒョンは一人車で泣き明かすのだった。
20年後、ジョンハクは銀行を立ち上げていた。人生を変える機会を得た勝ち組は独断で国民たちを苦しめた次官たちも例外ではない。通貨危機から企業は肥え、市民は痩せていく時代が続いている。シヒョンは再び爆発寸前の国を救うため、チームを組み闘いに挑むのだった。
映画『国家が破産する日』の感想・評価・レビュー
事実に基づきフィクションとして再構成された物語。この作品で見せられる事柄もどこまでが本当かわからない。物語でもよく放たれる「疑え」という言葉に案じられる気分だった。
当たり前に続くと全国民が信じていた好景気。しかしその中で疑いの目を持つ人たちをピックアップした今作は、実に張り詰めている。しかし鑑賞後は嫌な疲れ方ではないのが不思議であった。少し会話のリズムが早いため、事態に追いつくので必死になる方もいるだろう。それでも見る価値のある作品であるとぜひ推奨したい。(MIHOシネマ編集部)
19977年に韓国で実際に起こった金融危機を描いた今作。もし日本でこんなことが起きたら…と考えてしまいましたが、やはり日本でも政治家たちは指摘を信じなかったり、隠蔽したりするのでしょうか。
『マネーショート』のような金融危機を逆手にとって大きな賭けに出ると言うような盛り上がりのあるストーリーでは無いので、かなり淡々と物語が進みます。それを面白いと思えれば、かなり学びの多いリアルな作品になるのではないでしょうか。(女性 30代)
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