映画『JSA』の概要:韓国と北朝鮮の共同警備区域にて起こった兵士の射殺事件を題材にした一作。国家間の壁に阻まれながらも、友情を育んだ4人の兵士の運命の行方は韓国全土で話題を呼び、入場者記録を塗り変える社会現象を起こしている。
映画『JSA』の作品情報
上映時間:110分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争
監督:パク・チャヌク
キャスト:ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、イ・ヨンエ、キム・テウ etc
映画『JSA』の登場人物(キャスト)
- ソフィー・E・チャン(イ・ヨンエ)
- 韓国・北朝鮮に来るのは初めてであるが、韓国語を話せるという理由から事件の真相解明を託されたスイス軍少佐。父親は北朝鮮籍であり、複雑な環境に身を置いているため事件のみならず上司たちにも翻弄されていく。
- イ・スヒョク(イ・ビョンホン)
- 韓国軍兵長であり事件の容疑者。事件当日、2国間の境界線上に倒れているところを発見された。ソフィーに何を聞かれてもかたくなに口を閉ざし続けたが、同志であるソンシクの運命を知り真相を明かしだす。
- オ・ギョンピル(ソン・ガンホ)
- 朝鮮人民軍中士であり、事件の被害者の一人。陽気な性格で、過去の戦火で負った傷を勲章のように思っている。部下に慕われる存在であるが、上尉には疎まれていた。
映画『JSA』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『JSA』のあらすじ【起】
韓国と北朝鮮の共同警備区域(JSA)の北朝鮮側詰所で、警備担当の朝鮮人民軍二名が韓国軍兵士により射殺された。中立国監視委員会は両国の同意の元、事件の真相解明のために韓国系スイス人のソフィー・チャン少佐に捜査依頼をする。南北戦争以降、二国間の問題はデリケートであり重大だと上司から念押しされ調査に入ったソフィー。容疑者の韓国軍兵士、イ・スヒョクに面会するも何も証言を得られず初日は過ぎてしまった。
証言記録によると事件当日、スヒョクは詰所の傍の藪で用を足していたところ、突如被害者の二人に拉致されたという。発砲は正当防衛によるもので、銃声を聞きつけた韓国軍兵士達が「帰らざる橋」の真ん中にある国境線の上に倒れているスヒョクを救出したと記録に残されていた。現場を見に出向いたソフィーは被害者の者と思われるノートを見つけ、恋人らしき女性を描いたスケッチを確認するのだった。
ソフィーは部下を連れ、現場に居合わせたという朝鮮人民軍兵士、オ・ギョンピルの面会に向かった。銃撃戦に巻き込まれ肩を負傷していたギョンピルだが、心配するソフィーに対して過去の任務で追った傷跡を見せ武勇伝を語る。しかし、事件に関する話題になるとギョンピルは口を閉ざす。事前の供述書の内容はスヒョクの証言と食い違いが多くソフィーは困惑するのだった。
映画『JSA』のあらすじ【承】
解剖医によると、2発目の額に受けた銃弾が致命傷となり一人は命を落としたという。もう一人の被害者は1発の銃弾で即死しているはずが、遺体には何発もの弾痕が残されていた。遺体の状態からソフィーは明らかな復讐心を察するのだった。
事件当日、スヒョクと共に警備についていた兵士、ナム・ソンシクは自分が用を足している隙にスヒョクが拉致されたと証言をした。噛み合わない証言の他に、銃痕と発砲された銃弾の数が合わないことにソフィーは気づいた。ハンドガンに1発多く銃弾をセットする裏技を知っているのかスヒョクを試すソフィー。期待とは違う結果であったが、証言を拒み続けるスヒョクの気を引こうと「あなたは早撃ちの天才と聞いたわ」と話題を変える。ようやく口を開いたスヒョクは「戦場で大事なのはスピードじゃない、冷静さ」だと答えるのだった。
スヒョクの恋人に話を聞きに行ったソフィーは、ソンシクはスヒョクの影響を大いに受けていることを知る。遺体から出た銃弾とハンドガンに残っている弾丸の数が合わないことから、ソンシクも容疑者の一人となりスヒョクと共に本格的な取り調べを受ける。しかし、ソンシクは精神的に追い詰められ自ら命を絶つのだった。
映画『JSA』のあらすじ【転】
実は事件以前にギョンピルとスヒョクは面識があった。ある夜自らの部隊を率いて非武装地帯での任務に就いたスヒョクたちは誤って北朝鮮側に入ってしまう。一人部隊から離れていたスヒョクは地雷を踏んでしまい、通りかかったギョンピルに助けてもらったのである。
その日を境にスヒョクとギョンピルは詰所を介して手紙のやり取りを始めた。ギョンピルを「兄貴」と呼び慕うスヒョク。こっそりと「帰らざる橋」を渡りの国境線を越えるようになったスヒョクはギョンピルと被害者の一人であるウジンと密会を重ねていたのである。
スヒョクの昇進祝いに酒を交わした三人。早打ちが自慢のスヒョクに対して「戦場で大事なのはスピードじゃない、冷静さだ」とギョンピルは教えた。一度は朝鮮側の上尉に見つかりかけたが、ギョンピル秘密を守り通すのだった。
スヒョクは二人を信用し、ソンシクを紹介する。国境を越えることに戸惑うソンシクだが、二人の人柄に惹かれ4人で集うようになったのだ。ある夜、スヒョクはギョンピルに韓国に来るよう誘うが、ギョンピルはきっぱりと断った。両国の関係悪化が進み、4人で会うのはウジンの誕生を最後にしようと決めたスヒョクとソンシク。
絵を描くのが好きなウジンにソンシクは絵の具をプレゼントし、名残惜しさからなかなか韓国に帰れずにいた。その矢先、二人は上尉に見つかってしまいソンシクは酷い暴力を受けたことから意識不明に陥り病院へと搬送されるのだった。
映画『JSA』の結末・ラスト(ネタバレ)
スヒョクとギョンピルを対面させ尋問を取り仕切ったソフィー。自殺を図ったソンシクの最期の映像を見せられたことで混乱したスヒョクだが、ギョンピルは真実を明かすまいとスヒョクに殴り掛かる。大袈裟に見えるほど祖国への愛国心を示したギョンピルを、スヒョクはただ見つめることしかできないのだった。
突如任務解除を言い渡されたソフィー。両国上層部の望みは事件の真相ではなく曖昧に解決することだった。現場で見つけたウジンのスケッチブックに書かれていたのは、スヒョクの恋人だと気づいたソフィーは4人の関係性に確信を持ちスヒョクに迫った。ギョンピルの安全を誓ったソフィーに対し、スヒョクは真実を話し始める。
密会が見つかった時、ギョンピルはスヒョクとソンシクを韓国に戻そうと上尉を説得した。しかし上尉の無線がなり、パニックになったソンシクは誤って発砲してしまう。そして銃を構えてウジンにも弾丸を浴びせてしまったのである。唯一冷静だったギョンピルは証拠隠滅のため上尉を殺害し、自分の方にも銃弾を残すようにスヒョクに指示したのだった。ソンシクのプレゼントを捨てたギョンピルは、誤って一発の弾丸も河に捨ててしまったのだ。
真相を知ったソフィーはギョンピルにスヒョクとソンシクを許せるのか尋ねた。逆の立場ならば自分が最初に発砲していたとギョンピルは微笑み、スヒョクに借りたライターを返してほしいとソフィーに託すのだった。
スヒョクと面会したソフィーは、ライターを返し激励を送った。しかしスヒョクはソフィーにすべて明かしたことで、ウジンを殺めた事実を痛感し引率していた兵士の銃を奪い自死した。ソフィーはただ立ち尽くし一筋の涙を流すのだった。
映画『JSA』の感想・評価・レビュー
不遇にも同じ写真に納まった4人の姿が脳裏に焼き付く。韓国と北朝鮮という隣り合った国家間の溝が生んだ惨劇はフィクションだとしていながらも心が締め付けられるような余韻で満たされる内容である。同じ人間として笑いあっていた時間を見たからこそなお苦しい展開。『パラサイト 半地下の家族』にて脚光を浴びているソン・ガンホであるが、やはり人間臭い役をやらせるとピカイチである。守るための嘘ほど印象に残るものはないと痛感する一作であった。(MIHOシネマ編集部)
『JSA』とは韓国と北朝鮮を隔てる境界線にある共同警備区域「Joint Security Area」のことです。今作はそのJSAで起きた事件を中心に、南北で異なる主張をする関係者や、両国間にある溝を描いているのですが、正直こんなに悲しいストーリーだとは思っていませんでした。
韓国映画なので残酷な描写や過激なシーンは覚悟していましたが、目に見えるものよりも精神的に堪える描写が多く、見終わったあとも暗く重い気持ちになりました。
私たちがイメージする南北の関係とは違った「真実」が描かれているので多くの人に見てもらいたいです。(女性 30代)
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