映画『喜劇 愛妻物語』の概要:足立紳による自伝的小説「乳房に蚊」を、自らメガホンを取り実写映画化した一作。売れない脚本家である夫と娘を養う気の強い妻。この一家のひと夏の思い出を軸に、仕事と夫婦仲を取り戻すため奮闘するダメ夫を描いている。
映画『喜劇 愛妻物語』の作品情報
上映時間:117分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:足立紳
キャスト:濱田岳、水川あさみ、新津ちせ、大久保佳代子 etc
映画『喜劇 愛妻物語』の登場人物(キャスト)
- 豪太(濱田岳)
- 年収50万円、妻に養ってもらっている売れない脚本家。口の悪い妻に罵倒される日々を送るが、言い返すこともできず悶々としている。ある日、大きな仕事を掴むチャンスが訪れ取材も兼ねて家族旅行を提案する。
- チカ(水川あさみ)
- 収入のない豪太をずっと支えている働き者の妻。節約癖が染みつき、出先でも甘えたことは許さない。「頑張る」という豪太の言葉に騙され続け、溜め込んだ不満を罵倒に変えて鬱憤を晴らしている。
映画『喜劇 愛妻物語』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『喜劇 愛妻物語』のあらすじ【起】
妻・チカに背を向けられたまま目覚めた豪太は気づく。「2か月ほどチカとセックスレスである」ということを。売れないシナリオライターである豪太は、愛人を作る余裕もなく家事と育児に励みチカの機嫌を取るしか選択肢はないのだった。しかし豪太に頼らず生活費を稼ぐため、働き詰めのチカを落とすハードルは想像を絶するほど高い。新しい仕事の話を受けても、チカは期待すらしてくれないのだった。
豪太は世話になっているプロデューサーから、香川を舞台にした作品の脚本を依頼された。長年温めていたドラマの脚本も形になるかもしれないと煽られ、やる気に満ちて帰路に就くのだった。
香川の視察に同行して欲しいとチカに頼み込む豪太。話を聞く気もないチカだったが、夜更け頃一人で結婚前に豪太の夢を一緒に追っていた頃を思い返すのだった。「今度はチャンスを掴むから」という豪太の言葉に1000回は騙されたはずのチカだが、最後の期待を込めて早朝に香川へ出発することにした。
映画『喜劇 愛妻物語』のあらすじ【承】
電車を乗り継いで香川に着いた豪太一家。せっかくの家族旅行でも節約癖が抜けないチカは、外食も少しの贅沢も一切許さなかった。ホテルはシングルの部屋を取っていたチカ。
娘・アキを連れて豪太に先にチェックインさせたチカは、裏口から忍び込もうとするがそう簡単にはいかなかった。電柱をよじ登りなんとか潜り込んだチカは、のんびりとお風呂に入っている豪太に怒りをぶつけ続ける。口答えもできない豪太はベッドの端に追いやられ夜を明かすのだった。
翌日からレンタカーでの移動が始まる。3年ぶりの運転に神経をすり減らすチカは、モデルとなるうどん少女の取材先で他に実写化の話が決まっていると知らされる。豪太への怒りが抑えきれないチカと、知らぬ間に仕事が頓挫していることに動揺する豪太。「無駄な一日だった」と呆れかえるチカは、ワイナリーで試飲用のワインを水筒に入れすぐに宿へ向かうのだった。
アキも寝付き良い雰囲気を作ろうと必死になる豪太だが、チカは一蹴する。いじけた豪太はチカの財布を持ち出し夜の町に繰り出すも風俗に行く勇気はなく、ただただ歩き彷徨うのだった。
映画『喜劇 愛妻物語』のあらすじ【転】
明け方、酔いつぶれた女性を見つけた豪太は悶々とした感情を抑えきれずスカートの中を覗こうとしてしまった。偶然にも通りかかった警官に補導されてしまい、迎えに来たチカの怒りは頂点に達する。アキを授かったことを映画の脚本家になる夢を諦める理由にしたと詰め寄られる豪太もまた、我慢の限界に達した。
喧嘩別れしたまま、チカは旧友・ユミの元を訪ねに行く。残された豪太はアキと海に行き、パート仲間だったアズマとこそこそ連絡を取り合う。東京に戻ったら会う約束を取り付けた豪太はアキから目を離してしまうほど夢中になっていた。ユミからの連絡でチカと合流することになった豪太だが、仮眠明けに女同士の会話を盗み聞きしてしまった。実は夫以外にも大学生の彼氏がいるというユミの話を聞き、チカが欲情しているのではないかと勝手に期待するのだった。
その夜豪太は早速ユミの話を持ち出し、雰囲気づくりを始める。少しだけリアクションが優しくなったチカを追い立てる豪太。そしてチカも「特別」と言い豪太を受け入れようとするのだった。
映画『喜劇 愛妻物語』の結末・ラスト(ネタバレ)
久しぶりに共に朝を迎えたチカと豪太。上機嫌で昼食は寿司を食べに行き、豪太は期待していた実写化作品の話に花を咲かせ「海外に行こう」と大口をたたいていた。その矢先、プロデューサーから連絡が入る。なんと豪太の脚本は原作者の意向に沿わずダメになってしまったと聞かされたのだ。上手くいかない現実に泣き出すチカ。それまでの穏やかな時間が嘘のようにチカは豪太を拒絶する。そしてチカは別れを切り出す。豪太への怒りを抑えきれないチカは「お前には泣く資格も笑う資格もない」と罵倒し、泣き崩れる。その様子を見たアキも泣き出してしまい、豪太もつられて泣き崩れるのだった。
東京へ戻った豪太は、昔願掛けに買った赤いパンツをはいて眠るチカの姿を見て初心に戻る。「頑張るから」と何度もつぶやき、机に向かうのだった。パソコンを使えない豪太に変わり、手書きの原稿を書き起こすチカ。文句を言いながらも、変わらず夢の途中にいる豪太に手を差し伸べるのだった。
映画『喜劇 愛妻物語』の感想・評価・レビュー
夢の途中である夫を健気に支える妻…そんな武士の妻のような在り方は不毛だ。そう言われているように思える時間であった。守る物がある中で、言い訳を並べ仕事を勝ち取りに行くことはない夫。それでも「頑張る」という彼の言葉を信じ続ける妻は「健気」である。子供の前でのあの罵倒はなんとも心苦しいが、夫婦の在り方や関係性のボーダーラインについて少し考え直させる一作であった。東京国際映画祭・コンペティション部門では最優秀脚本賞を受賞している作品だけあり、抜け目なく統一感のある展開であった。(MIHOシネマ編集部)
こんなにもダメな夫を支え続ける理由は何なのだろうと疑問に思ってしまいました。チカのように働き者で、自分を強く持っている女性だったら豪太が居なくても娘と二人で生きていけると思います。正直、豪太の存在はストレスだし、お金を稼いでくれるわけでもないし邪魔なだけでは無いでしょうか?
夫婦の間には他人には見えない絆があるのかもしれませんが、いつもイライラしている奥さんだったら旦那さんの仕事も上手くいかないだろうななんて考えてしまいました。(女性 30代)
倦怠期を迎えた夫婦のリアルすぎる日常を描いている。妻チカの恐妻ぶりと辛辣な言葉の数々には見ていて辛くなり、結婚なんてするものじゃないとすら思えてくる。
夫である豪太は絵に描いたようなダメ夫で、チカにはボロクソに言われっぱなし。それでもめげずに機嫌をとろうとする姿が滑稽で笑えてしまう。
愛の冷めきった夫婦関係だが、それでもなんだかんだ成り立っていて、信じて傍にいてくれる人の存在が日々の励みになるのだと思う。(女性 30代)
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