映画『パリのどこかで、あなたと』の概要:パリの町を舞台に、隣り合うアパートに住みながら互いに存在を知らない男女が孤独を抱えながら送る日常を紡いだ一作。セドリック・クラピッシュ監督がメガホンを取っている。
映画『パリのどこかで、あなたと』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:セドリック・クラピッシュ
キャスト:フランソワ・シヴィル、アナ・ジラルド、カミーユ・コッタン、フランソワ・ベルレアン etc
映画『パリのどこかで、あなたと』の登場人物(キャスト)
- レミー(フランソワ・シビル)
- 倉庫で働く男性。プライベートでの友人は多くはなく、孤独を感じる時間も増えていた。職場で大きなリストラがあり、自分だけが残れるようになってしまったことにストレスを感じている。
- メラニー(アナ・ジラルド)
- 研究所でガンの免疫細胞について取り組んでいる女性研究者。最愛の恋人と疎遠になり、孤独に苛まれる日々を送っていた。友人の勧めで新たな挑戦はするものの、なかなか納得する相手に出会えずにいた。
映画『パリのどこかで、あなたと』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『パリのどこかで、あなたと』のあらすじ【起】
がんの免疫治療の研究者として働くメラニーは恋人と別れてから体調の異変を感じていた。どんなに研究に集中しようとしても、酷い眠気に襲われるのである。同僚は「気にしすぎ」と気を紛らわせようとするが、メラニーはなんだか納得がいかなかった。
メラニーと同じ地下鉄に乗り通勤をしているレミーは、職場の倉庫で同僚たちが全員解雇同然の宣告を受けたと知る。しかしレミーは昇進の話を持ち掛けられていた。気が晴れないまま帰路に就いたレミー。偶然にもメラニーとレミーは隣り合わせのアパートに住んでいる。憮然としない気持ちの二人は共に窓から外を眺め、何もできないまま夜を迎えるのだった。
職場である仕事のリーダーを任せられたメラニー。しかしあまり自信がないことや連日続く異常な眠気に不安を覚えていた。帰り道に薬局で相談することにしたメラニー。偶然にもレミーは仕事へのストレスから眠れない日々を過ごしていたことを同じ薬局で相談していたのだった。
映画『パリのどこかで、あなたと』のあらすじ【承】
ある夜、レミーは地下鉄で失神してしまった。医師からはストレスだと診断され、心理療法士を紹介される。その頃、メラニーも精神科でカウンセリングを受けていたが、互いに納得のいくような言葉はかけてもらえなかった。
友人の勧めでマッチングアプリを始めたメラニー。その頃、レミーは旧友と連絡を取り食事に誘うも、あまり波長が合わず疲れて帰宅するのだった。
メラニーは何人かの男性と会ったが、別れた恋人を超えるような存在に出会えず余計に過去にしがみついてしまった。出会った頃の気持ちのまま夢見心地だったメラニーは、彼が徐々に冷めていく様子を受け止めきれずいまだに忘れられずにいた。カウンセラーから過去を受け入れ、現実を生きるようにアドバイスをされたが受け止めきれなかった。
メラニーは母親との確執も抱えていた。クリスマスを家族で過ごそうと妹が誘いに来るも、メラニーは頑なに断り続ける。列車に乗り込んだ妹を見送り、孤独に苛まれるのだった。一方でレミーは親族の集まりに参加していた。自然あふれる環境ながら、波長の合わない会話と居心地の悪い空間に息が詰まってしまうのだった。
映画『パリのどこかで、あなたと』のあらすじ【転】
ようやく眠れたが、悪夢にうなされて起きたレミー。同じアパートの住人に頼まれ子猫を預かることになった。その夜、キッチンの方から漏れ聞こえてくる歌声が気になってしまう。それはメラニーがお風呂に入りながら大声で歌っていた歌であった。
お風呂上がりのメラニーは隣の部屋から自分が歌っていた歌が漏れ聞こえてくることに気付く。レミーが大きな音で音楽をかけていたのである。互いに顔も知らない二人は、通勤中にすれ違っても気付くことはないが、少しだけ日常を交わし始めた。
新しい仕事を任されたレミー。慣れない職場で声をかけてくれる存在がいることに安堵し、帰宅後は「ナゲット」と名付けた子猫と戯れる時間を過ごすのだった。しかし、ある朝目覚めるとナゲットの姿が見えなかった。窓が空きっぱなしになっていることに気付いたレミーは外を探し回るがナゲットは見つからず、心理療法士の元を訪ね嘆くのだった。
偶然にもメラニーはゴミ捨て場にいるナゲットを見つけた。少しだけ癒しを見つけたメラニーだが、簡単に異性と出会える環境に満足はできていなかった。一方でレミーは職場の女性を自宅に招くも、拒否されてしまい気を落とすのだった。
映画『パリのどこかで、あなたと』の結末・ラスト(ネタバレ)
ナゲットとの生活に安らぎを見つけ始めたメラニーは、ある夜一人の男性を自宅に招き酔いつぶれてしまった。友人が駆けつけてくれたことで、翌日の大事なプレゼンテーションも無事にこなすことができた。
二人が暮らすアパートの向かいで大きな火事があった。被害に遭った一組の親子の姿を見かけた二人。母親と自分達姉妹を置いて、新たな家族を築いた父への寂しさを抱くメラニー。ガンとの闘病の末、7歳で命を落とした妹のために何もできなかったことを悔やむレミー。それぞれに家族への不安に襲われるのだった。
カウンセラーの言葉を受けて少しだけ気持ちが軽くなったメラニーは、嫌っていた母親と連絡を取り自分の問題を解決しようと歩み出した。一方でレミーも実家に帰り両親と向き合い、気持ちのつっかえを解いていく。心理療法士から行動を起こすのは自分次第だと背中を押された。
気になっていたダンス教室に出向いたレミー。パートナーとなったのはメラニーである。何度も同じ景色を眺め、同じ地下鉄に乗りすれ違ってきた二人は初めて目を合わせ、手を取った。鬱々とした日々から少しだけ抜け出した二人は、晴れた表情で向かい合うのだった。
映画『パリのどこかで、あなたと』の感想・評価・レビュー
同監督作品『スパニッシュ・アパートメント』ではパリを飛び出した青年のしばしの冒険を描いていたが、今作ではパリを舞台に男女が一歩踏み出す様を描いている。隣り合うアパートメントという設定はとてもロマンティックであるが、主題は「孤独」だ。過去の恋愛とトラウマを引きずりながらも仕事に日常を支配される二人の姿は、現代の大人には当てはまりやすいように見えた。過眠症と不眠症など対比も使いながら、テンポよくすれ違う二人の姿がとても印象深い一作であった。(MIHOシネマ編集部)
想像していたよりもゆるくて、でもリアルで、眠れない夜に見ているのが心地よかった。自分自身もいろいろと引きずっているものがあり、主人公たちに共感できるところがたくさんあったのですごくリアルに感じた。他人も、思い悩むことを抱えていて、些細なことで喜んだり悲しんだり、それぞれの人生いろいろあるよねと思えた。こういう誰かの何でもない日常(本人たちにとってみれば何でもなくないが)を見ると、少しだけ前向きになれる気がする。(女性 20代)
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