映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』の概要:不慮の事故にて死んでしまった夫。彼は1人残した妻が過ごす自宅へと幽霊になって戻る。以降、家から離れることができなくなり、妻が去った後もその家に住む人々や時の移り変わりを見守っていく。
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』の作品情報
上映時間:92分
ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ、ホラー
監督:デヴィッド・ロウリー
キャスト:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ etc
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』の登場人物(キャスト)
- C(ケイシー・アフレック)
- 音響の仕事を手掛けているが、不慮の事故により幽霊となって妻Mと過ごした家へ戻る。妻を深く愛し、家には歴史が詰まっていると語っていた。時に作詞、作曲を手掛けることもあった。
- M(ルーニー・マーラ)
- Cの妻で黒髪の美人。夫を亡くしてしばらくは塞ぎ込んでいたが、やがて仕事へ復帰。夫と過ごした思い出深い家を去って行く。幼い頃、引っ越しが多かったため、メモをどこかに隠すという遊びを行っており家を去る際、柱のくぼみにメモを埋め込んでいく。
- リンダ(リズ・カーデナス・フランク)
- 不動産屋の仲介をしている。MとCの友人でもあり、金髪の女性。夫を亡くしたMを心配してパイを差し入れたりしてくれる。
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』のあらすじ【起】
ダラスに住むCとMは若い夫婦で新しい転居先への引っ越しの準備を行っていた。Cが自宅にて仕事をしている間、Mはせっせと荷物の整理を行う。そんなある夜、夫婦は物音にて飛び起きた。だが、家中を見回っても外を見回しても不審なものは見当たらず、2人は再びベッドへと戻る。夫婦仲はとても良好で若い2人は、未来へと希望を抱いていた。
ところが、自宅前にて対向車と正面衝突をしたCが命を落としてしまう。Mはショックを受け、あまりの悲しみに泣くこともできなかった。
病院の処置室にてCの遺体の傍から妻が去った後、被せられたシーツが立ち上がる。遺体から抜け出たCの魂である。彼は幽霊となり病院内をさ迷い歩き、車椅子の男性と遭遇。踵を返した彼は、天へ向かう扉が開かれても中へ入らず、妻がいる自宅へと向かった。
自宅はひっそりとしていて人気がない。Mはまだ帰っていない様子。キッチンの冷蔵庫に貼ってある夫婦の写真を眺めていると、不動産屋に勤める友人のリンダが自宅を訪ねて来る。どうやらMを心配して差し入れを持って来たようだ。メモを残したリンダは早々に帰って行った。
そこへ、当のMが帰宅。彼女は酷く疲れた様子で、リンダのメモを目にするとすぐに捨ててしまう。傷心中のMはリンダが持って来たパイを立ったまま黙々と食べ始めた。そうして、皿を手に床へと座り込み、パイをひたすら口に運ぶ。シーツを被り幽霊となったCは妻の悲愴な様子をじっと見守るしかできない。しばらくパイを食べていたMは突然、トイレへと駆け込み食べていたパイを全て吐き出してしまった。
その後、彼女はベッドへと臥せったまま、眠り続ける。Cはやはり妻の側にいて見守ることしかできない。Mの毎日を自宅にて見守る日々。それでも妻はやがて立ち直り、仕事へと毎日出掛けた。
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』のあらすじ【承】
そうして、冬が到来。ある日、Cは隣家に自分と同様にシーツを被った幽霊がいることを知る。相手が手を振ったので、降り返すと隣人は誰かを待ち続けているが、誰を待っているか分からなくなったと言う。不思議なもので、幽霊同士だと身振りで何を言っているかが分かるのだった。
やがて自分も隣人のように本来の目的を忘れてしまうのだろうか。Cは自宅ソファに腰かけ、Mの帰りを待った。すると、彼女は遅くなってから見知らぬ男性に送られて来て熱烈なキスを交わす。それでもMは室内へ男を招き入れようとしなかったが、嫉妬で憤ったCは念力にて本棚から伝えたいメッセージが載っている本を落とすことに成功した。
その本から何らかのメッセージを読み取ったM。亡き夫との思い出の曲を聞くことに。彼女は薄々、もしかしたらCが幽霊となって傍にいるのではないかと思い始める。再び荷物を整理し、夫との思い出が詰まる家を出る決意を固めたM。彼女はメッセージをメモし、家の柱のくぼみに埋めペンキで塗って隠した。そうすれば、いつか戻って来た時にメモを見つけ出し、当時の自分を思い出すことができる。そうして、彼女はCとの思い出が詰まる家を出た。
Cはそんな妻を自宅にてじっと見つめる。Mはほとんどの荷物を持って行ったが、古いピアノだけは置いて行った。残されたCは彼女が隠したメモを掘り出そうとしたが、そこで出入り口のドアから幼い子供達が駆け込んで来る。移民のようで母と2人の子供達の話す言葉は分からなかった。Cは家に留まり今度は一家の生活を見守り続ける。
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』のあらすじ【転】
幼い子供は非常に感受性が高く、Cの姿を見ることができた。兄はCを不審に思っている様子。そこで、彼は家中の物を投げ散らかし一家を怯えさせた。いわゆるポルターガイスト現象である。少年は幽霊がやったのだと母親に告げようとしたが、母親はまともに取り合わなかった。
一家がいるとMのメモを取り出すことができない。加えて妻との思い出を壊して欲しくもなかった。やがて一家はポルターガイスト現象に思い悩み、家から去って行く。CはMが残したメモを掘り返そうと奮闘していたが、掘り出すことができずにいる。
そんなある日、隣人の存在を思い出し再び話しかけてみることに。すると、隣人はCのことをすっかり忘れていた様子で、とっくの昔に昇天したと思っていたらしい。
次の住人は多くの友人を自宅に招き、ホームパーティーを催した。テーブルを囲み神の存在を語る人々の姿を見つめる。その中である男が先人たちは生きた証を必ず残すと話す。男はベートーヴェンを例にして、彼の場合は『第九』がそうだと。男の話はとても壮大で、遥か未来のことから宇宙の終焉にまで至った。Cは男の話に感応し、電球を点滅させてしまった。
しばらく後、家に住人が寄り付かなくなり荒れ果ててしまう。相変わらず家に居付き離れられないCは、Mが残したメモを掘り出そうと必死になっている。そうして、彼女のメモを取り出そうとした矢先、ブルドーザーが家を粉々に破壊してしまった。
その場に残されたCはただ茫然と立ち尽くす。同時に隣家も破壊されたようで、隣人も茫然とその場に立ち尽くしていた。隣人は「もう来ないみたいだ」と言葉を残し、跡形もなく消えてしまう。だが、Cは消えることなくその場に留まり続けた。
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』の結末・ラスト(ネタバレ)
時が経ち、やがてその場所にはビルが建設され始める。ビルが建った後もCはその建物の中に留まり、建設状況を見つめ続けた。ビルにはやがて会社が入り、多くの人々が働きに来るようになる。Cはビルの中を日々彷徨い歩いたが、その場から離れることができなかった。最早、なぜ留まり続けるのか目的も判然としない。
ある夜、彼は高層ビルの屋上から身を投じてみることにした。気が付くと彼は周囲に木しかない草原の中に立っていて、1人の男が木の杭を打ち付け土地を確保しているのを目にする。そこへ男の家族を乗せた馬車が1台。服装や生活状況を見るに、かなり時代を遡ったと思われる。家族は焚火を囲み確保した土地に家を建てようと話し合っていた。
一家には幼い娘がいたが、彼女は手帳にメッセージを記すと小さく破り、石の下に隠した。もしかしてMの先祖ではないかと思ったが、やがて一家は戦火に巻き込まれ少女もまた殺されてしまった。
そうして、気が付くと再び家の中にいる。そこにMと自分が現れ、生前の自分が家に置いてあった古いピアノを弾き鳴らした。かつての自分とMを見つめ続ける幽霊のC。やがて夫婦はこの家に住むことを決め、喧嘩をして仲直りをして日々を過ごした。Cはかつての自分達の姿を改めて目にし、あの夜のことをようやく思い出す。
引っ越ししようとMに告げた夜のことである。Cはピアノを打ち鳴らした。そうあの時、深夜に物音が聞こえ夫婦は飛び起きたのだ。そうして、自分が死に幽霊となりMが家を去る際、追いかけずに見送る自分をも目にし、そこで長い旅を経てきたCは、Mが埋め込んだばかりのメッセージを手にした。すると、家のドアが開く。解放の時がきたのだ。
Cは念願のMのメッセージを開き、そして消え去った。後に残ったのは壁に輝くプリズムの光だけだった。
映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』の感想・評価・レビュー
『ピートと秘密の友達』を手掛けた監督デヴィッド・ロウリーが脚本と監督を兼任し、制作したファンタジー映画。主演の夫婦は『セインツ 約束の果て』でも共演したルーニー・マーラとケイシー・アフレック。夫役のケイシー・アフレックは作中の大半、シーツを被った幽霊役を自ら演じている。
夫を亡くし悲愴に暮れる妻を見守る幽霊の夫。そのシーンは酷くもどかしく切なく思ったが、基本的に幽霊はいるだけで何かができるわけではない。かろうじて電球を点滅させるなど、ポルターガイスト現象を起こすくらいである。幽霊はただひたすらその家に留まり、現在・未来・過去という長い時の旅をする。映画自体はとても淡々としているが、セリフのないシーンでも何かを伝えようとする意思が感じられ、気が付くと終盤に差し掛かっている。観終わった後に深いため息をついてしまう感動作。(MIHOシネマ編集部)
優しく切ない幽霊のお話。今作に登場する幽霊は人に危害を加える悪霊のような存在ではなく、生前に未練や無念を残してきてしまったばかりに、死後の世界へと行くことが出来ないでいる「座敷わらし」のような存在でした。
物語は幽霊となった彼の目線で描かれているので、元々自分が住んでいた家に新しい住人が住んだり、家が取り壊されてビルが建築される様子など家と共に移り変わる「思い出」もとても丁寧に映し出していて、その描写がなんだかとても切なくて胸がぎゅっとなりました。
ラストはCに対する気持ちが高まり、自然と涙が零れてしまいました。(女性 30代)
こんなに可愛くて愛しい幽霊は、未だかつて見たことがありません。ホラー映画ではなく、死生観や時の流れ、思いについて考えさせられるファンタジーです。幽霊の立場になって物事を見渡せるため、非常に斬新です。亡くなった人も生きている人に会いたいなんて、今まで考えたこともありませんでした。時折静止画ではないかと思う程の、ゆったりとした間がとても心地よいです。劇中の独特な時間の流れは、悲しみや切なさ等の色々な感情を想像させます。(女性 30代)
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