映画『愛を複製する女』の概要:幼い頃に運命の男の子と出会ったヒロインは、12年後にその男の子と再会し、彼を愛するようになる。しかし、男性は不幸な事故で亡くなってしまい、絶望するヒロイン。悲嘆に暮れる彼女が決心したのは、愛する男のクローンを産み直すことだった。
映画『愛を複製する女』の作品情報
上映時間:113分
ジャンル:SF、ラブストーリー、サスペンス
監督:バネデク・フリーガオフ
キャスト:エヴァ・グリーン、マット・スミス、ハンナ・マリー、トリスタン・クリストファー etc
映画『愛を複製する女』の登場人物(キャスト)
- レベッカ(成人:エヴァ・グリーン / 子供時代:トリスタン・クリストファー)
- トミーの母親。息子を溺愛している。トミーの本体とは幼馴染。志半ばで亡くなったトミーを産み直し、愛情深く育てる。忍耐力のある女性で物静か。
- トミー(成人:マット・スミス / 子供時代:ルビー・O・フィー)
- レベッカの息子であり、クローン体。本体はレベッカの恋人。交通事故で亡くなっている。少し変わった感性の持ち主で、突拍子もない行動を見せたりする。無邪気な子供のような性格。
- モニカ(ハンナ・マリー)
- クローン体トミーの恋人。可愛らしく快活で性格の良い子。トミーとレベッカの異常な関係に疑問を抱く。
映画『愛を複製する女』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『愛を複製する女』のあらすじ【起】
少女は浜辺で少年と出会った。少年はトミーと名乗り、少女はレベッカと名乗る。レベッカは母親の都合で一時的に祖父の家で過ごしている。そんな彼女をトミーは時々、誘っては海へ遊びに行った。
遊び疲れて眠ったふりをし、トミーの家に泊まることもある程に、2人は仲良しだった。
遠浅の海で干潮時に朽ちた船から、地平線を眺めたり、レベッカの祖父を観察したり。子供達はたわいもない遊びをする。しかし、母親の仕事の都合で、日本へ行くことになったレベッカ。トミーとは別れなければならない。彼は前日に彼女へ電話で見送りに行くと言っていたのに結局、時間になっても姿を現さなかった。レベッカはフェリーに乗り、その地を後にした。
12年後、大学卒業を機にレベッカは再びトミーの元へ戻った。彼は自宅から堤防の入り江にある家へ、居を移していた。彼は彼女のことを覚えており、会ってすぐに打ち解ける。2人の間に流れる空気は独特で、誰も入れないような絆を感じさせた。
トミーは環境活動グループに参加していた。近頃、沼を埋め立てて出来た健康センター、スパークリング・パークに潜入して、パニックを起こそうと計画している。スパークリング・パークでは裏でクローン技術を研究しているという話だった。
映画『愛を複製する女』のあらすじ【承】
2人はリュック6個分のゴキブリと共に、車へ乗って出発。しかし、レベッカが途中で排泄を訴えたため、車を停止した。彼女が原っぱへ歩を進めていると、衝突音が聞こえる。車から降りたトミーは車に轢かれて、あっけなく死んでしまった。
レベッカは12年前にトミーが渡そうとしていた、カタツムリが入ったマッチ箱を開ける。中には小さなメモが入っていて、いつまでも待っていると書かれていた。トミーのPCを形見に、レベッカは悲嘆に暮れた。彼女は冬の海に入水自殺を図ろうとするも失敗。
レベッカは決意し、トミーの両親を夕食に招待した。そうして、書類を出す。遺伝子複製、組織採取同意書だった。トミーを複製してレベッカが産むと言うのだ。だが、トミーの両親は同意しなかった。
後日、レベッカの元へ父親がトミーの細胞を持って来る。両親は町を出ると言った。
よく考えろと言われたが、レベッカの気持ちは決まっていた。それ以外に考えられなかった。
スパークリング・パークで手続きを取る。細胞は無事に着床し、彼女は妊娠した。
臨月を迎えたため、帝王切開で出産。レベッカは赤子を大事に育てた。他の家族とはなるべく接しないように、慎重に。
トミーはすくすくと育ち、小学校へ入学。彼は生前と同じように、少し変わった子供だった。
映画『愛を複製する女』のあらすじ【転】
トミーが10歳の頃、ディマという少女が実はクローンなのではないかと、実しやかな噂が流れた。クローン人間への差別が広がる中、レベッカはその差別に抵抗を示す。すると、彼女とトミーも差別の対象となってしまった。
周囲から隔絶された2人は、浜辺にぽつりと立つ家へ引っ越す。そこで更に、濃密な生活を送った。
遠浅の海の廃船の上で地平線を見ている2人に、トミーと同い年の子が声を掛けて来る。近くに住んでいるらしい。以降、トミーはその子と遊ぶようになる。
それから年月を経て、成人したトミーが恋人のモニカを家に連れて来た。レベッカは母親という立場から、モニカの存在を否定することができない。彼女は何も言わず、彼の世話を続ける。
トミーはモニカをしばらく家に滞在させたいと言い出す。レベッカは快く受け入れた。
若い恋人達を前に、レベッカは歳の差をまざまざと感じさせられる。彼の恋の対象には、母親である自分では成り得ない。
それでも彼女は、彼らを見守り続ける。塞ぎ込んだレベッカは、なるべく若者達とは接しないよう過ごすことにした。
映画『愛を複製する女』の結末・ラスト(ネタバレ)
寂しさが募ったレベッカは、トミーが寝ている間にベッドへ潜り込むが、彼はやはり母親には触れなかった。恋人達の戯れをじっと見つめるレベッカ。
夜には彼らの営みの声が響く。自分はいよいよ、彼らの邪魔者となっていくのだ。
一方、モニカはレベッカとトミーの、異常な愛情表現に疑問を持ち始める。
そんなある日、自宅にトミーの母親が訪ねて来る。彼女は成長したトミーを茫然と見つめ、静かに去って行った。母親の様子がおかしいことに気付いたトミーは、レベッカに訪問者の正体を聞こうとするが、レベッカは黙したままで何も答えない。
トミーは翌朝から随分と苛立った様子だった。彼の怒りようは常軌を逸している。モニカは呆気にとられた。一方、レベッカは冷静を崩さない。感極まったトミーは浴室に籠もってしまった。そんな状況で、モニカは悲しそうに家を出て行く。
2人きりとなった家の中。レベッカはいよいよ、真実を明かそうと決心する。
彼女はトミーとの出会いから語り始める。そして、大事にしまっていたトミーの形見を息子に見せた。
彼はPCのデータに目を通し、自分がクローンであることを知る。そうして、訪問者が本当の母親であったことに愕然とした。彼はレベッカが誰で、自分が誰であるかを見失ってしまう。
怒りを露わにするトミーは、彼女が誰であるかを問うもレベッカは答えない。彼は思いのままに、レベッカと身体を重ねる。
その後思い悩んだ末、トミーは荷物をまとめてレベッカに礼を言い、家を出て行った。レベッカは静かな笑みを見せ、それを見送った。
映画『愛を複製する女』の感想・評価・レビュー
2010年、フランス・ドイツ・ハンガリー制作によるSFスリラー。主演はエヴァ・グリーンで彼女の独特な演技が光る。SFスリラーとなっているが、どちらかと言うと異色なラブ・サスペンス。恋人を失い、その死を受け入れられずに生き返らせようと考えるのは、当然のことだと思う。もしも、クローン技術が許されるのならば、ヒロインと同じことをする人が出てくるに違いない。今作は独特な雰囲気を保ちつつ、恋人のクローンを育てるヒロインの幸福とその末路が描かれている。近い将来、現実的になりそうな作品である。(女性 40代)
本作は、 愛する男が亡くなって悲観に暮れる女が、彼のクローンを生み育てる姿を描いたSFラブサスペンス作品。
原題の「Womb」は「子宮」の意味。
クローンを生み育てる彼女の考えには今一つ共感できないが、何故かとても引き込まれた。
そして、じめっとした曇り空や冬の海辺といった情景に加えて、音楽も流れなず台詞すら最小限な演出が静かで美しく、物語は淡々と進行しながらも、女の愛情や執着にずっしりとした重みを感じずにはいられなかった。
様々の想いが錯綜したラストの衝撃は想像を絶するものだった。心に残る作品。(女性 20代)
幼い頃から愛に結ばれていたレベッカとトミー。大人になって再会し、当たり前のように将来を誓います。しかしある日突然、トミーは帰らぬ人に…。トミーを愛していたレベッカは途方に暮れ悲しみますが、ある方法を思いつきます。その方法がかなりクレイジー。脚本を書いた人、ものすごく悪趣味です。いい意味で気味が悪い。
いくら愛していても、そういう発想にはなかなか至らないだろうと思いながら、ドキドキさせる展開にすっかり見入ってしまいました。とても面白かったです。(女性 30代)
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