映画『ゲド戦記』の概要:父王を殺害したアレンは、逃亡先で魔法使いのハイタカと出会う。独特な世界観の中で、生きることを怖がる少年の成長を描いたスタジオジブリ作品。均衡が崩れた世界と命の尊さをテーマとしている。
映画『ゲド戦記』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ、アニメ
監督:宮崎吾朗
キャスト:岡田准一、手嶌葵、菅原文太、田中裕子 etc
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映画『ゲド戦記』の登場人物(キャスト)
- アレン(岡田准一)
- エンラッド国王子で17歳。孤独を感じ底知れぬ不安に駆られ、光の自分を置いて行ってしまう。自分を脅かす恐怖から逃れるために父王を殺害し、逃亡した先でハイタカと出会う。真の名はレバンネン。
- テルー(手嶌葵)
- 顔面の左側に大きな火傷の痕がある少女。幼い頃にされた仕打ちにより人間嫌いで、テナーに引き取られた後は自然や動物と寄り添いながら生きる。人間の親から産まれた竜の化身。真の名はテハヌー。
- ハイタカ(菅原文太)
- 元ヤギ飼いの魔法使いで顔の右側に傷痕がある。数々の冒険の果てに大賢人となり、クモとは過去に一度、対決している。テナーとは彼女を救った頃からの付き合い。真の名はゲド。
- クモ(田中裕子)
- 永遠の命を求める魔法使いで、かつてはハブナーのクモと呼ばれていた。禁術を得意とし永遠の命に魅了され道を踏み外す。生死両界を分かつ扉を開いた過去を持つ。ハイタカに復讐しようとしている。
- ウサギ(香川照之)
- クモの配下で奴隷商人。クモに真の名を知られているため、逃げ出すこともできず言いなりになっている粗野なコソ泥。
- テナー(風吹ジュン)
- かつてはカルガド帝国アチュアンの墓所の巫女だった。地下の墓所からハイタカによって救われる。ハイタカの理解者で、現在はテルーの保護者。
映画『ゲド戦記』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ゲド戦記』のあらすじ【起】
アースシーではかつて、人と竜が共存していた。だが、尽きない人間の欲に呆れ果てた竜は、より上の世界へ自由を求めて去ってしまう。そうして、地上には人間だけが残った。
この世界では本来の名前の他に、真の名を持つ。真の名とは魂の名前であり、知られてしまうと全てを支配されてしまうため、普段は通称名を使うようにし、真の名は知られないよう隠しておくのが常識であった。
魔法使いは精霊の真の名を覚えて魔法を使う。しかし、近年。光の力が弱まり、均衡が崩れ始めていた。魔法使いが精霊の真の名を思い出せなくなったり、竜が共喰いをしたりと奇怪な事件が続出しているのだった。
エンラッド国王はそれらの報告に関して、臣下へと的確な指示を出し執務室へ戻ろうとしていた。しかし、背後から気配を察知し振り向くと、王子アレンがナイフを手に迫って来る。王は避けられずに刃を受けた。
アレンは倒れた父王から王家に伝わる魔法の剣を奪い、その場から逃亡してしまうのだった。
ハイタカは大賢人と称される魔法使いであった。彼は世界の均衡が歪む原因を探して旅に出ている。乗り慣れた小舟で辿り着いた大陸では、広大な砂漠が広がっていた。
しばらく進むと、ハイエナの群れに追われる少年を見つける。彼は意図せずに少年の命を救った。少年の名はアレンと言った。
ハイタカは少年を伴って旅を続ける。アレンは大人しく、品の良い少年で尚且つ従順だった。そうして、雑多な港町ホートタウンへ到着。ハイタカはアレンが持つ魔法の剣を隠すためにマントを買い与える。
その後、先を行くハイタカとはぐれてしまったアレン。危ないところをまたもハイタカに救われ、街が見渡せる場所で会話をしながら休憩した。
アレンはその場に留まり、ハイタカは用事を済ませに向かうことになった。しかし、しばらくして何かの気配を察知して逃げ出すアレン。そこで、奴隷商人に追いかけられる少女と出会う。アレンは自分の命を投げ出して、奴隷商人を追い払うのであった。
助け出した少女はテルーと呼ばれ、顔の左側に火傷の痕があった。彼女はアレンを睨んで去って行く。
その後、海沿いの階段で横になったアレン。もうじき陽が暮れようとしていた。彼はそこで、清々しく夕暮れの空を眺め、遥かな空を舞う1匹の竜の夢を見る。
映画『ゲド戦記』のあらすじ【承】
衝撃で目覚めたアレンは、昼間の奴隷商人に坊ちゃんと呼ばれ痛めつけられた。アレンはそこで魔法の剣を落としてしまい、拘束されてしまう。鎖で繋がれ、粗野な服を着せられて奴隷馬車に揺られて行く。
宵闇の霧が深くなり、奴隷馬車は立ち往生。そこへ、魔法を使ったハイタカが現れアレンを救う。ハイタカは極力魔法を使わないようにしているようだったが、アレンを探すために魔法を使ったらしい。
夜も深まった頃、街から離れた1軒の家へ到着。家主はハイタカの昔からの知り合いで、テナーという女性だった。家には5年前からいるという少女テルーがいた。テルーは人嫌いだが、ハイタカにはすぐに馴染む。少女を目にしたハイタカは、彼女に何かを感じていた。
薄暗く入り組んだ城にやって来た奴隷商人ウサギは、主である魔法使いへと報告に向かった。話を聞いた魔法使いクモは、ようやくハイタカがやって来たとほくそ笑む。
翌朝、テナーのベッドで寝ているアレンに驚いたテルー。彼女は完全にヘソを曲げてしまう。遅れて起き出したアレンは、テナーがテルーの養い親であることを知る。そして、朝食後はハイタカと2人で畑を耕すことになった。世話になる礼代わりである。長閑な生活に馴染み始めるアレンだったが、テルーとだけはなぜか仲良くなれない。彼女はアレンを酷く威嚇し、命を大切にしない者は大嫌いだと言い放つのだった。
悪夢に魘されるアレンを目の当たりにしたハイタカは翌早朝、アレンの馬に乗って出かけて行く。
日中、ウサギがハイタカを探して家へやって来るが、ハイタカは不在である。奴らは畑を踏み荒らして去って行った。
映画『ゲド戦記』のあらすじ【転】
一方、ホートタウンでアレンの剣を見つけたハイタカは、自分を捜している奴らと遭遇。咄嗟に魔法で顔を変えてやり過ごす。そこで因縁の相手、クモの所在を知るのだった。
夕方、畑から戻ったアレンはテルーを探して牧場へ。1人佇む彼女を発見するが、歌を唄い始めたため、声をかけられずに聞き入ってしまう。彼女の歌はアレンの心に染み入った。
夕暮れを眺める2人。アレンはテルーに父親を殺したことを告白。彼はここから早く去らないと、奴が来てしまうと呟くのだった。
家を抜け出し、夕闇迫る道を1人で歩むアレン。分かれ道を適当に進むと、川に突き当たっった。背後に自分の姿を見た彼は、逃げ出した先の川で溺れてしまう。溺れて意識を失ったアレンに、もう1人のアレンが迫る。しかし、そこへクモが登場。クモは彼を助けて薬を飲ませ、ハイタカを悪しき様に言い甘言を説く。アレンはクモに惑わされ、真の名を明かしてしまうのだった。
夕食後、家に訪問者がやって来る。ウサギだった。テナーは拘束後に連れ去られ、テルーは柵に縛られてしまう。どうにか拘束を解いて走り出した彼女は、運良く帰路中のハイタカと出会う。事情を全て話すと、ハイタカは見つけ出したアレンの剣をテルーに託し、クモの城へと馬を走らせた。
城へ突入したハイタカは因縁の相手であるクモと会う。クモは永遠の命を求め、生死両界の扉をこじ開けようとしていた。城にはハイタカの力を使えないよう術が施してあるようだ。ハイタカは容易に拘束され、テナーがいる地下牢へと収容されてしまった。
夜道を必死に走っていたテルーは、分かれ道で立ち尽くす。すると、そこへアレンの影が姿を現し、彼女を誘う。影は黙したまま先を進む。後を追って行くと、クモの城へと到着した。
映画『ゲド戦記』の結末・ラスト(ネタバレ)
門前にて立ち止まる2人。テルーはそこで、目前にいるアレンが何者であるかを知る。アレンの心の闇は共にあるべき光を置いて、身体を持って逃げてしまったのだ。彼は彼女に真の名を明かし、共に行くからと姿を消した。
ウサギと傭兵の話を漏れ聞いたところによると、夜明けと共にテナーとハイタカが処刑されるらしい。そして、アレンは城の上部にいることが分かった。テルーは密かに城の上部へと向かいアレンの元へ。
アレンは憔悴と共に、希望を失いうなだれていた。テルーは彼に命の大切さを説く。そして、彼を抱き締めて真の名を告げた。代わりにテルーは自分の真の名もアレンに明かす。
そうすることで、闇しかなかったアレンに光が戻った。
2人は手を繋ぎ、処刑が行われようとしている塔へ向かう。アレンは瞬く間にウサギ達を倒した。だが、クモはアレンを真の名で操ろうとする。苦しみに悶えるアレンだったが、王家の剣に手をかける。彼は見事に剣を抜刀。光放つ剣はクモの右腕を断ち切った。
魔法が解けたクモはたちまち老人の姿へ。クモは姿を変容させ、テルーを攫い逃亡。アレンは必死に追いかけた。
テルーを人質としたクモは、自らが死から逃げるあまりに狂ってしまったのだろう。アレンはクモを説得するも、聞き入れようとしない。狂気の果てにクモはテルーを殺してしまう。
夜明けが近づいていた。殺したはずのテルーが立ち上がる。彼女の目は赤く光り輝き、日の出と共に覚醒する。竜へと姿を変えたテルーはクモを焼き尽くしてしまう。彼女は竜の化身だったのだ。命からがら助かっていたアレンは、塔の天辺からテルーの真の名を叫んだ。
朝日が照らす中、ハイタカとテナーは帰路につく。
アレンは竜に乗って、大空を舞っていた。至高の存在である竜と人が交わることなど、今や容易にあることではなかった。
アレンは国に帰り、自分の罪を償うことをテルーに約束する。
その後、畑の手伝いが終わるまでしばらく過ごし、アレンは国へ帰って行ったのだった。
映画『ゲド戦記』の感想・評価・レビュー
作品全体を通して、映画に没入できたわけではなかった。作品のイメージと、実際の展開やテンポが合っていなかったかなという印象を受ける。
表面的には重厚な印象を与えていそうだが、実際何を伝えたいのか、何をテーマにしているのかがわからなかった。
良かった点としては絵の美しさである。街の風景や人の姿など、絵には引き込まれた。この絵でよりわかりやすいはっきりとした内容だったら完璧だったのに、という後悔の残る映画だった。(男性 20代)
鑑賞前の期待が大きかったせいか、ちょっと期待外れな作品でした。生死に対しての恐怖ではハウルの動く城とイメージがダブっていますし、「本当の名」も千と千尋の神隠しを思い出しました。
それまでのジブリ作品と比べてしまうと期待外れな感じもありますが、光が弱まり混沌とした様子の町の市場や、魔法が解けたクモの狂気の表現などは流石と思えました。作中、ほとんどアカペラで歌っていたテルーの唄も好きです。(女性 40代)
アーシュラ・K・ル=グウィンが描いたファンタジー小説が元となっているジブリ作品である。人と竜との交わりや、命についてを描いた内容であり、自らが持っている真の名という設定が重要となっている。所々過去のジブリ作品と設定が似た部分があり、ジブリの新作として観ると、少しもったいない印象を受けた。また、命への執着といった描写は描かれているものの、作品自体の着地点があまりはっきりとしておらず、軸がいまいち伝わりきらないというのが正直な所である。竜が舞うシーンなどのジブリらしい映像美は変わらず楽しめる。(男性 30代)
魔法使い、ドラゴン、魔法の剣、ファンタジーにおいて王道とも言える要素が盛り沢山である。にも関わらず、ただのファンタジーとはいかない、死と生がキーとなった考えさせられる話だ。主人公が闇を抱えすぎている人であることも注目すべき点だろう。
正直、原作を知らない人にとっては、登場人物の関係や冒頭の父親を殺す主人公のシーンなどもなぜそうなったのかなど、後に説明されることもなく、何がなんだか分からない作品に感じる。伏線もなしに突然ぽっと出てくる要素や出来事は「予備知識がないと楽しめないのでは」と感じた。
しかし、音楽が美しく、ファンタジー好きなら世界観もワクワクする物なので雰囲気だけなら十分楽しめる。(女性 20代)
生と死、光と闇、というように扱うテーマも重いので、映画全体が暗い雰囲気。子どもの頃に見たときは、怖い映画という印象しか残らなかった。特にクモのビジュアルがゾッとするほど恐ろしい。
この映画は伝えたいメッセージがいまいち分かりにくいが、生に対して消極的になっていた少年が、最後は本当の自分を取り戻すお話といったところだろうか。唯一好きなシーンは、テルーが歌うところ。とても綺麗な歌声で、歌詞も素敵だった。(女性 20代)
ジブリ作品が苦手な私ですが、今作は特に物語の意味や意図がよく分からず途中で何度も見るのを辞めようとしてしまいました。真の名を持っていることや、人間と竜の繋がりなど理解できる部分もありましたが、キャラクターの名前が似ていることや普段使っている名前と真の名が違うことなど一度見ただけでは理解できない部分が沢山ありました。
テルーが竜の化身という設定は『千と千尋の神隠し』のハクを思い出しました。(女性 30代)
ファンタジー色がかなり強く、登場人物の性格や行動についての説明となるような描写があまりないため、ストーリー全体がかなり難解でよくわからない部分が多かったのだが、世界観やテーマはすごく好きだ。原作はもっと細かい設定があり、ストーリー的にも長いため、それを1本の映画にまとめようとしたためわかりにくくなってしまったのだと思う。原作を読んでから改めて見返すと理解しやすかった。劇中歌、主題歌共にヒロインを務めた手嶌葵が歌っているのだが、彼女の歌声が素晴らしかった。(女性 20代)
なんといっても「テルーの唄」が素晴らしく、これが聴けるだけで十分と思ってしまうくらいです。
物語は、原作を読んでいないので分かりづらい部分が多いです。アレンが父親を殺した理由や竜の存在の意味などを、もう少し掘り下げて欲しかったなと思います。でも、人間にとって不変のテーマともいえる「生と死」を描いた作品として観ると興味深いものがありました。
「不死は生を失うことだ」「死ぬのを怖がっているんじゃない、生きるのを怖がっているのよ」という哲学的な台詞が心に残りました。(女性 40代)
みんなの感想・レビュー
今までのジブリ作品や、その他の映画の影響を大きく受けてきたことがよくわかる作品になっている。
他の映画で見覚えのあるシーンなども多々あるが、たくさんの要素を取り入れながらもオリジナルの作品に仕上がっている。
祈りのようなテルーの唄がとても印象的で、彼女の純粋さが歌にも現れているようだ。
心に闇を持つ主人公を支えながら、アレンに光りと影の存在を気づかせ、生きることに明るい意味を持たせることができ、心温まる作品に仕上がっている。
アーシュラ・K・ル=グウィンの同名小説、主に第3巻の『さいはての島へ』を原作に宮崎駿監督の子息、宮崎吾朗監督のジブリ初作品となっている。そもそもの原作自体が長編シリーズの小説で独特な世界観であるため、原作を知らない人が初めて見ると混乱に陥る。かく言う自分も最初は意味がよく分からなかった。何度も見返して原作の世界観を勉強してやっと意味が分かる難解なアニメとなっている。セリフが多く聞き逃してしまうのも問題の1つだと思う。原案に宮崎駿作の『シュナの旅』が起用されており、翻案が多く使わているらしいが、2つの作品を混ぜてしまったことも要因なのではないかとも思う。でも、個人的には好きな作品。