この記事では、映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『パラサイト 半地下の家族』の作品情報
出典：U-NEXT
| 製作年 | 2019年 |
|---|---|
| 上映時間 | 132分 |
| ジャンル | サスペンス ホラー コメディ |
| 監督 | ポン・ジュノ |
| キャスト | ソン・ガンホ イ・ソンギュン チョ・ヨジョン チェ・ウシク |
| 製作国 | 韓国 |
映画『パラサイト 半地下の家族』の登場人物（キャスト）
- キム・ギテク（ソン・ガンホ）
- 貧乏家族の父親であり、大黒柱。失業中で金もないが楽天的な性格で、何とかなると考えている。ギジョンの紹介により、パク一家の運転手として雇われることになる。
- キム・ギウ（チェ・ウシク）
- キム家の長男。大学受験に失敗してから浪人生として勉強しているが、未だ大学には合格できずにいる。学歴はないが、受験経験は豊富なため教えるのは上手く、家庭教師としてパク一家に気に入られる。
- キム・ギジョン（パク・ソダム）
- ギウの妹。美大を目指しているため絵が上手いが、予備校に通うお金がないため美大に合格することができない。絵が上手いことからパク家の息子の絵の家庭教師となる。
- キム・チュンスク（チャン・ヘジン）
- キム一家の母親。楽観的で甲斐性のない夫ギテクに喝を入れる。家政婦としてパク家に侵入することとなる。
- パク・ドンイク（イ・ソンギュン）
- 富豪のパク一家の大黒柱。IT企業の社長であり、誰もが尊敬するようなエリート。
- パク・ヨンギョ（チョ・ヨジョン）
- 若く美しいパクの妻。能天気な性格で人を疑うことを知らないため、キム一家を次々と家に入れてしまう。
- ムングァン（イ・ジョンウン）
- パク一家の家政婦。パク一家が入居する前から豪邸の家政婦をしており、家のことを知り尽くしている。
映画『パラサイト 半地下の家族』のネタバレ・あらすじ（起承転結）
映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ【起】
キム一家は貧困に苦しめられていた。父親のギテクと母親のチュンスクは失業中であり、ピザの箱を組み立てる内職でなんとか食いつないでいた。家は道路から半分地下に入っているような作りになっており、道路の消毒液や酔っ払いがした尿などが家の中に入ってきてしまう始末であった。またトイレは水圧の関係で家の中で1番高い位置にあり、ひどい有様だった。
そんな貧困のせいで、息子のギウは受験のテクニックなどを学ぶことができず、浪人生として大学を目指していた。そんなある日、ギウは友人に家庭教師をやらないかと誘われる。その友人が留学に行っている間だけ、友人の代わりとして家庭教師をやるよう勧められるギウであったが、まだ大学生ではない自分では役不足であると迷っていた。
しかしながら、報酬が良いこともあり、ギウは友人の代わりに家庭教師をやることを引き受ける。ギウが家庭教師として勤務する家は、IT企業の社長の家で、豪邸であった。大学生ではないギウは、美大を目指している妹ギジョンに大学の証明書を偽造してもらい、なんとか家庭教師として働き始める。
映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ【承】
ギウが家庭教師として勤務しているパク一家は、4人家族で娘と息子が1人ずついた。ギウは女子高生である娘に英語を教えており、パク夫人は家庭教師として誠実に娘に教えるギウを気に入っていた。そんなある日、パク家の息子が絵を習いたがっていることを知ったギウは、パク夫人に絵の家庭教師を紹介できると言った。
ギウのことを信頼していたパク夫人は、早速ギウに紹介してもらうことにする。そして、ギウはパク一家に妹のギジョンを紹介し、パク夫人は妹ギジョンのこともすぐに気に入った。ギウとギジョンは、互いに家族であるということを知られないように家庭教師として働いた。
そんなある日、ギジョンがパク家の運転手に家に送ってもらうことになる。その車の中で、ギジョンは自分の下着を脱ぎ、車の中に隠した。翌日、車の中で下着を発見したパク氏は、運転手が車の中で如何わしいことをしたと考え、運転手を解雇してしまう。新しい運転手が必要になったパク氏に、今度はギジョンが父親のギテクを紹介する。
映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ【転】
パク一家の信頼を勝ち取り、徐々に内部に入り込んでいったキム一家は、最後に母親のチュンスクも内部に入れようと考えた。しかしながら、パク一家には長年家政婦として働いているムングァンがおり、その女性がいる限り、チュンスクを雇ってもらうのは難しそうであった。
そこでギテク達は、ある作戦を決行する。ムングァンは桃アレルギーであったので、桃の粉末をふりかけ、結核を発症しているように仕立て上げたのである。それにより、ムングァンが結核であると思い込んだパク氏は、ムングァンをクビにしてしまう。その後、ギテクは家政婦を紹介するていで、母親のチュンスクを雇わせることに成功する。
そんなある日、パク一家が家政婦のチュンスクに家を預け、旅行に出かけることになる。パク一家がいなくなった家で、富豪生活を満喫していたキム一家は、幸せな時間をおくっていた。するとそこに、前の家政婦のムングァンがやって来る。チュンスク以外の家族は隠れ、ムングァンを迎え入れた。彼女は地下室に忘れ物をしたと言い、その秘密の地下室に行くと、ムングァンの夫がいた。彼はパク一家に隠れて地下室に住んでいたのである。
映画『パラサイト 半地下の家族』の結末・ラスト（ネタバレ）
ムングァンは、隠れて夫を地下室に住まわせていたことを秘密にしておいて欲しいと懇願する。すると、その時隠れていたギテク達が見つかってしまい、ギテク達4人が家族であることをムングァンに知られてしまう。それにより、ムングァンは自分が貶められていたことに気づき、パク一家に暴露すると脅し始める。
そこに、パク夫人から家に帰ると連絡が来る。ギテク達は、ムングァン夫妻を地下室に押し込み、急いで部屋の片付けをした。なんとかパク一家が帰って来るまでに片付けることができたが、パク一家が帰って来てしまう。チュンスク以外のギテク達3人は、パク一家に見つからないように家に隠れてやり過ごした。
翌日、パク一家は息子の誕生日パーティーを開くことにし、その準備にギテク、ギウ、ギジョンの3人も参加する。地下室に閉じ込めたムングァン夫妻のことが気になったギウが、地下室の様子を見に行くと、待ち伏せしていたムングァン夫妻に殴られ、気を失ってしまう。
そして地下室から出たムングァンの夫は、包丁を奪いギジョンを刺す。それを見たチュンスクはムングァンの夫を、串で刺し殺す。パニック状態に陥ってしまった豪邸で、ギテクはパク氏に貧乏人であると蔑まれたと感じ、衝動的にパク氏を殺してしまう。
この事件により、ギウとチュンスクは執行猶予付きの判決を下され、ギジョンは死に、ギテクは豪邸の地下室に身を潜めたのであった。ギウは、いつか金持ちになって、父が隠れている豪邸を買うことを誓った。
映画『パラサイト 半地下の家族』の考察・解説（ネタバレ）
映画『パラサイト 半地下の家族』は、なぜ「気持ち悪い」と言われるのか？
『パラサイト 半地下の家族』が「気持ち悪い」と評される理由は、ストーリーの展開と、その背後に漂う不穏な雰囲気、そしてキャラクターたちの極端な行動にあります。物語の初めに、キム家がパク家に次々と入り込み、全員がパク家の使用人となる過程は一見コメディのように見えますが、次第に不気味な空気が漂い始めるのです。
特に、半地下に暮らすキム家と裕福なパク家の生活の対比が鮮明になるにつれ、貧富の格差が浮き彫りになり、そこに潜む社会的不公平が明らかになります。そして、地下室の秘密が明るみに出た時、映画は一気にスリラーへと変貌し、観客に強い不安感を与えます。長年、パク家の前の家政婦の夫がその地下室に潜んでいたという衝撃の事実。その閉ざされた空間と孤独感が、不気味さを倍増させるのです。
さらに、物語が進むにつれ、登場人物たちの行動が次第に暴力的になり、ついにはクライマックスでの乱闘や殺人へと発展します。これらの予想外の展開が、観客に強い不快感や「気持ち悪さ」を感じさせるのです。
加えて、映画に描かれる人間関係や家族の絆も、表向きは温かそうでありながら、実は利害関係が絡み合う偽りの上に成り立っているため、観る者に不安を抱かせます。これらの要素が重なり合い、作品全体に不穏で不快な感覚を醸し出し、「気持ち悪い」という印象を与えるのです。
映画『パラサイト 半地下の家族』キャストのイ・ソンギュンは、なぜ死亡したのか？
『パラサイト 半地下の家族』で、イ・ソンギュンが演じるパク・ドンイクが物語のクライマックスで死亡するのは、貧富の格差と、彼がキム家の父親キム・ギテクに対して無意識のうちに抱いていた差別意識が大きく影響しています。
物語の終盤、パク家が主催する庭園パーティーで突如悲劇が起こります。地下に潜んでいた前の家政婦の夫、クンセが現れ、パーティーの場で暴れ出すのです。彼は、妻の死の原因がキム一家にあると考え、復讐しようとします。そしてクンセは、キム家の娘ギジョンを刺してしまうのです。
この混乱の中で、パク・ドンイクはキム・ギテクに車の鍵を渡し、逃げる準備をするよう求めます。しかしその時、ドンイクがクンセの異臭に顔をしかめ、鼻を押さえる仕草をします。ギテクにとって、これはドンイクが自分を見下していることの象徴に映ります。ギテクは、ドンイクが単なる雇い主として自分を扱い、人間扱いしていないことに気づくのです。その瞬間、長年蓄積された不満と怒りが爆発します。
結果として、ギテクは怒りに我を忘れ、ドンイクを刺してしまうのです。彼の死は、偶発的な出来事ではなく、富裕層と貧困層の間に存在する見えない差別と不公平が引き金となった悲劇なのです。パク・ドンイクの死は、この物語全体で描かれている社会的テーマを象徴する出来事なのです。
映画『パラサイト 半地下の家族』は、何が言いたい映画なのか？
『パラサイト 半地下の家族』が伝えようとしているメッセージは、現代社会に存在する貧富の格差と、その間に立ちはだかる目に見えない壁についてです。この物語は、貧しいキム家と裕福なパク家という対照的な二つの家族を通して、経済的格差が人々の生活、考え方、行動にどのような影響を与えるのかを浮き彫りにしています。
キム家は半地下の狭いアパートに住み、日々の生活に苦労する一方、パク家は広大な豪邸に住み、贅沢な暮らしを享受しています。キム家がこの格差を埋めるために、詐欺まがいの方法でパク家に入り込み、次々と家族全員がパク家の使用人となる様子は、富裕層が貧困層の現実を知らない、あるいは知ろうとしない状況を象徴しているのです。
また、映画のタイトルにある「パラサイト（寄生虫）」という言葉が示すように、キム家はパク家に依存し、その富を利用しようとする一方で、パク家もまたキム家の労働力に頼って快適な生活を維持しています。この相互依存の関係は、社会における貧困層と富裕層の関係性を反映していますが、それが健全な関係ではなく、どこか歪んでいることを物語っているのです。
そして、物語のクライマックスで起こる衝撃的な暴力シーンは、貧富の格差がもたらす不満と不公平感が、ついには爆発してしまうことを象徴しています。平和に見える社会の表面下に、実は大きな亀裂が存在することを示唆しているのです。この映画は、格差社会の現実を赤裸々に描き出し、富の偏在とそれがもたらす緊張感を、観る者に強く訴えかけているのです。
映画『パラサイト 半地下の家族』に、日本批判シーンはあるのか？
『パラサイト 半地下の家族』には、日本を直接的に批判するシーンは登場しません。しかし、物語の中で日本に関連する言及や、日本の文化に触れるシーンがいくつか出てくるのは事実です。その背景には、韓国と日本の歴史的・文化的な関係性が影響しているのかもしれません。
例えば、パク家の母親ヨンギョが、息子のダソンのためにインディアン（アメリカ先住民）ごっこをするシーンでは、日本製のインディアンテントが登場します。ここで重要なのは、パク家の裕福さを示すために、外国製品、特に日本製品が用いられているという点です。これは、韓国の上流階級が外国の高級品を好んで使用する傾向を風刺的に描いていると解釈できるでしょう。
また、映画の随所で、日本と韓国の経済的・文化的な影響を感じさせる場面がありますが、これらはあくまで背景的な要素であり、特定の国や文化を批判することを意図したものではありません。監督のポン・ジュノは、韓国社会における階級格差や経済的不公平を描くことに主眼を置いており、特定の国や文化への直接的な批判は目的としていないのです。
したがって、この映画が日本批判を目的としているとは言えません。ただし、韓国の映画やドラマでは、歴史的背景や文化的差異から、日本との関係性が描かれることが少なくありません。しかし、『パラサイト 半地下の家族』においては、そのような意図は特に強調されていないと言えるでしょう。
映画『パラサイト 半地下の家族』のラストで、父親はなぜ刺したのか？
『パラサイト 半地下の家族』のラストシーンで、キム家の父親ギテクが、パク家の父親パク・ドンイクを刺す場面は、物語全体のクライマックスであり、非常に重要な意味を持っています。この出来事の背景には、キム家とパク家の間にある深い社会的格差と、富裕層が貧困層を無意識のうちに見下している態度が大きく関係しているのです。
クライマックスのパーティーシーンで、地下に隠れていたクンセが突然現れ、暴れ出します。そしてキム家の娘ギジョンを刺してしまうのです。この混乱の中、パク・ドンイクは逃げようとしますが、その際にクンセの死体の悪臭に顔をしかめ、鼻を押さえる仕草をします。ギテクにとって、この瞬間が決定的でした。この仕草から、パクが常に貧困層の「臭い」を嫌悪していたことに気づくのです。これまで積み重なってきた屈辱と不満が、この一瞬で爆発するのです。
パク家は裕福で何不自由ない生活を送る一方、キム家はその陰で、見えない苦労と屈辱を味わっていました。ギテクは、パクの態度を通して、自分たちが単なる「使い捨て」の労働力としてしか見られていないことを痛感します。長年抱えてきた怒りと屈辱が頂点に達し、彼はパク・ドンイクを刺してしまうのです。
このシーンは、単なる暴力の結果ではなく、貧困層と富裕層の間にある根深い不平等と、格差社会における階級対立が引き起こした悲劇的な結果を象徴しています。ギテクの行動は、社会に蓄積された不満が最終的に爆発し、極端な形で表出されたものであり、映画全体のテーマを強く象徴しているのです。
映画『パラサイト 半地下の家族』でヨンギョが言った「時計回りに」の意味とは？
『パラサイト 半地下の家族』の中で、パク家の母親ヨンギョが「時計回りに」と言うシーンは、物語において象徴的な意味を持っています。このセリフは、彼女がパーティーの準備を進める際、インディアンのテントやその他の道具を使った遊びの手順を指示する場面で登場します。ヨンギョは、子供たちや使用人に対して、全てが完璧に進むよう細かく指示を出しますが、この「時計回りに」という指示は、彼女の几帳面さ、完璧主義、そして支配的な性格を表しているのです。
このセリフが象徴しているのは、ヨンギョが富裕層としての「正しい」やり方や生活スタイルを重視し、全てを理想通りに進めようとする姿勢です。彼女にとって、秩序が保たれることが何より大切であり、特に家庭内ではその完璧さを追求しているのです。しかし、その裏では、キム家がパク家に巧妙に嘘をついて入り込んでいるため、その「完璧な」生活は実は見せかけに過ぎないのです。
また、「時計回りに」という言葉は、時間や秩序を象徴するフレーズでもあります。しかし同時に、物語全体が時間とともに徐々に崩壊していく様子を暗示しているとも解釈できます。物語が進むにつれ、キム家の計画は次第に綻びを見せ始め、最終的には混乱と暴力に陥ってしまいます。ヨンギョが求めていた秩序と安定は、完全に崩れ去ってしまうのです。
このように、「時計回りに」というセリフは、ヨンギョの完璧を求める世界観や、その生活の裏に潜む不安定さを象徴しており、物語全体の緊張感を高める重要な要素となっているのです。
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みんなの感想・レビュー
カンヌ映画祭でパルム・ドール賞を初めて韓国人映画監督が受賞し、アカデミー作品賞も受賞した作品。
韓国の半地下で生活する家族が富裕層の家庭教師、運転手、家政婦と家族ぐるみで仕事をするようになります。しかし、地下で生活した人々に染みついた富裕層にはない独特の特徴が原因で大きな事件に発展していきます。
実際に、こんな生活を送っている人々がいるという現実社会の違いを見せつけられる気がしました。人間心理が深く関係し恐怖を感じる作品です。