映画『善惡の刃』の概要:タクシー運転手殺害事件の第一発見者である少年は、有罪判決を受け10年の刑期に服した。なおも無実を訴える彼は、出世のために事件の再審を目論む弁護士とであい二人三脚で再び事件と向き合っていく。
映画『善惡の刃』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:キム・テユン
キャスト:チョン・ウ、カン・ハヌル、キム・ヘスク、イ・ドンフィ etc
映画『善惡の刃』の登場人物(キャスト)
- イ・ジュニョン(チョン・ウ)
- 裁判では負け続けで妻子に見放されている弁護士。一発逆転をかけて友人・モンファンが勤める大手事務所に転職するも過疎化した農村での無料相談を任されてしまう。そこで冤罪事件により苦しい生活を送る一組の親子のために手を尽くすようになる。
- チョ・ヒュヌ(カン・ハヌル)
- 多くの冤罪を作り上げてきた地元の刑事に仕組まれ、無罪ながら10年の刑期に服した青年。偶然知り合ったジュニョンの情熱に感化され再起を目指すが、一筋縄ではいかず奮闘する。
- ヒョヌの母親(キム・ヘスク)
- 息子・ヒョヌの無実を信じている唯一の存在。糖尿病を患い、ヒョヌが景気に服している間に視力を失ってしまう。多額の賠償金を背負い、ジュニョンを頼ることになる。
- モ・チャンファン(イ・ドンフィ)
- ジュニョンの同期の弁護士。大手事務所に所属し、独立を目論んでいる。金儲け主義だったジュニョンの変化に戸惑いを隠せずにいる。
映画『善惡の刃』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『善惡の刃』のあらすじ【起】
2000年8月10日。人気の無い夜道でバイクを走らせながら煙草を吸おうとしたヒュヌは、道路の真ん中で立ち尽くす人に驚き転倒してしまった。その後ヒュヌはすぐ近くの路肩に止まったタクシー内で運転手の死体を見つけ、すぐに通報する。しかし、バイクのシート下にナイフが入っているのを見つけたペク刑事は、ヒュヌを容疑者として立件する。無実ながら10年の刑期を背負ったヒュヌ。目の不自由な母親には被害者に払った賠償金が重くのしかかるのだった。
裁判で負け続け、追い込まれている弁護士のジュニョンは、借金返済のために大手事務所で働くチャンファンを頼る。お金の話ばかりするジュニョンにいい仕事など回ってくるわけもなく、地方都市の無料法律相談を任されるのだった。
過疎化した田舎町で暇を持て余すジュニョンにある依頼が入った。それは勤労福祉公団から賠償金の返済を迫られるヒョヌの母親の弁護であった。無実を主張するヒョヌは第一発見者でありながら、ペク刑事らから酷い拷問を受け自白を強要されたという。その話を聞いたジュニョンは、冤罪を覆すことで事務所の代表が納得する手柄に繋がるのではないかと目論み始めた。
映画『善惡の刃』のあらすじ【承】
成果によっては代表のパートナー弁護士となれるチャンスを掴んだジュニョン。ヒョヌの無実証明よりも、利息で膨れ上がった賠償金の返済とヒョヌの再入所を防ぐことを目的としてジュニョンは動き始める。ヒョヌが冤罪になった事件を担当したペク刑事は、これまでにも何件か冤罪事件を起こしている。再審の申請はすぐに通り、求償権の裁判は三か月後に決定された。
捜査調書を頼りに当時の通話記録を調べ始めたジュニョン。当時証拠とされた通話記録は一部消去されていることがわかり、ヒョヌが母親と通話してから通報するまでには1分40秒しかないことが発覚した。証拠資料の捏造からヒョヌの冤罪を確信したジュニョンは、当時の煩雑な捜査に苛立ちを覚え始める。一方でヒョヌは膨れ上がった借金に絶望し、再審に希望すら抱けずにいた。
偶然事件現場に居合わせたジュニョンのヒョヌは、1分40秒での犯行は不可能だと確信した。そして取り調べをされた山奥のホテルに足を運ぶ。当時の辛い記憶を思い返すヒョヌの肩を抱き、ジュニョンは無罪の証明を誓う。しかし、杜撰な捜査の証拠は得たものの、無罪の証拠を掴むには時間がかかる。ヒョヌもジュニョンの熱意に感化され、相談料を支払うためにも仕事に就き熱心に働き始めるのだった。
映画『善惡の刃』のあらすじ【転】
再審に向けて、新たな証拠を探すジュニョン。事件当日、ヒョヌはバイト仲間のスジョンがペク刑事に襲われそうになっているところを助けたことを思い出した。スジョンが手にしたナイフを咄嗟に取り上げ、助けた後にバス停まで送り届けていた。その後、ペク刑事と再会し事件に巻き込まれていたのだ。
ようやく冤罪を証明する兆しが見えた矢先、当時事件を担当したヨンジェ検事が事務所を訪ねてきた。働き口を探すジュニョンに甘い誘いをかけに来たのである。依頼人を裏切るつもりはないときっぱり断ったジュニョンだが、ヨンジェ検事は拘置所でヒョヌが書いたペク刑事宛ての感謝の手紙を残し事務所を去って行った。動揺したジュニョンはヒョヌに真相を確認しようと電話しながら運転したことで事故に巻き込まれてしまう。
その手紙は糖尿病で視力が落ちている母親のために、減刑を対価に書かされたものであった。ヒョヌは証人になってもらおうと一人でスジョンの元を訪ねた。そこで事件の3年後に真犯人に関する告発があったことを知らされるのだった。一方で退院したジュニョンはチャンファンから一緒に独立しようと持ち掛けられていた。しかし、ヒョヌから真犯人について連絡を受けすぐにヒョヌの元へ向かうのだった。
実は事件当時、ヒョヌの冤罪はすぐに晴れていた。犯人はすぐに見つかり、証人もいたのである。しかしすでにヒョヌの裁判が始まってしまっており、世間体を気にししたヨンジェ検事はペク刑事を脅し真犯人と証人を証拠不十分ですぐに釈放したということが発覚した。
映画『善惡の刃』の結末・ラスト(ネタバレ)
マスコミを使い目撃者を探すことにしたジュニョン。すぐに目撃者が見つかり再審に希望を見出した矢先、目撃者は目の前でペク刑事に逮捕されてしまった。止めに入ったジュニョンも公務執行妨害で連行されてしまい、ヒョヌと母親は膝から崩れ落ちた。実は、独立資金を集めるためチャンファンがヨンジェ検事に情報を横流ししていたのである。
チャンファンの裏切りを知ったジュニョンは、生きるために金が必要と主張するチャンファンに対して「法廷で会おう」と別れを告げヒョヌの元に戻った。しかしヒョヌは母親の元を離れていた。ヒョヌの残したメモからスジョンの居場所を知り訪ねたジュニョンは、証人を断った事実を知り、腹を立てるのだった。
その頃ヒョヌは一人でペク刑事を追跡していた。ペク刑事に包丁を向けたとき、ジュニョンが止めに入った。ヒョヌの無実を信じているジュニョンは「法廷で証明する」と約束し、再審を勝ち取った。「15年前、我が国の司法部がある少年に犯した罪を償う機会を与えるために来た」と宣言したジュニョンは証拠資料を提示し、ヒョヌの無罪を証明するのだった。
映画『善惡の刃』の感想・評価・レビュー
とある弁護士が「再審専門弁護士」と称され有名になったきっかけとなる実際の事件を忠実に再現した一作。リーガルサスペンスを期待する人には勧めがたいが、ヒューマンドラマとしてはよく錬られた一作であったように思う。母親役の代名詞にも思えるキム・ヘスクを筆頭に韓国作品ではよくお見掛けする俳優陣が脇を固め、少ないキャストで濃厚な物語を形成していた。韓国の警察は杜撰な捜査がお決まりであるが、今作も健在。エンドロールでようやく安堵できる119分であった。(MIHOシネマ編集部)
どこまでが実話なのか分かりませんが、これが実話ベースの作品ということは韓国の警察、検察は真っ黒だなと感じてしまいました。被害を受けた人、困っている人を助けてくれるのが警察だと思っていましたが、今作では警察が仕組んだ「冤罪」に嵌められてしまった被告と彼を助けようとするダメダメな弁護士が登場するので、警察は頼りにならないのだと感じてしまいました。
スピード感があり、サクッとまとめられた作品なので飽きることなく最後まで楽しめました。(女性 30代)
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